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【インタビュー】国際社会は米国とイスラエルの違法な軍事侵略への非難を 駐日イラン大使 ペイマン・セアダット氏

(2026年3月30日付掲載)

米軍のミサイル攻撃を受けたイラン南部ミナブの女子小学校での捜索活動。女子児童ら175人以上が死亡した(2月28日)

 米国とイスラエルによるイランへの大規模攻撃が始まって1カ月を迎える。学校や病院、インフラなど民間施設を狙った攻撃が続くなかイラン国内では3月27日現在、死者2000人、負傷者2万人(イラン保健省発表)にのぼる被害が出ており、戦闘の激化は原油輸送航路ホルムズ海峡を不安定化させ、世界経済にも深刻な打撃を与えている。事態の早期収束が求められているものの、日本のメディア報道はトランプの支離滅裂なSNS投稿や発言にもとづく米国側からの視点に比重が置かれ、イラン側の主張に触れる機会は極めて少ない。本紙は3月24日、昨年7月に続いて駐日イラン・イスラム共和国大使のペイマン・セアダット氏に単独インタビューをおこない、この戦争に対する見解を聞いた。(※は編集部注)

 

インタビューに応じるペイマン・セアダット駐日イラン大使(24日、東京)

またも破壊された外交のテーブル

 

 質問 昨年6月(12日間戦争)に続き、2月28日から米国とイスラエルはイランへの大規模な軍事攻撃を開始し、現在に至るまで出口の見えない戦争状態が続いている。まずこの戦争への所見と国際社会に訴えたいことを聞かせてほしい。

 

 セアダット大使 単独インタビューの機会をいただき、感謝申し上げる。

 

 昨年6月と現在の状況を比較することは重要だ。昨年6月の攻撃は、いわゆる「核問題」の解決に向けたイランと米国の間接協議の最中におこなわれた。第6回目の協議の2日前、イランはイスラエルからの爆撃を受けた。これは外交のテーブルをも攻撃するという許しがたい暴挙だ。そして米国もこの対イラン攻撃に加担した。

 

 新たな状況ではあるが、2月28日の大規模攻撃もまさにイランと米国の交渉の最中におこなわれた。その2日前の第3回核協議(於スイス・ジュネーブ)では、昨年6月の交渉時よりもより良い合意が手の届くところにあった。

 

 二つの攻撃に共通するのは、両国の外交協議中というタイミングでおこなわれ、外交そのものが攻撃され、外交の成果である合意の成立が阻止されたということだ。

 

 そして、いずれの攻撃も正当な理由のない、いわれなき攻撃だ。すなわちイランの核開発の「差し迫った脅威」もなければ、ミサイル開発の「差し迫った脅威」もない。そこにあったのは、外交の成果として実を結ぼうとしていた平和的解決の合意だった。

 

 三つ目の共通点は、国際法ならびに国連憲章の著しい違反だ。とくに主権国家への武力行使を禁じた国連憲章2条に明白に反している。

 

 さらに付け加えれば、昨年6月の攻撃でトランプ米大統領は「無条件降伏」をイランに突きつけた。しかし、12日後にそれは「無条件停戦」の懇願へと変わった。今ふたたび彼はイランに対して「無条件降伏」を要求しているようだが、仮にトランプ氏が「無条件停戦」を懇願したとしても、われわれはそれを受け入れるつもりはない。

 

 それは停戦を受け入れて交渉を再開したとしても、その最中に軍事侵略がおこなわれるパターンがくり返される可能性があるからだ。イランが歩んだ真摯な外交の道は、幾度となく同じ者たちによって閉ざされてきた。われわれは決して戦争を望んでいるわけでも、戦争の終結を望んでいないわけでもない。しかし、停戦を受け入れた数カ月後に軍事侵略がくり返される状況は看過できない。

 

 長周新聞の読者の皆さんには、この重要な点をご理解いただきたい。今われわれが求めているのは、イランに対する軍事侵略を保証された形で完全に停止する――この一点だけだ。つまり、このような軍事侵略は未来永劫あってはならず、まして数カ月後、数年後にふたたび起きてはならないということだ。これはイランのみならず中東地域ひいては国際社会にとって重要なことだ。一つの当事国が、他の国や地域、さらには世界経済を常に脅かすことを許してはならないということだ。

