いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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庶民の力で世直しに確信 『雷電』下関公演

劇団はぐるま座創立60周年と下関移転を記念する『動けば雷電の如く―高杉晋作と明治維新革命』下関公演(主催/同実行委員会、後援/東行庵、下関市、下関市教育委員会)が20日、昼と夜の2回公演として下関市民会館でおこなわれた。会場には市内各地から農漁業者、中小商工業者、労働者、小・中学校の教師、医師や介護関係者、下関市大・梅光学院大・水産大学校などの教員や学生、小・中・高校生、文化団体関係者、吉田・新地・長府をはじめ維新の史跡を守ってきた人人など、はじめてはぐるま座の舞台を見る人を含め合計約1000人が参集。全国初演となった4年前の公演とくらべても見違えるようにとぎすまされた舞台、気迫のこもった俳優の演技とともに舞台美術、音楽などとのアンサンブルに終始引きつけられ、後半になるにしたがって拍手が高まり会場は熱気にあふれた。終演後は「これでいけば現代の世直しができる」「生きていくパワーをもらった」「現代の高杉と奇兵隊出でよ」と熱く語り合われるとともに、「小中学生など若い世代に見せるよう、教育の場で努力してほしい」「全国行脚して全国の人たちに見せてほしい」という要望が多く出されている。
 
 劇団はぐるま座創立60周年 下関移転記念
  維新の誇りを全国に発信

 昼公演には、市内旧郡部を含めた農漁業者や、老人会や自治会関係者、郷土史、詩吟、琴、絵画、俳句、日本舞踊、大学演劇部など文化団体関係者、またこの日の午前中に市内新地地区の高杉晋作終焉の地や桜山神社などの史跡巡りをおこなってきた小中高生平和の会の子どもたちや教師などが参加した。
 はじめに公演実行委員長の海原三勇氏(元下関市中学校PTA連合会会長)が登壇し、次のように挨拶をおこなった。
 「私は今回の下関公演の意義の深さをかみしめ、多くの市民とともに前回以上の成功となるようとりくんできた。とりくみでは“明治維新発祥の地・下関に流れる維新の誇りを蘇らせよう”“下関と日本立て直しの活力に”というチラシで宣伝してきたが、市民の関心・反響が大きく、前回以上の手ごたえを感じてきた。この間、維新ゆかりの地をはじめ敬老会や商店街、介護施設、教育関係者、文化サークルの間でおこなわれた紙芝居では、この芝居を大成功させることが下関の活性化・繁栄につながるのではないかと議論になり、『男なら』を流して市内を巡回する宣伝カーへの反響も大きいものがあった」
 「4年前の下関初演以後、この舞台は山口県内50カ所、全国185カ所で上演され、現在の閉塞状況の社会に負けない世直しの精神を刺激するものとして歓迎されてきた。本公演は4年間を通して練り上げられた新たな舞台を再度下関市民に届ける凱旋公演であり、はぐるま座下関移転事業の一環としてとりくまれてきた。美しい郷土をとり戻すうえで、精神面からの活性化が求められている。私もこれを機会に紙芝居の学校などでの活用を呼びかけ、できるだけ多くの人に見てもらえるよう努力したい。そして本公演が、高杉晋作と明治維新革命を全国に発信する再出発点となることを期待している」。
 大太鼓とピアノの『男なら』が流れるなか幕が開く。馬関攘夷戦争からの復興にたずさわる百姓や町人が口口に安政の不平等条約でみなが苦しめられていることを語り、「徳川を倒して世直しするんじゃったら命をかけるがのう」という一幕一場、続いて高杉晋作が白石正一郎とともに士農工商の身分をこえた奇兵隊を結成する一幕二場など、舞台が暗転するたびに拍手がおこり、維新倒幕運動最大の危機のもとで高杉が「たのむはただ草莽のみ。恐れながら天朝も幕府も、わが藩もいらぬ」という萩脱出場面や功山寺で決起する場面と、会場の集中度は高まっていった。
 そして決起した高杉や奇兵隊の下に米俵を積んだ荷車を引いて農婦らが登場し、奇兵隊士が「戦が終わったらかならず返す」といって証文を渡す場面で「百姓衆がどねぇな苦労をしてこれだけの米を集めたか、わしらにわからんとでも思うちょるんかッ」というと、会場内ではすすり泣きとともに、大きな拍手が送られた。そして最後の「欧米列強の侵略を阻止し、民族の独立を守り抜いた原動力は、まぎれもなく百姓、町人という人民」「明治維新を成し遂げた力こそ、日本民族の誇るべき歴史でなくてなんでありましょう」という場面など、共感の拍手が次次にわき起こった。
 カーテンコールで小中高生平和の会の子どもたちと琴鶴会の代表から花束を受け取ったはぐるま座の代表が「創立60周年を期に下関に移転してきました」というと、会場からの温かい拍手に包まれ、続いて「このエネルギーを全国に届け、全国で現代の世直しの大旋風を起こしていきたい」と決意をのべた。
 夜公演には、市内各地の商店主や医療・介護関係者、労働者、教師など若い世代・現役世代が目立ち、そのほか読み聞かせや子ども教室、スポーツコーチなど地域で子どもの教育に携わっている人たちと小・中学生などが参加した。
 昼・夜公演の終幕後には会場ロビーで感想交流会がもたれたが、「高杉晋作は明治維新の先覚者だ。今国内では政権がころころ変わり信用できない。現代の高杉晋作出でよと思う」「馬関攘夷戦争後の講和談判で、イギリス軍人に“魔王のようだ”といわしめたのは、自分を犠牲にしてでもという精神のあらわれだと思う」「地方でこれだけの舞台をやる劇団は他にない。東京あたりで高い金をとって、後でなにをいわんとしているのかわからないような劇団が多い。これからも頑張ってもらいたい」などの意見が出された。実行委員長の海原氏は「この四年間ではぐるま座は変わり、その成果があらわれた舞台だった。下関・全国の疲弊のなかで、活力を与える舞台であり、下関から再出発して全国に発信してもらいたい。11月の60周年記念集会に向けて、市民のみなさんに支えられる劇団として頑張ってもらえるよう、私も力を尽くしていきたい」とのべた。

