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大企業利益より労働者を守れ 全米5000カ所でメーデー トランプの戦争に抗議拡大

(2026年5月6日付掲載)

ニューヨークのデモでは「富裕層に課税せよ」の横断幕や看板が掲げられた(1日)

 米国各地で1日、国際労働者の日に合わせて全国統一行動「メーデー・ストロング“学校なし、仕事なし、買い物なし”」が開催された。「億万長者よりも労働者が大切だ」をスローガンに、何百万人もの労働者、学生、家族が全国各地で行動を起こし、ストライキやデモ行進、学生らの学校ボイコットなどがくり広げられた。主催者によると、こうしたとりくみは全米5000件以上にのぼった。全米各地でおこなわれた統一行動では、労働組合が中心となって運動を組織しながら、ノー・キングスのとりくみのなかから草の根で広がってきた市民の運動が合流した。とくに教育者や大学、高校生らが街頭に出て声を上げる動きが強まっているのも特徴で、米国内では従来の政治団体や労働組合の枠をこえ、より広範で新しい運動が形作られていることを示した。

 

戦費はかさみ、生活費は高騰

 

 米国での今年のメーデーは、トランプ政府に対する国民の怒りがかつてなく高まるなかでとりくまれた。米国による世界中での戦争行為や、軍事費に巨額の予算を投じる一方で社会福祉予算の大幅な削減、「不法移民摘発」を名目にしたICE(移民税関執行局)による国民監視・抑圧、そして億万長者をさらに富ませる優遇策と物価高による国民生活の困窮……。加速する寡頭政治による社会秩序の崩壊とさらなる格差拡大に対し、国民の怒りは頂点に達しようとしている。

 

 こうしたなか、米国内では四月におこなわれた3回目の全米統一抗議行動「NO KINGS(王はいらない)」運動で、1日限定では過去最多動員となる800万人が集会やデモに参加し、トランプに圧力をかけ続けてきた。

 

 中間選挙まで残り半年を切ったなかで、トランプ政権の支持率は過去最低を記録しており、『ワシントン・ポスト』などが先月末におこなった世論調査では「支持」37%、「不支持」62%となっている。

 

 米国とイスラエルによるイランへの攻撃で始まった戦争が2カ月に及ぶなか、富裕層は防衛関連株でさらに富を蓄える一方で、一般市民はスーパーやガソリンスタンドでその代償を払わされ続けている。米国内のガソリン1㌎当りの全国平均価格は、1日時点でイラン戦争開始直後の週と比べて50%(約1・5㌦)も値上がりしており、戦争開始以来最高値を記録している。

 

 イラン戦争によるエネルギーコストの上昇と、それにともなう家計の圧迫、購買力の低下の影響をもっとも受ける一般国民や労働者たちが立ち上がり、今年のメーデー行動は「平和、賃上げ、労働条件の改善」の要求が大きなテーマとなった。

 

 こうした世論に呼応し、ヨーロッパ全土40カ国以上、90以上の労働組合と10の産業別組織、4500万人の労働者を代表する欧州最大の労働組合連合「欧州労働組合連盟(ETUC)」は、メーデーに向けた声明で「労働者はドナルド・トランプの中東戦争の代償を支払うことを拒否する」と訴えている。

 

 今回の「メーデー・ストロング」は、昨年から3回の全国統一抗議行動「ノー・キングス」をとりくんできた主催者が企画した。今年1月にミネソタ州ミネアポリスで市内750の企業が休業し、10万人以上がデモ行進したゼネストにならい、今回のメーデーでは米国史上初となる全米ゼネストを呼びかけていたが、結果的にそこまでの動員は叶わなかった。

 

 それでもメーデー・ストロングに合流した500以上の労働組合や市民団体が約3カ月の間に各地で組織化を強め、市民を巻き込んでストライキや集会、デモをおこなった。

 

 中心的な要求は以下の3点だ。

 

 ▼富裕層に課税せよ。最優先されるべきは彼らの財産ではなく、私たちの家族だ。
 ▼ICE(移民税関執行局)もいらない。戦争もいらない。独裁政権に仕える私兵もいらない。
 ▼企業権力ではなく、民主主義を拡大せよ。我々の投票権に手を出すな。

 