 

 だからこそ、わが国イランは決然たる意志をもって自衛権を行使することを決定した。この軍事侵略が完全かつ恒久的に停止されるまで、被害国であるわが国は断固として自衛せざるを得ない。これはわが国の力強く、揺るぎない決意だ。

 

 同時に、国際社会にも果たすべき役割と責任があると考える。イランへの違法な軍事侵略を保証された形で完全に停止させるのは、国際社会の責務だからだ。もし国際社会がそれを実現できるのであれば、わが国は必要な検討をおこなう。どんな国も自国が違法な軍事侵略を受けながら、自衛権も行使せず、見て見ぬ振りで済ますことはできないはずだ。

 

米国とイスラエルの軍事侵略に抗議するため街頭に集まったイランの人々(3月3日、テヘラン)

 質問 「保証された形での軍事侵略の完全停止」とは、具体的にはどのようなことを指すのだろうか?

 

 セアダット大使 わが国としては、決然と力強く祖国を守ることだ。わが国は軍備の面では完全に西側諸国の制裁(禁輸措置)下にあり、外部からの支援を受けることなく独自の防衛能力を構築してきた。防衛装備や兵器はすべて国産だ。

 

 そして、イラン国民の徹底抗戦の意志は確固としている。イランの人々が抵抗の意志を示すために街頭でデモ行進をおこなったさいにも米国とイスラエルは空爆をおこなったが、誰一人として逃げ惑うこともなく、行進の列から外れなかった。

 

 イランの立場は、あくまでも断固とした自衛であり、それはこの軍事侵略が完全停止されるまで続けざるを得ない。もし軍事侵略が完全に停止されるのであれば、わが国が防衛措置を講じる必要もなくなる。

 

 国際社会がどのようなメカニズムやスキームで戦争終結に持ち込むかについては、私から申し上げることはできない。ただし現在、トランプ氏が事態の過激化をおし進めているがために、多くの国々がイランに連絡してきている。仲介を買って出ようとする国も多く、イラン外相のもとへの連絡も増えている。そうした前向きで建設的なとりくみをわれわれが歓迎しないわけではない。一つ一つの仲介のための提案に対して、わが国は適切に回答している。そして情勢を注視している。

 

 一方で、攻撃が始まってから現在までの24日間、いかなる意思疎通も米国側とはおこなっていない。トランプ氏がSNSに投稿したこと(イランとの交渉開始等)はまったく事実無根だ。彼が理解しているのは仲介国のとりくみかもしれないが、それもわからない。国際社会の心ある国々の心配も非常に増幅しているためイランへの連絡や打診も非常に増えているが、その心配はわが国によって引き起こされたものではない。

 

 わが国は決して他国のインフラを標的にすると脅迫したことはない。それはトランプ氏がイランに対しておこなっていることであり、その脅迫に対してわが国はこうのべている。「もしそのようなこと(イランの発電所への空爆)をするのであれば、それは非常に深刻なイランの対抗措置に直面するであろう」と。

 

 この戦争の構造は、トランプ氏の一方的で過激な攻撃に対して、イランが対応を余儀なくされている関係であり、近隣の湾岸諸国が心配を募らせているのはその結果だ。

 

イラン攻撃の意図とは 覇権と地域支配の野望

 

 質問 今回のイラン攻撃の目的について、トランプ米政権の発言は二転三転している。米国やイスラエルの狙いをどのように見ているか?

