いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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有権者欺いた中尾市政4年  来年3月に迫る下関市長選

 来年3月10日投開票の下関市長選まで残すところ3カ月をきった。25日には市役所議会棟で立候補者説明会が持たれたものの、現職の中尾友昭陣営と「日共」集団が様子見で参加した程度で、今のところ正式に立候補表明を済ませたのは現職のみという低調なものになっている。前回の市長選で「庁舎は建て替えません!」「満珠荘を老人休養ホームとして存続させる」等等と叫び、市民票をかすめ取って当選したのが自民党林派所属の中尾市長だったが、この四年をへて下関はどうなってきたのか検証することが求められている。選挙情勢とあわせて記者座談会を持った。
  まず、市民世論としては今度の選挙をどう見ているだろうか。
  解散総選挙と同じで、全般として冷めて見ている人が多い。対立候補がいないというのもあるが、選挙で有権者が選んだ候補が約束した政策を実行していくという信頼をへっちゃらで裏切るから、期待感がない。新庁舎にしても公約破棄、満珠荘も公約破棄で、そのことを謝るどころか居直っている。市議会でのやりとりを見てきて、「ろくでもない男だ」といっている市民も多い。商店の婦人が「公約だけが取り柄だったのに」といっていた。解散総選挙では公約破棄の民主党が叩きつぶされた。下関では民主党の上をいく裏切り政治がやられて、これにまずケジメをつけなければという意識は強いものがある。有権者をたぶらかした者の末路はどうなるのか、という点では民主党が先例を示していると思う。下関の民主党も中尾与党で「国政も市政もこんなことばかりやっているのか」と工務店のオジサンたちが話題にしていた。
 C どこに行っても新庁舎はみんなが公約覆しだと見なしている。「一部変更」と居直れば居直るほど、「なにいってるんだ」と。あと、消防庁舎を海峡沿いの埋立地に建設する問題についても、「どうしてあんな危険な海縁につくるのか」という声が根強い。公約の一つ一つや個別の問題もあるが、大型箱物もそっくりそのまま継承して、「江島と変わらないじゃないか」と語られている。
 設計会社の関係者は「地元発注率90%達成」という四年間の成果自慢について疑問を語っていた。「市外業者も市内に事務所を構えていれば“地元”にカウントされる。幽霊事務所に電話一つ置いておくだけでも“地元”扱いされる。だから、あれは計算方法に問題がある。私たちの業界に限って見てみると、ほんとうの地元発注率は3割くらいだと思う」といっていた。
 別の土木会社では、「県土木の工事もピーク時に30億円ほどだったのが8億円くらいに減った。市の工事にしても地方経済の景気底入れをやるなら、地元業者に回るような小さな工事をあてがう工夫がされればいいのに、末端には回ってこない。総合支所や消防庁舎も地元Aクラスが落札したが、建築会社の大きいところだけが満腹になって、他には恩恵がない」といっているところもあった。中尾市長になってから、ダンピング防止で土木建築関係の公共工事については落札率の下限を八五%に引き上げた。これは国、県に右へ習えで全国的な見直しが進んだのに追随した結果だ。しかし測量設計や印刷、解体などいまだに過酷なダンピング競争にさらされている。

