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改憲勢力塗り替えの詐欺選挙 野党自爆で救われた自民党 衆院選結果

立憲民主党の街頭演説に集まる人々(14日、21日新宿)自民党の街頭演説。日の丸を掲げる応援団が集まり、首相警護のために警官が大量動員される異様な光景となった(21日秋葉原)

 22日に投開票を迎えた衆議院選は、安倍政府の「自己都合解散」、有権者を惑わせる小池新党騒動、それに連動した民進党の解体によって反自民票の受け皿が分散するという構図が仕組まれるなかで、自・公が勢力を維持し、全議席の3分の2を確保する結果となった。選挙の投票率は53.68%となり、戦後最低を記録した前回(52・66%)に次ぐ低投票率となった。有権者の半数に迫る5000万人近い人人が投票行動そのものを棄権しており、依然として国会が国民から遊離している状況をあらわした。

 

謀略に満ちた選挙構図 争点ぼけた空中戦


 議席数としては、自民党が284議席となり、選挙前の勢力を維持した。公明党は29議席となり、選挙前(34)から5議席減らした。自・公あわせて313議席で、選挙前(318)からは減少。改憲発議に必要な3分の2(310議席)以上を確保したものの、議席拡大はできなかった。

 

 「自民一強」を批判する格好で登場し、「前原の乱」によって民進党議員の約6割強を吸収した小池百合子率いる希望の党は、選挙前の57議席から50議席へと縮小した。一連の騒動は、野党勢力を解体して反自民の受け皿を潰し、有権者を混乱させて一強体制維持に貢献する役回りだったことを物語った。


 一方、小池百合子が公認の条件とした「改憲賛成」や「安保法容認」等の踏み絵を拒んだ枝野幸男ら民進残留組が立ち上げた立憲民主党は、選挙前(15)から54議席へと大幅に伸ばし、野党第一党となった。公示前後の街頭演説会には、連日多くの聴衆が押し寄せるなど、当事者本人らの想定をこえる勢いで支持が広がり、わずか78人しか擁立していない公認候補者の7割が当選した。7月の都議選で小池新党に棚ボタ的大勝をもたらした反自民票が、裏切った小池を即座に見限り、逆に排除された側を下から押し上げた。


 前回選挙では41議席を確保していた「維新」は、選挙前の14から11議席に減少。橋下徹を筆頭に自民党の批判勢力として登場したが、「森友疑惑」への関与や、安保法の強行採決に加わるなど、第2自民党の正体が完全に暴露され、賞味期限切れの様を呈した。


 同じく激減させたのが「日共」集団で、選挙前(21)から9減の12議席となった。各選挙区で当選の見込みもない候補を乱立させて野党票を割るなど、口先と実際行動との遊離が見透かされ、「反自民」の受け皿と見なされない姿を露呈した。社民党は、選挙前の2議席をかつがつ維持。無所属は22議席となった。

 

沖縄や佐賀、新潟などで自民劣勢  争点鮮明な選挙区

 

 小選挙区では、争点が明確な地域では特徴があらわれている。


 日米政府が強行する辺野古への米軍基地建設をはじめ、昨年12月のオスプレイ墜落につづいて、先月にも大型輸送ヘリCH53Eが墜落するなど、米軍支配の横暴さが増す沖縄(全4区)では、1~3区で自民党公認候補が敗北。自民党候補を全敗させた前回総選挙、参院選に続いて、国政に対して県民の頑強な基地撤去世論を突きつけた。


 柏崎刈羽原発を抱え、原発再稼働が最大の争点となった新潟(全6区)では、1~4区で自民党前職が敗北。前回総選挙では3区を除く選挙区を自民党が占めていたが、「日共」が票割候補を立てる困難な条件を突き破って、県民の生命をないがしろにする自民党政府に強烈な怒りを突きつけた。同じく再稼働を争点にたたかわれ、自民候補を叩き落とした昨年の知事選に続き、その世論の根強さを物語った。自民党から出馬した泉田前知事(5区)は、「原発推進」とはいわず「原発防災」と立場をカモフラージュして辛勝した。


