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教育体制の崩壊露わな梅光学院 梅光の未来を考える会が報告会

 現役大学生が切実な訴え


 下関市で幼稚園、中高、大学を運営する梅光学院をめぐる問題は、昨年度末、多数の教員の雇い止めをきっかけに表面化して1年を迎える。学院の正常化を求めて運動してきた「梅光の未来を考える市民の会」は18日、下関市生涯学習センター宙のホールで報告会を開いた。報告会では「赤字解消」を掲げた改革のもとで、教育体制・教育内容ともに崩壊に拍車がかかっている現状が明らかになり、参加者は新たな怒りを燃やしつつ、子どもらのために最後までたたかうことを誓いあうものとなった。

中高では教員の退職者は14人

 

 今回、現役の大学生らも複数参加した。2回生の学生たちがマイクを握り、あと2年間通っても卒業できない、もしくは目標にしていた資格がとれない可能性に直面している現状を訴えた。

 

 大学では、幼・小・中・高校教員免許、保育士資格、司書資格など、資格取得をうたって学生を募集してきた。学生数は増加したが、教員を辞めさせて教える側が不足しているうえ、時間割編成も教員を排除しておこなったこから、文学部では、真面目に単位をとり、成績のいい学生ですら卒業が危うい可能性が浮上している。ましてや資格取得との両立はカリキュラム上難しい。学生の将来をも左右する問題であり、早期解決は待ったなしだ。


 問題が発覚した昨年9月、学生らは樋口学長にシミュレーションを出すことを申し入れたが、12月に学長は「シミュレーションをしていない。するのは難しい」と回答。不足している単位(とれなければ卒業が難しい)を補うために、海外語学研修やイングリッシュキャンプなど、当初説明していない金銭のかかる授業や、そもそも受けることのできない授業を示したという。


 学生の1人は、「“不足する単位と資格をとる授業が重なった場合はどのように対処すればよいか”という学生の質問に、学長は“資格よりも卒業を優先しろ”といった。資格をとるために入学したことを伝えても、“でも卒業が優先だろう”という不誠実な答えが返ってきた」と憤りをもって発言。別の学生も、「教職課程や図書課程といった課程科目をとっている学生がたくさんいるが、学長に“資格よりも卒業を優先しなさい”といわれた。夢があって資格をとろうと入学したのに、資格がとれないかもしれない状況になり、怒りを感じている学生もいる。資格取得にはお金がかかる。親も怒りを感じている」と発言した。


 さらに、先日2回生に対して来年度から始まるゼミの説明があり、現在の3回生がとっているゼミが開設されないことが知らされた。とくに文学部の地域文化専攻、東アジア言語文化専攻は各1ゼミしかない。選択肢のない状況に学生のなかで怒りが広がっていることも明らかにした。
 学生たちは「ある先生に学びたいと思って2年間授業を受けてきたにもかかわらず、学長の考えでゼミを選ぶことができなくなったことに、みんなが怒りを覚えている」「ゼミのことも卒業のことも、今どうにかしないととり返しがつかなくなる。よろしければ助けてほしい」「残された時間は2年間しか残っていない。安心して学べる環境がほしい」と切実な思いを訴えた。

学生が主役というが… 広がる学生の怒り

 司会者が報告した学院の全体状況は、学生らの訴えに加えて参加者の怒りを強めた。
 大学では、今年1月の教職員の新年会の場で、長らく活動実態がなくなっていた教職員会(互助会)の解散が、学長によって宣言された。まともな議論もなされず、教職員が積み立ててきた積立金は一部を返還し、残りを学院に寄付する方向で話が進んでいる。


 また、新年会も宴たけなわとなったころ、学院出身者が前に並び校歌を歌った。歌い終わるとある職員が、校歌の最後の「玉なし」という一節をとりあげて「女子校だから玉なしで」と発言。これを聞いた男性教職員の複数は興奮し、玉なしを性的ニュアンスに絡めた発言を連呼したという。女子職員は屈辱感に怒りを感じたが、学院長、学長、統轄本部長の3者は笑っており、セクシュアルハラスメント防止委員会の長を務める副学長も事態を放置していた。


 司会者は、「校歌は学院のアイデンティティーだ。その一節を性的ニュアンスに絡めてからかうのは、卒業生を含む先人たちが築き上げてきた学院の伝統の品位を著しく貶める行為であり、ミッションスクールに奉職する人間として恥ずべき行為だ」とのべ、これらの人人が今年、大学開学50周年を祝う前面に立つことに疑問を呈した。


 似たような状況は、先日おこなわれた就職対策の研修旅行でも見られたという。この北海道までの船旅には、就職先決定済みの4年生と1、2年生の希望者が参加した。引率した教職員らは研修期間中、飲酒する場面の画像を学生に送り、学生ら(未成年を含む)を飲酒に誘うという無責任な態度で、学生が二日酔いの引率者の尻ぬぐいをする事態も起こったとのべた。