 

 セアダット大使 大きな観点で見れば、これらは覇権の問題だ。表向き語られるイランの核疑惑やミサイル能力などへの懸念は、すべてその覇権を正当化するための口実にすぎない。

 

 今やトランプ氏は、同盟国であるか否かを問わず、すべての者に対して「無条件降伏」を迫っている。経済戦争や軍事的な威嚇を通じて、世界をみずからの意のままに屈服させようとしている。それは自分の意に沿わない発言をした側近をすぐにクビにすることにもあらわれている。たとえば米国情報機関トップのトゥルシ・ギャバード国家情報長官は、米国議会で「昨年6月以降、イランが核兵器を製造している証拠はない」とのべたが、トランプ氏はすぐにその発言を否定した。同じく米国においてテロ関連の情報分析をおこなう中心組織「国家テロ対策センター」のジョー・ケント所長も「イランはわが国に差し迫った脅威を及ぼしていなかった」との声明を発して職を辞した。

 

 イスラエルにあるのは地域支配の野望、すなわち「大イスラエル構想」だ。ネタニヤフは地域支配を確立するうえで唯一の障害となっているのがイランであるため、イランの弱体化を狙っている。もしイランが徹底抗戦しなければ、ネタニヤフは別の国にも同様の攻撃を仕掛けていくだろう。しかし、残念ながら域内諸国はこの事実を認識しながら、事実に即さない対応をしているといわざるを得ない。

 

 米国とイスラエルは、数十年にわたり二つの目的を追求してきた。一つはイランを絶対的な悪魔と見なすこと(Demonization)、もう一つはイランを安全保障上の脅威と見なすこと(Securitization)だ。この目的達成のためにあらゆる事例を利用するため、彼らのナラティブ(語り口)は日々刻々と変わっていく。

 

 本当にイランが核兵器を開発製造していたのであれば、わざわざ今年2月に米国側と交渉のテーブルに着く必要はない。事実、仲介国オマーンのバドル外相は「今年2月26日の協議で得られた合意は、2015年のイラン核合意よりもさらに厳しく(核開発が)制約される画期的な内容だった」とのべている。なぜその合意成立を目前にして、わが国への攻撃が仕掛けられたのかということだ。

 

 質問 米国家テロ対策センター所長を辞任したジョー・ケント氏は声明で「米国はイスラエルによって破滅的な戦争に引きずり込まれた」とのべているが、その理解は正しいのだろうか?

 

 セアダット大使 私もそれに同意する。彼は米国内18の情報機関は「イランは核兵器の製造をおこなっていない」とする総括的な声明を出したとものべている。イスラエルが米国をイラン攻撃へ誘導する流れは、何十年にわたりイスラエルが仕掛けてきた罠(わな)だ。彼らは常に米国を中東の戦争に引きずり込もうとしてきた。

 

 昨年6月のイラン攻撃は12日間という短期間で終結したが、イスラエルはトランプ氏を冒険主義に導くことに成功し、より危険で出口戦略のない泥沼に引き込んだ。イスラエルはこれまでもあらゆる合意のチャンスをみずから破壊してきた。それは彼らが戦争状態の継続を望んでいるからだ。だからこそイランは軍事侵略の完全停止を求めている。

 

 たとえば最近、イラン南部のサウスパース(世界最大級の埋蔵量を誇る天然ガス田)をイスラエルが爆撃した。イランとカタールが共同開発した基幹的エネルギー施設だ。攻撃はトランプ氏が戦争から撤退する可能性が報じられたタイミングで実行された。米国を戦争から退かせないためにイスラエルが仕掛けたと考えられる。まるで蜘蛛の巣にかかった虫のように、あがけばあがくほど縛られていく関係だ。

 

 しかし、だからといってトランプ氏が免罪されるわけでは決してない。「ネタニヤフに騙された」などといういいわけは通用しない。われわれは軍事侵略の完全停止とともに、イランが被った損害の賠償を求めている。

 

平和を脅かす米軍基地 不当な侵略の拠点に

 

 質問 一部報道では、イラン側の要求として、湾岸諸国にある米軍基地の閉鎖が含まれていた。その真意は?

