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安岡沖風力反対の会が報告会 大衆行動で環境調査阻止を

恫喝告訴打ち破る方向を論議

 安岡沖洋上風力発電建設に反対する会(有光哲也会長)は27日、下関市の川中公民館で、「安岡沖洋上風力発電建設反対住民集会」をおこなった。集会では反対の会から、前田建設工業による住民四人の告訴を含めた最近の風力建設をめぐる状況が報告され、今後どのように運動を進めるかについて活発な発言と論議がおこなわれた。住民集会には安岡地区や綾羅木地区をはじめ市内各地から約200人が参加した。
 
 弁護士頼みの運動では勝てぬ 10月には下関駅前でデモ

 はじめに有光会長がマイクを握り「当初、前田建設は今年4月に工事着工を予定していたが、みなさんの風力反対運動のおかげでそれができなかった。昨年、住民の反対で夏と秋の環境調査ができなかったからだ。これに対して県は四シーズン調査せよといい、前田が再度調査をするところにきている」「海の調査については、風力に反対している安岡の漁師に妨害されないために、前田から1000万円の手付け金をもらっている下関外海漁業共励会がアマ漁の禁止を打ち出して牽制してきたが、そうした権限がないことが明らかになった。そして24日の海の調査は漁師の抗議で中止になった。もし前田が強行すれば漁師の操業妨害になるものだ。陸の調査は、今年の7月末(夏)と10月(秋)に予定されている。調査を終えればすぐに準備書を出す。そして前田は12月に工事の届けを出すといっている」とのべた。
 続いて司会が、今回の前田建設の告訴について、「昨年、前田建設が環境調査のために機器を設置したことに対して住民が夜中の二時半頃まで抗議し、8月は前田に撤去してもらった。9月は機器を丁寧に返却したが、そのときオイルが漏れていたということで、威力業務妨害と器物損壊容疑で4人が告訴された。4人だけが抗議したのではなく、100人近くの大勢で抗議したものだ」とのべたあと、弁護団である沖田法律事務所の道山智成弁護士が説明に立った。
 道山弁護士は「器物損壊罪というのは意図的に人の物を壊した場合に成立するもので、今回は意図的ではないので成立しない。過失で物を壊した場合、損害賠償という民事事件となるがまだそういう動きにはなっていない。今回の告訴の目的は、前田建設が夏の環境調査をおこないたいための嫌がらせ告訴だと見ている。逮捕したい、裁判したいというのでなく、もっぱら今後の調査の牽制だ」とのべた。
 風力発電の建設をストップさせるうえで、当面、環境調査阻止が焦点であることが浮き彫りになるなか、会場の参加者から弁護士に次次と質問が浴びせられた。
 住民「前田建設がまた調査機器を設置すると思うが、それを発見したとき、どう対処したらいいのか?」
 弁護士「機器をトラックに積んで前田の所へ持っていくというようなことは控えてもらいたい。抗議文書を出すことは大いにやってもらいたい」
 住民「文書を出しているあいだに調査が終わってしまったらどうするのか?」
 弁護士「前田は恐らく強行するでしょう。準備書が出て市長と県知事意見が出た段階で、行政処分取り消し訴訟をすることになる」
 住民「機器にさわったり動かしたりしてもいけないのか?」
 住民「昨年、通行のじゃまになるからといって撤去をさせた箇所もある。それでも撤去してはいけないのか?」
 住民「そういう場面にあったとき、指をくわえて見ているわけにはいかないでしょう!」
 住民「弁護士さん、悪知恵は何かないですか?」
 弁護士「手を触れて壊れたら器物損壊の罪になる。違法な行為をするのは勧められない」
 安岡地区のある住民は「3日前、前田建設が海の調査をやろうとしたところ、漁師さんたちが抗議して中止させた。同じように陸上の調査も止められないか。県は環境アセスについて、住民によく説明して納得させたうえで実施しろといっているが、一回も説明を受けたことはないし、抜き打ちで暗くなってから機材を設置してやっている。触ってもいかん、動かしてもいかんというが、そのうちにも前田はどんどん手続きを進めて何も打つ手がなくなる。調査をやめさせる方法は何かないのかということを弁護士さんに聞きたい」と発言した。弁護士はしばしば返答に窮し「法的に止める方法はない」と答えた。
 風力発電の建設をなんとしてもストップさせたい、だから調査を絶対に阻止したい、そのためになにかいい知恵はないかと次次に手を上げて意見をのべる住民と、「違法行為をしてはいけない」をくり返す弁護士との対比が鮮明になった。住民からは「住民がみんな反対しているのだから、市も警察も場所の使用許可を出すなと圧力をかけよう」との意見も出された。
 風力反対運動も弁護士主導の裁判頼みでは勝てないし、これまでのように住民の団結した大衆行動こそがもっとも力を持つのだということをみなが再確認する場となった。
 弁護士二人は途中退席した。

