いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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記者座談会・朝鮮核実験巡る情勢をどうみるか

 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が行った核実験をめぐり、安倍政府はアメリカの国連決議案より突出した制裁を実施している。力による外交、圧力一辺倒の姿勢であり、それは武力衝突、戦争に突き進むことを辞さないということを意味する危険なものである。拉致事件と核実験をしたからといって、戦争を仕掛けるというのはとんでもない暴挙である。この核実験とそれをめぐる安倍政府の動きはなにを意味しているか、それは日本人民の根本的利益にとってなにを意味するか、この事態にどう対応するか、記者座談会をもって論議した。

 米国より突出した強行制裁
 司会 今度の北朝鮮の核実験をめぐる動きはどうなっているか。
  アメリカが国連安保理に提案した経済制裁案は「国連憲章第7章に基づく」といっている。7章のうち第41条が経済制裁、第42条が武力行使だが、アメリカはどちらも含む「第7章に基づく」とあいまいな表現で採決したがっている。中国は「第7章の41条」と主張し経済制裁限定という姿勢をとっている。
  アメリカと中国との間では朝鮮船舶を強引に停船させ、武器をもって乗り込んで船員を捕捉したり、船内を調べる「臨検」を可能にするかどうかをめぐって衝突している。アメリカは「臨検をする」というのが中心の内容だ。
  しかしブッシュの言い分は「軍事挑発だ」とはいうがかなり抑えている。11日の記者会見でも「問題の外交的解決を目指す」といい朝鮮への軍事行動にかんしても「外交で手を尽くした後で考える」といっている。事実上アフガンやイラクで行き詰まり、朝鮮まで手が出ないというのが現状だ。

  このなかでもっとも突出しているのが日本の安倍首相の対応だ。日本が出した独自の制裁措置では「北朝鮮の国籍を持つ人の入国全面禁止」を11日に発動。14日からは「北朝鮮籍船の入港はすべて禁止」し、「貿易の全面禁止」まで発動するといっている。兵糧攻めにするわけだ。兵糧攻めというのは秀吉の戦を思い出すまでもなく、戦争の手段だ。アメリカの対日戦争でも、外地の兵隊に対しても内地の非戦斗員に対しても食糧補給断絶の飢餓作戦をやった。
  安倍首相は国会の発言で「他国より格段に厳しいものになる。私の内閣で決めることなので、北朝鮮側もそれなりの措置になると考えているだろう」「核兵器を開発すれば北朝鮮という国事態の生存の条件が厳しい状況になっていく」とのべ、朝鮮の国家転覆までほのめかしている。また「核実験などしないで国内の食糧とか心配すればよい」などと北朝鮮の支配者になったような発言をしている。ほかにも久間防衛庁長官がミサイル防衛網の設置を繰り上げてやるといっている。

 米国が暴走を指示 米軍は中東で手一杯・身代わりを渇望
  アメリカとよく打ち合わせをし、そのとおりに実行しているのが特徴だ。経過でみれば首相補佐官の小池百合子国家安全保障担当がアメリカに行っていたときに「核実験を実施する」という声明が出て、その場で「断固たる措置を取る」と決めた。そしてすぐ谷内外務次官がアメリカに飛んで、その方針を再確認した。
  核実験実施後には安倍首相がすぐソウル市内の日本大使館からブッシュ大統領に電話をかけて相談し、翌日、「わが国の安全や、東アジアの平和と安全に対する重大な脅威で断固として抗議する」と表明した。国内でもアメリカのシーファー駐日大使が首相官邸にいき指示を出している。
  米国務省が11日に報道官談話を発表したが、日本の追加制裁について「北朝鮮が大量破壊兵器計画をつづければ、政治的、経済的、孤立を深めるだけだという明確なシグナルとなる」と絶賛した。緊密に連携をとってアメリカの指示で暴走をはじめているのは明らかだ。
  しかも核実験の事実はまだはっきりしていない。シーファー駐日大使は「核実験は確認できないかも知れないが制裁はしなければならない」といっている。ラムズフェルド国防長官も「北朝鮮は閉鎖社会であり、すべてを把握することはないだろう」と核実験の詳細把握はできないとのべている。そしてブッシュは「アメリカは北朝鮮を攻撃する意志はまったくない。核兵器も韓国にはおいていない」などといっている。アメリカは少しだけ距離を置いて、日本を北朝鮮制裁の前面にたたせる形だ。
  アメリカは戦争をやる余力がないのも事実だ。戦線を極東アジアまで広げる余裕はない。だから身代わりがほしいわけだ。
  イラクでは米陸軍参謀長が「2010年まで、14万人を維持しなければならない」といっている。アフガンも増派しないといけない状況だが、NATO(北大西洋条約機構)で増派を認めたのはポーランドとルーマニアだけだ。アーミテージも「米国は中東やイラクで忙しい。アジアは日本が主導してやってくれ」といっている。
  北朝鮮に出入りする船舶の臨検は、周辺事態と認定されなければできないということで、安倍政府は北朝鮮の核実験を「周辺事態」と認定する検討も始めた。米軍のかわりに自衛隊に船舶の臨検をさせるようにする方向だ。北朝鮮の船舶を強制的に停止させて船内の捜索をするとなると、臨検される側は強制力に対しては抵抗するのはあたりまえだ。「武力で反撃してくると格好の開戦の理由ができる」と見られている。