 

 セアダット大使 非常に重要な視点だ。現在イランに対する多くの攻撃は、対岸の湾岸諸国内にある米軍基地を拠点におこなわれており、それにより彼らがペルシャ湾上空の制空権を握っているからこそイランへの攻撃が可能になっている。

 

 先日、イランの石油積み出しの重要な拠点であるカーグ島が攻撃を受けたが、これには地対地短距離ミサイル「ハイマース」が使用された。このミサイルがどこから発射されたかは容易に確認することができ、イランの近隣国領内から発射されたことがわかった。

 

 また、イラン南部ケシュム島の淡水化プラントを標的にした攻撃も、別の近隣国内から発射されたミサイルによるものだった。だからイランは自衛のために、対岸諸国の米軍基地やそのアセット(資産)に対して報復攻撃をせざるを得なかった。標的はあくまでも米軍基地とその資産だ。

 

 近隣国同士が攻撃し合う――この悲惨な状況を防ぐために何が必要だろうか。3月11日、湾岸諸国は国連安保理に付託し、イランを非難する安保理決議2817号を採択させた。ここでは湾岸諸国が自国内への米軍基地の駐留を許し、そこから米軍がイランを攻撃することを許可していることが証明された。さらに彼らはイランに賠償まで求めている。

 

 しかし、逆にわれわれが問いたいことは、なぜこれらの湾岸のアラブ諸国はイランへの不当な攻撃のために自国内の米軍基地を使わせるのかということだ。米軍の攻撃で殺されたミナブの児童たち165人を含むイラン国民の人権や生命は、これら湾岸諸国の領土を活用する形で侵害されているのだ。逆の立場であれば彼らはそれを黙認するだろうか? 国内に第三国の軍事基地を置くならば、近隣諸国への攻撃にそれを使わせない責任が伴うはずだ。

 

 わが国はいかなるときにも近隣諸国に対して攻撃したことはないが、不当な攻撃に対しては自衛権措置を講じざるを得ない。この決議の提案国は、まず自国の領土から無辜(こ)のイラン市民に対する攻撃が絶え間なくおこなわれている事実と向き合わなければならない。

 

    

 質問 湾岸諸国に着弾したミサイルがイラン発のものではないケースも報じられている。いわゆる「偽旗作戦」(自国の犯行を敵対勢力の仕業に見せかける行為)も横行しているのだろうか?

 

 セアダット大使 偽旗作戦は中東地域ではよくおこなわれることだ。現実にイランが出所ではない多くの出来事が起きている。ミスによって起きる場合もある。たとえば湾岸国バーレーンは、当初「イランのミサイル攻撃を受けた」と主張していたが、最終的には米軍のパトリオットミサイルによって居住地が攻撃されたことを認めた。

 

 湾岸国は戦略的にも米軍基地の存在を捉え直さなければならない。広い視野に立って現状を見るなら、それはイスラエルの「大イスラエル構想」に与することにほかならない。それは湾岸諸国の国益に資するものではない。今回の戦争は、単にイランに対する戦争ではなく、対地域戦争でもある。イスラエルの狙いは、イランの弱体化であるとともに地域の弱体化なのだ。

 

湾岸地域が抱える課題 共存の阻害要因は

 

 質問 イラン攻撃開始の前日、仲介国オマーンのバドル外相は米『CBSニュース』に出演し、「核以外の問題はすべてイランと近隣諸国との地域対話の枠組みの中で議論する方向で合意できる」とのべていた。昨年7月の本紙インタビューで大使も「イランは域内諸国による集団安全保障体制の構築を目指している」とのべておられたが、今回の戦争はそれにどんな影響を与えるだろうか?

 

オマーンのバドル外相㊨とイランのアラグチ外相(2月)

 セアダット大使 まず第一に、国際社会はオマーンのバドル外相への敬意をもっと示すべきだと思う。称賛されるべき彼の平和的解決に向けた心からの尽力をわれわれは忘れることはない。今回彼が果たした役割は、今後イランの歴史に刻まれることだろう。他の国々には彼を模範にしてもらいたいと願う。一国の外相として、これほどまで誠実に中東地域全体の平穏と安定化のために献身される姿をわれわれは驚嘆の目で見ている。

 

