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税理士の会が「インボイス中止を求める国会決起集会」 中小零細やフリーランスをターゲットに “益税”と偽り実質は大増税

 インボイス制度の中止を求める税理士の会が3月30日、「インボイス中止を求める国会決起集会」を開催した。同会は全国の税理士41人が呼びかけ人となって立ち上がった有志のグループで、賛同人は3月13日現在、561人となっている。日本税理士会連合会が政府におもねってインボイス反対の旗を降ろす状況のなかで、インボイス制度が免税事業者を苦境に陥れるだけでなく、免税事業者と課税事業者、消費者との間で負担を押しつけあわせ、分断を煽る制度であること、そしてこの制度が消費増税とセットであり、事業者だけでなくすべての国民に影響を与えるものであることを明らかにし、10月導入の延期と制度の中止を専門家の立場から訴えた。与野党の国会議員やフリーランス、弁護士など他の業界からも参加・発言がなされ、インボイス制度の実態をより浮き彫りにし、連帯して制度導入を阻止する決意が語られた。

 

菊池純氏

 初めに挨拶に立った「税理士の会」の菊池純税理士は、「昨年11月2日に国会集会を開き、与党税制改正大綱が出る前にインボイスの中止を勝ちとろうと思って集まった。しかし、残念ながら中止にも延期にもならなかった。それどころか、昨年12月に発表された令和5年度税制改正大綱では『激変緩和措置』として、免税事業者がインボイス発行事業者登録する、すなわち課税事業者となる場合、『3年間に限り、納税額を売上高にかかる消費税額の2割とする』というものが出た。まず驚いたのは『激変緩和措置』という名前だ。財務省もインボイスが導入されたら激変することが分かっているということだ。同時に驚いたのは、今まで免税事業者への対策を国会で問われたとき、『インボイスがない免税事業者の課税仕入れでも80%仕入税額控除ができるようにし、それを3年間続ける。その後の3年間は50%の仕入税額控除をする』と免税事業者を守る政策をいっていたが、『激変緩和措置』は、免税事業者は課税事業者になりなさいというメッセージだ」と語った。

 

 日本税理士会連合会はその要望がとり入れられていないにもかかわらず、「要望が取り入れられた」として政府にすり寄ってホームページからもインボイス反対を削除したことを明らかにし、「今、税理士が免税事業者の声を聞き、本当に困っていることを感じているときに、税理士会がこのような動きをしている。本日の決起集会は、インボイスの問題は解決したという間違った空気を打ち破るために開きたいと思った。今こそ、われわれ税理士が、インボイスは大増税制度であり、国民になにもメリットがないことを訴えなければならない。インボイスによってもたらされた納税者間の分断をとり除き、納税者同士が団結して日本のためにインボイス制度の中止を求める会にしたい」と呼びかけた。

 

 集会では税理士によるリレートークを中心に、土建業や商工団体、フリーランスなどがゲストスピーカーとして発言。インボイス制度がどのような影響をもたらすのかを浮き彫りにしつつ、政党や業界をこえて10月のインボイス制度導入を止める決意が語られた。そのなかから、いくつかの発言を紹介する。

 

■消費税は「預かり税」ではない


           税理士 安藤裕

 

 今国会ではれいわ新選組の多ヶ谷衆議院議員のご尽力で、「消費税は預かり金ではない」と財務省に明言させた。たいへん意義のある今国会の答弁だったが、消費税の本質が、最初から間違って財務省によって宣伝されている。“預かり金である消費税を消費者からとっておきながらポッケに入れている免税事業者はずるい奴らだ”というレッテルを貼られ、「インボイス制度は悪いことをしているやつらから正しく税金を徴収する正義の制度だ」と理解している人が非常に多いと思う。

 
 消費税はたんに事業者に課せられた直接税であって、それを事業者が負担すると経営が立ち行かなくなるから、価格に上乗せして納税の原資にしているに過ぎない。そして価格競争力のない人は、価格に転嫁できないから、自分で利益を削って納税しなければならない。3%だったらまだいいかもしれないが、5%、8%、10%と上がっていき、中小企業の経営はものすごく苦しくなっている。だが、消費税の実態が国民のなかで理解されていないので、消費税が増税されても事業者の損益には関係ないはずだとみな思っている。

 