 郷土守る全市的団結を 横野の会も発言 

 次に告訴された四人のうち一人のメンバーから、集会参加者へのメッセージ(録音)が流された。
 家族の熱い支えの下で下関市民のため、次世代のために最後まで頑張る決意を、参加者は感動を持って受けとめた。
 続いて横野沖洋上風力発電建設に反対する会(横野の会)が、活動報告をおこなった。会の事務局長は、「風車設置予定地から一番近く、低周波による健康被害が懸念される横野町が“目に見える活動”をしなければ、最悪の場合、自分自身が後悔することになるし、先祖にも申し訳ない。さらには子々孫々にまで迷惑をかけることになる」ことから会を立ち上げたとし、昨年10月から毎月1回、横断幕・幟・ハチマキで国道沿いに立って街頭アピール活動をおこなってきたこと、笑顔で小さく手を振り静かな闘志で活動することをモットーにしてきたこと、参加者は6月の第9回でのべ1935人に達したことを報告した。
 他地区や遠方からの参加者も増えており、「萩、宇部、防府、大津、北九州から参加された先生たちは、はじめ自然エネルギーを利用する風車はいいものと思っていたが、実際に行動に参加してなぜ反対しているかよくわかった、子どもたちに本当のことを伝えたい、といっておられた」とのべた。
 横野の会と車の両輪として反対運動をおこなっている横野町自治会の自治会長が発言に立ち、「風力反対は住民運動だが、これはたたかいだ。負けたら先祖伝来の土地から出ていかないといけなくなる。妥協することなく頑張りましょう」と発言。先日開催した横野町自治会の臨時総会の模様についてふれ、「風力について、はじめは国の進める再生エネルギーであり反対する声は少なかったが、学習するなかで低周波による健康被害が明らかになった。前田の環境調査も、終われば建設条件が整ってしまうことが明らかにされ、反対の声が集約された。前田の刑事告訴ととり調べのなかで、前田側が調査現場の膨大な写真、ボイスレコーダーによる音声の収集をきっちりおこなっていたことを知り、風力反対を抑え込むために機器を放置し器物破損を誘っていたことが明らかになった。だが、住民告訴は報道によって住民全体に広がり、反対の機運が高まり、各自治会長が住民から突き上げられ、各地に幟や看板が立つようになった」「今後、横野町510世帯を五ブロックに分けてミニ集会を開き、みなさんの声を聞き、情報をもっと届けて、団結して反対運動を強めていきたい。この動きを地域全体にも広げていきたい」とのべた。
 また、安岡連合自治会執行部が8日、「昨年、前田建設と下関市に対し風力に反対する決議書をあげている以上、改めて同じ行動をおこなうことはしない」「地域住民へ反対行動への参加よびかけは一切おこなわない」「建設反対の幟やハチマキの購入、連合自治会主催のデモ行進は一切おこなわない」との見解を表明したことを報告した。会場から「執行部を変えるよう頑張れ!」との声が上がった。
 参加者は立ち上がり、「われわれは風力発電を阻止するぞ!」「頑張るぞ!」とシュプレヒコールをおこなった。活動資金援助のお願いが訴えられたほか、次回のデモ行進を10月4日(日)午後1時30分、下関市豊前田町の海峡ゆめ広場に集合しておこなうこと、「前田は“反対しているのは一部の住民”といっているが、多くの市民が反対していることを見せつけよう」と呼びかけて散会した。

