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北朝鮮核実験問題 米国の核攻撃態勢に原因 圧力ではなく話しあい解決を

 朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)が9日、地下核実験が成功したと発表した。これを受け、日本政府はすぐさま追加的経済制裁を発動する方針を決定。同日開かれた国連安全保障理事会の緊急協議では米国が国連憲章第7章に基づく船舶臨検などを明記した制裁決議草案を提示し、朝鮮へ経済制裁を加え、軍事緊張をエスカレートさせる意図をあらわした。北朝鮮の核実験や核兵器開発が日本やアジアの平和にとって脅威であることに疑いはない。しかしその最大の原因は日本政府や米国が日本全土の核攻撃基地化をすすめ、まさに銃口を突きつけた状態で朝鮮敵視の軍事攻撃態勢をとってきたことにある。朝鮮に核武装をやめさせるためには緊張を激化させる「圧力」ではなく、平和的な話し合いで行わねばならず、なによりも世界最大の核保有国であるアメリカが日本や「韓国」に配備している核を真先に廃絶させ、全ての核を廃絶させなければならない。

 国会は「制裁」で総翼賛体制


 米国は9日の国連安保理で、北朝鮮に出入りする船舶の臨検やぜいたく品の禁輸、武器関連の資産凍結などの制裁措置を明記した決議案原案を提示。日本は米国案に、より厳しい制裁を加える追加項目を示した。
 米国の原案は、経済制裁から軍事行動にも道を開く「国連憲章第7章」に基づく行動として9項目を提示した。制裁項目は「大量破壊兵器に転用可能なあらゆる物資の禁輸」「通貨偽造など金融システムの悪用阻止のための措置」「大量破壊兵器関連の資産や取引凍結」などで、解釈次第ではあらゆる物資の輸出入を禁止し兵糧攻めにする内容。決議採択から30日以内に朝鮮側の行動を点検し、要求を厳守していない場合は「追加的行動をとる用意がある」との1文も加えている。
 日本案はこれに制裁対象の拡大を要求。制裁内容に朝鮮の「すべての船舶の寄港と航空機の離着陸の禁止」「あらゆる製品の輸入禁止」「政府高官の入国禁止」などを追加した。日本は決議案採択にむけて「国際社会全体にとって深刻な脅威」(安倍首相)、「わが国だけでなく、北東アジアや国際社会の安全に対する重大な挑戦」(塩崎官房長官)と主張し、各国との調整をすすめている。
 さらに日本政府は国連決議が決まるまえに日本独自で経済制裁に踏み切る方針を示した。安倍首相は9日、訪問中のソウルからブッシュ大統領に電話して相談し、「日本独自の対応はただちに検討を開始する」と表明。独自の追加制裁として、すでに実施している貨客船「万景峰号」の入港禁止措置を、北朝鮮籍の全船舶に拡大することや、北朝鮮に出入りした船舶の入港制限を検討することもあげた。
 9月には金融制裁で「大量破壊兵器開発に関連する」15団体・1個人に預金引き出しや海外送金を許可制とした。この対象を拡大し、資産凍結を厳格化すること、朝鮮当局者に限定していた出入国制限を民間人に拡大することも検討している。
 貿易制限でも外国為替・外国貿易法で、まず北朝鮮からの輸入を全面禁止し、なりゆきを見て輸出全面禁止も加えるとしている。05年度の輸入はマツタケやアサリなど農水産物を中心に137億円、輸出も中古車など67億円に上ったが、隣国との関係を絶ち、「圧力」で突っ走るというのである。
 こうしたなか衆院本会議は10日、「北朝鮮にただちに核の放棄を求める決議」を全会一致で採択。アメリカの核独占を容認し、朝鮮への軍事制裁まで突っ走りうる与野党総翼賛体制の現実も露呈した。

 大規模演習で挑発 朝鮮包囲網強める日米・ミサイル配備も


 朝鮮が核実験をしたり、ミサイル発射実験をしたりするのは50数年まえの朝鮮戦争以来、アメリカが日本や「韓国」に核兵器を大量に配備し、朝鮮侵略計画に基づいた大規模な軍事演習を毎年行い、核攻撃態勢をとってきたことが根源である。
 最近も「米軍再編」を掲げて朝鮮や中国をにらんだ高性能のミサイル発射機能を持つイージス艦を配備し、横須賀に原子力空母を配備する準備をすすめ、青森にミサイル攻撃機能を高める米軍のXバンドレーダーを配備し運用を開始した。「迎撃」の建前で日本の自衛隊基地やアラスカなどに大量のミサイルを配備し「朝鮮包囲網」を強めているのは日米の側である。
 今年6月にはハワイ沖で、日米合同の海上配備型ミサイル実験を実施。米ミサイル防衛局のオベリング局長は「北朝鮮の脅威を念頭にシステムを配備している」と公言した。米軍が6月にグアム島周辺で行った統合演習「バリアントシールド(勇敢な盾)」も兵員2万2000人と空母3隻をふくむ艦船28隻、航空機280機を動員し、緊急展開と合同作戦の大演習だった。6月末から1カ月間行われた環太平洋合同演習(リムパック2006、日米など8カ国が参加)でも、ハワイ沖でミサイル発射訓練を活発に実施。そして7月に朝鮮がミサイル発射実験を行うと「国民に日本のミサイル防衛体制への不安が広がった(当時の小泉首相)」と騒ぎ、パトリオット・ミサイル3(PAC3)の配備を前倒しし始めた。計画では06年度中に空自入間基地(埼玉)に1基、07年度中に霞ヶ浦(茨城)、習志野(千葉)、武山(神奈川)の3基地に1基ずつ配備。08年に浜松基地(静岡)に4基、09年度には中部・近畿地方に4基、10年度には九州地方に4基配備し、5年で16基配備。10年度にはイージス艦4隻にスタンダードミサイル3(SM3)も搭載する、となっている。
 現在、米国の保有する核弾頭は1万個で大陸間弾道ミサイルなどに搭載する配備戦略核は約5000個(米シンクタンク「天然資源物保護協会」などの推計)。他方、朝鮮の保有する核は2個程度(ミリタリーバランス)といわれている。現実の力関係は朝鮮が核ミサイルを1発発射すれば、数100発ミサイルが飛んできて朝鮮が壊滅することは歴然としている。それは朝鮮の側から日本へ攻め込むために核兵器を撃ちこむことはありえず、アメリカや日本が経済制裁から軍事攻撃へと圧力をエスカレートさせることが、捨て身の報復攻撃に出る危険性を高めるという関係を示している。そしてそれが現実になれば、日本だけが核報復戦争の戦場になり、米国は高見の見物をすることになる。
 拉致問題をふくめて日朝間の問題は日本が植民地支配を清算せず、交戦状態をつづけてきたことに原因があり、平壌宣言に基づいて国交を正常化し話し合いで解決できることである。また核実験の問題も世界最大の核保有国が核を振りかざして世界中に恫喝を加える脅威には何もいわず「横暴な朝鮮を懲らしめよ」と朝鮮への圧力と制裁で突っ走るなら、核廃絶どころか、もっと大きな脅威である核戦争を引き寄せることになる。

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