 反撃に追い込む陰謀 第2次大戦の対日線と酷似・米国の常套手段
  安倍政府の強硬な制裁というのは、日本が戦争をやろうとしているということだ。経済制裁というのは、力ずくで従わせるというものだ。力ずくの制裁をやるというのは、軍事力をバックにしなければできないことだし、戦争を辞さないということだ。経済制裁でボカスカに殴りつけておいて、相手が軍事的な反撃をせざるを得ないような局面に追い込む。そして先に手を出させて「横暴だ。防衛だ」と叫んで武力参戦に踏み出すというシナリオがあると見るほかはない。
  ミサイル発射のとき、「敵基地への先制攻撃」という、戦争開始発言が出たが、それがシナリオになっているということだ。
  北朝鮮の側はこのような制裁の対応に「宣戦布告とみなし、つづけて物理的対応措置を講じるだろう」との報道官談話を発表している。
  これは第2次大戦で、アメリカが対日戦争をやるときの手口とそっくりじゃないかと思う。アメリカが発想するシナリオで安倍が動いているということだろう。アメリカは第2次大戦のとき対日開戦をやりたくて仕方がなかった。早くから対日占領計画を持ち、真珠湾を攻撃することも想定し、それを待って徹底的に日本を破壊し占領するという、いわゆる「オレンジ計画」を持っていた。日本が中国侵略で中国人民の抗日戦争によって行き詰まるなかで、アメリカは経済制裁をやった。それは石油、鉄くずとかを禁輸してしまい、日本の側から攻撃を仕掛けるように仕向けたものだ。そして真珠湾攻撃を待ちかまえて日本への総攻撃を開始した。
  真珠湾攻撃で、「これでアメリカは正義、先に手を出したのは日本だ」、となった。「リメンバー・パールハーバー」といって戦争熱を煽り、「日本人は虫けらだ」「殺して殺しまくれ」といって残虐な殺戮戦をやった。
  アメリカは金も足りないが、兵隊も足りない。その身代わりをほしがっている。だから日本を前面に立てて、北朝鮮への戦争挑発をやらせ、追い詰めに追い詰めていって、北朝鮮に手を出させて戦争に突き進ませる算段だ。憲法改定とか後回しにして、戦争の実態を先行させ、その後に憲法改定のつじつま合わせをやろうというのだ。安倍政府というのは日本が戦争を始めるための政府だといえる。
  アメリカからみれば在日米軍に挑発させ、日本が原爆でやられても屁のカッパだ。黄色人種の日本人は人間と見なさないというやり方で殺してきた。原爆を使い、沖縄戦や全国空襲、戦地での残虐な殺し方など、実証されており、それはいまも変わっていない。アメリカ支配層から見ると、さんざん北朝鮮を挑発して原爆を日本に撃ち込ませた方が、日本を米軍の身代わりで戦争に駆り立てるのに都合がいいとさえ考えていてもおかしくない。「日本を戦争の身代わりに立てる」というアメリカの陰謀が働いている。
  アメリカに成り代わって戦争をやる。空爆はアメリカ、肉弾になって攻め込むのは日本という関係ではないか。
  そのアメリカが選定したのが安倍首相だ。アメリカのいいなりで突っ走る。非常に危険性を持っている。アメリカのいいなりにさせるために、見識が少しでもあるものは困る。恐れを知らないものがいいということだろう。