 4年で差押え約1万件 大型箱物のうえに 

  「選挙どころではない」というのが大方の市民の実感だと思う。下関の経済的な衰退が急速に進行していることをみなが心配している。そのなかで脳天気に大型箱物もオンパレードで、駅前開発や観光施設整備など、不要不急の投資ばかりがやられている。中小企業で働いている婦人が「どうしてお金がないのに、あれだけ箱物をやるんだろうか?」といっていた。同じ会社で働いている従業員の男性が市税を誤って滞納していたことがあって、市役所が給料を差押えにきたことがあった。「市民がどんな思いで税金を納めていると思っているのか」といっていた。
 飲食店を経営している男性も固定資産税が払えず延滞していたら、最近市役所が取引先の納入業者に先回りして差押えられていた。納入業者が親身になってくれたからよかったものの、信用をぶち壊して店が潰れかねないようなこともへっちゃらでやると怒っていた。年寄りが年金を差し押さえられて困っていたり、企業が商売道具のトラックを差し押さえられたり、子どもの学習保険も解約させられたり、相当数の市民が財産差押えにあってきた。
 E 12月議会で本池市議の質問に財政部長が答えていたが、差押え件数はこの4年間毎年のように増えている。4年前に1634件だったのが昨年は2732件。年間件数だけでも1000件以上増えた。のべ1万件に近い。12万世帯の市でこれだけの人人が差し押さえられている。それで市民税がどうなっているかというと、平成20年度に172億2900万円(うち法人分40億7000万円)だったのが23年度の実績は151億4700万円(同33億4600万円)まで減った。リーマン・ショック後の状況を反映しているが、わずか3年で21億円も激減した。個人分だけで14億円も減少している。いかに市民の所得が減っているかを示している。それで滞納してしまうと、問答無用で差押え魔が襲ってくる。
 ある90歳を過ぎたお婆さんが、昔商売をしていた関係でビルを持っているが、その固定資産税を払うのに年金を注ぎ込み、貯金を取り崩してなんとかしのいできた。解体して売りに出そうと努力もしてきたが、解体費用だけで9000万円かかるといわれ、不動産会社にかけあってみるが売れない。とうとう手持ちの蓄えが底をついて、このままでは生きていけないと生活保護課に駆け込んだら「財産を処分したらよい」といわれ、それが難しいから悩んでいるのにどうしたものかと困っている。高齢者も多く、市全体としての窮乏化は深刻だ。そこに税収確保でガンガン取り立てをやるし、職員を駆り立てている。しかも集めた金を箱物に散財したり、浮薄な観光行政に注ぎ込むから市民は怒る。誰のための市政で、市民は税金を納める意味があるのか? とみなが話題にしている。「国政も市政もソックリで巻き上げるだけ巻き上げて国民や市民の生活を心配しない」と。
 財政部長は歴代総務省からキャリア官僚が天下って指揮をとっている。郷土愛など関係ない者がトップにつくから差押えも容赦がない。「キッチリと税金をとり立てた分、戻ったときに実績になるのだろうか?」ともいわれている。少し滞納しただけでも罪人扱いされるのが特徴だ。自民党が憲法「改正」とかかわって「国民の権利が守られすぎている」といっているが、国民を見たら敵と思えを先駆けでやっているのか、下関では駐車禁止の重点地域が設けられたり、中心市街地でタバコを吸ったら警察OBが「1000円払え」と取り締まったり罰金刑だらけになった。警察OBの天下り先確保とセットのビジネスだ。それを市が条例化する。
  年の瀬も迫っているのに、師走の街に活気がない。商店でも企業でも、産業政策のなさを問題にする声は多い。海峡マラソンや馬関祭り、花火大会、先帝祭など催し物はよその街に比べても多く、表通りの華やかさばかり追いかける癖がある。それで一歩路地裏に入ったら駅周辺など廃屋だらけでゴーストタウンになっている。銀行が主導する形で区画整理や開発は次次とやられ、そのためのライフライン整備にも巨額の税金が注ぎ込まれてきた。スクラップにしては新規需要を創出する繰り返しで、結局だれがもうかっているのか見てみたら、山口銀行をはじめとした金融機関と事業にかかわるごく一部の業者、政治家周辺だ。大型公共工事があいつぐのも、指定金融機関として市のカネを一手に扱っている銀行が、不況で融資先がないから、倒産することがない地方自治体にまぶりついているにすぎない。

