いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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市民守る使命否定する消防移転  下関市・中尾市政  海沿い移転の用地予算可決 

 下関の中尾市長が海峡沿いの岬之町埋立地に消防庁舎を移転させる計画を動かし、ごり押しを図っていることに対して、市民のなかで「高潮で冠水したこともある土地になぜ消防庁舎を建てるのか」「地震・津波で沿岸が危ないとわかっていて、なぜ無謀なことをやるのか」と異論が噴出し、撤回を求める署名運動が広がりを見せている。市民の生命・安全よりも箱物建設に没頭する行政の腐敗ぶりをあらわしているが、ことは消防庁舎にとどまらず、市場原理で突っ走ってきた市民不在、聞く耳のない下関市政の姿を象徴するものとして論議が広がっている。
 
 市庁舎建て替えありきの計画

 23、24日に開かれた市議会の臨時議会に対して、中尾市政は岬之町の埋立地に消防庁舎を建てるため、港湾会計から切り離し、市に土地を売却するための3億3100万円の補正予算を計上。23日には所管の総務委員会で消防庁舎問題について審議がおこなわれた。
 執行部は「サンドコンパクションパイル工法という地盤改良を実施するから液状化は心配ない」「敷地全体を50㌢かさ上げし、建物1階の出入り口に止水板を設置するから、高潮・津波対策は大丈夫」「高潮や津波に対して影響の少ない構造やレイアウトを検討し、車庫は津波が抜けやすい設計を検討するから大丈夫」「東南海・南海地震によって、県内全域は3㍍以内の津波が想定され、予定地は最大でも80㌢」「いざというときは、消防車は高台に避難させます」などの説明に終始。「大丈夫」を繰り返した。
 これに対して発言や質問する議員がほとんどおらず、追及するのは本池市議のみ。終いには日頃からダンマリで知られる安倍派の若手議員が「本池市議の発言は議事運営にとって非効率だ」などといい始める始末で、まともな審議もなく賛成多数でアッという間に可決し、本会議へと流していった。
 24日の本会議・反対討論のなかで、本池妙子市議は3月に起きた東北大震災を教訓にすべきこと、埋立地に消防庁舎を建設することは、下関市民の生命・安全・財産を守るという地方自治体の任務に反することであり、到底容認できるものではないことを、現地に視察に行ったときの写真を拡大パネルにして見せながら訴えた。
 発言のなかで、壊滅した女川町の消防庁舎や南三陸町の防災庁舎の写真パネルを指しながら、地震・津波によって海岸沿いに建てた公共の施設がやられ、犠牲者が出ていること、多くの消防署が被災していた事実について指摘し、「昨日も総務委員会で消防庁舎の報告があり、下関では津波が来たとしても2、3㍍の想定で、しかも90分後の到着なので万全を期しているとのことだった。しかし、今回の事実は、ありえない、想定外が起こったということだ。消防庁舎の土地を50㌢かさ上げするから大丈夫ということだが、それで消防が助かっても、周辺は水に浸かってしまって出られないのではないかと聞くと、高潮、津波などの警報が起きたらただちに消防車は高台に避難するから大丈夫とのことだった。これはどういうことだろうか。消防が高台に真っ先に避難したのでは、市民の防災センターとしてきわめて重要な役割を果たす司令部には人がいない事態になり、司令部が孤立するということだ。市民の生命と財産を守るべき役割を果たす消防が孤立していてどうなるのか」。
 「消防は市民の命を守る使命があり、海沿いの埋立地にどんなにいい建物を建てようと、市民を助けられなかったということは殺人行為にすらなる。もちろんこれに賛成する市議会もそうなる。あのような場所に消防署を建てることは、消防の任務の否定ではないだろうか。災害対策のためだといって市庁舎の建て替えを強行し、災害には大丈夫といってわざわざ消防を移転させるのは、市民から見ても驚きであり、怒っている。高潮で浸かったところにわざわざ建てて、つねに不安な状態に置かれるよりも、岩盤の固い現在地に建て替えたらいいと市民は話している。下関市議会は市民の生命と安全、財産を守る立場に立って、埋立地への消防署建て替えは絶対に認めてはならない」とのべた。
 議案はその後、何の異論もなく賛成多数で可決。2日間の日程を消化して議会はそそくさと散会した。
 消防庁舎は何のためにつくるのか? 本来の目的が吹っ飛んで、建物をつくることだけが優先され、消防の社会的な使命を否定して箱物に明け暮れる異常さ、市民の生命や安全を二の次にして突っ走る中尾市政の姿を見せつけるものとなった。議会のなかで、このような重要な問題について追及するものがいない異様さも同時に露呈した。