 彼は2月27日の『CBSニュース』で、米国側に対して「数日間の猶予をもらえれば、必ず良い合意を成し遂げることができる」と訴えていた。オマーン、そしてイランが意図したのは双方向の合意だ。そこにはイランの核問題だけでなく、イランに対する制裁の解除も含まれていた。その合意こそが湾岸地域の安全を約束するものだった。

 

 ただ現在、情勢は非常に複雑な様相を呈している。私の考えは変わっておらず、地域の永続的な安定のためには域内諸国による集団安全保障が必要だと考えている。しかし米軍のプレゼンス(域内駐留)がこの地域の安定を損ねる要因になっている。今回の戦争では、湾岸諸国の米軍基地が地域の安定と平和に寄与しないことが証明された。

 

 地政学的にみても、われわれと近隣諸国は助け合わなければならない関係にある。たとえ意見の対立があっても共存しなければならない関係だ。

 

 それは政治的に重要度が低い問題にもいえる。たとえばペルシャ湾の水汚染問題について考えるなら、ある地域で海水汚染をもたらす公害が発生すれば、その影響はすべての沿岸国が被る。だからこそ平時から協力と調整が常に必要になる。同じことが安全保障についてもいえる。お互いにこの地域から出て行くことができない以上、良い外交関係を進めていかなければならない。しかし、それは国内に米軍基地を置き、それを近隣国への攻撃に使わせることではない。今回の出来事の後、このアプローチは変わるべきだと思う。

 

 なによりもすべての域内諸国は共通の利益を分かち合うべきであり、一方の国だけが利益を享受し、他方の国の権利を奪う状況を作ってはならない。この構造が常に不安定化をもたらす。利益の共有こそが集団安全保障の基本的な考え方であり、それによって地域全体の経済の発展や福祉の充実がもたらされる。

 

 そのための新しい体制は、安全保障という大きな議題から始まる場合もあれば、海水汚染対策など具体的問題から始まる場合もあるだろう。また、この地域の平和と安定のために日本のような国々に協力を求めることもできる。大事なことはすべての国が等しく利益を得ることであり、それはホルムズ海峡についてもいえることだ。

 

600の学校が標的に イラン国内の被害状況

 

 質問 日本ではホルムズ海峡情勢や湾岸諸国の被害がセンセーショナルに伝えられる一方で、イラン国内の被害状況が伝わってこない。イスラエルや米国の攻撃はイランのどこを標的にし、それによって人々の生活はどんな変化を強いられているのだろうか?

 

米国とイスラエルによる空爆がテヘラン各地の住宅街を襲い、破壊された家屋のガレキの中で救助隊員が生存者を捜索している(3月、イラン赤新月社)

空爆犠牲者の棺を担いで弔うイランの市民(3月18日)

 セアダット大使 標的になっているものの多くは民間施設や市民だ。攻撃を受けた学校だけでも450以上にのぼる(※インタビュー後の3月28日、イランのアラグチ外相は国連緊急人権理事会で、イラン全土で600校以上の学校が攻撃によって破壊され、1000人以上の児童と教師が死傷したと発表した)。

 

 イランの女性や子どもを含む市民が爆撃にさらされ、耐え難い苦しみの中にある。イラン赤新月社(医療人道支援団体)が3月22日に発表した直近の統計によれば、この侵略戦争が始まって以来、アメリカとイスラエルによって8万1365件におよぶ民間施設が攻撃を受けている。その内訳は以下の通りだ。

 

▼居住施設…6万1555件
▼商業施設…1万9000件
▼保健・医療センター…275カ所
▼学校…498校
▼赤新月社支部・拠点…17カ所
▼緊急車両…48台
▼救急車…43台

 

 戦争犯罪であり、人道に対する罪というべきものだ。ミナブのケース(※女子小学校が米軍のミサイル2発の攻撃を受けて児童165人が死亡)は最も重大な事案だが、これが唯一ではない。

 

 また、インドでおこなわれた国際行事(国際観艦式)に参加した後、帰途にあった無防備のイラン艦船が米軍の魚雷攻撃を受けて沈没し、124名以上の乗組員が死亡・行方不明になった。米軍はイランから4000㌔離れた場所までも戦場に変えてしまった。国際行事には米国も参加していたのでイランの艦船が無防備であることを知っていたにもかかわらずだ。トランプ氏や戦争大臣はこれを自画自賛した。

