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梅光学院を教授たちが提訴 「赤字」理由に相次ぐ雇い止め

記者会見に挑む梅光学院大学の教授ら(7日)

 

 梅光学院大学の教員有志10人が9月29日、学院が給与切り下げ等の労働条件を一方的に変更したことについて梅光学院を下関地裁に提訴した。7日午前10時から山口地裁下関支部でおこなわれた第1回口頭弁論には、教員や同窓生ら約50人が傍聴に詰めかけ裁判を見守った。同日、ひき続き教員代表2人が弁護士、私大教連の代表とともに記者会見を開き、提訴に踏み切った理由と梅光学院の現状について明らかにした。

 

 今回教員有志(教授、准教授)が提訴したのは、梅光学院大学が2016年4月1日に労働者である教員らと合意形成しないまま給与・退職給与規定を変更し、本俸の大幅な切り下げ、通勤・住宅・扶養手当の切り下げや廃止、退職金の大幅な切り下げをおこなったことについてである。

 

 2013年に本間政雄氏が理事長に就任して以後、「赤字解消」「人件費比率の削減」を掲げて「改革」を始めた現経営陣は、中高の40歳以上のベテラン教員に対し人材コンサルタント・ブレインアカデミーの「研修」と称する退職勧奨をおこない、2016年3月末で14人を退職に追い込んだ。これと同時進行で、大学では給与・退職金規定の変更を進め、「辞めなければ退職金が減る」などの形で退職勧奨をおこない、大学では同年、教員11人が学院を去り、その後も毎年のように雇い止めが続いている。原告団の教員らは、この給与・退職給与規定変更は無効であり、差額分の給与・退職金計1500万円を支払うことを求めている。

 

 この規定変更によって、現時点で学院側が開示している資料からは本俸がそれぞれどれだけ減額となったか特定できない状態であるが、おおよそ月額4万~7万円の減額となっており、2人の退職者(1人は今年度末退職予定)については退職金が700万円減額されると説明を受けた教員もいるなど、大幅な切り下げとなっている。

 

 給与等の削減にあたって学院側は、「流動資産が今後10年で枯渇すること」「人件費が高いこと」をあげている。しかし近年、梅光学院大学の学生納付金は増加傾向にあり、流動比率(流動負債に対する流動資産の割合)は2016年度648%と全国平均の242%を大きく上回っている。負債比率(自己資金に対する総負債の割合)も2016年度は7・5%と全国平均の26・7%と比べてきわめて良好な数値であることなどから、「流動資産が今後10年で枯渇する」状況ではない。

 

 また人件費比率の削減を進めてきた梅光学院大学では、2016年度の人件費比率は44・5%と全国平均の54・9%を下回っており、学問をおこなう大学においてもっとも重要な要素である教員の人件費削減がほかを上回るペースでおこなわれている。教員側は、これらの状況から学院側が主張する「10年後に流動資産が枯渇する」状況にはなく、大幅な給与切り下げをおこなうほどの危機的な経営状況ではないことを明らかにした。

 

 また一方で同時期(2016年1月5日)の常任理事会において理事長、学院長、学長など執行部の役員報酬を増額する議案を提出したほか、職務手当の支給方法を変更し、役職の掛け持ちで執行部に多額の手当が支給されるようにしていることの矛盾を指摘している。

 

 例として訴状では、2016年度、樋口学長(現在は学院長も兼任)は学長(10万円)、大学学術情報センター長(5万円)、大学博物館長(1万円)を兼任。只木統轄本部長は大学事務長(4万円)、大学文学部長(5万円)、キャリア支援センター長(5万円)、アドミッションセンター副センター長(1万円)、中高校長特別補佐(支給額不明)をかけ持ちしていたことを明らかにしている。

 

 さらに、この労働条件の変更にあたっては、労働者過半数代表者を選出する必要があるが、教授会で立ち上げた選挙管理委員会は、学院側が全教職員名簿等を示さないなどして事実上凍結された。そして施行後の五月になって学院側から候補者が示され、執行部に対して実名のわかるメールで賛否を示すよう求められるなど、適正かつ民主的な手続きをへずに労働者過半数代表者が選出された経緯を明らかにし、就業規則の変更が無効であることを訴えている。

 

記者会見 職員や学生の声伝える

 

 午前11時半から市政記者クラブでおこなわれた記者会見には10人を代表して渡辺玄英准教授(文学部)、黒田敏夫教授(子ども学部)の2氏が弁護士とともにのぞんだ。

 

