いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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衆院選 独立平和か、総翼賛戦争体制か

 総選挙が4日公示され16日に投開票となる。選挙戦は自民党も民主党も「第3極」と称する「維新の会」などの新党もふくめ、あらゆる既存政党の政策に大差はない。アメリカがオバマ大統領2期目の新体制となり、経済危機打開の強硬姿勢を強め、TPPによる中国包囲網とともに対中国戦争体制の強化に乗り出すなか、民主党は「TPP推進」を叫び、自民党は「憲法を変え国防軍を持つ」を公約に掲げ、「日本維新の会」は諸諸の好戦施策とともに、解雇規制の緩和などを主張している。どの政党も分野の違いがあるだけで、根は日米同盟重視で一致しオール翼賛選挙構図となっている。国民の信を問うのではなく、アメリカとそれに従う売国勢力に認められることを競いあう姿を見せつけている。今回の選挙戦は、独立・平和か、売国・戦争か、国の進路をめぐる真の争点をめぐって国民的な大論議を広げ、大衆の声を形にし、各政党、各候補者に最大の圧力を加えるたたかいとなる。
 
 経済疲弊させ対中国戦争の盾

 前回総選挙で自民党は大惨敗し、戦後続いてきた自民党政府が倒壊した。それはアメリカのいいなりになって日本社会をさんざんに破壊してきた小泉構造改革、それに続く安倍戦争政治を拒絶する全国世論の加えた鉄槌にほかならなかった。民主党はこのとき「普天間基地は最低県外移設」「米軍再編を見直す」「日米地位協定を見直す」「対等な日米関係」といって票を集めたが、鳩山、菅、野田に至る過程ですべて公約を破棄。そして民主党は自民党政治の継承者として今や総瓦解の様相となっている。
 選挙でなにを公約しようともアメリカに恫喝され、日本のメディアや官僚に圧力をかけられるとどの首相も態度を豹変させる。鳩山は無様な「普天間基地の辺野古移転回帰」をやって野たれ死に。菅は真っ先に「日米同盟重視」を表明し、野田は労働者派遣法改正、郵政民営化見直し、消費税増税据え置き、年金制度充実、医療・介護の再生など全公約覆しで暴走した。日本の政治はいかなる政党が政府を握ろうとも、だれが首相になろうとも、アメリカの意向にそわなければクビになる。日本社会に民主主義はなく、アメリカに牛耳られた専制政治、独裁国家を変えなければ、国政は変わらない現実を突きつけている。
 そして進行したのは国民生活のさんざんな破壊である。東北被災地の復興は遅遅として進まない。被災住民を追い出し、生産復興を妨害し、外来資本が復興事業や新規事業で食いつぶすTPP先取りのモデル地域にする有様となっている。福島事故後は放射能汚染騒ぎに乗じて外国農水産物輸入を拡大。国内の農林漁業破壊は深刻度を増している。
 農漁業だけでなく製造業も、安い人件費を求めて工場の海外移転や工場閉鎖・大量首切りが進行。完全失業者は270万人を超過し、職があっても1カ月に数時間だけで生活できない状態や、タクシーやトラック運転手や営業販売員のように基本給がない状態が蔓延。このなかで医療や介護、保育などの福祉切り捨てをやり、民・自・公が手を組んで消費税増税を強行し、殺人政治の様相となっている。福島原発が収束もしていないのに原発再稼働をごり押しし、全国に核廃棄物処分場までつくる意図を隠さない。国民の生命や安全を守る意志などまったくない。このうえにアメリカの輸入拡大要求を丸呑みするTPP参加をやり、日本経済を丸ごと差し出し外資の食い物にするものである。
 さんざんに経済を疲弊させたあげく、日本全土の米軍基地化を進め、尖閣問題などを煽って戦争へと突き進ませようとしている。九州一円の海域で、尖閣諸島を想定した「離島奪還訓練」を繰り返し、国民の批判世論を無視して垂直離着陸機オスプレイを日本の米軍基地に配備した。人の住めない無人島のために、国を挙げた戦争に乗り出すことを本気でやろうとしている。それが次なる政府に対するアメリカの至上命令となっている。尖閣問題、朝鮮のミサイル騒ぎ、改憲も原発再稼働もTPP参加も消費増税も、そうした日本全土を対中国戦争の盾にするアメリカの戦略で日本を廃虚にさせるかどうかひとつながりの問題としてあらわれている。