 現代米国におけるゼネストにとって、法的障壁は大きな構造的障害といわれてきた。米国では1930年代の労働運動の高まりを受け、1935年に「全国労働関係法」が制定された。これにより表向きは労働者にストライキ権が与えられたものの、第2次世界大戦後の1947年に反労働運動の文脈で制定された「タフト・ハートレー法」により、保護されるストライキ活動の範囲が賃金や労働条件などに関わる経済目的のみに制限され、政治目的や二次的な標的を狙ったストライキが禁止された。そのため、法によって保護されないストライキに参加した従業員は、雇用主によって合法的に解雇され、雇用保護を失う可能性もある。こうして米国においてゼネストを組織することはますます困難になっていった。

 

 1954年には全米労働者の約35%が組合に加入していたのに対し、2024年には約10%にまで減少している。

 

 そうした障害を乗り越え、今回のメーデーでは各所で労働者が立ち上がり、実際にストライキがとりくまれた。それに加え、ノー・キングスの流れから合流した労組に属さない一般労働者がメーデー・ストロングの行動に合流し、自主的に「病欠」や「休業」に協力する動きも目立った。

 

 昨年来から続くトランプ政府に対する全米抗議の行動を通じて、政治ロビー団体と化した既存の労働組合の枠組みをこえ、新たな労働者の組織化を目指す動きが強まっており、そうした流れを可視化する2026年「メーデー・ストロング」となった。

 

教育者や学生が行動 教育予算人質にするな

 

サンフランシスコのシビックセンタープラザでおこなわれたメーデー集会では、学生たちが多数声を上げた

 今年のメーデーでは、「学校なし、仕事なし、買い物なし」の呼びかけに応え、全米各所でストライキがとりくまれた。ウィスコンシン州マディソンではコーヒーショップ労働者が店舗を閉鎖し、ノースカロライナ州では州全域の教育者が病欠してローリーで集会を開いた。ミネアポリスなどではホテル「ユナイト・ヒア・ローカル17」など複数店舗の労働者がストライキをおこなった。

 

 サンフランシスコ国際空港では、空港労働組合が賃上げとICEの空港駐留に抗議してピケを張った。

 

 また、全国数百の高校や大学で学生が授業をボイコットした。多くの都市でストの先頭に立ったのは教育者たちだ。3月下旬、ノースカロライナ州教育者協会は、州内すべての教育者に対してメーデーには仕事に行かずに州都ローリーで「企業よりも子どもを」集会に参加するよう呼びかけた。そしてメーデー当日は数千人の教師と抗議者が大規模なデモ行進をおこない、地元メディアもこれを「州史上最大規模の労働運動の一つ」と報じた。

 

 ウィスコンシン州マディソンでは、マディソン教員組合の一般組合員たちが組織的に同僚教師たちに働きかけ、学区内にある52校のうち70%以上でストへの参加確約が70%をこえた。こうした教師たちの勇気ある行動により、マディソン都市圏の学区は5月1日に休校をよぎなくされた。さらにメーデー前日には、近隣の郊外都市サンプレーリーの学区も、マディソンの教師たちや全国的な運動に連帯して病欠する教育者が多すぎるため、全校休校を発表した。

 

 オレゴン州ポートランドでは、数百人が教職員組合の集会に参加した。カンザスシティの高校生たちは学校を休んで抗議行動に参加した。

 

 ニューヨークのニュースクール大学のデモに参加した大学生は、大学で授業をおこなう教員や職員が正当な報酬が受けられるよう支援するために参加したと語った。また、「イラン戦争やその他の戦争に莫大な資金が投入される一方で、教育はもはや人々にとって手の届かないものになっている。これは資金不足という問題の愚かさを物語っている。もちろん資金はある。ただ、それが悪用され誤った方向に向けられており、それは今まさに私たちの目の前で起こっている。そして彼らはそれを隠そうともしていない。爆弾には莫大な資金が投入されるのに、教育には資金がないのだ」「この街を支えているのは労働者だ。学校へ向かう途中で本当にたくさんの人とすれ違うが、皆それぞれ何らかの形でこの街を特別な場所にすることに貢献している。だからこそ、億万長者ではなく、彼らのニーズを満たすことが重要だ」と語った。

 

 今回のメーデーでは、トランプ政権の下で加速する戦争政治に対する抗議も大きなテーマとなった。

 

