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ガザ虐殺停止求め世界同時行動 中東、欧米、アジア等各国で 「イスラエルは大量虐殺をやめろ!」 米国の停戦妨害も非難

英ロンドンで数万人が参加した「パレスチナのための全国行進」(17日)

イスタンブールでの大規模抗議デモ(17日、トルコ)

 各国の都市で17日、「即時停戦、ガザでの虐殺を止めよう!」との呼びかけで、2回目の国際統一行動がおこなわれた。45カ国以上、100以上の都市において、多くの人々がパレスチナへの連帯を示した。イスラエルによる大量虐殺とそれを容認する各国政府を厳しく非難する声が強まっている。ガザ南部における爆撃の激化や深刻な飢餓など人道状況も悪化するなかで、西側諸国の思惑に反して、世界中の人々が世代や人種をこえて結束し、即時停戦を実現させるための国際世論と行動が日増しに拡大している。

 

 ガザ北部から地上侵攻し、市民を南部へと追い込むイスラエル軍は、ガザ南部のハンユニスで空爆と地上部隊による激しい攻撃を続けており、19日までにガザで暮らす230万人のうち85%以上が家を追われ、すでに3万人以上が死亡、7万人近くが負傷した(ガザ保健省発表)。その大部分が子どもと女性だ。

 

 人々は南部の都市へと避難を続けるが、その過程でもヌセイラット難民キャンプ、ラファ、アルマワシ、ガザ市、ハンユニス、ゼイトゥーンなどの地域で空爆と地上攻撃により多数のパレスチナ人が死亡している。さらに電気供給を遮断されて酸素供給が中断したため、ガザで2番目に大きいハンユニスのナセル病院では患者8人が死亡。アルマワシでは、国際医療慈善団体「国境なき医師団」による避難民のための避難所を標的に爆撃がおこなわれ、職員の一部も犠牲になっている。

 

 また、イスラエル軍の砲撃が続いているため、世界食糧計画(WFP)は20日、「スタッフがイスラエル軍の砲撃を受ける危険性がある」とし、ガザ北部での援助物資の配達を一時停止した。WFPは「悲惨な人道的危機、特にガザ全域の食糧不安の危機を軽減するには“大幅に大量の食糧”が必要である」と指摘し、深刻な飢餓状況に警鐘を鳴らしている。

 

 国際司法裁判所(ICJ)は先月の予備判決で、イスラエルに対しガザで大量虐殺をおこなっていないことを確認するよう求めた。しかしイスラエルは現在、ガザに残っている都市への地上攻撃も公言している。

 

 現在、ガザ南端部ラファには避難者など150万人近くが密集して暮らしている。イスラエルは市民を1カ所に集めたうえで、12日からは陸・海・空からの爆撃を開始しており、連日空爆が続いている。また、イスラエル戦時内閣のガンツ前国防相は18日、来月10日ごろに始まる断食月・ラマダンまでにハマスがすべての人質を解放しなければ「ラファへの地上侵攻をおこなう」とさらなる侵攻を示唆した。

 

 こうした局面で一刻も早い停戦を求める世論が拡大するとともに、市民を爆撃の標的にするイスラエルに対し、国際的な批判が急激に高まっている。

 

イギリス 25万人が虐殺への抗議デモ

 

多くの人々がイスラエル大使館に抗議したロンドン(17日)

「治安維持」のためとして1500人の警官が動員された(17日、ロンドン)

 今回世界中でとりくまれた国際統一行動は、ガザ地区におけるさらなる人道悪化への懸念が急激に高まるなか、世界各国の市民がパレスチナ人への連帯を示すとともに、「即時停戦」を訴え、イスラエルによる大量虐殺を非難した。

 

