(2026年4月1日付掲載)

参加者に見送られながら進むトラクター&軽トラパレード(3月29日、東京)
「農業と農村の衰退を食い止め、安心で持続可能な日本の食を守ろう!」「今が正念場」と訴え、3月29日、昨年に続く「令和の百姓一揆」全国一斉行動がおこなわれた。東京都内ではトラクター&軽トラパレード、提灯行進に約1200人が参加し「農家に補償を!」「食と農を守れ!」の声を上げた。昨年3月30日に狼煙を上げてこの1年、全国各地で実行委員会が立ち上がり、トラクター・軽トラデモや集会、学習会、シンポジウムなど、26都道府県で農家と消費者をつなぐ多彩なとりくみが展開され、着実に世論を動かしてきた。今年は東京だけでなく北海道から沖縄まで10都道府県17カ所での同時開催となるなど広がりを見せている。アメリカ・イスラエルのイラン侵攻によって燃料や農業資材がさらに高騰する状況のなかで開催された今年の令和の百姓一揆は、食料危機が目前に迫っているという危機感を共有しつつ、このうねりをさらに全国津々浦々に広げていこうという熱気があふれるものとなった。
10都道府県17カ所で同時開催
3月29日午後2時30分、集合場所の青山公園(東京都港区)には、「農家を守れ!」「米を守れ!」などのプラカードを持った農家や消費者が集まった。地震で大きな被害を受けた能登のコメを携えた人も。昨年は約4500人が東京会場に集結したが、今年は各地域でのとりくみを重視。東京会場には約1200人が集まった。

菅野芳秀氏
出発に先立つ集会で、実行委員会代表の菅野芳秀氏(山形・農民)は、直近5年間で全農家の23%にあたる26万の農家が離農しており、昨年の令和の百姓一揆から1年を経た現在も離農が続く農村の状況は変化していないと訴えた。水田農家の平均年齢は71歳、農業を担う中心世代は76~78歳の団塊の世代であることを指摘。この世代が肉体労働ができなくなっていけば、「羊羹(ようかん)を切ったかのように日本から農民がいなくなっていく。おそらく食がプツンと途切れる。その段階で大騒ぎしても遅く、どうにもならない」と危機感を語った。一人の農民が育つには何年も要するにもかかわらず、そのための方策はなんらとられていない。
「おそらく5年後にはわれわれが見たこともない景色が日本で展開されるはずだ。そうならないために、国民的に解決しなければならないからこそ、われわれは令和の百姓一揆を敢行した。打ち上げ花火に終わらせてはならない。連続した狼煙として、やりきって、やりきって、やりきろう」と呼びかけ、自身も先頭に立ってたたかい続けることを誓った。
農業公務員化の動きも 全国各地代表の挨拶

