いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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歯止め聞かぬ円高・株安 すさまじいドル売り円買い攻勢

 世界的な金融・経済恐慌が進行するなかで、円高・株安となってあらわれ、日本経済の衰退がいちだんと進行している。サブプライムローン証券の破綻は、70年代ニクソン・ショックによる金ドル交換停止以後の金融自由化経済の破綻であり、その根は深刻である。リーマン・ショック後は金融投機集団の巨額な不良債権は各国政府が肩代わりをし、税金を使った景気刺激策でしのいできたが、そのカンフル注射も効き目をなくし、ギリシャ危機などの国家破綻となってあらわれ、各国の景気の後退、そのなかでの米日欧間の犠牲転嫁の争奪も激化している。ヘッジファンドがギリシャ危機をつくりユーロ暴落を仕かけてアメリカ国債を買い込むように仕向けたりしている。また各国が自国通貨の切り下げで競争を有利にしようと競うなかで、ドル売り円買い攻勢になって、日本を犠牲にする。菅政府がひたすらじっとしているというのもその動きである。
 2007年アメリカ発のサブプライムローン破綻をきっかけにして、暴走してきたマネーゲームは崩壊に向かい、翌2008年には世界を震撼させたリーマン・ショックが起きた。アメリカもEUも量的緩和や金利引き下げを実施するなど、お札をジャブジャブに刷り散らかしつつ税金投入による延命をはかってきたものの、今度は国家破綻の危機へと向かい、世界恐慌への本格的な突入が避けられない情勢になっている。
 日本市場との関係で現在あらわれているのが円高・株安で、歯止めがきかない様相となっている。八月後半には外国為替市場では海外のヘッジファンドなどによる投機的な円買いが加速したおかげで、一㌦=八三円台に突入した。円高による輸出企業の収益低下を見込んだ株安も連鎖反応となって進行している。そのなかで日本企業の海外移転にも拍車がかかっており、国内産業の空洞化が進行し、空前の失業、就職難となってあらわれている。
 この数年間の金融危機のなかで、世界中の株式市場のなかでもっとも暴落率がすごいのが日本で、日経平均は盆明けに9000円台を割り込み、ついに8000円台に突入した。リーマン・ショック以前の3年前から比較すると、およそ半値である。個人で株投資していた人たち、銀行の投資信託の誘いにのった人たちは大損害をこうむった。
 3年前の価格と今年8月13日時点を比べた暴落率をみてみると、日経平均は45%ダウン(9200円台)。これにたいして震源地だったはずのアメリカのNYダウ工業株は22%ダウンでしかない。同時期のG8(主要8カ国)各国の暴落率はイギリス15%、ドイツ18%、フランス35%、ロシア25%、カナダ14%で、財政危機が叫ばれたイタリアが48%ダウンとなっている。
 東証一部上場企業の株式は“金融ビッグバン”(金融自由化)をへて外国人投資家が4割を握るまでになったというが、ヘッジファンドの気分次第で激しく乱高下するようになった。非正規雇用が蔓延する一方で大企業が「史上最高益」を謳っていた2007年段階で476兆円だった東証株価の時価総額は、その後の暴落によって280兆円にまで目減りしている。