 どの政党も対米売込み 親米の基本方向一致

 こうしたなか、各政党間の政策はどこも基本方向は大差ない内容である。民主党は総選挙以後の3年間で公約をすべて覆したことになんの罪悪感もなく「政権交代に託された道半ばの改革をさらに進めていくのか、しがらみと既得権益にまみれた古い政治へと時計の針を逆戻りさせてしまうのか」(野田首相)と絶叫。「公約が守れなかったことを反省する」といって、「日米同盟深化」や軍事力増強など裏切った内容をそのまま公約に盛り込んだ。「米軍再編の日米合意実施」も明記し既定路線を突っ走る方向にほかならない。
 だがTPP参加については、野田首相が農協主体のTPP反対集会に出て「帰れ!」と罵声を浴び、各地の選挙区で「TPP推進の首相がきたら票が減る」と批判が噴出。「TPPを争点にする!」と息巻いていたがトーンダウン。票ほしさで公約から「TPP」の文字を削除している。都合の悪い施策は変更せず、記載しないことで温存をはかる性根を露呈している。
 自民党は前回総選挙で「消費税増税」を主張して大惨敗したが、それ以上に反発の強い「改憲」「国防軍保持」を選挙演説で説教したり、「教育改革の成果」を自慢する姿が人人をあきれさせている。自民党の「政権公約」は「憲法」にある戦力不保持や交戦権の否認を定めた文面を削除し、米軍参戦時に日本が自動参戦する集団的自衛権行使を可能にすることが柱だ。さらに自民党が政府を握ると、歴史認識にかんする過去の三つの談話について見直すことも公言。教科書で周辺諸国への配慮を約束した宮沢談話、慰安所の設置・管理や慰安婦の移送に旧日本軍が関与したことを認め謝罪した河野談話、植民地支配と侵略戦争について謝罪した村山談話など歴代政府の評価を覆し、憲法も変えて「戦争ができる国」にするものである。「教育」の項では教科書検定基準を変え、都合のいい教科書に変えることを明記。かつての戦争の反省を覆し、朝鮮、中国、アジアの国国の歴史的な恨みを逆なでして軍事衝突へ突き進む意図である。天下をとった気になって安倍元首相は「交戦規定もつくる」「集団自衛権の行使を認める」と息巻いているが、全国で「戦争を知らない坊ちゃんがなにをいうか」とひんしゅくを買っている。日銀法改正も視野にいれた「大胆な金融緩和」も叫び出し、日銀マネーを世界中に大盤振舞して米国債を買いとったり、ヘッジファンドの食い物にする方向にも意欲を見せている。
 支離滅裂なのは「日本維新の会」。公約に盛り込んだ「2030年までの原発フェードアウト(消失)」について問われ、石原代表は「すぐ削除させる」といいろくに公約を見ていなかったことを露呈。あげくは「細細した政策を話してもしようがない」と怒り出す始末だ。候補者の調整は「じゃんけんで決める」(橋下大阪市長)といい、「有権者をバカにしすぎ」と批判が噴出している。しかもかかげる公約が戦前の軍国主義の亡霊の様な内容。尖閣諸島の「実効支配力の強化」を明記したほか「自主憲法制定」「集団自衛権行使を定める国家安全保障基本法整備」「自衛隊の武器使用基準見直し」などを列記。
 経済政策は「徹底した競争政策」が中身で、失業者があふれているのに「解雇規制の緩和」をやり、低賃金の非正規雇用が問題になっているなかで、最低賃金撤廃にむけた制度改革を進めることを求めている。この政策をつくったのは竹中平蔵などで、「維新」どころか、賞味期限切れで腐った小泉新自由主義改革の二番煎じにほかならない。さらに「日本は核兵器にかんするシミュレーションぐらいやったらいい」(石原)、「(非核三原則について)持ち込ませずまでバカ正直に公言する必要があるのか」「二原則でも十分」(橋下)と、核武装の研究や米軍基地への核兵器持ち込みを認めることまで公言し「頭は大丈夫か」「認知症ではないか」と話題にされる始末となっている。