壇上で挨拶するトラクター・軽トラックのドライバーたち(3月29日、東京)
東京会場には、全国16カ所で同時開催している各地域の実行委員会代表が駆けつけ、連帯の挨拶をおこなった。
栃木市で16年前に就農し、地元で議員もしているという男性は、「菅野代表がいうように、もう食料がなくなる状況だ。羊羹を切るよりもっと厳しいと思う。この令和の百姓一揆が全国隅々まで至ることを願っている。子どもたちにいい食卓を、働く人には農家の人がまともに暮らせるような戸別補償が必要だと訴えている」と語った。農家に頼っているだけでは間に合わない状況のなか、栃木市では公益法人を立ち上げて農業を公共のサラリーマンにして支える仕組みを日本で初めて創設しようととりくんでいると話した。
宮城県仙台市の女性は、「一消費者として生協の産直運動にかかわっている。昨年度はコメどころ宮城県でもスーパーの棚からコメが消えた。待ちに待った新米も5㌔5000円の値がついて、生活に余裕がある家庭でなければ子どもたちにお腹いっぱい食べさせられないということが本当に目の前で起こってしまった。私も含め都会に住む消費者も、農村が大変なことになっており、自分たちの暮らしも、じわじわではなく、直ちに大変なことになってしまうのではないかということに気がつきつつあるのではないかと思う。大きな問題を前にして、立場や主義・主張の違いをこえておおらかな運動にしていこうという令和の百姓一揆の枠組みをつくってくださった関係者に感謝をのべたい」と語った。宮城県実行委員会は今秋に仙台市内での一揆をめざしているという。
そのほか、次のような発言が続いた。
「幕末に明治を開いたのは水戸であり、“この閉塞状態を水戸の力で突き抜ける”という思いでやってきた。諦めずに新しい農村、農業をつくりあげよう」(茨城県、男性)
「6~7割が中山間地域の場所で、1枚12㌃、2200枚の土地を集積し、農家550人、270㌶の農地を管理する農事組合法人の代表をしている。中山間地は大変だ。われわれが力を合わせて守っていかないとすぐに耕作放棄地化する。ともに頑張っていきたい」(鳥取県、男性)
「子どもの病気がきっかけで食べ物の大切さを実感してはいたが、実際に自分が新規就農し、農業には多くの課題があると知った。未来の子どもたちに国産の物を届けられるようにするために、日本の農業を大切にしていかなければいけない。そのためには私たち大人が行動でその大切さを伝えていかなければならないと思う」(千葉県、女性)
「昨年、東京の行進に参加し、たくさんの勇気と希望をいただき、広島に帰って二度、行進した。本日も県北の三次市などで軽トラで県内を行進している。広島も中山間地の多い地域だ。しかしこれを次の世代に残さなくてはならないという思いで立ち上がっている」(広島県、女性)
各地から力を込めた挨拶がおこなわれ、大きな拍手で包まれた。
同時開催の地域からは、ガソリン、灯油、肥料、農業資材などが連続的に上がるなかで農繁期を迎える現場から、輸入依存から脱却し、食料自給率の向上、食料安全保障の実現を求める決意のこもったメッセージも寄せられた【別掲】。
また、昨年の9月議会で山形県の鶴岡市議会が所得補償制度を求める意見書を全会一致で採択し、国に提出した。その動きを皮切りに、神奈川県の伊勢原市議会、大磯町議会、栃木県の栃木市議会が同様の意見書を採択しており、それについて意見書採択にかかわった地方議員から報告もあった。
農の自立と国の独立を 鈴木宣弘氏が報告

鈴木宣弘氏
20年前から食料危機への備えを訴えてきた東京大学大学院特任教授の鈴木宣弘氏が、農業の危機的な状況について要旨以下のように情勢報告をおこなった。
日本の食料自給率は38%というが、肥料はほとんど輸入、タネも野菜では9割が輸入という自給率の低さを勘案すると最悪9・2%に近づいていると警鐘を鳴らしてきた。しかし、それさえ甘かった。ホルムズ海峡の封鎖に直面し、エネルギー自給率の低さを勘案すれば、日本の実質的な食料自給率はもうすでに数%しかない。これがわれわれが今直面している危機的な状況だ。
そのようななかで農家はさらなるコスト高に苦しみ、さらにやめる人が増えるような状況になっている。一方で、食料品価格が上がったら、所得が減っている消費者も苦しい。農家にとって必要な額と、消費者が払える額にギャップが生じている。
そのギャップを埋める所得補償を農家に対してきちんとやれば、消費者は安く買え、農家は所得が確保され、増産できて自給率を上げていくことができる。
しかし、政府はそういう政策は絶対にやらないといっている。この期に及んでコメはつくるな、備蓄は減らせ、輸入を増やせといっている。これはまさに自国政府が自国民を餓えさせるような「セルフ兵糧攻め」だ。しかも、この状況において政府は、やるべき政策はフードテックだといい始めた。今まで頑張ってきた農家は地球温暖化の悪者だったから、これからは植物工場や昆虫食、培養肉に切り替えていくということを大々的に打ち出している。これは、よく考えると実に整合性がとれている。今いる農家を支える政策をせず、フードテックにシフトしていくということは、頑張ってきた農家をつぶして一部の企業がもうけるような流れをつくっていくということだ。
これでは本当に日本の農業・農村は破壊され、今回のように物が入ってこない状況になれば、国民みんなが飢え死にしかねない。今日お集まりのみなさん、全国で立ち上がっているみなさんの力でこの流れを変えていかなければならない。変えることができるのはみんなの力だ。
私は「餓えるか植えるか運動」といっている。飢え死にしないよう、みんなで植えよう。一人一人がさらにリーダーとして、各地でみんなでつくり、みんなで食べるとりくみを強化し、全国各地にローカル自給圏をどんどん構築して地域から食と農の自立、独立を広げていくことで、日本の独立を回復することができる。そのためにさらに協力して頑張っていこう。
食料危機になる前に… 参加した農家の声