 なぜ起きた円高・株安 裏で儲ける金融資本

 円高・株安はなぜ起きているのか。サブプライムローンの全盛期はむしろ円安で、日本が世界的に稀な超低金利なのを利用して、ヘッジファンドや投資家が円を金利の高いドルなどに切り替えて運用していた。日本の通貨である「円」はすさまじい過剰流動性状態に置かれて、海外の金融機関がこぞって低金利で円を調達し、高金利の外国通貨で運用してサヤを稼ぐ「円キャリートレード」をおこなってきた。サブプライムローンをはじめ、金融投機の原資になったのだ。
 ところが、世界金融が崩壊してどこも不景気になるなかで、アメリカもヨーロッパも量的緩和を実施し、金利を下げ、景気を持ち直そうと必死である。そこで「円キャリートレード」をやめ、今度は逆転現象で円を買って円建て借金を返済する方向に流れが変わった。アメリカではFRB(米連邦準備制度理事会)が途方もなくドルを刷って市場に注入し、公定歩合を段階的に引き下げてきた。供給量が増えるからドルの価値は下がり、日米の金利差は縮小し、さらにドル不信とあいまって日本の円高につながる構図となっている。
 輸出産業などにテコ入れしたい、あるいは内需を喚起したい各国が意図的に自国通貨の切り下げ合戦をしており、そのなかでアメリカはドル安政策をとっている。ヘッジファンドが便乗してドル売り円買い(円高誘導)の動きをしているのは、さらに円高になったところで決済して売ればもうけになるという仕組みで、菅政府がのらりくらりしている間にさらに円高になるのを期待していること、ヘッジファンドが退散するときにはしっかり稼いでいるのだと指摘されている。
 世界的に景気が悪化するなかでEU、米国、中国の人民元など軒並み通貨切り下げに誘導する流れとなっている。そのなかで実質的に放置され価値が下落していない円に資金が集中した結果の円高である。
 日本国内への影響としては、対ドルで1円円高が進むだけで、トヨタ自動車なら年換算の営業利益が約300億円吹き飛ぶ関係といわれている。自動車・電機など輸出産業・製造業は国内はさっさと切り捨てて海外移転を繰り返し、市場としても海外依存。株式も外人に握られて無国籍企業化してきたが、ますますこの流れに拍車がかかる様相となっている。逆に1㌦=100円だったものが1㌦=84円で調達できるのだから、輸入物攻勢には拍車がかかり、大型店の廉価多売と競争させられる国内農漁業などにも影響が甚大であることが懸念されている。
 また、円高になることによって、アメリカに流れ込んでいた金が踏み倒される関係もある。日本はアメリカに官民あわせて700兆円とも800兆円ともいわれる金を貸している。そのほとんどが米国債などに姿を変えているといわれている。ドル安になればなるほど、すなわちドル紙幣や米国債の価値が下がれば下がるほど「資産」価値は目減りする。アメリカは超インフレをやって借金を踏み倒すことも想定されている。
 各国が通貨を切り下げるのは、放っておいても少なくなっている自国の需要を喚起し、国内産業をテコ入れしてリストラや失業など景気悪化を招きたくないからにほかならない。それでもモノが売れないからますます通貨を切り下げる。市場争奪とも連動して、他国に利益を持って行かれたくないから、競争して切り下げている。
 歴史的にみても、世界大恐慌が起きた1929年前後も似たような通貨切り下げ競争が起こっており、他国による関税引き上げなど輸入を規制する保護主義が台頭して、やがてインフレとなり、最終的にはこらえきれずに軍事力で市場を奪いあう第二次世界大戦に突入していった。
 2008年9月のリーマン・ショックを契機に、アメリカがどんなデタラメをしてきたのか暴露されてきた。「失われた10年」とも「20年」ともいわれるなかで日本経済は急速に衰退し、農業はつぶされ、製造業は中国・アジアなどへ逃げて空洞化。失業者があふれ、将来のめどが立たない。これは資本主義世界の動きと関わって、とりわけアメリカに食い潰されていることが最大要因だった。
 アメリカの住宅バブルの最大の原資はジャパンマネーであり、超低金利を二十数年ずっと続けたおかげで国内に金は回らず、その分を欧米の金融機関が「円キャリ」で調達して、世界的なバブルをつくっていった。低金利政策だけでも家庭収入を400兆円近く国民からはぎとってきたのだ。その分は銀行がもうけただけでなく、外資が持って逃げたことになる。そして預けているはずの預貯金や年金資金も、相当部分がアメリカに巻き上げられ焦げ付いている。
 それだけでなくアメリカ金融資本の要求する構造改革を迫られ、金融自由化を中心にした自由化、市場原理、民営化がはびこった挙げ句に、経済、労働、教育、医療福祉にいたるまで社会的崩壊につながった。金融資本の暴走によって強烈な搾取社会をつくったからである。そして張本人のアメリカがころげると、一蓮托生で引きずり込まれ、アメリカ本国よりも株価暴落など影響を被っている姿である。
 リーマン・ショックが起きると、膨大な不良債権を抱えた米国金融機関は「市場原理」「小さな政府」と他国に強制していたのは誰だったのかと思うほど、当然のような顔をして税金投入を受け、不良債権を肩代わりさせた。そして世界経済を破綻させた金融機関がすぐに金もうけに奔走し、1年で復活を遂げる有様となった。もうけはすべて自分たちのもので、損した時は国に補填させるのである。
 ニクソン・ショックから後、世界各地でバブル経済を起こし、架空の需要をつくって世界経済を回してきたのがアメリカであり、ついに本国の住宅バブル崩壊まできて破綻した。世界に余剰資金が有り余っているからこそのマネーゲームであり、一方では強烈な搾取によって飢餓人口、貧困人口が溢れかえる世界になった。世界中が貧乏になっていくから消費需要がない。買い手がいないから貯蓄ゼロのアメリカでは、住宅バブルを中心とした借金需要を創出。これがパンクし、世界中がのたうち回る様相となった。
 貧乏人がモノを欲しがっており、賃金を欲しがっているから生産に投資し、雇用をつくるというのをやらないのが資本主義である。もうけるために投資するのであり、もうけにならなければ投資しないのが資本主義の鉄則である。貧乏人のためにとか社会のためにとか考えて行動するのは資本主義の根本原則に反するのだ。世界中が貧困や飢餓でどんなにあえいでいようが知ったことか、というのが資本主義の冷酷な姿なのだ。