 全市的な大運動に発展 『雷電』公演の取組 

 今回の『雷電』下関公演のとりくみは、「明治維新発祥の地・下関に流れる維新の誇りを蘇らせよう」という呼びかけの方向で、市内の各界各層がチラシやチケットを預かって周囲に働きかける市民自身の運動となって大きく広がった。
 市内各地の農業者のところでは、『雷電』の宮崎県川南公演などが反響を呼ぶとともに、「大企業は自分たちのもうけしか考えないが、農業がなくなったらみんなが困るから力をあわせて頑張っている。TPPは農民だけのことじゃない。安政の開国の頃と本当に同じ。農家だけでなくみんなの力をあわせて大きいところから考えないとたいへんなことになる」「ネコの目農政でころころ変わるから展望が見えない。戸別補償制度も自民党になったらやめるはずだ。政府や農協に頼っていたら農家は生きていけない」「農業がないがしろにされて後継者がおらず、荒れた畑ばかりになっている。若い者が農業にかかわれるようにするべきで、なにができるか話しあっているところだ」など活発に語られ、誘いあって観劇しようという動きとなった。自分たちが直面する課題は全国の人人との団結なしには実現できず、全国を結びつけるはぐるま座の役割への期待が高まっている。
 市内の各商店街でも舞台の紙芝居がとりくまれた。商店街では、市内に働く場がなくなりお客も激減、商店街から店舗の撤退が続いていることや、そこにイズミ駅前進出やドン・キホーテ出店がやられることに怒りが語られるとともに、「世の中を動かすのは一部の支配者でなく、農民など名もない人たちだ」「規制緩和に負けてはいけない。みんなの力をあわせてなにかできないか」と論議が広がり、当日は店を休んで参加する人も出た。
 小・中・高校の教師、大学教員、退職教師の参加もめだった。各学校で読み聞かせや子ども教室をやっている人、スポーツクラブのコーチなど、地域の教育関係者のなかでも「子どもたちに明治維新の歴史を伝えたい」ととりくみが歓迎され、それぞれの場所で紙芝居もとりくまれた。市内の小・中学校で明治維新の史跡を巡り、子どもたちがそれをまとめて発表する動きが広がっていることも話題になっている。
 詩吟や琴、絵画、日本舞踊、剣舞などの文化団体も、はぐるま座が東京崇拝の商業主義を一掃し、下関を拠点に人人に役立つ演劇を追求していることに共鳴し、「これからも良い劇を期待している」「末長いおつきあいをしていきたい」とのべている。下関市大や梅光学院大の演劇部の学生たちも、劇団員との交流を通じて、リアリズム演劇の創造やはぐるま座の活動の転換に関心を高めている。ある文化人は「はぐるま座が下関に腰を据えたことをもっと広く知らしむべきだ」と語った。