 渡辺准教授は、「今の梅光学院大学の現状は、教育の場としての大学、言論の場としての大学が壊されることが起こっている。中高も同様だ。私たち原告団は給与のこともさることながら、そこに強い危機意識を持っている」と今回提訴に踏み切った理由についてのべた。現在、大学内で自由に発言できない雰囲気があり、多様性が排除され、異論を唱えた者は排除される状況を明らかにし、原告団に加わることは教員にとってハードルが高いものであること、多くの教職員が怒りを持っているなかで10人が立ち上がったとのべ、今後原告団が増える可能性も示した。

 

 もっとも重要なこととして、教育の場としての大学が崩壊している現状を強調し、「今回のことで教員が大勢減ったためゼミが開かれない、教員がいてもゼミが開かれないことが起こっている。優秀な教員が辞めていき、期待して入学してきた学生たちが学べない状況にある」とし、これについて学生らがこれまでに教員の解雇撤回を求める署名や、ゼミについて質問状を提出するなどしているが、学院は一度たりとも回答していないことを明らかにした。

 

 教員養成課程を持ち、教員を志す学生が入学してくる大学で、労働者過半数代表を選出するにあたって、立場の弱い労働者の多くの人たちが、執行部側か反執行部側かの踏み絵を踏まされることが平然とおこなわれる一方で、学生たちに教育を語る矛盾に原告団の多くが怒りを持っているとし、「教育の場としても、学問や言論の場としても崩壊し、学生も生徒もその不利益を大きく被っている。これは、ひいては日本の文化が破壊される一つの形ではないかと認識している。そういう意味で、給与のこともさることながら、名前をさらしてでもたたかわなくてはいけないと考えている」と決意を示した。

 

一昨年三月来の経過 深まる経営陣への不信

 

 梅光学院をめぐっては、2015年3月末で中高・大学ともに大量に教員の首切りをおこなったことをきっかけに、現経営陣の「財政赤字の解消」「人件費比率の削減」を掲げた「改革」に対して、生徒・学生、教員や保護者、同窓生らが学院の正常化を求める運動を展開してきた。2016年2月に突然雇い止めを通告された矢本特任准教授も裁判を通じて復帰を求めているところだ。

 

 このなかで学内の問題を隠蔽するかのように恣意的な雇い止めや体制変更があいつぎ、教育機関として体をなさない状況が深刻化してきた。日を追うごとに物いえぬ空気が強まり、精神を病んで休職したり、突然のハラスメントに疲弊して退職していく事務職員も後を絶たない。

 

 教員有志の調査によると大学では、教員移動率がここ3年間、毎年3割にのぼっており、「大学人がほとんどいなくなってしまった」といわれている。かつて50人規模だった文学部の教員は30人台にまで減少し、古典、近世、中世、近現代、創作と全分野を網羅する教授陣がそろい「文学の梅光」とも呼ばれた文学部はすでに惨憺たる状況にある。資格を持った専門教員がいなくなったため教職課程が一時凍結されたり、ゼミ担当教員が途中で雇い止めになったり、教員を排除したカリキュラム編成によって卒業が危ぶまれる状況すら生まれるなど、しわ寄せは学生たちに及んでいる。

 

 専門教員を削減する一方で、ANAエアラインスクールや東京アカデミーの公務員講座、教員養成講座など、民間業者と提携し、契約のために学生たちに講座にするようハッパをかける、あるいは公務員試験に合格すれば「講座のおかげだというように」と指導が入るなど、本末転倒した状況が蔓延している。「毎年1億円の赤字を出している」として大リストラがおこなわれた中高の現状はさらに深刻である。教育機関をうたいながら、学生なり生徒を金ないしは物としかみなさない現経営陣への不信は深まるところとなっている。

 

 経営陣の主張するとおり、たしかに人件費は以前と比べて2億円ほど圧縮された。しかし、提携する業者やブレインアカデミーへの支払い、労働組合との協議などのさいに只木氏に常に同行する弁護士費用などを含むといわれる管理経費は2倍化、教育研究費も増額するなどしている。「財政再建」どころか資産は減少している現実がある。

 

 「少子化による大学の危機」を煽りながら、政府・文科省が進める「大学改革」のもとで、経営陣への権限集中がおこなわれ、梅光学院と似たような状況は全国各地で頻発している。学問・研究の崩壊に大学人らが声を上げるなかで梅光学院のたたかいは注目を集めるところともなっている。140年にわたる伝統を持つ教育機関である梅光学院の正常化に向け、関係者らは「新たなたたかいの始まり」と決意を新たにしている。

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