 国際統一行動を主催したイギリスの連帯団体「パレスチナ連合」は声明で「世界がこれらの残虐行為を目の当たりにしているなか、パレスチナ連合はラファとガザの人々と連帯し、イスラエルの軍事侵略の即時停止とすべての敵対行為の停止を要求する」「われわれはガザの民間人に対するあらゆる形態の侵略を可能な限りもっとも強い言葉で非難し、国際社会に対し、イスラエルの人道に対する罪の責任を問う断固たる行動をとるよう求める」と訴えた。さらに「歴史的な規模の犯罪に直面している今、人権、正義、平和の原則への責任を再確認しよう。共に団結した声を高らかに上げ、私たちは変化を起こし、ガザでの大虐殺、そしてパレスチナ人民をあまりにも長い間苦しめてきた抑圧に終止符を打つことができる」と呼びかけた。

 

 イギリス国内では17日、約40カ所でデモがとりくまれ、ロンドンでは25万人以上もの人々がイスラエル大使館に向けデモ行進をおこなった。イスラエル大使館周辺でのデモは、昨年10月7日にハマスによるイスラエル攻撃が起きて以来初めてのことだ。抗議活動をとり締まるために約1500人の警察官が投入された。

 

 イギリス国内で行動が拡大している背景には、表面上では「停戦」を求めつつイスラエルがおこなう大量虐殺には目をつむって擁護し、パレスチナの人々を見殺しにする自国政府の欺瞞的な態度がある。英国議会は21日、ガザ地区の即時停戦を求める動議を採決する予定であったため、人々の抗議行動は採決前に「議会に圧力をかけよう」という主旨も含まれていた。この動議は、即時停戦とハマスに拘束されているイスラエル人人質全員の解放、そして「パレスチナ人民に対する集団処罰の停止」を求めて野党スコットランド国民党が提案したものだ。

 

 だが、採決を迎えた21日、「イスラエルをどこまで強く批判するか」で意見が分かれている主要野党労働党が、原案にあるイスラエルによる「集団懲罰」には言及せず、「人道的即時停戦」を求めるという修正案を提出。さらにスナク首相率いる保守党も、独自の修正案を提出し、内容は「人道的即時停止」「恒久的な持続可能な停戦」などを求めるかわりにイスラエルへの非難を薄めたものだった。英国政府は、ハマスがイスラエル人の人質全員を解放し、ガザの支配を放棄した場合にのみ停戦が可能だと主張している。結局、議会は3つの案それぞれへの採決を許可。投票の扱いに抗議した多くの議員が退場する事態となった。

 

激しさ増す抗議 殺戮擁護する米英への非難

 

 トルコの大都市イスタンブールでも17日、数万人が行進し停戦と人道支援を可能にするためラファ国境の開通を求めた。国内のさまざまな地域からあらゆる年齢層の人々が抗議活動に参加し、街路を埋め尽くし、人々はパレスチナとトルコの国旗を掲げて熱烈なシュプレヒコールと横断幕を掲げて、イスラエルがガザでおこなっている大量虐殺と民族浄化を即刻停止するよう訴えた。

 

 声を上げる群衆のなかで、「米国はガザにおけるイスラエルの大量虐殺に加担している」と批判するスローガンが何度も響き渡った。参加者の男性は「イスラエルは4カ月以上にわたり、パレスチナ人に対して大量虐殺をおこなっている」とのべ、さらに「米国は武器援助や支援を通じてこの民族浄化に加担している。米国はこの大量虐殺に対してイスラエルと同じくらい責任がある」と非難した。

 

「大量虐殺とシオニズムを終わらせろ」との横断幕を掲げ、パレスチナへの連帯を示すセルティックサポーター(17日、スコットランド)

 スコットランドでは17日、サッカークラブ・セルティックのサポーターがガザへの連帯を示し声を上げた。サポーター(通称「緑の旅団」)は試合前に声明を発し、「恥ずべき事に、ガザ虐殺が衰えることなく続いているなか、失われた3万人の命と、闘い続けている何百万人もの人々を追悼する歌に参加するよう呼びかける」とし、キックオフ前にアイルランドの歌「グレース」を歌う計画を詳述した。そして「『グレース』は愛、希望、喪失、痛み、不屈の精神、抵抗、そして自由の歌だ。恐れを知らぬパレスチナ人に敬意を表するために試合開始時に参加を」と呼びかけていた。

