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祝島 31人の署名つけ補償金受け取り拒否文書を提出 二月の無記名投票は無効

 上関原発計画に伴う漁業補償金10億8000万円の受けとりをめぐって、県漁協祝島支店(正組合員53人)の漁業者が22日、下関市伊崎町の山口県漁協本店に出向き、正組合員31人と准組合員8人の署名を付けて、改めて補償金の受けとり拒否を示す文書を提出した。漁業者らは、2月末におこなわれた「受けとり」を議題にした無記名による議決は無効であると主張し、分配等を県漁協が強行する場合は法的措置も辞さないと島民の意思を突きつけた。
 申し入れ書では、昨年2月に開かれた会合で、漁業補償金については支店内で今後一切の協議をおこなわないことを可決しているにもかかわらず、県漁協本店が主導して開いた2月末の議決は「承認できない」とし、「漁業補償金の受けとりを拒否します」と改めて表明している。また、無記名投票で議決がおこなわれたことなど「不当な方法で強行された」と指摘している。
 祝島の組合員によると、決議に異論をもった組合員らで16日に集まりが持たれ、その場では2月末の議決で賛成票を投じた者について責めるようなことはせず、不問に付すことをみんなで決め、一人ずつ署名捺印をしたうえで、断固受けとり拒否を貫く方針が確認された。県漁協が漁業補償金配分の動きを始めた場合には、配当禁止など仮処分の申請も検討し、弁護士に依頼するための依頼書手続きにもサインした。
 2月末の「漁業補償金受け入れ」騒動以後、これまで漁師と一緒に反対運動をしてきた島内の婦人たちは大いに心配し、全国の祝島支持者や子どもたちからも「どうなっているのか」と問い合わせが絶えなかった。状況がわからないという不安と同時に、怒りが広がっていた。このなかで、30年間反対し続けて、補償金を受けとらないことが原発建設阻止の最大の要因となってきたことや、3分の2の同意を得ておらず決議は無効であることを鮮明にし、「補償金は受けとらない」方向で再度一致していくことを決め、今回の申し入れに至った。
 県漁協を訪れた翌日の23日にも再度集まりが持たれ、反対派の漁師をはじめ島内の婦人たちなどたくさんの人が駆けつけたなかで、署名を県漁協に提出した経緯や今後も受けとり拒否を貫く方針が報告された。
 漁師の一人は、「祝島支店には1円たりとも振り込ませない覚悟で一丸となってやっていかなければいけない。なにかあれば訴訟を起こしてでも反対するが、裁判所は祝島の味方ではない。いずれにしても絶対に受けとらない」「この問題は漁師だけで決めることはできない大きな問題だ。全島民の意思が尊重されなければならないし、みなで団結して受けとりを拒否する」と語っていた。
 別の漁師は、「改めて31人が署名し印鑑まで押した。魚価の低迷で漁業が苦しいときに、県漁協はなんの対策もとらず衰退するに任せたままで、むしろ潰す側にいる。絶対に受けとらないで頑張りたい」と話した。
 島民のなかでも、「2月の総会の結果を知ったときはビックリしたが、また31人が受けとり拒否を示したことを知ってホッとした」「最後まで受けとり拒否でみんなで団結していきたい」と語られている。ある高齢の婦人は「これまで、死ぬまで反対し続ける覚悟で私たちも一緒に運動してきた。絶対に受けとりを認めてはいけないし、原発などもってのほかだ」と語っていた。県外から帰島して農業をしている夫婦も、「福島原発事故のように原発は一部地域だけで決められない問題になっている。祝島もまだ漁業権も放棄していないし、絶対に原発はできないと思う」と話していた。
 53人の漁師がわずか一千数百万円程度のお金をつかまされたくらいで、30年間の苦労を水の泡にし、郷土を売り飛ばされたのではたまらないという思いが、島全体で強烈なものになっている。福島第1原発の爆発事故で、故郷を追われた現地住民がいまだに避難所で段ボール生活を強いられ、廃棄物扱いされていることと合わせて、二の舞にさせてはならぬという思いも強まっている。それは単に、祝島だけが原発の目の前で生活を強いられ、危険と隣り合わせになるという代物ではなく、全県、瀬戸内海沿岸を廃虚にしかねない原発を許すわけにはいかない、という決意となっている。
 原発再稼働、新規立地に向けて巻き返しをはかる安倍政府や山本県政、下請になって動き回る県漁協との攻防が鋭いものになっている。このなかで、島ぐるみでたたかいを進めていく方向を鮮明にして、島民の団結をいっそう強める契機になっている。

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