 税理士は顧客である中小企業の経営を見ているので、消費税が増税されるたびに収支が悪くなり、経営が苦しくなっていることを痛感している。税理士は本来、中小企業の味方、応援団として、税制改正のときに大きな声を上げ、消費税の改悪に対しては強い意志を示さなければならなかった。しかし、残念ながら今の日本税理士会連合会は自民党におもねる感じになっている。税理士は、税法が中小企業の経営にとってマイナスの方向で改正がなされるときは断固として反対しなくてはならない。そして日本経済が順調に成長していくための税制はどうあるべきかということを、専門家の立場からしっかり建議して実現させていく団体でなければならないと思っている。

 

 私もインボイス制度反対の声をユーチューブや投稿などで広めているが、「益税退治」というところから出発しているインボイス制度は出発から間違っている。インボイス制度の導入はとりあえず中止し、その後の消費税の減税、廃止に向けて頑張っていきたい。(前衆議院議員)

 

■インボイスの取り下げ件数が3226件に


            税理士 神田知宜

 

 インボイス制度ボイコット大作戦として、合法的にボイコットできる方法をツイッターやセミナー、最近ではれいわ新選組の街宣でマイクを持たせてもらい、話している。今日は登録とり下げについて情報を共有したい。

 

 ついに取り下げ件数が明るみに出た【グラフ参照】。この数字は国税庁からは出ておらず、問い合わせると「その数字はとっていない」という回答が来たそうで、初公開になる。2月末時点で、全体で3226件にのぼっている。私はこれを見た瞬間、思ったより多いと感じた。申請書や届出書を「取り下げる」という手続きは、ほとんど実務上やらないイレギュラーな手続きだ。それがインボイスにいたっては数カ月で3200件をこえている。そのうち約半分が法人で1657件、個人が1560件、人格のない社団法人が9件、合わせて3226件ということだ。

 

 この数字は「インボイス制度を考えるフリーランスの会(通称STOP! インボイス)」のみなさんが定点観測をして出したものだ。国税庁の毎月更新される全件ダウンロードの一次ソースをもとに、前月と当月の登録番号を比較し、前月の時点で登録されていた番号が当月の時点でダウンロードファイルからなくなっていた場合に、「登録取り下げ」もしくは「登録番号失効」ということで1件としてカウントしている。この数字のなかには廃業、合併、経営統合などにより登録番号が失効したと思われるものも含まれているということだが、それでも3200件をこえているのは異常なほど多いと思う。

 

 4月、5月と取り下げ件数が多くなればなるほど、延期・中止の可能性が高くなっていくと考えている。

 

■激変緩和措置が終わった頃に消費税増税も


           税理士 阿部徳幸

 

 今年の税制改正法に盛り込まれた「激変緩和措置」は、「免税事業者のみなさん、2割の納税でいいなんてことは絶対にあり得ないことだ。今回はそのようにしたのだから飲んでください」といっているように私は捉えた。しかしこれは経過措置であり、令和8年までだ。激変緩和措置が終わったあと、簡易課税を利用すればいいのではないかという話も出るが、インボイス制度が導入されれば簡易課税もなくなっていくのではないかと懸念している。

 

 さらに、岸田総理は「未曾有の少子化対策」といっている。それには財源が必要だ。消費税法一条には、消費税は年金、医療、介護、少子化対策に使うと書いている。だとすると、消費税率の引き上げも目に見えてくるのではないか。激変緩和措置が終わったころには簡易課税はなくなっている、税率は高くなっている、ということになってしまうのではないか。

 

 最近、テレビを見ているとやたら、ソフトウェア会社の「インボイス対応」というCMを見ないだろうか。そこには合わせて「電帳法(電子帳簿保存法)対応」とも書いている。デジタルインボイスという言葉も出てきている。中小企業やフリーランスは電帳法は関係ないと思っているかもしれないが、親会社が電帳法にもとづくシステムを構築するとそれに乗らざるを得ない。インボイスと同じ仕組みで、親会社の要望に応えなければ取引から排除されてしまう。

 

 インボイスをここで止めておかなければ、次、次と既定路線に乗っていってしまう。われわれはなんのために働き、なんのために毎日汗を流しているのか。帳簿をつくるため、税金を払うために働く世の中になってしまいそうだ。われわれが今要求しているのは、普通の生活がしたい、普通に仕事がしていきたいという、それだけのことではないだろうか。そもそも国は何のためにあるのか、ここをもう一度考えていただきたい。まだ時間はある。諦めずにインボイスを止めなければ、次のルートに乗ってしまうと大変なことになると改めて訴えたい。