 

 当日、スタジアムのスタンドには「1万2000人以上の子どもを含む3万人以上が死亡した。大虐殺をやめろ。シオニズムを終わらせろ」などの横断幕が掲げられた。

 

 同クラブは1887年にグラスゴーで創設された。グラスゴーにはアイルランドからの難民・移民として逃れてきた人が多く、セルティックを応援することは、アイルランドから逃れてきた人々の癒やしや連帯のシンボルとなったが、それには過去のイギリス支配に対する反発があるといわれている。そのため、現在イスラエルによって抑圧されているパレスチナの人々に対する共感と連帯はとりわけ強く、セルティックのサポーターは何年も前から幾度もスタジアムで、パレスチナやガザの住民への連帯とイスラエルによる歴史的な抑圧に対し抗議のアピールをおこなっている。また同日、グラスゴー市内でもガザの大虐殺を止め、即時停戦を訴えるデモがとりくまれた。

 

 ドイツでは、大規模な抗議活動がベルリンとミュンヘンで開催された。17日に、世界の指導者や閣僚がミュンヘン安全保障会議に出席していたため、デモ参加者は会議の主要会場周辺に集まり、停戦を求めた。

 

 スウェーデンでは数万人の抗議参加者がストックホルムなどの都市に殺到した。また、オランダの首都アムステルダムの主要なダム広場も数万人の抗議者で埋め尽くされた。群衆は「今こそ停戦せよ」「大量虐殺を止めろ」「パレスチナを解放せよ」などと書かれたプラカードや横断幕を掲げた。イタリアでは、警察が抗議活動参加者を弾圧したヴェローナをはじめ、トリノなどいくつかの都市で大規模な親パレスチナ集会やデモがあった。

 

 ルクセンブルクでもガザ連帯デモに大勢の群衆が参加した。さらにアイルランドのいくつかの都市でも統一行動がとりくまれ、特にダブリンではパレスチナの自由とガザ地区のパレスチナ人との連帯を叫ぶデモ参加者が殺到した。

 

 オーストラリアのシドニーでは、ガザ地区のパレスチナ人と連帯する集会が開催された。ガザで包囲されている230万人のパレスチナ人に人道支援物資を迅速に届けるよう要求し、即時停戦を訴えた。韓国のソウルでは、大勢の群衆がパレスチナ国旗を掲げ、イスラエルのネタニヤフ首相を「戦犯」と呼び、イスラエルの虐殺を非難し反対の声を上げた。

 

イエメンの首都サナアでは200万人がガザへの連帯を示すデモ(16日)

 アラブ諸国でも強い連帯を示す大規模な行動がとりくまれ、なかでもイエメンとモロッコが先頭に立った。イエメンでは16日と17日の2日連続で数百万人もの人々がパレスチナ人と連帯して各地で行進した。イエメン国内での集会は、ホデイダなど他のイエメン地域に対してアメリカとイギリスが容赦ない攻撃を続けるなか、勇敢な人々の手によってとりくまれた。現地報道によれば、16日、首都サナアのアル・サビーン広場では、パレスチナ人への支持を示すため200万人の群衆が集まった。行進に参加した群衆は、「国の敵」としてアメリカ、イスラエル、イギリスを名指しし、「パレスチナ人民に対して戦争犯罪を続け、シオニストの実体を守り、支援するために紅海を軍事化しようとするアメリカとその同盟国を非難せよ」と叫んだ。

 

 イエメンのイスラム教フーシ派は現在、イスラエルのパレスチナへの大虐殺を阻止するため、イスラエルに向けて紅海を往来する船舶の通過の阻止を続けており、これに対し米英両軍が反発し空爆をおこなっている。だが、イエメン軍(フーシ派)も「イスラエルがガザ地区での虐殺を止めない限り容赦はしない」としている。