 ロードアイランド州では、州議会議事堂前の広場に約1000人の州民が集まった。同州最大の労組連合であるAFL-CIO(アメリカ労働総同盟・産業別組合会議)とSEIU(サービス従業員国際組合)州評議会は、草の根で結集した30以上の労働・市民団体とともにこの集会とデモ行進を組織した。

 

 メーデー・ストロングの主催団体インディビジブルの同州支部代表は、市民に向け「今日のメーデー祝賀とストライキは、筋力トレーニングのようなものだ。労働運動、反戦運動、移民の権利運動、そしてノー・キングスの運動を中心に活動してきた人々が、人々の力の感動的な示し合いのなかで団結している。そして今日は、私たちの抗議活動を戦略的な非協力と経済的抵抗という次の段階へと進める日だ。仕事も登校も買い物もしない。私たちはできる場所と方法で実践を始め、ともに学び、ともに生き、力を鍛えていこう」と呼びかけた。さらに「私たちは民主主義が億万長者の利益のためではなく、労働者のために機能することを望んでいる。企業と富裕層がシステムを不正操作している。労働者が団結して大きな行動を起こさない限り、その不正操作は止められない。組織化された人々の力こそが、権威主義的な政権奪取を阻止してきた唯一の手段なのだ」と訴えた。

 

 同じ集会で発言した社会主義解放党のファリダ・アラム=フダ氏は、「私たちがともに戦い、通常のビジネスを停止させることで、私たちの労働こそがすべてを動かしていることを示すことができる。経済を機能させているのは億万長者たちではなく、毎日仕事に出勤する労働者階級の人々だ。私たちの賃金は変わらず、その一方で企業は記録的な利益を上げている」「彼らは何兆㌦もの税金を使って、世界中の子どもや家族に対して次々と戦争を仕掛けている。彼らはイランの子どもたちが大勢いる学校を爆撃した。そしてイランで停戦するはずが、今度はレバノンで学校、病院、礼拝所が破壊されている。パレスチナは依然として人質に取られており、子どもや家族が今も死んでいる。企業はこれらの大量破壊兵器の製造で利益を得ているのだ。労働者は、私たちの税金や労働力がイラン、レバノン、パレスチナ、コンゴ、スーダン、ベネズエラでの戦争に使われることを望まない。これらの戦争は、私たち全員を犠牲にして、ほんの一握りの億万長者をさらに富ませるだけだ」とのべた。

 

 さらに「私たちは利益よりも人を優先するシステムを求める。だが彼らは人よりも利益を優先し続けている。それは私たちの集団的な力に脅威を感じているからであり、彼らは私たちが真の変革に向けて組織化するのを阻止したいのだ。ICEによるテロ行為の背後にある本当の狙いも、まさにそれだ。彼らは私たちのコミュニティに恐怖を与え、私たちを不安と無力感に陥れようとしている。しかし、私たちが今日ここに集まっているように団結すれば、億万長者の独裁を終わらせ、社会を完全に変革できる強力な力となることを私たちは知っている」と訴え、労働者を中心とした新しい勢力の組織化を求めた。

 

富裕層に課税せよ 兵器輸出で国内は疲弊

 

サウスカロライナ州でのメーデー行動では、イスラエルに武器を供給しているエルビット・アメリカ社に対する抗議デモがおこなわれた

 ニューヨークでは、マンハッタンのワシントンスクエアパークやウォール街周辺など複数の地域で数千人規模のデモや集会がおこなわれた。抗議者たちは街頭に出て労働組合の権利、賃上げ、累進課税、移民の権利の保護を要求した。

 

 また、昨年11月に当選した「民主社会主義者」のゾーラン・マムダニ市長も集会に参加し、演説をおこなった。ニューヨーク市長がメーデーの大規模な集会に参加するのは1934年以来92年ぶりのことだった。

 

 マムダニ氏は、ニューヨークの労働者が幾度となくこの場所から歴史を形作ってきたとのべ、労働者自身の力で週40時間労働、週末休、残業代、最低賃金、社会保障、職場の安全基準といった今日では当然のこととされている権利を勝ち取ってきたことを強調した。

 