1200人が参加した「令和の百姓一揆」(3月29日、東京)
今年はトラクター7台に軽トラック21台が参加。栃木県、茨城県、神奈川県、山梨県、千葉県などから、トラクターや軽トラックとともに東京に集った農家たちは、「農家が3人集まれば“しょうがんねえ、しょうがんねえ”ばっかりになって、いっているだけでは何も変わらないと思って今年も参加させてもらった」「この先、食料危機は絶対来る! それを訴えていきたい」「子どもたちのためにも、コメが食べられない時代を私たちの代で終わらせたい」「一人一人の声が確実に未来を変える。どうか力を貸してほしい」と一言ずつ力を込めて挨拶した。
千葉県の酪農家は「ここに集まった人の共通の思いは“日本の食と農を守ろう”ということだと思う。農業者は日本の国民のなかでも割合として少なく、声を上げてもなかなか届かない状況があるが、それを昨年の百姓一揆は塗り替えた。少し農水予算が増えたり、トランプ大統領と石破前総理の関税交渉でも最悪な方向には行かなかった。それはわれわれがここで頑張って声を上げ、ニューヨークタイムズに写真を載せたといったことが必ず影響していると思う。声を上げることに意味がないことは絶対にない。納得いかないなら声を上げ続けることが必要だ」と呼びかけた。
初めてドライバーとして参加した栃木県の男性は、「3年前まで無農薬でコメをつくっていたが、今は派遣社員として工場で働いている。でも心は農家だ。農家ができなくなったのもすべてが政治のせいだとは思っていない。自分の経営努力が足りなかったかもしれない。しかし、戸別補償があれば少しは違う結果になっていたと思う。農家を守らない国は滅びる。食料自給できない国は滅びると思う。頑張ろう」と呼びかけた。
提灯行列の先導トラクターを担当した浜松市の農家は、昨年3月30日、令和の百姓一揆と同じ日にアメリカのヘグセス国防長官が来日し、台湾を含む西太平洋有事のさいに日本が前線に立つと明言したことにふれ、「本当に農家の離農が進んでいて、昨年のコメ高騰もまったく新規就農者が増える状況になってはいない。今、ホルムズ海峡の封鎖で石油が入ってこなくなっているが、それ以上に台湾有事が起これば、中国は日本の最大の貿易の相手国であり、日本の国民は本当に飢えることになると思う。そうなってからでは遅い。そのためにも今、声を上げていかなければならないと思っている」と語った。
昨年の令和の百姓一揆ののち、参議院選挙で野党各党が農業の所得補償を政策に掲げ、来年度からは中山間地域の補助金拡充がおこなわれるなど、徐々に動きがあらわれていると強調。「提灯は五穀豊穣や自然への感謝など、お祭りで使われた伝統的なツール。それに現代の農業に必要なトラクターというツールを合わせることで、過去と現在をつなぐという意味がある。その灯を絶やさないよう未来につないでいくという意味が込められている。この灯を未来につなげるよう、絶やさないよう声を上げていきたい」と挨拶した。
最後に、山田正彦元農林水産大臣が挨拶。「日本も欧米並みに赤字の農家に所得補償をする。まさに令和の百姓一揆。みんなで日本の農業のために頑張ろう」と力強く呼びかけた。
トラクターと提灯行進 「みんな立ち上がれ」