 アンケートより

 ▼今までの高杉晋作と奇兵隊のなかで最高でした。真の晋作に出会った思いがしました。(90歳)
 ▼今日巷には「維新」を名乗るえせ集団がばっこしています。真の維新は明治維新革命をおいては語れないのです。はぐるま座の公演は、高杉晋作の奇兵隊や諸隊が成し遂げた統一近代国家の夜明けの歴史的意義を劇化した本公演でありました。創業60周年おめでとうございます。この間には幾多の苦難や矛盾点もあったようですが、よくこれを克服して「人民と共に、人民に奉仕する」人民文芸の発展に尽くされた功績は偉大です。これからも正道を堅持して前進してください。(退職教師、83歳男性)
 ▼4年前の下関での公演でも感激しましたが、草莽崛起の精神が見事に舞台に描かれ、一段とグレードアップされています。素晴らしい舞台装置、転換など申し分ありません。「奇兵隊」の精神で今後の日本再建に邁進していきたいものです。(81歳男性)
 ▼劇全体から言葉がはっきりとメリハリがあり、現代の世の中に教訓とする事多し。今後日本がまた下関がいろんな意味で発展できるよう、私は高杉晋作が大好きですが、詩吟の愛好家として心にとどめます。(78歳女性)
 ▼ストーリーの展開がキレが良く、内容も分かりやすく、よく練れた歴史の一場面でした。あたたかい心とやる気を伝えていただき有難う。(71歳男性)
 ▼まさに今の日本の世相です。高杉さんのような方が出てきて今日の世の中を変えてください。本当に大変な時代です。(70代女性)
 ▼「人民安堵」の旗……140年以上たって今、この言葉がズシーンと来てます。本当にすべての人人に訴えかけていることは、いつの世もこのことだということが、今さらながら本当にこの劇をみて、ものすごく感じられてなりません。今この晋作のような大きな人物を産み出して、というか探し出してほしい。最後の晋作の詩が、またとてもよかった。この劇は日本中の人人のために全国行脚してほしい。(63歳女性)
 ▼劇全体にあふれる気迫、私たちを励ます熱いメッセージ、ありがとうございました。演技はもちろん、舞台背景、音楽などとてもすばらしく感激いたしました。雪のなかの決起、イギリスとの交渉など、どれもすばらしかったです。地域子ども教室に来ていただきました。紙芝居はもちろんすばらしかったのですが、公演後のふれあいタイムも子どもたちは楽しかったようです。(60歳女性)
 ▼時折、涙するところがありました。あらためて高杉晋作という人物について深いところを探ってみたい気持ちになりました。全体的に迫力があり、とてもよかったです。「男なら」という民謡についても詳しく知りたい欲求にかられました。(60歳女性)
 ▼私はお店で紙芝居を見せていただきました。とても迫真の迫力がありました。劇場でもとても頑張って演じられました。とても感激致しました。お客様8人と一緒に参りましたが、温故知新、今の日本の政治家に聞かせてやりたい言葉です。身を切る、苦労をする、また私たちも根っこから協力したいと思います。国のため、民族のため、維新あるのみ。独立を。全国に広げていって下さい。(経営者、60代女性)