 そして「今、労働者の力を高める最良の方法の一つは、労働組合と連帯することだ。労働組合なくしてニューヨーク市はありえない。労働組合が強い街、それがニューヨークだ」「皆さんに質問がある。エンパイア・ステート・ビルを建てたのは誰? ブロードウェイの魔法を守り続けているのは誰? 私たちのバスを運転し、街路を清掃しているのは誰? 答えは常に労働組合員だ。“労働組合の強さ”は単なるスローガンではなく、連帯の実践に他ならない。今日ここに集まっている60以上の労働組合や団体は、サミュエル・ガンパーズ(米国労働運動指導者)の言葉を借りれば、“組織化しなければ何もできない”のだ。私たちはともに、連帯の意味を世界に示すだろう。団結した人々、組織化された人々は、決して敗北しないのだ」とさらなる結束を呼びかけた。

 

 その他にもニューヨーク市内では、若者たちがマンハッタンの証券取引所を腕を組んで取り囲み、建物の入口を封鎖して抗議の意志を示した。ロチェスターの高校生たちは授業をボイコットし、「正義無きところに平和なし。街からICEを追い出せ」と叫びながら街を行進した。

 

 アマゾンの従業員や全米最大規模の労働組合である「国際トラック運転手組合」(通称チームスターズ)の組合員、地元政治家らは、早朝からニューヨーク公共図書館の本館からアマゾンの本社まで行進し、同社に対して国民に対する強制捜査を続けるICEと国土安全保障省(DHS)との契約を打ち切るよう要求した。

 

 デモ隊が手にするプラカードには「民主主義にはあなたの勇気が必要だ」「富裕層に課税を」「イランでの戦争をやめろ」「労働は力なり」などのメッセージが記された。

 

 サウスカロライナ州ラドソンでは、多くの市民が自宅のすぐ近くにあるイスラエルの兵器工場に抗議するため、メーデーのデモをおこなった。この地域には、イスラエル最大の兵器子会社エルビット・アメリカ社があり、現在レバノンで使用されている強力な榴弾砲を製造していることを公に宣伝している。

 

 抗議者たちは、工場前で従業員たちに向け「あなたたちにはここにいてほしくない」と訴えた。そして人々は「これは女性や子ども、孤児を殺害するために使われている」と抗議した。抗議デモをおこなう市民に対し、工場に出入りする従業員たちが車のクラクションを鳴らして通り過ぎるなどして連帯の意志を示した。

 

イリノイ州シカゴでのメーデー行進。ブランドン・ジョンソン市長(中央)も参加した

 イリノイ州シカゴでは、さまざまな労働組合が組織的に行動に参加した。また、ブランドン・ジョンソン市長がユニオンパークでおこなわれた数千人規模の集会に参加した後、付近でおこなわれたメーデーデモの先頭に立って参加者たちとともに行進した。デモ隊は労働者の権利、より強力な労働保護、学校予算の増額などを訴えた。また、この日はシカゴ教職員組合とシカゴ公立学校の間で妥協が成立し、生徒と職員は授業時間中にデモに参加することが認められた。

 

 そのため、シカゴ教職員組合の組合員は午後の仕事を休んで生徒たちとともにデモ行進に参加した。

 

 また、集会で発言した全米自動車労働組合のショーン・フェイン委員長は、聴衆に向けて「アメリカと世界の労働者階級は、ごく少数の富裕層と企業の貪欲さによって置き去りにされてきた。労働者階級に対するこの戦いに勝利する唯一の手段は、我々の団結、連帯だ」と呼びかけた。

 

 サービス従業員国際組合に所属する医療従事者たちは、シカゴ市内のアマゾンの倉庫に向かって行進し、オーナーであるジェフ・ベゾスの顔が描かれた巨大な看板を掲げた。

 

 医療従事者たちの連帯は全米に広がった。全米看護師連合の看護師たちも各都市の職場でストライキを戦い、さまざまな抗議行動に合流した。

 

 カリフォルニア州ロサンゼルスでは、ダウンタウンで数千人規模のデモ行進がおこなわれた。労働組合、移民権利団体、公民権団体、宗教指導者などからなる幅広い連合が中心となっておこなわれた行動には、サービス従業員国際組合に所属する清掃員、警備員、空港職員、スタジアム・アリーナ職員らも合流した。

 

 ペンシルベニア州のフィラデルフィア市庁舎周辺では、数千人規模の集会とデモがおこなわれた。このイベントには看護師、大学生、ホテル従業員、移民などが集まり、デモ参加者たちは演説を聞いた後、プラカードや横断幕を掲げて行進した。デモに参加した人々は、議員に対して最低賃金の引き上げ、富裕層への増税、医療へのアクセス拡大を求めた。

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