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注目される練馬区「図書館司書のストライキ」 企業ではなく区民の為の図書館を

 東京都練馬区の石神井・練馬の両図書館に指定管理制度を導入する区の計画に対し、図書館業務を担っている図書館専門員(非常勤司書)が、提案の撤回を求めてたたかっている。非常勤司書でつくる練馬区立図書館専門員労働組合は、納得のできる回答が区側から得られなかった場合、19、26日の午前8時から10時のあいだストライキ(図書館業務を停止)の実施も辞さない構えを示していた。18日夜までの交渉で、区側が「別の区立図書館で雇用を継続する」などと回答したことから、予定していたストライキは回避された。指定管理の導入に対する図書館の現場職員のたたかいは、全国的にも注目を集めている。

 

 練馬区には12館の区立図書館があるが、10年前から民間に運営委託する指定管理者制度の導入を進め、現在直接運営しているのは3館のみとなっている。区側はそのうち石神井図書館(2020年)と練馬図書館(2023年)の2館で指定管理者制度を導入する方針を明らかにした。組合側は11月に議会に対し、導入撤回を求める陳情書と約8400筆の署名を提出したのをはじめ、学習会を開くなどして、区民にも理解を求め、署名は現在1万6400筆をこえているという。

 

 12月14日に組合が区民や全国に向けて発した文書は以下のような内容となっている。「7月に、区より石神井図書館と練馬図書館の指定管理制度(民間委託)という提案がなされて以来、私たち図書館専門員(非常勤司書)は、提案の撤回を求め区側と交渉を重ねてきました。現在、石神井・練馬両図書館では、区の常勤職員と図書館専門員がカウンターを含む、現場の図書館業務を担っています。このことは、図書館運営のノウハウを蓄積し、様々な研鑽を積み、区民の声やニーズをサービスに反映させていくために必要不可欠です。また、図書館全体の運営を担う直営の職員が、現場の仕事をせずに、指定管理館九館を統括・支援していくことも不可能です。しかし区は、私たち現場で働く者の説得に全く耳を傾けようとしません。2館の指定管理化を強行し、現在57名いる図書館専門員の数を半減させ、それでもこれまで通りの適切な管理運営は可能であると、根拠のない無責任な回答を続けています。

 

 私たち図書館専門員は、30年にわたり練馬区の図書館を支え続けてきました。これからも区立図書館で働きたいのです。使い捨てにされたくはありません。そして、練馬区の図書館が内部から崩壊していくのを、ただ傍観していることもできません。……真に区民のための図書館が未来にわたって存続していくために、皆様のご理解とご協力をお願いいたします。企業の利益のためではなく、区民のための図書館を!」

 

 練馬区の公営図書館に勤める57人の図書館専門員(非常勤司書)は、通常の選書だけでなく指定管理が運営する区内九館の選書や蔵書チェック、運営状況の観察や記録も担当している。図書館専門員は1年契約の雇用形態だが、勤続20年以上の専門員も多く、なかには最長で勤続29年目の専門員もいるといい、長年の経験の蓄積のうえに練馬区の図書館行政を地道に支えてきた歴史がある。

 

 司書たちは、指定管理制度は民間企業の運営期間に期限があり、契約が継続されなければそのノウハウも蓄積されず、長期的にみれば図書館サービスの質が低下することを危惧している。図書館は、現在の人だけでなく未来の読者のために伝えていく場所であり、民間企業の導入は長期にわたる図書館運営に適さず、「図書館運営の中身がスカスカになり崩壊につながる恐れがある」と指摘している。

 

 山口県の図書館関係者は、「練馬区の非常勤司書の労働組合の行動は、図書館職員の問題であると同時に、図書館運営がいかにあるべきかという問題も投げかけている。全国の図書館を見ると指定管理の割合は少ない。“公共図書館には指定管理は向かない”というのが総務省の立場でもある。実際に直営図書館より民営図書館の方が経費が高くつくことがいくつかの事例を見ても明らかとなっている。だが民営の方が経費が安くつくという誤解があるのも事実だ。図書館の評価を、貸し出し冊数や入館者数など目先の数字だけではかろうとする市場原理的価値観があるが、それこそが知性の劣化をあらわしている。図書館がしっかりしていない自治体に未来はないし、国に未来はない。知性の劣化は国の衰退につながる。指定管理の動きに対してやられっぱなしの空気もあるなかで、たたかう意志を示す今回の練馬区の図書館司書の動きは、図書館の役割とは何なのか社会的に問題提起し、市民と一緒に考える機会となるのではないか」と指摘していた。

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