 政府批判装い運動破壊 「日共」や社民

 そのほかの各種政党は「脱原発」「反TPP」「消費税反対」など部分に切り縮めた政策論議で票あさりをしている。
 「日共」集団は、選挙公約で日米安保条約を廃棄し日米友好条約に変えることを主張。尖閣問題は「日本の領有の正当性を堂堂と主張し解決を図る」と自民や維新と同じ立場。オバマが「核のない世界」を提唱したとき訪米して絶賛したが、本音は親米派であることを示している。かれらの役割は、基地反対や政府批判のような顔をして基地反対や原発反対の運動を引き回し、人が寄りつかないようにして運動を無力にすることでアメリカや財界に認められる役割である。
 社民は「サヨナラ原発」「TPP参加ストップ」「平和憲法は変えない」というが、普天間飛行場の県外移設をめざす、すなわち基地の全国化を推進する立場。これも日米同盟優先である。
 さらに「大地」「みんな」「国民新」「改革」なども日米同盟優先を鮮明にし、公明も自民と連携し事実上一心同体。「反TPP」や卒「原発」をかかげる「未来の党」、日本発エネルギー確立をかかげる「新党日本」は、公約のなかで日米同盟の立場を鮮明にしないことで現状維持、容認姿勢を示している。
 こうして選挙戦にあらわれた各政党間の争点は、日本の命運がかかる独立、対米従属政治の打破を巡って基本的に変わりがない様相になっている。国民が「入れるところがない」となるゆえんである。それは政党政治、および選挙というものが、日本をどうするかという国益にたって、国民の意志を代表するものと遠い存在にあることを暴露している。しかしすべての日本人民にとって、国政がどっちを向いてすすむかは死活問題である。これら全政党を道具にしたアメリカとそれに従属する売国独占資本集団がすすめる道と、それに対立する日本人民との争点を鮮明にし、全国的な大衆世論を強め、選挙戦を揺り動かすことが必要となっている。

 米国の占領支配と対決 国の命運かかる問題

 日本の命運がかかる最大問題は、日米同盟にもとづくアメリカの戦争動員・それに向けた総翼賛体制作りに対し、どういう態度をとり、国民の力を突きつけるかである。アメリカが進めている新軍事戦略は、アフガン・イラク戦争で敗北し、米国家財政が窮地に陥るなか、アジア重視、中国重視の戦略に転換し、防衛費も含め日本にすべて肩代わりさせることである。このため米軍はハワイやグアム、オーストラリアなど後方に下げて、中国の核ミサイル攻撃が届く九州、沖縄をはじめ日本列島、台湾、フィリピンを結ぶ第一列島線を米本土防衛の盾にすることを具体化。対中国戦争となれば、核ミサイル戦争の戦場となるため、前面には日本や韓国、フィリピンなどの近隣諸国の兵員を立たせ、米軍は後方の安全地帯で無人機などの遠隔操作をやる体制作りを米軍再編計画で推し進めている。「アジア人同士をたたかわせる」のがアメリカの一貫した方向であり、米軍の損害を最少にするため日本人を鉄砲玉に使い、日本の国土を原水爆戦争の戦場にするものである。
 このアメリカのアジア重視戦略がアジア・太平洋で日本を中心とするアメリカ支配の経済ブロック化をすすめ、中国と対抗して圧力をかけ支配下に置くTPPとセットとなっている。同時に核兵器製造に転用可能な軍事施設にほかならない原発再稼働の強行、軍事費増加や米軍基地増強と一体となって進む消費増税や福祉切り捨てを軸とする大収奪、「改憲」をはじめとする戦時体制作りなどにも通じている。
 こうしたなか国民世論自体は国政の動きと全く逆方向へ歴史的な大転換をしている。東日本大震災は戦後社会のありようを根本から見直す世論を喚起し、共同体的な絆を大切にしてきた民族精神をとり戻させ、尖閣諸島の領有権問題も、朝鮮ミサイル問題も政府やメディアがいくら騒いでも国民は踊らない。「かつての戦争と同じ手口だ」「二度と戦争を起こさせてはいけない」と語られている。首相官邸前で原発再稼働反対の数十万人行動が起きたが、総選挙を巡っても「どの政党も当てにならない」「国民が下から声を上げなければ変わらない」との世論は全国の至る所で爆発寸前となっている。
 総選挙はどの政党の政策を選ぶかが争点ではなく、対米従属の日本破滅の道を進むか、独立して日本の立て直しの道を進むか、戦争・貧困の道か、平和・繁栄の道か、聞く耳のないファッショの道か民主主義の道かが鋭い対立となっている。選挙戦自体は対米従属オール与党の翼賛選挙の様相で選挙の体をなしていない。しかし政治は政党の政治だけがすべてではない。政治家あっての国民ではなく、国民あっての政治家であり、大衆の政治がもっとも基本的な力である。大衆の声を形にし全既存政党、候補者に圧力を加え、全国的な大衆運動の力を強めることが重要になっている。

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