 

 イランの重要な石油積み出し拠点であるカーグ島への攻撃も、彼らは「気晴らしのためにやった」とのべた。決して容認できるものではない。

 

 市民生活に関しては、イランの指導部は先を見越して必要な対策を打っていた。通常多くの国々では戦争が起きると食料難に陥るが、イラン国内ではスーパーの棚から品物が消えるような状態にはなっていない。パニックさえ起きていない。しかし、彼らは親族や親友を失った苦痛を抱えながら、本来であれば一番楽しいはずのノウルーズ(イラン暦の新年)を傷心のなかで迎えている。

 

 しかし、人々の顔に敗北感は見られない。イランの人々にとって、日常品や食料よりも大切なことはお互いの助け合いだ。イラン国民は平和を愛する気高い精神を持っているが、同時に忌まわしい侵略に対してはどんな困難に耐えても抵抗する。数千年の文明に裏打ちされた人々の団結や連帯感が非常に高まっている。

 

 侵略者たちは1月にテヘランで反政府デモが起きたとき、「抗議を続けろ。すぐに助けに向かう」(トランプ)などとSNSで市民に呼びかけていたが、実際には彼らが望んだような政権転覆の動きは起こらなかった。だからこそ彼らは、今度はみずからの手でイランの市民を殺傷しているのだ。

 

米イスラエルの爆撃を受けた民間施設から負傷者を運び出す人々(3月18日、イラン)

非難されるべきは侵略者 世界大混乱の元凶

 

 質問 この戦争の結果、ホルムズ海峡の通過が困難になり、世界的な原油価格の高騰を招いている。ホルムズ海峡をめぐるイランの立場を聞かせていただきたい。

 

 セアダット大使 まず第一に、ホルムズ海峡は決してイランによって封鎖されているわけではない。米国がホルムズ海峡を含む地域全体を戦場に変えてしまったのだ。

 

 ホルムズ海峡を含む地域は、米国とイスラエルによる軍事侵略が始まる前までは安定していた。ホルムズ海峡のイラン側海岸線を空爆したことにより、この地域を不安定化させ、世界の貿易とエネルギーを人質にとっているのは侵略者自身にほかならない。

 

 確かにわが国は自衛措置として、われわれを攻撃する米国、イスラエル、そしてこれらの体制に加担する国々の船舶に対しては通過を認めないが、それ以外の国々に関してはその限りではない。すでにイランと事前調整のうえで海峡を通過している国の船舶もある。それがホルムズ海峡の現状だ。

 

 質問 イランのアラグチ外相は『共同通信』の取材(20日)に「日本関連船舶のホルムズ海峡通過を認める用意がある」とのべた。一方、同時期に訪米した日本の高市首相は、トランプを称賛し、他の欧州5カ国とともにイランのみを非難する共同声明に署名した。これらはイランの対日感情に変化を与えていないだろうか?

 

 セアダット大使 われわれが常にいっていることは、イランと日本は1000年以上にわたる伝統的な友好関係があるということだ。ホルムズ海峡通過に関するイランの見解は、アラグチ外相が『共同通信』のインタビューで明白にのべている通りだ。

 

 イランにとって日本との関係は非常に重要であり、いまもなお日本はイランにとって信頼に値する国であると考えている。とくにイランにおいて日本は原子爆弾の被害を受けた唯一の国であり、その苦しみのなかから戦後復興を成し遂げた国として非常に尊敬されている。さらにイランとは1000年以上にわたる人と人との良好な交流の歴史がある。だからこそ両国関係は非常に大きなポテンシャル(可能性)を秘めていると考える。この可能性は、平時においても、厳しい状況においても活用されなければならない。

 

 イランと日本との間には、歴史上特筆すべき二つの出来事があった。


 一つは、1953年の日章丸事件(※イランの石油国有化に反発したイギリスが海上包囲網を敷くなか、それを突破して出光興産のタンカー「日章丸」がイラン産原油を買い付けた)