 集団自衛権を既に行使・安倍首相の行動 
  ところで、日本が北朝鮮に対してあれほどいきり立って経済制裁をし戦争をやる理由はない。拉致問題と核実験が問題なわけだが、だから戦争をやるというのは暴挙も甚だしい。
  あんな圧力をかけていたら、北朝鮮が暴発する危険性も出てくる。拉致誘拐事件とかがあるが、そのほかにも大韓航空機爆破事件とか、ラングーンでの韓国閣僚を爆破した事件とかいう疑惑があるのも事実だ。しかし、だからといって戦争をやってつぶすというのは別問題だ。
  北朝鮮という国がいい国であるか、悪い国であるかには関係なく、日本が戦争をするのは北朝鮮やアジアの人民にとってもだが、とりわけ日本の人民にとって、とんでもないことなのだ。
  北朝鮮の核実験問題は米朝関係だ。アメリカが在日米軍などを使って圧倒的な核攻撃態勢をとっているのにたいして対抗している。日本にある米軍基地と対立しているのであって日本と対立しているのではない。北朝鮮の核実験はアメリカの核独占政策を破綻させた。すると安倍首相が「よくもアメリカに恥をかかせた」と腹を立てているのだ。安倍は「当事国としてどの国より先駆けて制裁する」といっているが、日本人ではなくてアメリカ人になった意識なのだ。集団的自衛権を認める憲法解釈をするといっているが、行動はすでに集団的自衛権を実行しているのだ。
  アメリカの核政策はハチャメチャだ。インドと核協定を結んで「大いにやれ」というし、パキスタンははじめから容認。イスラエルには核武装をさせてイランにはやるなという。北朝鮮には核実験するなというが、自分ところはもっと高度な核兵器開発のための臨界前核実験をやっている。
  去年もNPT(核不拡散条約)再検討会議で、自分から「そんなことはしない」といって破壊した。核拡散をやっているのはアメリカの方だ。アメリカのいいなりにならない国が持つと核拡散に反するという。イランや北朝鮮などの「悪の枢軸」が持つのはけしからん、「自分たちの仲間はドンドン持て」というダブルスタンダードだ。
  「北朝鮮の核実験が脅威だ」と騒いでいるが、アメリカの核包囲が北朝鮮にとって脅威なのだ。北朝鮮が核兵器を使ったら圧倒的な核攻撃を受ける関係であり、国土壊滅を覚悟したときしか使えないのだ。

 破産した圧力外交 今度は戦争の肩代わり・飛び出す安倍政府
  ブッシュによる力による押さえ込みが破綻したことは押さえておく必要がある。ブッシュは一貫して圧力一辺倒、対話なしで突っ走ってきた。その結果、イラクもアフガンも行き詰まり、中南米は反米国家が連合し、世界の圧倒的多数が反米の旗印を掲げるに至った。「ならずもの国家」「悪の枢軸」といって米朝交渉もしなかった。それが破産した。
  ブッシュの圧力一辺倒政治が破綻した中で、安倍が圧力一辺倒政治の身代わりになって飛び出すから相当の愚かさだ。アメリカだけが強大だという神話を信じていて、国際的な力関係がわからないという姿だ。国際政治の笑いものになるのは当然だ。
  国連制裁決議をみても、ブッシュの方がアメリカの支配階級からも非難されている。テロ事件のあとのような盛り上がりはない。
  この肩代わりをさせるのが安倍政府の使命だ。スタッフを含めて「戦争を知らない」飛び跳ね分子をそろえた。
  小泉で政治、金融、経済、軍事、教育、医療など、構造改革ですべてをアメリカに貢ぐ下請け国家をつくってきたが、今度は戦争の肩代わりに乗り出すという関係だ。貧富の格差拡大をやり、盗聴法などに加えて共謀罪をつくってものもいえないファッショ態勢をつくり、その延長線で戦争をやるというのだ。
  安倍の地元の下関では、代理市長の江島市長が核実験のその日に、休日中の部長らを緊急招集した。「情報収集にあたる」というが情報収集のしようがない。県だってそんなことはしていないのに、安倍代理市政はものすごく色めきたった。戦争願望派だ。