 

■ヤクルトレディーにも課税事業者登録を強要


            税理士 岡澤利昭

 

 インボイス制度が引き起こす社会の混乱に焦点を当てて報告する。本当にこの制度はやれるのか? というのが正直な思いだ。つぶさなければならないし、つぶれるだろうと確信を持っている。

 

 まず一つ目に、税金の問題で国民が非常に対立する内容を抱えている。たとえば、最近入手したヤクルトレディースの会社が発行しているインボイス登録を依頼するリーフレットは、気持ちが悪くなるくらい「益税」という言葉一色で綴られている。たとえば、「現在、みなさんは毎月の販売手数料に消費税が含まれています=益税」「それが2023年10月からは全個人事業主が消費税(益税)をきちんと納めてくださいに変わります。益税が認められなくなります(納税は国民の義務です)」などと益税問題を書いている。そして「免税事業者とは」という説明では、「免税事業者は益税を納めない人、会社は益税を納める人」という感じで、「益税」一色で固められたリーフレットだ。それでもって、平均年収が100万~200万円くらいのヤクルトレディーの方々に無理矢理、課税事業者登録を強要しようとしている。

 

 また別の業界の顧問税理士がつくったリーフレットには、インボイス制度導入の背景ということで、「消費税は消費者が負担し、事業者が納付する税金ですが、小規模事業者は免税点制度を適用できるため、この適用を受けた小規模事業者の納付義務は免除されます。しかし、免除されてしまうことにより、益税問題が生じております。そこでインボイス制度を導入することにより、益税問題の解消をはかります」と書いている。最後の方には、インボイス制度導入後は、免税事業者との取引には10%の消費税を一切つけないと書いてある。これは違法取引になる内容だ。

 

 益税問題と違法取引のオンパレードだ。中小事業者いじめであり大問題だ。このようなことが今、社会にいいふらされ、税金問題で国民が対立する、課税事業者と免税事業者が対立する構図ができている。

 

 また政府は「一般消費者向けの小売業は関係ない」といっているが、顧問先のあるケーキ屋さんと話したとき、店のレシートには10%の税率が書かれているのに、インボイス番号がなければ、お客さんから「番号が入っていないのに、なぜ10%とるんですか?」と聞かれると凍りつくという話になった。小規模な寿司屋さんも「毎月何件か“領収書を下さい”というお客さんが来るので、辛いけど登録させてください」といった。政府の説明は偽りだらけだ。

 

 消費税問題が「益税問題」ということで国民に対立関係を生じさせるのは非常に問題だ。政府みずから出している税金に対して「益税」などという言葉がなぜ出るのか、まったく理解できないが、税に対して信頼がなければ、適正な申告と納税が担保できないのは当然の話だ。

 

 私は滞納問題の相談員もしており、年2回くらい電話相談がある。先日もそのときに出会った方の滞納案件が半年かかってようやく、一件落着したところだ。滞納問題に熱心な税理士は少なく、逆に滞納問題を相談すると契約を解除される問題もあるなかで、今回のインボイス制度はとんでもないくらいの滞納者を生む制度だ。

 

 すぐに滞納が生まれるわけではない。最初の3年は経過措置なので、たいした金額でないにしても、4年目からは本格的な課税に入っていくので税金は倍になる。現在、登録申請をしているが、おそらくウーバーイーツなどもそうだが、たくさんの免税事業者を抱えているところは、登録申請書には住所と生年月日を書かせて、「あとはこちらでやっておくから」という形をとっているところが多いのではないかと思われる。最近聞いた話では、保健所の説明会のときに、税務署の職員が来てインボイス制度の話をしたが、「登録したらお得になる」という話だけして、申告・納税の話はしなかったそうだ。登録の段階では、免税事業者なのに、なぜ課税事業者と書かないといけないのか? というところから始まって、わけのわからない申請書なので、会社の方が住所と名前くらいで書かせて登録してしまう。

 