 

 もう一つには、2019年の安倍晋三首相のテヘラン訪問(※トランプ政権のイラン核合意からの離脱で米イラン間の緊張が高まるなか、日本の首相として40年ぶりにイランを訪問し、最高指導者ハメネイ師と接見して仲介を試みた)がある。

 

 このようなことからも二国間関係は非常に強固なものだと考える。そのような潜在力がもっと活用されるべきであり、このような事例が今後ますます増えていくことを願っている。とくに厳しい環境下においてのそれは両国の友好関係の永続化に寄与するものだ。

 

 質問 イランや中東地域の人々のなかには広島、長崎への深い同情があり、それが親日感情の根底にあるといわれる。同じ暴力によってイランの人々が危機にあるとき、われわれ日本の政府や市民社会に何を求められるか?

 

 セアダット大使 われわれが日本とイランの伝統的な友好関係について語るとき、それは政府レベル、市民レベルのすべてを包含する。政府同士も相互の信頼関係は強いものがある。当然ながらすべての事柄について双方が同じ見解であるとは思わない。現在の状況についても、日本政府に期待することはある。とくに国際法および国連憲章に違反するこの軍事侵略を非難していただきたい。不当な戦争を完全に終結させるうえで建設的な役割を果たしてくれることを期待する。ただし、それができないからといって直ちに両国の友好関係が損なわれるわけではない。

 

 しかし今注目されるべきは、軍事侵略を阻止させようとする動きが日本国内で多く見受けられることだ。このような動きがなければ、トランプ氏は各国が自分のおこないを受け入れたと勘違いするだろう。不正に対する無関心と沈黙はいかなる安全も平和ももたらさない。

 

 とくに市民社会において、この20数日間、侵略戦争に反対するすばらしい活動が各地でおこなわれていることを私はSNS上で見てきた。東京や日本の各地方で、反戦、反核を願う皆さんが立ち上がり、イランに軍事侵略した米国とイスラエルを非難し、抗議する行動が連日のようにおこなわれていることに非常に感銘を受けている。

 

 また、世論調査においても82%の人々が対イラン戦争に反対している。これらのことは二国間関係の歴史において、イランの人々の脳裏に刻まれ、決して消えることはない。長周新聞の読者の方々にも心から感謝したい。イラン国民が極めて厳しい環境にあるなかにおいて、これほどまでにイランの人々との連帯の心を示してくださったことに感謝している。

 

 戦争はどんな地域や国で起きたものであっても非常に醜い行為だ。その深い苦しみの中にあるときこそ、それがどれほど遠く離れた場所からであっても、示された友情は深い絆となる。

 

 わが国の国民は何十年間にわたり戦争と同様の苦しみを味わい続けている。ご想像いただきたい。西アジア地域が欧米の兵器であふれ返り、米軍基地が点在するなかで、わが国は一国だけでこれら最新鋭の精密兵器との対峙を余儀なくされている。徹底抗戦は非常に厳しいものであるが、われわれは尊厳をもって毅然とそれに立ち向かう。わが国にとって尊厳に勝る財産はない。われわれが生み出したものはすべて、われわれの尊厳をかけて生み出したものであり、どんなことがあってもトランプやネタニヤフに売り渡すことはない。

 

 次回インタビューをお受けするさいには、この戦争が収束し、平和が訪れていることを願っている。しかし、イランはこれからも永遠にイランであり続ける。より力強いイランを目指していく決意は揺らぐことはない。そして、世界の人権の枠組み全体が深刻な危機に瀕している今、全世界が声を一つにして、この忌まわしい軍事侵略を非難し、中止させるよう彼らに迫ることを切に願っている。

 

空爆によって破壊された家屋のガレキの中で捜索活動をおこなうイラン赤新月社の救急隊員たち(3月)

米国とイスラエルの攻撃を受けたイラン南部ミナブの女子小学校での犠牲者の葬儀には多くの人々が参列した(3日)

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