 前田建設に告訴された住民のメッセージ

 昨年9月14日に前田建設がおこなった環境アセス調査に対して、100人近い反対する住民の方方とともにおこなったアセス調査の阻止に関し、私を含む4人が威力業務妨害、器物損壊の容疑で告訴され、警察に事情聴取された。そのときの真相、そして私の思いをお話しする。
 4月16日木曜日、朝8時頃、私が家の玄関を出ると刑事2人が声をかけてきた。「昨年9月14日の件でお話が聞きたい。会社はできれば休んでほしい」というので、「それはできない」と断った。会社で朝の段取りを済ませて1時間後に自宅に戻ると、車の中に入れられた。裁判所からの物品差し押さえ許可証を見せられて、家の中のノートパソコン、携帯電話、日記、チラシ等の資料等を預かるといわれた。チラシはここにはない、日記はつけていない、メールは携帯電話でしていると返答した。
 家の中を確認したいといわれた。その後、家に入り、妻に事情を話した。いつも冷静な妻だが刑事に対し錯乱して泣きわめきだしてしまった。「なんで家の中を見せないといけないの? 私たち何も悪いことをしていないのに。私たちは海を守りたいだけです!」と、憶するどころか泣きながら、刑事に訴える妻がいた。改めて背中を押された。妻に勇気をもらった。そして5度の事情聴取を経て現在に至っている。
 私が風車建設を知ったのは、2013年の10月頃だった。そのときは安岡に家を新築しようと、ある建築会社と契約寸前だった。
 私には3人の娘がいる。それから風車のことを調べれば調べるほど、低周波によって精神状態の不安定を招くことなどがわかってきた。家は断念せざるを得なかった。そして住民の多くがこのことを知らない事実に驚き、同じ子を持つ親として、地域のみなさんにお知らせし、みなさんで考えなければいけないと、使命感のような感情を持つに至った。
 そして、どうしたものかと悩んでいたときに、今の反対の会を立ち上げた方たちとお会いし、「チラシを配布して住民の方に知っていただきたい」と申し出たのが、私が反対の運動に参加するきっかけだった。
 前田建設が風車を建設するためには環境アセスを完了する必要がある。だから2014年の夏の調査から、多くの住民の方たちと手分けをして調査中止をお願いしてきた。調査は住民の理解を得ておこなうものと経産省や県からも前田建設に指導がされており、8月の二度の調査は前田建設が住民の反対意見を聞いて撤収してくれた。しかし9月14日は、調査阻止を前田建設が聞き入れてくれず、地域住民約100人が率先して調査機器を返却した。
 アセスをおこなわせてしまうと、風車建設に大きく近づいてしまうし、仮に今回建設がされなくても、将来他の企業が引き継ぐ可能性もある。今は反対運動が盛んだが、誰しもが年をとり亡くなってしまう。いつしかわれわれがいないとき、お金や仕事を与えられたそのときの住民代表者たちが判断を間違え、建設着工となることもありうる。だから風車建設を中止させるには、今機器を返却しなければならなかったのだ。
 前田建設のいう器物損壊についてだが、調査阻止の前に仲間に送ったメールで「先方の手で必ず片付けてもらいましょう。もし器物破損とかで新聞に書かれると、暴力ネタは無色透明の会にとってイメージダウンです。これを住民の方にもお願いしましょう」と送っており、故意に壊す意志がなかったことは警察も認めている。
 そして業務妨害についてだが、確かに前田建設からすれば利潤追求のための業務なのだろうが、われわれからすればそれは正当な業務としては到底理解できない。なぜなら私の会社では、地域のみなさんに反対されるような業務はしないからだ。地域の住民の方に断固反対されてまで、そして我慢させてまでおこなう企業の業務に正当性はあるのだろうか? 地域を守るという意味で、正当防衛で訴えたいのはこっちの方だ。
 なぜ利益のない私たちが手弁当で活動しているのか。なぜ地域のみなさんが忙しいなか集まって反対をしているのか。それは風力発電が本当に地域に不要であり、地域の次世代にもよくないものだからだ。

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