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祝島に県漁協が警告文 委任状恐れた牽制

 上関原発計画にかかる漁業補償金の受けとりを拒否している祝島の漁協組合員らに対して、県漁協が8月2日に改めて総会の部会を開催すると通知している。6月末に県漁協本店が補償金配分案を決めて(祝島では配分委員会が組織されていない)、その配分方法を採択するための総会を予定していたが、受けとりに反対する組合員らが過半数をこえる委任状を集め、可決できない状況に追い込まれて1カ月以上が経過した。今回、再度総会の部会を開くにあたって、県漁協本店は「不当、不法な方法で委任状を求められたり、本人出席が妨げられるようなことがあった場合」「弁護士や警察に相談するなど適切な対応をとる」と記した「警告」なる文章を組合員らに送りつけている。無記名投票で切り崩したい中電、山本県政、その代理人になっている県漁協本店に対抗して、反対派住民らは委任状を集めて結束して対応にあたってきた。これをあわよくば犯罪行為としてでっち上げ、脅しを加えることによって補償金を受けとらせようと画策している。
 
 8月2日に総会の部会開催 懲りぬ新規立地の策動

 原発再稼働、海外輸出を進める安倍自民党が参院選で議席を総なめにするや、案の定新規立地の上関を巡って、最大の焦点になってきた祝島の漁業権問題に動きがあらわれている。人を脅してカネを巻き上げていくのではなく、祝島では脅して二束三文のカネを受けとらせ、漁業権を剥奪する財産強奪がくり広げられている。「補償金はいりません」と何度も断っているのに、「受けとれ!」といい、終いには「受けとりを拒むような真似をすれば、警察沙汰にするぞ!」とまでいっている。それほどムキになって受けとらせたいのは、祝島が拒めば「漁業補償交渉妥結」にならず、原発建設が一歩も前に進まないからにほかならない。
 6月末に予定していた総会が流れて以後、補償金の受けとりを拒否する組合員らは、准組合員も含めて39人(うち正組合員31人)が改めて拒否する意志を県漁協本店に示し、その際、①提出議案である「漁業補償金配分基準(案)について」の具体的な内容を明らかにすること。②配分案はどのような方法によって決められたのか。③祝島では配分委員会が組織されていないことについてどのような見解を持っているのか。④107共同漁業権管理委員会を構成している旧8漁協のうち、祝島のように影響補償の対象になった五漁協は、配分についての組合決定をいつ、どのような決議方法(可決割合)でおこなったのか。⑤予定されている総会の部会ではどのような決議方法(定足数、可決割合)でおこなおうと考えているのか、の5点について質問状を出していた。これに対して、県漁協側は「総会の部会の場で説明する」と返答し、質問にはいっさい回答しない対応を続けていた。
 補償金受けとりについては2008年頃から何度も祝島支店で総会が開かれ、その度に否決してきた。ところが今年2月に唐突に総会が開かれ、その場で無記名投票によって受けとり賛成が上回る結果となり、6月にその配分を進めようとゴリ押しする動きがあらわれていた。東日本大震災の後、水面下で反対派漁民の切り崩しを進めていたのが推進勢力で、「名前が表沙汰になったらマズイが、金が欲しい」という反対派の顔をした隠れ推進派が呼応して裏切りを開始した。この十数人が賛成に転じることが、原発推進勢力にとって頼みの綱となっている。コッソリと賛成票を投じさせるつもりが、委任状が集められて邪魔をされたと腹を立て、「警察沙汰にするぞ!」の脅しとなっている。
 なお、県漁協の警告文を受けて、久しぶりに島民の会の会合に出てきた山戸貞夫氏が、「刑事事件や裁判沙汰になるかもしれないから、委任状は集めない方がよい」と発言するなど、受けとり賛成派および県漁協側の援護射撃をしていることも、みなが「おかしなことだ」と話題にしている。
 委任状を集めることそのものはなんの犯罪行為でもない。もともと殴ったり蹴ったりして集めたわけでもなく、「みんなで受けとり拒否を貫こう」と呼びかけてお願いをくり返し、集めたものにすぎない。このいったいどこが不法で不当なのかは意味不明で、逆に警察に聞いてみなければわからない。
 むしろ、何度も受けとり拒否の議決をしてきたのを踏みにじってきたのは県漁協側で、それが組合員の議決権が侵害されるのはいけないといい、警察に相談するといっているから笑うに笑えない。祝島漁民の議決権を何度も侵害して“勝つまでジャンケン”を迫り、漁業権放棄の総会議決もないまま補償金受けとりだけを過半数で決め、配分委員会も作らないまま勝手に配分額を決め、終いには漁業権を剥ぎとろうというのだから、詐欺、財産横領などの罪で訴えられなければならないのは、中電や県政、県漁協側である。
 思い通りの可決がおこなえたときだけ、その結果を既定事実として手続きをゴリ押しし、否決された結果については何度でもひっくり返してじゅうりんする。議決権を侵害してきたのはだれか?は警察に相談しなくてもわかる。警察も警察で、仮に介入するならどんな顔をして事情聴取するのか、東日本大震災後の新規立地の突破口である上関において、安倍首相のお膝元でなにがやられているのか、全県・全国に事態を伝え、注目されないわけにはいかない。 