 「革新」の正体暴露 大衆欺く力は崩壊・米国崇拝が性根
  このような戦争挑発の危険な情勢のなかで、「革新系・平和団体」と称する部分の動きが特徴的だ。「北朝鮮核実験抗議」で、飛び出している。原水協、原水禁、被団協、下関では、10フィートの会などだ。核戦争の挑発はするな、というのはまずアメリカにいわなければならない。
  「国連憲章第7章に基づく」と明記した国会決議も全会一致で採択した。与党も野党も一緒になって北朝鮮制裁すなわち戦争賛成だ。それで安倍が多数派のような顔をしている。たしかに国会では多数派だろうが、国民のなかでは少数派だ。
  「共産党」の看板をかけた修正主義集団は志位委員長が「北朝鮮の核実験に抗議する」という声明を出し、「国連安保理決議、安保理議長声明などが、世界とアジアの平和と安定への脅威として一致して反対した国際社会の意志を無視した暴挙」と抗議。国会では「国際社会が一致結束して対応する」と提案して、安倍首相に「私も共産党と考えが同じだ」といわれている。

  戦後監獄から出された共産党の幹部連中が、GHQ本部の前にいって「アメリカ万歳」をやるとか、アメリカ占領軍は解放軍と見なしたが、アメリカ崇拝は性根になっている。だからアメリカに逆らうものは悪であり、人民大衆を戦争に駆り立てる側にいるのだ。
  大衆のなかでは「アメリカに核廃棄をさせて、朝鮮もやめさせろ」というのが共通した世論だ。それはインチキ「平和団体」専門家を乗り越えて力を発揮することは疑いない。
  今度アメリカの戦争の前面に立つというのは、核戦争だ。だからなおさら圧力ではなく、話し合いでやらないといけないのにきわめて危険だ。それを、制裁賛成とやる。きわめて反動的だ。
  戦争体験者は日本にアメリカを攻め込ませたやり方と同じと共通して語っている。靖国神社の展示でアメリカのシーファー駐日大使が文句をつけて、靖国神社側は削除した。その部分は今の時期すごく意味深だ。その中心は「アメリカがABCD包囲網で経済制裁をやって日本が開戦へ動くように仕向けた」という部分だが、それが反米の要素があるといって文句をつけたものだ。これをアメリカがいま日本にやらせているということだ。
  国家神道というものも地に落ちたものだ。靖国神社に祭られている戦没者は大多数がアメリカに殺された人たちだ。日本の戦争指導者とともにアメリカ憎しと思っている人たちだ。靖国神社が自慢する特攻隊兵士はアメリカに殺された。アメリカにいわれたら猫のように引き下がるのが靖国神社なのだ。なにが民族派かということだ。
  北朝鮮の核武装というのは、北東アジアの緊張を強めるゆゆしい問題だ。日本ももう1度原爆が飛んでくるかも知れない深刻な問題だ。しかしこの原因はアメリカの反米国家への核攻撃態勢にある。安倍政府は、アメリカの身代わりとして前面にたって、経済制裁に突っ走っている。それは戦争をやるという意味である。日本がアメリカの下請けとなって戦争をやることを阻止しなければならず、戦争を意味する北朝鮮への制裁をやめさせ、話し合いで解決させなければならない。
 なによりもアメリカが日本を核攻撃の基地にしてそれを増強していることをやめさせなければならず、日本から核基地を撤去させるから北朝鮮も核兵器を廃棄せよというのがスジだ。さまざまな「革新系・平和」勢力のインチキが暴露されたが、それは大多数の大衆を欺き、押さえつける力をなくしたということだ。これまで真実を語ることすら押さえつけられてきた戦争体験者をはじめ、広範な大衆が平和斗争に立ち上がることは疑いないし、そこに展望がある。

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