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断水から2週間 疲労する高齢者へのケア求められる 水を届ける若者も

夜間も給水所には多くの島民が通っている(6日)

 ドイツの貨物船が大島大橋に衝突する事故が発生して2週間が経過した。橋に設置されていた送水管が破断したことで周防大島町では全島断水が続いており、島民約1万5000人の生活に損害を与えている。7日からは島内にある配水池へ送水するための工事が始まるが、工事が完了して断水が解消するのは12月上旬の見込みとなっている。断水生活が長引くなかで、とくに高齢者のあいだで不便な生活による疲労が色濃くあらわれている。

 

 島内では9カ所で午前9時から午後8時まで給水車による臨時給水をおこなっている。県内全域の市町から行政職員らが給水応援に駆けつけており、仮設送水管が設置されたこともあって、事故直後に比べれば給水量は増えている。給水所には朝から晩まで水を求める島民らが通っているが、毎日のように給水所へ通えない高齢者も少なくない。

 

 仕事終わりに給水所へ来ていた20代の男性は「自分は柳井市に住んでいるが、2日に1回給水所へ来て大島町内の実家へ水を運んでいる。実家の周りには車が運転できないお年寄りも多いため、余分に水をもらってその人たちのために水を配って歩いている。島の人たちはみんな井戸水を分け合ったりしながら、できるだけ不便がないように生活しているが、断水がこれだけ長引いては助け合いの生活にも限界がある」と話していた。

 

 周防大島町は瀬戸内海で三番目に大きな島だ。山間部にも多くの人人が住んでおり、高齢者も少なくない。高台に住む高齢女性は「腰が悪く、家の中では手すりをつたわなければ歩けない。この体ではとても給水所まで水をとりに行けない。井戸水が出るため炊事には困っていないが、飲み水がないため井戸水を沸騰させて利用している。一番大変なのが風呂だ。車がないので風呂屋にも行けない。台所から出る井戸水をやかんで沸かし、それを水で割って冷ましてから風呂場まで運んで体にかけている。湯を運ぶのも一度に多くは抱えられないし時間がかかるので思うように体も洗えない。そうこうしているうちに体が冷え切ってしまう。断水してから2週間こんな生活を続けてきたが、さらにあと1カ月は断水が続く。これからもっと寒くなるのでいつ風邪をひくか、体を壊すかわからない。この苦労についてだれにも文句をいうことができないのがもどかしくてしかたがない」と語っていた。

 

 50代の男性農業者は「自分は車を持っているのでほぼ毎日給水所に通っている。島には昔からある井戸を各家庭で使っているケースが多いが、当たり前に水を得られた生活に戻れない状態が続いているので、とくに高齢者が苦労している。今回の事故で“島に住んでいる”という認識がいつの間にかなくなっていたことに気づかされた。一本の橋が損傷を受けるだけで全島に被害が及んでおり、これを機に効率化や一極集中型の考え方について見直す時期が来たのではないかと思う。島では昔は地下水による簡易水道を利用していたが水道を広域化してからは元の設備はあるが、いざというときに使えない状態になってしまっている。1年に2度も周防大島は断水を経験している。今後はバックアップ体制も整備して維持管理していくように改善してほしい」と話していた。

 

損傷が激しい大島大橋の事故部分(山口県提供)

 損傷を受けた大島大橋では応急復旧工事がおこなわれている。損傷個所が高所であることからこれまではカメラの画像や目視で損傷の把握をしてきた。貨物船のクレーンやマストの接触により橋を支えるうえで最も重要な外枠の橋桁に亀裂や曲がりが生じているという。通行規制も続いており、6日も強風によって午前中から一時通行止めとなった。

 

 今回の事故による断水で、住民生活や農漁業をはじめ観光業など経済的な打撃を含め被害は広範囲に及んでいる。周防大島町や山口県としても事故を起こした貨物船を所有するドイツの海運会社オルデンドルフ・キャリアーズに対して賠償を求めていくとしている。だが今回のような事故やそれにともなう被害は国内でも前例がないうえに、今後この事態が長期化することでさらに被害の規模・範囲が拡大することは必至となっているため、被害状況の把握なども難航しているという。

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