 全国注目する国策との斗い 内海漁業守る最前線

 原発推進勢力が執拗に補償金受けとりを迫っているのは、「漁業補償交渉の完全妥結」にもっていきたいからで、受けとりを拒み続けると原発計画は一歩も前に進まない関係にある。県漁協本店や商業マスコミが「補償金の受けとり議案を過半数で可決した」ことをもって、漁業権問題が完全決着したかのように扱っているのもインチキ極まりないもので、漁業権放棄をするためには総会の3分の2以上の同意と書面議決が不可欠である。「過半数」で決められるようなものではなく、31票対21票で、漁業権放棄を決議したとはいえない。正組合員53人のうち35票の賛成票が必要になる。いずれ総会で漁業権放棄への同意をとり、さらに組合員一人一人の同意をあらわす書面に署名捺印を得なければ通用するものではない。
 国策として持ち込まれた原発建設は、米国が総元締めになって推進し、経済産業省に連なる県政、立地自治体、議会、電力会社、日立や東芝、三菱といった原発製造メーカー、ゼネコン、商業マスコミ、金融機関、司法、警察、暴力団やヤクザ組織にいたるまで、あらゆる金力、権力を総動員して進められる。瀬戸内の人口3000人程度の小さな町にこうした権力が乗り込んでそれとの30年来のたたかいがくり広げられてきた。抗議行動をすれば数千万円の損害賠償を電力会社が吹っかけてきたり、金力、権力による脅しは今に始まったことではない。裁判になれば必ず中電や国策遂行の側に有利な判決が下り、買収選挙も警察はほぼ黙認状態。子どもや孫の就職先に至るまで圧力が加わったり、陰に陽に住民一人一人に攻撃が加えられることは、みなが経験してきた。町を丸ごと奪いとっていく力に対抗できるのは、全町の反対世論を束ねて強いものにすることとあわせて、全県、全国の団結できるすべての人人と連帯し、郷土を廃虚にする者との、共通の敵に対する共同のたたかいを発展させることが要である。
 米国の尻馬に乗って、TPPから消費税、原発再稼働にいたるまで、安倍晋三が有頂天になって実行し始めたなかで、首相のお膝元から新規立地を突破していく動きが顕在化している。福島第一原発はいまだ収束の見込みがなく、住民たちは故郷に戻ることすらできず放置されている。福島事故の戦犯で、全国に54基も原発を作ってきた張本人である自民党が反省もなく原発推進政治を復活させ、後は野となれで暴走している。
 祝島の補償金受けとり拒否のたたかいは、いまや祝島の島民だけの問題ではない。53人が家一軒建つわけでもない、はした金を手にすることと引きかえに、福島のように100㌔圏内の住民が生活圏を追われ棄民の危機にさらされるのではたまったものではない。瀬戸内海漁業、瀬戸内海沿岸の住民生活や産業を守る国益にたった、デタラメな国策に反対する斗争の最前線に位置している。安倍再稼働路線のもとで、新規立地を叩きつぶすことの意味合いは大きく全国的な注目を浴びている。

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