 また、今年度も3月末で大量の雇い止めや退職者が出ていることを明らかにした。大学では、子ども学部の授業評価が高い教員が雇い止めとなったことに、学生らが撤回を求める署名をおこなった。同学部の半数が署名したが、樋口学長は回答していない。そのほか日本文学研究と演劇評論家の教員、秘書を含む3人の職員が雇い止めになった。さらに、4人の教員が来年3月での雇い止めを通告されている。


 これらに対する学生らの怒りは広がっており、卒業式後の祝会を、子ども学部のほとんどの学生がボイコットする様相だ。文学部も申し込みは1人という状況になっており、「学長は“学生が主役の大学”と口ではいうが、学生が主役ではなく自分が主役だ」と指摘した。


 中高では校長・教頭を含め退職者は14人にのぼり、うち常勤教員が7人も入れ替わる。ブレインアカデミーの紹介で今年度来たばかりの教員も含まれている。退職する教員らの、「昨年3月30日に“あなたが来てくれないと授業に穴が開くのでぜひ来て下さい”と頼まれて来たが、来年度の契約はしないといった」「本学で勤めることが夢だった。生徒とのかかわりを考えると辞めることは残念だが、神様がこの学校であなたの役割がないといわれたんだ」などの声を紹介した。

現状を広く知らせよう 学院内外協力して

 こうした現状に報告会では教師OBや同窓生などから、怒りとともにあきらめずたたかい続けるとの発言があいついだ。


 2010~12年の13年間、中野学院長の依頼を受けて中高の校長を務めた男性は、教職員の協力も得て中学校の生徒数は倍になったにもかかわらず、解任された経緯をのべた。在職中から只木氏を中高に寄せ付けないようにしていたこと、学校運営について後任の校長にくり返し意見してきたにもかかわらず、「梅光の宝」である教員を辞めさせるに至ったことへの憤りを語った。


 1、2年目の教師のみで会議をするなど、「梅光の精神を持っている人たちを追い払い、自分に顔が向いている人だけで運営しようとしている」現状を語ったうえで、梅光は切羽詰まった状況にあるが、市民の会の運動や矢本准教授の裁判が抑止力になっていることを明らかにし、「絶対に負けないという気持ちだ」と力強くのべた。


 矢本浩司特任准教授も、昨年九月の仮処分申請の完全勝利に続き、学院が起こした異議申立でも学院の主張が退けられたことを報告。同時に進行している本裁判の経過等にもふれたうえで、「メールやライン、電話などで励ましてもらい、野菜や果物、弁当をつくって頂いたりすることが強みになっている」と謝辞をのべた。昨年度末、ブレインアカデミーの研修で辞職に追い込まれた元教員も発言した。


 福岡で梅光を考える会を立ち上げた女性は、昨年7月以来の活動を報告した。昨年の同窓会総会で下関の熱気にふれて福岡で臨時総会を開くと、問題を知る同窓生約30人が怒りに燃えて集まり、会発足へとつながった。弁護士などから「手遅れだ」といわれながらも、「教師や学生・生徒といった当事者ではない同窓生に何ができるか」とその方法を模索し、①感情に流されることなく情報を正確に知ること、②できる限り身近な人に広げていくこと、③矢本先生の裁判を支援することの3つの旗を立て、毎月集まっている。


 女性は、同窓生という一点で気持ちが通じあう光景が生まれており、「梅光で大事な物を受けたことが私の人生を変えた」「どん底に陥ったときに支えてくれた」という声も多数寄せられたことを紹介し、その思いに背中を押されて活動してきたとのべた。「今の若い人たちは、将来の就職口が保障されている時代の私たちとは違い、いつ無職になるか、ホームレスになるかわからないという恐れを持ちながら暮らしている。職場で人を育てなくなり、即戦力を求めるので、学校が専門学校化することはやむを得ない現状もある」としつつ、この間の同窓生の反応から、教育とは目前のノウハウ以上に「人生のなかでくずおれたり、立ち止まったときに支えとなる、魂・人間を育むものでなければならないと改めて思う」と語った。


 「静かな怒りを持って活動していく」という会員の言葉を紹介し、「カッとなる出来事が多いが、静かな怒りを持ち続けて活動していきたい。それは中高、大学にいる生徒たちが魂・人間の根っこを育てられたいと願い、人を育てたいと願う先生たちがいるからだ。私たちはその場に携わることはできないが、集まり続けることでそれを支える一つの枝になるのではないか」とのべ、下関との連帯を呼びかけた。


 「梅光だけは守らないといけないと思っている市民が外にたくさんいる。決して孤立していないので、内部の人も頑張ってほしい」との発言もあり、学院の内と外が支えあい、協力しあって運動を進めること、現状を一人でも多くの人に伝え、世論にしていくことが強い力になることを確認しあった。

 

 

 

 

 

 

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