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全米揺るがす高校生の行動 銃規制求め100万人がデモ

合衆国議会議事堂前を埋め尽くしたデモ参加者

 アメリカの首都ワシントンで24日、銃規制強化を訴え、銃暴力に抗議する集会「March For Our Lives」(私たちの命のための行進)がおこなわれ、80万人が結集した。過去数十年で最大規模となったこの行動は、フロリダ州のパークランドにあるマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校で、19歳の男がAR―15ライフルを乱射し、生徒や教職員17人が死亡した事件の生存者である同校の生徒らが主催した。この行動に連帯し、米国約800以上の地域で100万人以上が銃規制を求め、デモをおこなった。また、世界各国でも連帯した行動がとりくまれた。

 

 当日、ワシントンでは、集会に参加した人人がホワイトハウスと連邦議会議事堂を結ぶコンスティテューション通りとペンシルベニア通りを1㌔㍍以上にわたって埋め尽くし、当初予想されていた参加者数50万人を大きく上回り、人の波は周辺の道路まであふれ出した。その数はトランプ大統領の就任式の参加者を大幅に上回り、過去数十年で最大規模のデモとなった。

 

 参加者は「次は私?」「銃ではなく人間を守れ」「学校は戦場ではない」「私たちは祈りではなく行動を欲する」などと書かれた自作のプラカードなどを手に、銃規制強化を求めて声をあげた。また、銃規制を拒み、政治家に献金を続けるロビー団体である全米ライフル協会(NRA)に対し、「今日1日で何人が殺された、NRA?」「NRAの金を政治から追い払え」と追及する声もあがった。

 

 議事堂近くの特設ステージでは、銃乱射事件があった高校の生徒や、銃で家族を亡くした若者らが銃規制強化や若者の政治参加、NRAへの批判などを強く訴えた。

 

 同校の女子生徒(17歳)は「6分20秒で17人の友人が奪われた。私たちにとっては、長く、涙に溢れた大混乱の時間だった」といい、犠牲者の名前を読み上げ、約4分30秒涙を流して沈黙した。登壇してから6分20秒後、「誰かに任せる前に、命のためにたたかおう」と訴えた。

 

 同校の17歳の男子生徒は「政治家はわれわれの声を代弁するか、さもなければ退場すべきだ。選挙が近づいていることを知ってほしい」と語った。別の女子生徒は「長いたたかいを続けてきたのに、何も変わっていない。今こそ変えるべきだ」と訴えた。キング牧師の孫娘も登壇し、「私の祖父は4人の子どもたちが肌の色ではなく、人格で評価されるという夢を持っていた。私には夢がある。(銃の事件は)もうたくさんだ。銃のない世界、社会にするべきだ」と訴えた。

 

 主催者らは、デモに参加した人人や、支持者に対し、有権者登録をすることや、NRAから資金提供を受けている議員以外の候補者に投票するよう呼びかけている。今回のデモ主催者に対して、米国内の俳優や映画監督など多くの有名人がそれぞれ50万㌦(5200万円)の寄付を公言している。ニューヨークでおこなわれたデモ行進には、17万5000人が参加し、同市の市長は「これは始まりにすぎない。この生徒たちが米国を変えるだろう」とツイッターで発信し支持した。

 

銃規制を訴える高校生たち(24日、ワシントン)

 米国内では他にも、アトランタ、ボストン、シカゴ、シンシナティ、ダラス、ヒューストン、ロサンゼルス、マイアミ、ナッシュビル、シアトル、フィラデルフィアなど、800を超える地域でデモがおこなわれた。また、スコットランド、イギリス、スイス、オーストラリア、フランス、ドイツ、オランダ、日本など、世界各国でも連帯した行動がくり広げられた。

 

 全米各地でのデモを受け、ホワイトハウスは「勇気ある若い米国人が(表現の自由を定めた)憲法第一条を行使することを讃える。子どもたちを守ることは大統領の最優先課題だ」と声明を出した。また、デモの開催に先立つ23日、トランプ政府は、発射時の反動を利用して半自動小銃を連射できるようにする装置「バンプ・ストック」を禁止すると発表した。今月フロリダ州議会では、銃購入可能年齢を18歳から21歳に引き上げ、購入者の身元調査強化などを柱とする銃規制法案が成立した。州知事はこれまで、銃規制に消極的でNRAからの支援も受けていたが、銃規制世論の広がりを受け、高校生らの運動を称賛したうえで、法案成立のため署名した。

 

 銃乱射事件に巻き込まれたフロリダ州の高校生らが始めた銃規制強化、反銃暴力を訴える運動が若い世代を中心に全米へ広がり、かつてない盛り上がりを見せている。米国では、これまで何度も銃乱射事件が起き、そのたびに人人は銃規制を求めてきたが、国を挙げた目に見える変化は起こってこなかった。しかし現在、米国内で広がっている運動では、若者が先頭に立ち、人人に政治参加を呼びかけて銃社会に加担する政治家を投票でもって政界から追い出そうという世論が高まっており、今年11月6日におこなわれる中間選挙にもおおいに影響があると見られている。これが国や国内各州の議員らへの圧力にもなり、トランプ政府をはじめ州単位でも銃規制強化への動きが出ている。

 

 一方で、全米の非営利団体のなかで最大組織であるNRAは、全米各地でのデモについてフェイスブックに「銃嫌いの富豪やハリウッドのエリートたちが若者たちを操り、武器所持の権利を定めた憲法修正第2条を破壊しようとしている」と投稿し、真っ向から銃規制世論に反発する姿勢を見せている。

 

 今回のデモ主催者であるフロリダ州の高校生らは、「Never AGAIN」(2度とくり返すな)「Enough is Enough」(もうたくさんだ)と声をあげ、再び生徒が銃暴力による犠牲にならぬよう活動を続けるという。コロラド州の高校で生徒12人、教師1人が銃乱射によって死亡したコロンバイン高校銃乱射事件が起きてから19年目となる4月20日には、授業をボイコットし、デモへ参加するよう全米各地の高校生らに呼びかけをおこなっている。

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