 玄海原発再稼働や佐賀空港への自衛隊オスプレイ配備で反対世論が渦巻く佐賀(全2区)でも自民党が全敗した。1区で自民前職が敗北し、2区では、県民を裏切って再稼働やオスプレイ配備を推進した自民前職の古川康(元佐賀県知事)が選挙区で落選した。


 高知2区では、公約を裏切ってTPP(環太平洋経済連携協定)への参加を推進した自民党の山本有二前農水大臣(元金融担当大臣)が無所属新人に敗北。前回の選挙前までは「TPP加盟反対」の主張をしながら、農水大臣になったとたん積極的推進に転じ、TPP国会承認にあたっては「強行採決は自民党が決める」旨の発言をして物議を醸した。その後も辞任せずに居直りつづけるなど、有権者を愚弄しながら反省のない姿勢が県民の返り討ちを受ける結果となった。


 福島原発事故や震災からの復興問題を抱える東北では、福島1区で自民前職の亀岡元復興政務官(自民党国会対策副委員長)が落選。宮城2区でも自民元職が敗北した。


 また、昨年9月に岩手県に台風被害視察で訪れたさい、職員におんぶさせて水たまりを渡り、「長靴業界は儲かったはずだ」と発言したことで批判を浴びて辞任した元復興政務官の務台俊介(長野2区)が落選。秘書への暴言・暴行が発覚し、自民党を離党した豊田真由子(埼玉4区)も落選した。


 北海道(全12区)では、前回選挙で8選挙区を握っていた自民党は3区と11区で敗北し、2議席減らした。神奈川(全18区)では、6区で公明党前職が落選、12区で自民前職が敗北するなど県全体で議席を減らした。自民党が議席を独占していた愛媛(全4区)では、3区で自民新人が敗北。同じく長崎(全4区)でも、1区で自民前職が敗北した。


 とりわけ、選挙直前の「小池劇場」で有権者を弄んだ希望の党には痛烈な審判が下った。民進党出身の52人を含む235人の公認候補のうち、8割に及ぶ185人が落選。東京(全25区)では、21区の長島昭久を除く24選挙区で敗北した。「日本ファーストの会」代表で、小池とともに「希望」旗揚げの中心となり、民進党からの合流組を排除する仕切り役を演じた若狭勝(10区)も落選した。元「維新」代表で、民進党合流後に国対委員長となり、最後は「希望」に渡った松野頼久(熊本1区)も選挙区で敗北した。

 

国民から遊離した「圧勝」  相変らずの2割得票

 

 今回の解散総選挙は、モリカケ問題で政権運営に行き詰まった安倍政府が、臨時国会の冒頭に解散するという挙に出たため「大義なき解散」「自己都合の逃亡解散」などといわれた。国民に真を問う喫緊の政策や課題があり、その必要性から選挙に打って出たという代物ではなく、野党が選挙準備の整わない「いまなら勝てる」という奇襲型であった。私物化政治にかつてなく憤激の世論が高まり、「首相が信用できない」として内閣支持率が低迷するなど支配の安定が揺らぐなかで、安倍政府にとっては追い込まれた末の解散劇でもあった。自民党は過半数維持を目標に掲げ、それだけの議席を減らしてでも一度リセットし、今後四年の政権運営を安倍政府のもとで進めていくことを願望してカードを切った。


 そして、いざ解散に雪崩れ込んでいく段階になると、自民批判勢力の受け皿を装う形で小池劇場なる騒動に発展し、これらが改憲等の政策では大差ないまま自民批判票を回収する装置としてあらわれた。自民支持票はそのまま自民に回収し、小池百合子率いる希望の党が非自民票も含めた浮動票を回収して、これらの保守2大政党が選挙後は連立を組み、国会を独占するという謀略があらわれた。