 ▼従来の概念から違う角度で奇兵隊史を聞いた気がする。征長軍のフトコロ具合を読み、幕府の下に治められようとする俗論党の先のないこと、萩藩士高杉だからこそ藩の行く末は自分たちで守るという論理はすごいナ。四民平等の新しい世の中をつくるために俗論党をつぶすのだ。存亡の危機のさい、革新派にとって俗論党的あつれきが最も厄介。今こそ先の読める、民衆を正義で導く人が出てほしいものだとつくづく思った。(経営者、57歳女性)
 ▼少ない人数とは思えないほどの迫力ある舞台でした。テーマも今の時代にふさわしいものだと思います。庶民の力をあわせて、世直しができそうな気がしてきました。パワーをありがとうございました。最後の高杉晋作の句がすべてを物語っていると思います。(53歳女性)
 ▼息のあった美しい詩吟のところで、劇団の心が一つということを感じました。(印象に残った場面)奇兵隊の面々が隊則を読むところ(一生懸命守る姿勢)。農民を大切にするところ。(50代女性)
 ▼晋作と奇兵隊の絆の深さ、身分や階級のへだてなく、志のある者の気持ちを尊重するところ。晋作の頭のキレのよさ。奇兵隊が命を晋作に預けるところ。功山寺決起のところ。小さな力が大きくなっていくところ。(47歳女性)
 ▼革命の発信地である下関に生まれたことに誇りを感じます。とても感動しました。自分も小さなことでも協力できたらと思います。“百姓は生かさず殺さず”、現代の若い世代の姿も同じような気がします。夢や希望もなくただ毎日を過ごしているようで悲しいです。(35歳女性)
 ▼高杉晋作と奇兵隊の熱意がすごく伝わりました。人を動かす行動力など、考えさせられました。風景もリアルで見る楽しさもありました。これからの時代にもこういう方たちがいてくれたらと思います!! お米を運んでくる農民と奇兵隊との場面、高杉晋作・奇兵隊・農民が一体となったのが伝わった!!(28歳女性)
 ▼今まで何回も来ているけれど、今までよりもはく力があってすごかったです。また今度来れれば来たいです。声が大きくてびっくりしました。高杉晋作はゆうきがあってすごいせっとく力があって、時代が本当にかわって身分かんけいがなくなるような気がしました。(小学生、10歳)
 ▼混乱した時代に新しい力で立ち向かう若者たちの姿がすばらしかった。役者の皆様の迫力も劇全体にあふれていて素晴らしい公演でした。功山寺決起の場面は新しい時代をつくろうとする情熱にあふれていて迫力がありました。(女性)
 ▼奇兵隊の成り立ちがわかりやすく演じられており、山口県内の小中学生などにみてもらえればよいのに! と思うばかりです。山口県の歴史の一部ですね!志を高くと思うばかりです。(無記名)
 ▼とてもよい改作だと思います。農民、商人たちの維新への思いがとてもよく伝わってきました。そして、民衆とともにあるリーダーこそ、真の英雄だということがよくわかる。(無記名)
 ▼日本の歴史的転換の時期に、はっきりとした見通しをもって行動することのできた高杉には魅力を感じる。とくにエゴではなく多くの人の心を動かした点がさらにすばらしい。現代の社会にこんなエネルギーを持った指導者が出現することはないものか? 地域からの発信ですね。今後の御発展をお祈りします。(無記名)

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