 大がかりな市庁舎建替 解体工事も進行 

 中尾市政がごり押しする原因は、消防庁舎の建て替えが進まなければ、市庁舎建て替えプランの順序が狂ってしまうからだといわれている。震災が起きようが構っておれない、450億円の合併特例債を26年度までに使い切るといって、箱物に熱を上げている。
 箱物のメインに位置付けられているのが市役所庁舎の建て替えである。3年前の市長選挙で市庁舎建て替えは重要な争点になったが、「建て替えない!」と叫んだ中尾市長は当選すると公約を破棄。1年がたった頃に200億円規模の庁舎関連整備事業を進める意向を表明した。昨年度から教育委員会棟などの機能が市内各所に引っ越しをおこない、今年度に入って解体工事が進んでいる。来年度からは市民サービスセンター棟の建築が本格的にはじまる予定になっている。
 市民のなかでは、市庁舎は「建て替えない」でケリがついたと思ってきた人人が多く、「気がついたら覆していた」という状況に驚き、まるで詐欺にあったような感覚が広がっている。中尾市長本人は、誰がどう見ても庁舎建て替えなのに、「公約破棄ではない。公約の進化だ!」「増築なのだ!」とうそぶいてきた。
 5月には庁舎建て替えの基本計画が議会に示された。その内容を見てみると、あらたに建設するのが「市民サービスセンター棟」と命名した実質の本庁舎で、地上8階、一部9階の建物。延床面積は現在の本庁舎棟(9300平方㍍)の約2倍にあたる1万8000平方㍍という大規模なものだ。現在の消防庁舎がある位置には、8階建ての立体駐車場(1万3000平方㍍、320台収容)を建設するとしている。そのために消防の追い出しが実行されている。
 市民サービスセンター棟と立体駐車場の新設には合併特例債を充て、現在の本庁舎の耐震補強はその後に後回しするというもの。いまのところ本庁舎棟の耐震改修に29億円、市民サービス棟の新設に66億円、立体駐車場に15億円、その他もろもろの経費も含めて115億7700万円と見積もっている。既存施設の耐震補強については合併特例債などの財源が切れた後に考えるという算段で、「やっぱり予算がない」といって放置する方向にも進んでいる。