「農家の所得補償を!」と訴えながら力強く進む提灯行進(3月29日、東京)
午後4時から、声援に見送られながらトラクター6台と軽トラック21台が出発。およそ1時間後、提灯やのぼり旗を掲げた人の行進が続いた。「農家に補償を 所得の補償を」「農業を守ろう」「農村を守ろう」「国産守ろう」「お米を食べよう」「今動かなくちゃ農業守れない みんな立ち上がれ 今が正念場」などのコールを響かせながら、表参道、原宿駅前を通り代々木公園までの約3㌔を行進。沿道からも注目を集め、店から出て行進を見守る人、手を振る人やスマートフォンなどで撮影する人の姿もあった。
昨年も参加したという広島県の女性は、「今日、会場に来るまでに乗ったタクシーのドライバーもこの周辺で農家をしている人だった」と話し始めた。
続けて、「明日は朝3時から田植えの準備をするそうだ。長男が亡くなり、だれが継ぐかでケンカになったという。普通は土地は価値があるが、農地は売れず、人口減少でよけいに利用価値が下がっている。さらに農業をやめる人から頼まれるので、1人がたくさんの田んぼをつくらないといけないからしんどいと話していた。農機具も、資材も燃料代も高くなっている。農業をすることが農家の喜びに結びつかなくなっている。先祖伝来の土地を荒らすわけにはいかない、近所に迷惑をかけるわけにはいかないから仕方なくという状況だ。ここで希望が持てることが大事だ」と話した。「春は巡りくるけれど、一つとして同じ春はない」とは農家の言葉だという。「ベテラン級の農家でも手を抜くことはできないし、新規就農で簡単に農業ができるようになるものではない。今日の一揆でみんなに気づいてもらうきっかけになってほしい」と語った。
新潟県の農家は、「コメが高い、高いといっているが、5㌔4000円。生産費はそんなものではない」と話した。25年産米の価格上昇で少し借金を返すことができ、ほっと一息と思ったら、イラン侵攻で資材価格が軒並み上昇する事態になっているという。「百姓の平均年齢は68歳。圧倒的多数が70代だ。このままでは百姓はいなくなり、それ以上に地域がなくなってしまう」と話した。新潟でもこの冬、大雪で屋根がつぶれ十数人が死亡したという。「箒で掃けるさらさらの雪が温暖化で湿った雪になっていることもあるが、年をとって雪下ろしができない。人を頼むと“10日待ってくれ”といわれ、その間に屋根が持たずつぶれてしまう。雪で人が死ぬことなど以前はなかったことだ。農村の問題は食料自給の問題でもあるが、それ以上に地域の問題だ」と語った。
江戸時代の義民として知られる佐倉惣五郎の地元から来たという千葉県のコメ農家は、「400年のときをこえて立ち上がらないといけないと思って参加した。昨年、コメを通じて消費者も注目した。生産者も消費者と直接つながるのは経営的にもいい。消費者も直接生産者から買うのが一番の安全保障だ。こういう時代になったからこそ、生産者と消費者が直接つながる時代にしていきたい。令和の百姓一揆で呼びかけたいのは、もっと農業のことに興味を持ってほしいということ。少しでも外国から輸入すればなんとかなるという空気を変えなければ、あと5年、10年で自給する力もなくなってしまう。現場はその危機感だ。国は“規模拡大”というが、今やめていく農家の分を残る農家が引き受けるから、黙っていても規模拡大していく状況だ。本当に先のことを考えた農政にしてほしい」と話していた。

軽トラパレードの出発を見送る参加者(3月29日、東京都)

提灯行進は沿道からも注目を集めた(3月29日、東京)

代々木公園に到着した提灯行列(3月29日、東京)





















