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原子燃料被覆管を製造してきたジルコプロダクツが解散  原発終焉を物語る

 日本の原発のほとんどの原子燃料被覆管を製造してきたジルコプロダクツが福島原発事故以後、原発の長期にわたる停止状態により新規需要が望めないことから10月31日をもって会社を解散し、生産を停止することになった。

 

 原子燃料被覆管は濃縮ウランのペレットを入れる管で、この被覆管を束にして集合体として組み込むことで原発の燃料として使用される。100万㌔㍗級原発では約5万本もの被覆管が使用される。

 

 日本の原発は沸騰水型と加圧水型の軽水炉の2種類があるが、沸騰水型を中心とした被覆管を神戸製鋼所が製造し、加圧水型は旧住友金属が製造していた。ジルコプロダクツは、この両社が合同出資し合併させて新会社として発足させたものであり、以後国内原発の被覆管すべてはこの会社で製造されてきた。

 

 国内の鉄鋼業界は、戦後すぐに原子力産業の時代がくると予想し、大学から教授を招いて研究開発をおこなってきた。神戸製鋼所もこの分野に参入し、60年代から試作工場を建設して開発をおこなっていた。70年代後半から産業構造転換の目玉として原発の建設ラッシュが始まると商業ベースでの生産を開始した。

 

 原発はウランを使用することから、通常の発電所で使用されるステンレスでは放射能の影響で劣化してしまう。従って中性子を吸収しない性質を持つジルカロイの合金が使用されている。神戸製鋼所ではステンレス鋼管を製造していた長府北工場で製造され、80年代にはジルカロイ被覆管はステンレス鋼管の不振をカバーし、工場を支えるものとなっていた。

 

 しかし、90年代に入ると世界的にも設備過剰の状態となってきたうえに、需要家である集合体メーカーが入札制度をもうけたことから年年価格が下落し、90年代末には当初の半値以下に下落した。いくら生産性をあげても追いつかず見通しのつかない状況に陥った。

 

 そこで同じ苦境にあえぐ住友金属と合併することで生産施設の集約、技術、品質、資源の融合を図り、両社の共同出資での新会社としてジルコプロダクツを発足させた。2000年代に入ると業績は再び向上してきたが、2011年福島原発事故により、日本の原発すべてが停止した。

 

 当初、会社役員からは「電力は必要なもの。そのなかで原発の比率は高いから、一時的には止まってもすぐ再開することになる」という意見がささやかれていたが、6年後の今日に至っても本格的な稼働はまったく見込めず、花形であった原子燃料被覆管は不採算部門どころか無採算部門となった。

 

 この6年間、下請を含め100人近くの人件費を支払いながら、稼動しない設備は使わないことで老朽化が進んだ。設備を使ってステンレスの製品を作ろうという試みもおこなわれたが、ジルカロイとステンレスでは製造工程が違うので簡単にはいかず、工場を閉鎖し会社を解散させることになった。

 

 同様の苦境は他の原子力製品の工場にも共通したものであり、今回の原子燃料被覆管の国内生産停止は、原子力産業が行き詰まりを見せつつあることを示している。

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