 総合支所は軒並み縮小 旧豊浦郡4町 

 また、合併特例債の残額を消化するためといって唐突に出てきたのが、旧豊浦郡四町にある総合支所の建て替えだった。もともと地元の要望が強かったわけでもなく「突然降ってわいたように出てきて驚いた」と支所などでも語られている。蓋を開けてみると、総合支所の「コンパクト化」すなわち行政機能を小規模化するための建て替えだった。
 菊川総合支所は現在の延床面積29114平方㍍から1601平方㍍へと小型化し、その費用として7億6000万円を見積もっている。豊田総合支所は現在の庁舎面積が2428平方㍍、保健福祉センター1876平方㍍のところ、それぞれ1553平方㍍、650平方㍍へと小型化。その費用に7億4700万円。
 豊北総合支所も既存のコンクリート造りの庁舎(3864平方㍍)、保健福祉センター(1398平方㍍)で構成されていたのから、保健福祉センター部分は残して、旧来の本庁舎を解体。その後は、2200平方㍍の庁舎へと敷地内建て替えがおこなわれる予定になっている。ほぼ半分の規模に縮小することになる。その費用が8億5600万円。唯一改修工事にとどまるのが豊浦総合支所で、その費用に6億2700万円を見積もっている。4カ所の総合支所を整備するのに55億円をかけるとしている。これも旧4町の行政機能をどうするかは二の次で、合併後はさんざん切り捨てをやって職員を減らしてきた末に、建物造りだけ目の色をかえている実態が指摘されている。
 今年度は一般会計の当初予算としては史上最大規模の1250億円を計上しており、総額で200億円を投じる新庁舎建設関連事業、150億円を投じる下関駅にぎわいプロジェクトなど、巨額の資金を注ぎ込む事業がかつてない規模で動きはじめている。
 新自由主義政治が浸透するなかで、金融や投機がたけなわになり、下関のような地方都市でも土地転がしや銀行が大暴れするような区画整理、マンションバブル、あるかぽーと臨海開発、駅前開発などの開発ラッシュがもたらされてきた。銀行がテコ入れする関連企業には行政が「原資」を保障するような形で仕事を与え、あるいは民託化で管理運営を委ねるといった不可解なことが起こり、新規のライフライン整備に行政予算が注ぎ込まれる分、既存の地域では下水道管整備が放置され、破裂して汚水が地域に撒き散らされるといった事態も起きている。
 ただ箱物バブルといっても、今年度だけ見ても、財政そのものは乏しいので171億円を借金である市債発行でまかなうことになっている。そして江島市長の時代から大型箱物を繰り返してきたために、償還がつぎつぎと迫って、借金返済にあてる公債費は予算の1割強にあたる約160億円という規模に膨らんでいる。市民のツケとなる市債残高は一般会計だけで1229億円に達する見込みだ。
 史上最高額の予算で散財しながら、一方で中尾市政が力を注いでいるのが差押えで、就任以来、容赦ない差押えによって土地・建物、年金や保険を差し押さえられて財産を没収される市民が急増してきた。地元経済がどれだけ疲弊しようがおかまいなしに、また大不況で市民生活が窮乏化し、市財政がかつてなく枯渇しているおりに、市民からは財産を剥ぎ取り、もっぱら金融機関だけが潤う“にぎわいプロジェクト”政治が実行されるという、ろくでもない事態が進行していることに、市民の怒りは充満している。
 東北大震災による下関の経済活動への影響も大きく、仕事や物流がストップするなど経験したことのない異常事態が起きている。このなかで、市民や地元企業が税金を払えるように産業振興、雇用確保に全力を尽くすわけでもなく、失業者が街にあふれ、市財政そのものも窮乏の一途をたどっている状況下で、追いはぎのように市民から税金を巻き上げ、収入はないのに使うことばかり考えていることへ、市民の怒りは尋常ではない。市役所の窓口に「税金泥棒!」と怒鳴りに行く市民、市長室まで乗り込んでいく市民も増えている。
 この調子でいけばますます下関がつぶれること、安倍・林代理の略奪政治による食いつぶしを黙って見ているわけにはいかないとの思いが高まっている。市民経済が危険水域ともいえる状況に直面しているなかで、なおも箱物偏重・民託化の市外発注路線で暴走する中尾市政に対して、「あんな嘘つきは一期でやめさせろ」の声が広がっている。

 
埋立地への消防移転は市民救助の目的に反する

              下関市議会での本池市議の反対討論(要旨)

