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ノーベル賞受賞者たちの提言

 安倍政府の後手後手な新型コロナウイルス対応に業を煮やして、ノーベル賞の受賞者である山中伸弥京都大学教授をはじめとした科学者や医学会、医療関係者らがあいついで緊急提言や声明を発表している。このなかで、16日朝のテレビ番組には、がん治療薬であるオプジーボを開発してノーベル医学・生理学賞を受賞した本庶佑(ほんじょ・たすく)京都大学特別教授(78歳)があらわれ、都市部(東京圏、大阪圏、名古屋圏)において医療崩壊を防ぐためにも1カ月の完全外出自粛をおこなうことを呼び掛けると同時に、病態解明及び治療薬につながる研究に国費を注ぎ込むこと、PCR検査を大幅に増やして感染源を抑え込むこと、諸外国で有効性が認められている治療薬であるアビガンやアクテムラなどを早期に導入することを提言。満員電車は危険極まりないことを訴え、現状ではPCR検査が圧倒的に少ないことと関わって「実態は把握している数の10倍の感染者がいる」と警鐘を鳴らした。

 

 山中教授も自身が立ち上げた情報発信サイトにおいて、人口1400万人の東京で1日のPCR検査数が500未満、人口880万人の大阪でも500以下という極めて少ない状態について危惧し、必要な検査がおこなわれなければ、院内感染による医療崩壊が懸念され、爆発的感染を見逃すことになると指摘している。両者ともに、科学的見地からまずはPCR検査を徹底せよと呼び掛けているのだ。

 

 「PCR検査をせよ」は当初から専門家たちが指摘していたが、まず第一に五輪開催を優先したために政治的恣意性によって待ったがかかり、同時に保健所を介したそのシステムの齟齬や検査実施可能数の絶対的少なさに照応して抑制し、そうやってグズグズしているうちに今日のような感染者の増大につながってしまった。「医療崩壊するからPCR検査をするな」「PCR検査をこなす能力がないから抑制しよう」という本末転倒な対応に重大なミスがあった。それらはおよそ非科学的な発想ではあるが、医療崩壊するような脆い現状に照応して、ならばどうすれば検査ができるようになるのか、医療崩壊にならないような局面に持ち込めるのかを積極的かつ能動的に判断して動くのではなく、「できないからやらない」を選択し、その結果、感染経路が不明な感染者が全国のあっちからもこっちからも出てきて、隠れコロナの把握すらままならない事態を迎えてしまった。

 

 問題は、医療改革や病床削減をやりまくって脆くなってしまったとはいえ、現実に進行している疫病の感染拡大に対して、現状を何としても変えるのだという力や判断が働かないことであり、「脆いからやらない」という思考停止に陥っていることである。それはまるで、考えることをやめた怠け者が立ち止まって躊躇(フリーズ)しつつ、顔面ノーガードでひたすら新型コロナウイルスにフルボッコされているような光景に見えて仕方がない。そして医療先進国であるはずなのに、医療現場には防護服もなく、今になってカッパをかき集めていたり、マスクも十分に足りず悲鳴が上がっていたり、なぜもっと先手先手で有効な策を打てないのか? 救える生命が救えないではないかと思うような、信じ難いことばかりがくり広げられているのである。しまいには、ブリーフみたいなアベノパンツならぬアベノブリーフが国民に届けられ、この国の政府はいったいなにがしたいのかがわからない。

 

 科学者たちが指摘するように、まずは検査を徹底して、隠れコロナ感染者を囲い込んでいくこと、陽性、陰性をふるい分けつつ病状を解明し、軽傷者はホテルなどに隔離し、重傷者にICU治療を施していく体制をつくり上げるほかない。有効とされる薬の製造・投与も必要だ。それは「できないからやらない」ではなく、「なにがなんでもやり遂げる」意志と行動力、能力がなければできるものではない。そのための知恵をみなが提言や声明で発しており、為されるがままの政府対応に対して、こう進むべきだという道筋を示しているのである。

 

 アメリカは封じ込めに成功した韓国から簡易検査キットを大量に輸入し、ドライブスルー方式も採用するなどしているが、日本政府としてもこれまでの喧嘩腰外交を改め、韓国政府に頭を下げて検査キットを緊急輸入するというのも、国民の生命や安全を守るために政治が判断して然るべきことだろう。韓国はそれで危機を封じ込めたのだから--。あるいは中国からは医療用防護マスクや防護服、N95などの医療用マスクが既にコンテナで日本政府に届けられているが、近隣国として友好平和な関係を築くことを約束して、もっとマスクの確保その他の支援をお願いすることも必要だろう。中国はアメリカにも人工呼吸器を支援しているし、頼めば応じてくれるはずである。それこそ、ミサイルを向けて睨み合うよりもはるかに安全保障に寄与する選択だ。そうしていかなる国であろうと、困っている相手を嘲笑したり弱みにつけ込んで手を出すような関係ではなく、困っているときは互いに助け合う関係を切り結び、貢献したりされたりすることで、国境や体制の違いを乗り越え、今回のような疫病に立ち向かっていきたいものだ。その点では、キューバの医療支援が人道的にも一歩先を行っているように思えてならない。

 

 100年前のスペイン風邪を知らない現代を生きる私たちは、経験したことのない新型コロナウイルスの猛威をどう乗り切っていくかが問われている。景気後退どころか前代未聞の経済崩壊をともなうことも現実味を帯びている。このなかで国家は誰のために何のために存在しているのかが世界的に問われている。為政者は感染症対策、経済対策を国民生活の擁護のために本気でやることが責務であり、使い物にならない者は早急に退場させて、能力のある者に指揮棒を握らせることが社会の安心安全のためにも必要となっている。ブリーフみたいなふざけたマスクを配ることよりも、やらなければならないことがあるのだ。 武蔵坊五郎

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