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下関市立市民病院でサーバーダウン 命預かる病院でなぜ

下関市民病院の玄関に貼り出された診療休止のお断り(16日)

 地方独立行政法人・下関市立市民病院で15日午後、電子カルテのシステムが故障する事件が起こった。予期せぬ事態に病院内は大騒動となり、17日早朝に復旧するまでの1日半、手術や外来診療を中止する対応がとられた。命を預かる医療機関が24時間以上システム停止するというのは前代未聞で、二度と起きぬよう解決することが求められている。

 

手術や診療ができず 富士通の管理システムで不具合


 医療現場も高度化が進み、速く効率的に患者の情報を共有できるようになった。多くの総合病院が電子カルテを導入している。だが、このたび市民病院で起こった事故は、便利さの裏でコンピュータ1台の故障で医療ができなくなる脆弱さを浮き彫りにした。緊急時に代替となる体制が必須であること、業者側にも命にかかわる仕事に対する緊張感を持った体制が必要であることなど、多くの教訓を提示するものとなった。


 市民病院によると、この日、年に一度おこなう受電設備の定期点検と同時に、電源を落とさなければできない電子カルテのプログラム修正をおこなっていた。同院では平成23年に約7億円で富士通の電子カルテシステムを導入している。今回のプログラム修正は保守点検も請け負う富士通からの要請だった。電子カルテは患者のデータすべてが入っているため、基本的に1年中停止することなく動いている。プログラム修正のあいだは予備システムに移行して動かしていた。だが、電源を落として修正作業をおこない、再び本体に復旧しようとしたとき、不具合が起きてシステムが立ち上がらなくなったという。そのうえに予備システムも動かなくなってしまった。


 電子カルテには、それぞれの患者のレントゲン写真から手術や治療の内容、どんな薬を飲んでいるのか、注射の種類はなにかなど、医師らが治療をする際に入力して更新していくため開かなければ治療ができない。間違った治療を施して医療ミスでも起こったらそれこそ大変だ。「医療をするうえで根幹のシステムだから、それにつながっている各部局のシステムが故障するのとはわけが違う」という。


 富士通が原因を究明しようとするが、一つの問題を解決すると次の問題が起こる、そのくり返しでなかなか復旧しない。しかも膨大な容量のため、一つ作業して結果が出るまでに3、4時間かかり、1日があっという間に過ぎていった。日曜日は外来が休診なのでそれほどの混乱はなかったが、翌日はもっとも受診者が多くなる月曜日だ。「直させてほしい」という富士通の意向で、市民病院の関係者らは、やきもきしながら待機していた。だが深夜12時頃、急きょ管理職に招集がかかり、朝までに復旧しなかった場合、外来患者の診察や手術を中止することなど対応を検討した。職員に翌朝6時に出勤するよう緊急連絡網を回した。


 翌16日は朝6時から体制をとり、総出で予約が入っていた400件以上の患者に断りの電話を入れ、受付に対応窓口をもうけて来院した患者に事情を説明し、日にちを変更してもらうなど、対応に追われた。しかし薬が切れているなど、どうしても受診しなければならない事情のある患者も当然いる。そうした患者にかんしては紙カルテをもちいて診療した。当日予定していた手術10件もすべて延期した。


 またこの日はちょうど救急当番院でもあった。重篤患者が運び込まれると手術ができないため、他の3病院に協力を依頼するなど事前に対応し、受け入れた患者は紙カルテで対応するため、救急部門の職員を増員して待機した。月曜日の救急搬送は市内全体で48件あったが、うち午後5時以降は4件と通常より少なく、重篤患者もなかったことは不幸中の幸いだったという。


 騒動の2日間を病院内で過ごしていた入院患者のなかでも、日曜日の午後から「サーバーが立ち上がりません」など全館放送が流れたり、「今日は手術ができない」と、普段は見かけない医師が病棟にあらわれたり、看護師が仕事ができず困っていたことなど、騒然とした様子だったことが語られている。病気でただでさえ不安なのに、「ここは安心してかかっていい病院なのか」という不安を抱くような状態では、市民病院の今後の評判にもかかわってくる。


 結局、今もコンピュータが動かなくなった原因は究明されていない。最終的に神戸からも技術者が来て、月曜日になってプログラムの修正をうち切る判断を下し、1年前の状態に戻すことでシステムが動き始めた。17日(火)早朝、各部局とのテストを終えて通常通り診療できる体制が整った。もう1日休診が続く可能性も想定して動いていた関係者らはようやくほっとしたという。なかには2日間、不眠不休で対応した職員もいる。


 電子カルテのシステムが故障することなど聞いたことがなかったため、今回の事態はだれも想定していなかったという。全国シェア1、2位を争う富士通のシステムであったことも、安心する要素だったようだ。市民病院は、今回の故障を受けて「高度医療になればなるほど、こうした危険性は多くなる。今後、原因を究明すると同時に、今回の教訓を活かして、緊急時には紙ベースで対応するなど、病院としても体制をつくっていきたい」と話している。


 医療機関のシステム停止は患者の命にかかわる。業者の責任として、月曜日に必ず稼働するよう逆算し、バックアップ体制をとって臨むことが当たり前の姿であること、病院側としても早めの判断ができなかったかなど、市民の命と健康を預かる医療機関として、さまざまな教訓が見えたことが語られている。


 全国の医療機関でも同様の問題が起こる可能性もあり、今後、原因が究明され、教訓を明らかにすることが待たれている。

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