 24日に開かれた下関市臨時議会の本会議で、消防庁舎を岬之町の埋立地へ移転・建設するためにかかる、用地買収のための補正予算が提案され、採決された。そのなかで本池妙子市議がおこなった反対討論について以下紹介する。
 下関市臨海土地造成事業の特別会計補正予算に対し反対する意見をのべたい。この予算の歳入の中に財産収入のうち、売り払い収入として補正前の1億5050万8000円に続き、補正額として3億3106万4000円が加えられているが、これは、岬之町の埋立地に消防庁舎を建てるために市に売却するというものだ。
 3月に起こった東北の大震災の時点に立って、下関の消防庁舎の移転・建設をあの埋立地におこなうことは、下関市民の生命の安全と財産を守るという地方自治体の任務に反するものになっていくものであり、絶対にやめなければならないと思う。
 東北の大震災による数多くの事例がそれを物語っている。私は下関の教訓にするために5月1日より被災地に視察に行ってきたが、すさまじい実態だった。なかでも、地震・津波ということにさいして、歴史的に経験してきた教訓に学ぶことが薄れ、近年は埋め立てをした海縁の土地に建てた公共の施設が地震や津波にやられ、犠牲者が出ておられた。ここに写真をもってきたのは女川町の消防庁舎だ。その傍らにはどなたかが供えられたのか、亡くなった消防士さんのヘルメットとお花が供えられていた。ここは消防署長さん以下3名が亡くなっていると語られていた。
 また、南三陸町では防災庁舎が惨たらしい姿になっている。ここでは、屋上まで逃げた数十人のうち若い女性職員さんが、最後まで町民に「津波が来ています、避難を」と必死に町民に防災のマイクを持って訴えられ、その必死な声を聞いてただならぬものを感じ、避難して助かったということも話されていた。このほかにも多くの消防署がやられていた。
 昨日も総務委員会で消防庁舎の報告があった。下関では津波が来たとしても2、3㍍の想定で、しかも90分後という想定のようだ。そして万全を期しているとのことだった。しかし、今回の事実は、「ありえない」「想定外」が起こったということだ。消防庁舎の土地を50㌢かさ上げするから大丈夫ということだが、「それで消防が助かっても、周辺は水に浸かってしまって出られないのではないか」と聞くと、「高潮、津波などの警報が起きたらただちに消防車は高台に避難するから大丈夫」とのことだった。
 これは、どういうことかと思う。10台の消防車があって、それを複数で運転されて、そのような人員が24時間365日いるということでありますが、そのような待機をするのか。また、消防が高台に真っ先に避難したのでは、市民の防災センターとしてきわめて重要な役割を果たす司令部には人がいないということになりそこに人が立ち寄れないで司令部が孤立するということだ。市民の生命と財産を守るべき役割を果たす消防が孤立していてどうなるのだろうか。
 秋頃には国の防災基準が大幅に変更になることが明らかになっている。今回の東北大震災という時点に立って、下関もどうするのか、もう一度組み直さなければならない。あれほどの犠牲が明らかになっているにもかかわらず、埋立地に消防を建てるなど、全国の笑いものになってしまう。
 また、消防は市民の命を守るものであり、海沿いの埋立地にどんないいものを建てようと、「市民を助けられなかった」ということは殺人行為にすらなるものだと考える。もちろんこれに賛成する市議会もそうなる。市民からも「賛成した議員の名前をあの場所に刻み込んで記録しておくようにいってくれ」と頼まれた。それほど先先にものすごい責任を問われる問題になっている。あのような場所に消防署を建てることは、市民の生命、安全、財産を守るための消防の任務の否定ではないだろうか。
 効率化といわれるが、建物をつくることが目的になっていると思う。市民の救助をするという目的に反しており、絶対にやってはいけないと思う。東北の被災地で「下関の市民にここで見た本当のことを伝えてほしい」といわれ、「私たちのことを教訓にして下関さんはまだ間に合うのだから、絶対にやめた方がいい」と、埋立地への消防署建設は無謀である、といわれた。
 下関市は東北の震災を教訓にして、ただちに防災計画の見直しをやらないといけないと思う。全国でもそのように動いているところも出ている。原発問題も起こっているが、東京、福島間が約200㌔であり、そこでも水道水から放射能が検出されている。300㌔離れた小田原のお茶からも検出された。下関市は九州の玄海原発、四国の伊方原発から約100㌔の距離にあるし、すぐ目の前の釜山の原発も、直線で200㌔、中国からも黄砂が飛んできますが、あそこにも原発がある。福島と東京どころでない、もっと身近にこれほどの原発があるところだ。
 災害対策のためだといって市庁舎の建て替えを強行し、災害には大丈夫といってわざわざ消防を移転させるのは、市民から見ても驚きであり、怒っている。高潮で浸かったところにわざわざ建てて、つねに不安な状態に置かれるよりも、岩盤の固い現在地に建て替えたらいいと市民は話している。
 下関市議会は市民の生命と安全、財産を守る立場に立って、埋立地への消防署建て替えは絶対に認めてはならないと思う。そのことを訴えて、この議案には反対することを表明したい。

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