 

 モロッコの連帯団体は、今回の国際統一行動でカサブランカ、クナイテラ、サラ、アル・ジャディーダを含む主要都市において、120回の抗議活動がおこなわれたと発表。イスラエルがラファを攻撃しないよう要求し、大量虐殺の停止を求めた。

 

アメリカ 学生や労働者が主体に

 

ニューヨークでの抗議行動(17日)

シカゴでの大規模デモ(17日)

 米国内では17日、シアトル、首都ワシントン、ニューヨーク、シカゴその他さまざまな都市で大規模なデモ行進や集会がおこなわれた。

 

 また16日には、ニューヨークで多くの高校生や大学生を含む何千人もの人々が反イスラエルデモをおこない、授業を抜け出して集まった高校生らが「ラファから手を引け」「米国は対イスラエル援助を停止せよ」と訴えた。この行動を記録していたソーシャルメディアの動画や投稿には、警察がデモ参加者を取り締まり、数人を逮捕する様子が映っていた。

 

 ニューオーリンズでは数千人が湾岸全域の行動に結集し、デモ行進した。行動では米国によるイスラエルへの資金提供の停止、恒久的な停戦を求め、イスラエルに対し、「ラファに手を出すな」と声を上げた。主催者らは、今回の行動はパレスチナ問題をめぐるルイジアナ州史上最大のものだと発表している。

 

 また今回の国際統一行動とは直接的な関係はないが、米国内では16日、7つの全国労働組合と200以上の地方労働組合がイスラエルの侵略の停止を要求する連合「停戦のための労働党」の結成を発表した。イスラエルによる大量虐殺を止め、停戦を実現させるための大衆運動を23日から開始する予定だ。連合には、自動車労働者、客室乗務員協会、郵便労働者などをはじめ、ニューヨークやテキサス、カリフォルニア等各州の労働評議会や、教師などさまざまな業種が連帯して参加している。

 

 同連合は訴えのなかで、「正義への道は爆弾や戦争によって切り開くことはできない」と指摘している。さらに、「私たちは平和と正義を達成するためにパレスチナとイスラエルの人々と連帯して全力を尽くす。……戦争と武器売却の激化はどこにおいても労働者の利益に役立たない」とのべている。

 

 また、バイデン政府はイスラエルのガザ攻撃について「行きすぎ」だというが、「行動は発言と一致していない」と指摘。米国政府がイスラエルのネタニヤフ極右政府に数十億㌦の軍事援助を注ぎ込み、ネタニヤフ首相がそれを使って米国の武器請負業者から兵器を購入し、ガザで使用ていることを非難している。さらに連合は「ハマスとイスラエルはいずれも、民間人の福祉と安全に関する国際法の基準とジュネーブ条約の戦闘規則を遵守しなければならない。ガザでは停戦が必要だ。恒久的な平和に向けた交渉を進めるためには、暴力の連鎖を止めなければならない」と訴えている。

 

 今回、全世界で国際統一行動が企画されたのは、国連安全保障理事会のアラブ代表であるアルジェリアが、「パレスチナ民間人の強制退去を拒否」「人道的一時停戦」「妨げられることのない人道支援」「イスラエルとハマスの双方が国際法を厳重に遵守すること」を要求する決議草案を提出したことも大きく関わっている。

 

 各国の人々が即時停戦の同時行動をおこなった直後の20日、国連安全保障理事会でアルジェリアが提出した決議案の採決がおこなわれたが、またも常任理事国であるアメリカが拒否権を行使したため一次休戦決議は否決された。アメリカが昨年10月7日以降、ガザの停戦決議に拒否権を発動したのはこれで4回目となる。今回は理事国15カ国のうち日本を含む13カ国が賛成し、イギリスは棄権した。アメリカの拒否権発動には、中国、フランス、サウジアラビア、ノルウェー、ロシア、キューバなど多くの国に加え、人権団体アムネスティ・インターナショナルからも非難のコメントや声明が多く出されている。

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