 地域振興の予算出さず 合併した旧4町 

  合併した旧4町でも中尾市政の4年はなんだったのかという意見が多い。「口先ばっかりじゃないか」と共通して出される。地域内分権を叫んでいたから期待していた住民もいたが、なにも変わらなかった。だから地域審議会で支所長が糾弾されたりしている。地域振興の予算を出さないのが特徴だ。タウンミーティングといって市長が来たときに直接お願いすると調子だけ良くて、「おい、支所長しっかりやれ!」というがそのときだけ。「億単位の予算を求めているわけではないのに、なにも進まないのだ」と地域審議会の人たちは語っていた。地域内分権も名ばかりだった。公約破棄と口先政治を問題にしている市民は多い。
  江島ブレーンがむちゃくちゃな利権をやった市立大学に続いて、中尾市政が中央病院を独法化して8カ月たった。事務局幹部には江島市長の親戚といわれる人物が天下った。病院や職員の実情におかまいなく行政がごり押ししたツケで、看護師が大量に辞めて病院が混乱している。六階病棟も閉鎖したままだ。大学は学生にとってどうかが抜け落ちて天下り役人が利権の巣窟にし、病院も患者にとってどうかが二の次になって、「今月の収支」で看護師や医師を追いまくっている。
 市場原理でもうかりさえすればよい、といって役所OBが采配を振るった結果、「市民病院で命を失ってはたまらない」と患者が敬遠すれば元も子もない。市立大学でも独法化以後に志願者が激減している。市民の安全と生命を守るのが消防なのに、津波や高波で真っ先にやられる海沿いに建設するのと同じで、消防の使命、大学の使命、病院の使命を否定して、それ以外の利害や別目的から事業を進めるから大矛盾になる。共通している。
  「中尾をやめさせろ!」が市民のなかでは強いが、その中尾市長は市職員に「率先して退職するように」「やめろ」と市役所内で退職者を募っている。辞めるべき人間が転倒している。希望退職する職員には二割増しで退職金を支給する制度が今年度で終わりになる。本来なら6月締め切りの退職募集が、今年は年末になって2回目の募集がやられている。市長を1期やるだけで2500万円の退職金が出る。吉川副市長も1400万円。そういう部分には手を付けないで、歳出削減はもっぱら市民サービスや職員の非正規雇用化に転嫁されている。
  江島市政と何が変わったのか考えたら、税金のとり立てがきつくなったことや、江島ブレーン企業から中尾ブレーン企業及び支援者がイイ事をする体制に切り替わったくらいで、圧倒的な市民の感覚からすると、「江島と大して変わらないじゃないか」というのが大勢を占めている。学校給食の調味料まで林派企業に切り替わったと驚かれていた。
  江島前市長は前回の選挙で告示2週間前までねばって断念に追い込まれた。市民から蛇蝎の如く嫌われて、最後は安倍代議士にキズがつかないようにという力が動いた。市民世論によって引きずり下ろされた。それが来年春の参議院補選で自民党県連に担がれることが決まって、「あんな男が国会議員になれるとは…」と市民はたまげている。市民にどれだけ嫌われても代議士に見初められたら出世する。おかしな関係だ。自民党が有権者の16%の得票で国会の6割の議席を席巻した。選挙を国民から取り上げて、シラケさせたもとで組織票によって「先祖返り」した。今ならだれでも通るくらいに思っている。国会も総翼賛化しているが、下関や山口県は早くから総翼賛化していることとかかわって、江島出馬のような事態が進行している。
 B 選挙だけでなにかが変わるという期待がまったくない。公約をしても破棄するからなおさらだ。下関でも市政を突き動かしてきたのは市民運動で、市民世論によってしか変わらないことは証明されてきた。中尾市政になって多少の手直しがやられ、入札制度を少しだけ改善したり、学校統廃合が延期になったりしたのは、その力が働いたからに他ならない。
  衆院選前のどさくさに紛れて、安倍派乱立のなかを林派が市長ポストをもぎ取っていったのが前回選挙だった。安倍派に遠慮しながら安倍代理・林代理市政をやってきて4年たった。この4年間がなんだったのか、市民の論議を通じてもっと検証されないといけない。裏切りの末路は民主党と同じで、まともに対抗馬が出てきて選挙がやられれば、林派の自力だけでは当選もおぼつかないのが実態だ。
  前回選挙も告示直前まで候補者が二転三転した。安倍派のなかでは「西高出身の50歳現役キャリア官僚を安倍事務所が口説いている」とかさまざまに語られているが、江島であれ、中尾であれ、キャリア官僚であれ、だれがなっても安倍代理・林代理で全国先端の市場原理市政が貫かれていく方向だ。江島体制を崩壊させたのはまぎれもなく市民の世論と運動だが、江島打倒の機運に乗っかった中尾市政があだ花のように散っていき、「先祖帰り」を願望する力も動いている。あるいはこのまま進行して、安倍事務所、林事務所に認定された中尾体制が、無風選挙をへてデタラメをやり続けることも想定される。市民の側から見たら、安倍派がダメだから林派が良いとはならないし、その逆でもない。
  「だれがなっても同じ」と多くの市民が語るが、トップの首だけ変わっても下関の政治構造自体をひっくり返さなければどうにもならないというのをあらわしている。国政では有権者から浮き上がった「コップの中選挙」で安倍首相、高村自民党副総裁、河村選対局長、林大臣と山口県出身者がポストを総なめにしたが、今後、山口県内や下関市において国政レベルでやろうとしていることを率先して持ち込み始めることは疑いない。
 早速、米軍がF35戦闘機の岩国配備を打ち出した。アメリカに見初められて中国との代理戦争すら始めかねない。前回の安倍内閣で下関は臨検港に指定され、「北朝鮮が攻めてきた」といって全国初の実働訓練がやられた。その後も米軍が重要港湾に指定したり、軍事的要衝として軍事都市化されてきている。天皇皇后が3000人の警察を連れてきて戒厳令を敷いたり、オスプレイが関門海峡を通過するデモンストレーションがやられ、下関の市街地上空を全国初の飛行訓練場所に選んだのも情勢と無関係ではない。軍事的な緊張も激化している。
  貧困と戦争政治に対して、全市民的な世論と行動をどう広げて形にしていくかが要になっている。市民運動では市民の会が唯一の対抗勢力として、私心なく「30万市民のために」とゴミ袋値下げ署名から満珠荘存続運動、MCS閉鎖撤回などさまざまな運動の中心になって存在感を発揮してきた。市民の会の運動を中心にして、さらに市政を動かしていく力を大結集することだ。
  江島体制を打倒した力が市民を欺いた中尾打倒に向いている。選挙情勢は流動的だが、この力が市政を動かす最大の原動力になる。争点を鮮明にさせることだ。

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