 世界維持できぬ姿露呈 行詰る資本主義

 ウォール街を舞台とした金融投機集団が世界を食い荒らす資本主義も末期の段階になると、世界は成り立たず、人人は生活できない現実があらわとなっている。世界の十数億人という貧困人口が欲しているのに生産は破壊される。日本の農漁業生産も鉱工業生産も破壊され、人人の生活が破壊され、社会の発展が破壊されている。あわせて科学技術も各種の学問も次代を担う教育も、医療や介護、社会福祉も切り捨てられ、みな自己責任などといって社会的な有用性が切り捨てられる。
 世界の現実は、この強欲な金融投機資本の支配の下では世界は成り立たないことを示している。日本については、軍事力と金融を根幹とするアメリカの植民地支配の構図から、抜本的な脱却をはからなければ、まさに民族絶滅の危機すら避けられないことを示している。
 アメリカのいいなりで金融自由化をはじめ構造改革をやって日本をぶっつぶしてきた自民党が倒れ、民主党政府になったがこれもアメリカのいいなり。社民党や「日共」修正主義集団もオバマ賛美・アメリカ擁護で共通し、既存政党で当てになるところはない。
 アメリカと独占企業が権力を欲しいままにする現状から、本当の意味で国民が主権を行使できる徹底した民主主義の実現が求められている。そして銀行や大企業を国有化するなら社会をつぶす無政府的な略奪競争をやめさせ、社会に役立つための経済体系をうち立てることができる。働かずにボロもうけする資本家は、働く者がいなければやっていけない。しかし労働者、農漁民、勤労市民という自ら働く人人は、人の労働に寄生する独占資本集団、とくに金融投機集団がいなくても社会を動かすことができる。むしろいない方が社会はまともに動く。
 戦後六五年、ここまできた日本社会だが、いまや抜本的な社会変革の展望を考えなければならないところへ来ている。そのような大衆的な世論と運動を強め、それを代表する新鮮な政治勢力をつくりだすことが、民族の命運を分ける課題となっていることは疑いない。

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