いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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私物化で混乱する下関市立大学 教育機関崩壊させた独法化

 独立行政法人化して以後の大学運営を、天下った市退職幹部たちが利権の具にして問題になっていた下関市立大学で、今度は4月に着任したばかりの新事務局長が突然辞職するという不可解な出来事が起きている。事態収拾のために送り込まれたはずの責任者が、わずか半年で職務を投げ出す事態について、「前代未聞。いったいなにが起きているんだ?」「市大はどうなっているのか?」と大学内外で波紋が広がり、真相解明を求める声が高まっている。

 隠蔽せずに真相を解明せよ

 昨年から市立大学では運営にかかわる不明瞭な資金の流れや経営実態が暴露されはじめ、独法化以後、教育についてわからぬ天下り役人が私物化するのとセットで、教授や事務職員を恫喝したり、処分や制裁の嵐を加えはじめ、大学が教育機関として崩壊の危機に陥っていることが問題になってきた。
 前任の松藤智晴理事長(元市水道局長)と植田泰史事務局長(元市部長)体制のもとで、江島前市長が所有するアパートを大学が借り上げて家賃収入を世話したり、グラウンド整備を事務局長の下関第一高校時代の同級生に発注して4500万円も注ぎ込みながら、完成後に釘や岩が次次と出てきてヘドロが堆積するような欠陥工事がやられたり、事務局長が個人的に楽器を習っている講師(楽器会社所属)の会社から750万円かけてブラスバンドの楽器を一括購入したり、「だれがどこで決めて大盤振舞をしているのか?」と話され、経営トップが大学を食い物にしていることが問題にされた。
 そして、教育機関としてあるべき大学が、経費節減といって職員を非正規雇用化したおかげで業務が滞ったり、利権には散財するのに図書費を削ったり、目先のもうけを追い求めて学費を上げたために入学希望者が激減したり、「大学が大学でなくなる」状態への危機感が高まり、正常化を願う大学関係者らの決起によって、今春2人の経営トップは大学を追われていた。
 4月に中尾市長は、江島ブレーンにかわって自身のブレーンである本間総務部長を理事長に、競艇事業局にいた藤田氏を事務局長に抜擢して新体制が発足。江島体制から中尾体制に移行させた。大学内では荻野学長が「調査委員会を置いて、これまでの実態を解明する!」と豪語しはじめ、藤田事務局長が帳簿をくったり、関係者に聞きとりをするなどして、不明瞭な金銭関係の調査を進めていたといわれている。
 今回の辞職について、背景に何があったのかをみなが疑問に感じている。関係する人人の話では、昨年、唐突に発注して焦げ付いた講義棟のトイレ改修工事を巡って調査委員会が設けられ、9月末には学長・理事長に「報告書」が提出されていたこと、責任追及されるべき人物として、具体的には植田前事務局長とグループ長の名前が記述されていたことが指摘されている。実態解明の過程では、前事務局長の右腕とされていた幹部職員が心労が災いして急逝する出来事も起きていた。
 そのなかで、前事務局長やその下で働いてきた現在の事務方グループ長ら、追及される側と中尾体制側の確執が深まっていた。そして、オープンキャンパスの打ち上げの席で藤田氏が日頃の鬱憤を吐き出して部下を叱責した場面を一部職員グループが動画で撮影し、動かぬ証拠として学内のセクハラ・パワハラ調査検討委員会に提出。一転してパワハラ容疑の大騒ぎになっていた。「酒癖の悪さで足下をすくわれ、最後は本人自身が嫌気がさして辞めたのだ」「なにも真相解明はなされていないのに、途中で放り投げた格好だ」「大学でいったいなんの抗争をしているのか。こんなことがいつまでも続くこと自体が異常だ」と語られている。
 直接のきっかけになった講義棟のトイレ改修は、昨年度、植田前事務局長の采配でいつの間にかシモケンに約3700万円で発注し、契約書では前払い金は四割と記載されているにもかかわらず、6割(2260万円)を支払っていた。その際、保証もとっておらず、きわめてずさんな発注・契約が交わされていたことである。
 市立大学がトイレ工事を発注した昨年12月は、シモケンが海響館前の立体駐車場を市に無断で売却したのが問題になり、落札していた豊北・道の駅の工事契約議案(約2億5000万円)が議会で否決されていた。資金繰りが危ない代議士関連企業の救世主になったのが市立大学で、保証もつけずに巨額の資金を提供するという、通常ではあり得ない工事発注をしていた。しかも、およそ4000万円近い工事が大学内の十分な検討もなく発注されていたというもの。
 工事進捗率35%、1300万円相当まで済ませた時点でシモケンは事業停止となり、資金回収の見込みがないまま契約解除。6月末に仕切り直しの指名競争入札が実施され、長野工務店が新たに約3100万円で請け負った。これまでに支払った額と新たな発注金額を合計するとトイレ改修に5360万円も費やした。当初の予定よりもはみ出す1600万円分の損失を誰が責任とるのか、シモケンに支払って焦げ付いた900万円近くの損害については、発注業務を統括していた植田前事務局長の責任追及が避けられないところにきていた。その抵抗と抗争がパワハラ騒ぎや事務局長辞職につながったと語られている。