 この過程で野党である民進党のなかから党首の前原誠司みずからが希望の党との合流を独断で決め、自爆解党するという不可解な出来事も起こった。民進党のカネも組織も希望の党に委ね、そこに労働組合の連合も加わって、民進党出身者には改憲に賛成することを踏み絵で迫るなど、野党第一党のクーデターともいうべき殲滅作戦が動いた。そして、全国の民進党陣営は、選挙直前まで東京本部のゴタゴタに釘付けにされ、選挙をたたかうというのにどの政党から出馬するかさえ定まらず、選挙資金や運動員の案配まで含めて未確定要素を山ほど抱えて混乱状態に置かれた。昨日まで改憲を批判していた者たちが小池百合子の踏み絵で煮え湯を飲まされ、その性根や政治理念のいい加減さを暴露される始末となった。こうして自民党が組織選挙を全力で展開する傍らで、野党側は野党共闘の枠組みも崩壊し、しばらくフリーズ(思考停止)状態を余儀なくされる格好となった。

 

小池、神津・連合会長、前原

 一連の小池劇場を通じて、小池百合子の意図が野党殲滅にあり、民進党解体を手柄にして自民党を利している構図も浮き彫りになった。安倍自民を批判する装いで世論を欺瞞し、野党第一党に手を突っ込んで自民党に貢献するという狡猾なものだった。それは、自民党にはできない芸当であり、小池・前原・神津(連合)はじめとした野党解体劇の立役者たちこそ今回の自民「圧勝」の最大のエスコート役といっても過言ではない。結果として世論を混乱させた挙げ句に野党解体の大立ち回りをして希望の党は失速し、役割としては自民党に「敵なし」状態をプレゼントしただけであった。


 このなかで全国的に光を当てなければならないのは各地の連合の動向で、今回の選挙では希望の党と立憲民主党の二股作戦や、選挙区によっては企業一体型で自民党を支援するなど、旧民主党の支持母体だった立場から解き放たれ、極めて狡猾な動きをしたことについては解明が求められる。

 

 なお、野党側でいえば民進党のなかから枝野はじめとした面面が立憲民主党を立ち上げ、選挙期間中は持って行き場のない有権者の受け皿として急速に伸びていったのも特徴だった。しかしドタバタ劇のなかで立候補者がはなから78人と少なく、自民圧勝の選挙構図に対して抗う力を持っていなかった。かつての首相や与党幹部たちが希望の党からはねられてにわかに反自民や改憲阻止勢力の急先鋒のように振る舞ったものの、圧倒的多数の有権者の心をつかんだかというと、そうはならなかったことを選挙結果は物語った。選挙区では希望の党との乱立で非自民票を分け合う選挙でもあった。


 謀略じみた奇襲選挙をへて、結局のところ棄権者が最大勢力であるという政治不信はこれまでと何ら変わらず、すべての政党が大衆的基盤を失っているもとで自民が勝ち抜けていくものとなった。政治参加する五割の有権者や組織のプラスマイナスのなかで、野党殲滅ならば勝者が自・公であることはわかりきったことで、小選挙区制度によって国会の議席独占が担保される関係は変わらない。ただ、かつて見たことがないほど謀略に満ちた選挙を仕掛けなければならないほど、政治が不安定化していることも暴露した。また、この選挙をはじめから終わりまで振り返った時に、自民党が議席を独占したからといって改憲にお墨付きを得たとか、モリカケ問題の禊(みそぎ)が済んだといえるような代物ではないこともはっきりしている。


 政党政治は引き続き有権者から浮き上がり、絶対得票率が20%にも満たない自民党が「圧勝」し、これを上回る政党がいないという厳然たる事実を突きつけた。このなかで、野党の弱さに付き合って幻滅していたのでは展望は見えない。現状打開のためには、既存の与野党の面子のなかから「誰がマシか」を争うような小手先の選択ではどうにもならないことを選挙は映しだした。結果の詳細を分析【詳報次号】して、議席だけにとどまらない変化や特徴を捉えることが求められる。

 

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