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自衛隊は何をしに南スーダンに行ったのか

 「戦闘ではなく衝突だ」「首都のジュバ市内は比較的安定している」-そういい張ってきた安倍政府が10日、突如として陸上自衛隊の施設部隊を南スーダンから撤退させることを発表した。新安保法制にもとづいて「駆けつけ警護」の新任務を与えられ、昨年11月に日本を発った11次隊の隊員(約350人)は、その派遣期間終了にあわせて活動を終え、5月末をめどに帰国するという。

 籠池会見の途中に緊急記者会見

 10日、全国が注目していた森友学園・籠池理事長の記者会見の途中に突然安倍首相の緊急記者会見が始まり、どこのテレビ局も籠池理事長の記者会見を打ち切って、自衛隊の南スーダン撤退を報じ始めた。


 緊急記者会見で安倍首相は、5年という過去最長の自衛隊派遣となる南スーダンで、自衛隊が幹線道路の整備など、「独立間もない南スーダンの国づくりに大きな貢献を果たしてきた」とのべ、「南スーダンの国づくりが新たな段階を迎えるなか、自衛隊が担当しているジュバにおける施設整備が一定の区切りをつけることができると判断した」といった。今後も南スーダンPKO司令部への自衛隊要員の派遣は継続し、「積極的平和主義の旗の下、国際社会と手を携えて、南スーダンの平和と発展のために貢献していく」のだという。


 2013年に内戦が再発した南スーダンでは、昨年7月にも自衛隊が駐屯する首都ジュバで大規模な戦闘が発生した。その後も大統領派と副大統領派の対立だけでなく、私設のゲリラ兵団が各地にあらわれるなど、「新たな国づくり」どころか内戦は泥沼化する状況にある。家や土地を追われた人人が難民となって隣国ウガンダやケニア、国内の難民キャンプに続続と押し寄せている。地方都市は行政機能が崩壊し、軍隊以外誰もいない町もある。農耕で生計を立ててきた人人は土地を追われて耕作ができず、食料危機の深刻さも指摘されている。


 砲弾が飛びかうなかで落ち着いて道路整備などできる状況ではなく、国連PKO部隊そのものも、戦闘が始まるとキャンプにこもり、逃げ込んできた住民を保護することくらいしかできていないのが実際だと専門家らは指摘している。


 こうしたなかで安倍政府は昨年、安保法制の強行可決によって「駆けつけ警護」の任務を付与して自衛隊員を遠くアフリカの地へと送り込んだ。閣議決定による憲法の解釈変更という抜け駆けをしただけに、武力行使は正当防衛・緊急避難の場合に限られ、誰が敵かもわからず、どこから弾が飛んでくるかも知れぬ戦場に自衛隊員は米軍用犬以下の装備で送られた。


 それでも政府は、「戦闘ではなく衝突だ」「国または国に準ずる組織ではない」などといった言葉遊びの答弁で真相を糊塗し、現地の自衛隊員たちが記録した日報さえ当初は「廃棄した」といって、防衛大臣すらその状況を把握していなかった。


 その後、黒塗りで公表された日報には、「戦闘」の表現が多用されており、戦車砲や迫撃砲、対戦車ヘリが飛びかう緊迫状況であることが明らかになると、稲田大臣は「憲法9条上の問題になるため、“武力衝突”という言葉を使っている」と開き直って答弁。さらに自衛隊の河野統合幕僚長は、「弾が飛び交っていたのは事実」としながら、「最終的に戦闘行為かどうかは政府が決定する」とのべ、「国会での議論」で野党に追及されることに留意して現地部隊には「戦闘」という言葉は注意して使うよう指示していることを明かすなど、紛争地帯に送り込んだ自衛隊員の心配ではなく、自衛隊員に安倍内閣の心配をさせるという本末転倒な姿を暴露した。


 そもそも道路建設であれば、自衛隊を派遣せずとも、その予算の一部を回すだけで、自衛隊が建設した数倍もの道路を建設することができると研究者らは指摘してきた。実際に現地の人人に知られているのは自衛隊ではなくJICA(国際協力機構)だという。にもかかわらず安倍政府が自衛隊派遣にこだわってきたのは、「安保法制国会通過よかったです!」の実績づくり、地ならしをしたかっただけであり、そのためだけに若い自衛隊員の命をもてあそんだのである。


 自らの立場が危うくなったとたん撤退を決定する-そのこと自体が、命がけで戦時下を生きる南スーダンの人人、そしてそのなかに貧相な救急体制と中途半端に武器を撃つ任務を与えられて送り込まれた自衛隊員の命に何の関心もなかった事実を暴露するものとなっている。


 世界でもっとも新しい国・南スーダンは、アフリカ大陸第5位ともいわれる豊富な石油資源を持つがゆえに、利権を巡る対立が激化し、独立からわずか5年で「破綻国家」と呼ばれるようになった。その将来的な開発を見込む「先進国」の積極的な和平への関与がその腐敗を助長してきたとされる。内戦終結が急がれる南スーダンにおいて日本はなにをすべきなのか。現地の実際状況を正確に把握し、日本独自の役割を発揮することが求められているなかにあって、「危険」な現実を「安全」といい替える政府の下では、有効な貢献などできないことが浮き彫りとなっている。

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