 責任重大な市長と議会

 大学関係者の一人は「辞職のきっかけになった“パワハラ”騒ぎにしても、いったい大学でなにをしているのかと思う。こんなことは独法化以前なら考えられなかったことだ。今からでも純粋な市立に戻して、市としての責任体制を明確にするべきだ。前局長のやってきた利権疑惑について、結局途中で真相究明を投げ出しかねないことを心配している。シモケンが海響館前の立体駐車場を市に無断で売り払っていた問題も、中尾市長は控訴せずに和解した。大学についても藤田氏を引っ込めて、次に送り込んできた事務局長が植田氏の直属の部下だった職員だ。手打ちした印象すら感じる。臭いものには蓋というやり方が一番よくない」と不信感を口にしていた。
 別の関係者は「新体制になってからも、荻野学長が以前在籍していた九州産業大学から知り合いの職員を引っ張ってきて“荻野体制”を敷こうとしたり、勘違いがはじまっている。大学は教育機関であって、だれの所有物でもない。ましてや私物化するなど言語道断。市大は下関市民の財産なはずだ。よこしまなものは一切整理整頓して立て直さなければ混乱が続くだけ。これが独法化の結末だ。市立中央病院が二の舞いになることを心配している」と深刻な表情で語っていた。
 下関で独立行政法人化の第一号になった市立大学であるが、この4年間で下関市から派遣されていた公務員はみな引きあげ、学問研究機関をサポートしてきた事務局は、十数人の正職員を除いてほとんどが短期雇用の嘱託、アルバイトに任されるなど、事務職員の非正規雇用化もいっきに進んだ。専門的な実務が継承されず、試験業務や図書館業務の滞りなど、各所にシワ寄せが顕在化した。
 そして下関市の監督責任が薄れるのとセットで天下り役人の私物化が横行することとなった。独法化とは、教育に責任をもった管理体制がなくなり、予算を握る事務局長および理事長が権限を握って好き放題になり、利権食い潰しの温床になることだ、というのが大学関係者たちの共通の実感となっている。
 2011年度から三つ目の学科として新しく「公共マネジメント学科」が設置され、市が17億7000万円を投じて新校舎の建設を進めているが、建屋がきれいになっただけではダメで、学生たちが貪欲に知識を吸収する学舎として、運営の在り方を抜本的に考え直さなければならないし、そのために膿をしっかり出すこと、これまでの問題点について曖昧に隠蔽していくのではなく、徹底的に是非を明らかにしなければ、市長およびそのブレーンによる私物化体制は何ら解決しないことが論議になっている。
 教育についてわからぬ役人が大学を私物化する体制を抜本的に改めること、教職員が協力した体制を回復し、人間育成の場として立て直すことが急がれている。また、大学という人材育成の機関で教育そっちのけの利権争いをやった結果、大学崩壊を招いていることについて、任命権者である中尾市長と議会の重大な責任が問われている。
 10月中旬には議会の市出資法人調査特別委員会で市立大学の決算が審査される。これほどの混乱がもたらされていることについて議会がどのような審査をするのかも注目されている。特別調査委員会のメンバーは田中義一委員長を筆頭に、吉田真次(20代の安倍派新人)、小熊坂孝司、林真一郎、松田英二、「日共」・江原満寿男、社民・山下隆夫、公明・藤村博美の8人(うち新人が4人)となっている。

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