 登録したら必然的に申告・納税の義務が発生し、翌年、確定申告書が送られてくるが、おそらくそれを見てもわからない。国税庁のホームページにたどり着いて、作成ソフトがわかれば、案外簡単だとわかるが、多くの人はそこまで至らず、放ったらかしにしてしまう。半年後くらいには「申告が出ていない」という連絡が来るものの、役所から文書が来ても封筒を開けない人も多く、読んでも訳がわからず、結局放ったらかしにしてしまう。しかし、放ったらかしの件数が多く、金額も少額なので税務署からそれ以上の追及はなく、そのまま2年、3年たち、4年後に突然、税務調査がおこなわれたときには、もう払える金額ではなくなっている。そのようなケースが多発することが懸念される。

 

 多数の無申告者が誕生し、その結果、大量の滞納者を生むということだ。今、税金の滞納の取立はサラ金以上にすさまじい。滞納問題がのちのち大量に発生することの深刻さをなぜ今の段階で捉えないのか。個人だけでなく2万件ほどの“人格なき社団”の申告が出ているが、まだ登録件数は1200件だ。そうした“人格なき社団”の数を数えていくと、とんでもない数の問題も出てくる。個人だけでなく、諸団体のインボイス制度の問題もかみ砕いていくと、いかに大変な制度かということがわかってくると思う。

 

■売上550万円でも消費税25万円の負担


          税理士 佐々木淳一

 

 私が関与しているお客さんであるネイリストの方は、令和2年にコロナ禍にもかかわらず必死に頑張った結果、売上が1000万円をこえた。すると令和4年は消費税の申告が必要になる。消費税はインボイスが入る前の現時点においても非常に重い負担だ。令和5年3月31日までに消費税の納税が発生するので、なんとかその額を売上の数%でもいいので貯金しておいてほしいということは1年前から伝えていたが、コロナ禍であり、また売上が1000万円こえていたとしても、手元に残る金額は非常にわずかなものになる。そういった状態で今年3月で申告を終えて、納税者の方に消費税負担が30万円になることを伝えたとき、やはり払えませんということになる。

 

 おそらくインボイス制度導入後の来年3月31日の消費税の納税期限は、現場は大混乱するはずだ。また滞納も非常に多く増えるはずだ。「滞納」と聞くと納税者が悪いという声をよく聞くが、私は制度が破綻していることを意味するところだと思っている。

 

 先ほど例に出したのは売上高が1000万円をこえている事業者だ。インボイス制度が入ると、売上高330万円の規模の小さな事業者であっても納税をしなければならない。その負担としては330万円であれば5万円、550万円であれば25万円といったように、これまで貯金すらできていなかった事業者にさらに追い打ちをかけることになってしまう。そのようなインボイス制度は絶対に入ってはいけない制度だ。税理士の立場からも、また一般の国民、消費者という立場から見ても、インボイス制度は導入してはいけない。

 

フリーランスの33%が廃業を視野に


             税理士 大矢良典

 

 東京税経新人会で会長を務めている。中野で税理士をしているが、中野といえばサブカルチャーの町というイメージが強いところだ。将来夢見る人たち、現時点でフリーランスとして頑張っている人たちのうち33%が廃業を考えているという話を聞いた。

 

 憲法22条で職業選択の自由が謳われているのに、税制そのものが職業の選択の自由を奪うのはいかがなものかと思う。もともとエンタメ業界は一握りの人が活躍できる厳しい業界だ。しかし夢を持って活躍している人たちが大勢いると思う。

 

 そういう人たちの夢を、選択する自由を、税制で奪ってしまうのではないか。まずはそのような税制が問題だ。

 

 私のお客さんのなかにも劇団の方などおられるが、以前から消費税の申告をされていた方たちもコロナ禍で免税事業者になってしまった。そういう方たちは申告と納税を免除されているが、売上そのものが減っている。つまり所得が減っている。

 

 生活もその分厳しくせざるを得ない。そういう人たちが今後、免税制度を選択できず、インボイス導入によって課税を選択するところに追い込まれてしまえば、生活できなくなる。そうなってくるとまず生活はしないといけないので納税資金など確保できず、お金を貯めることができなかった人は滞納の問題に追い込まれる。税制そのものが生活を脅かす、職業選択の自由を奪ってしまう。こうしたインボイス制度はあってはならないものだと思う。

 

■税度導入の狙いは課税強化と増税

        弁護士 平松真二郎


 インボイス制度といわれてもよくわからないのがわれわれの業界の実情だと思う。登録したらどうなるのか、事務所のなかで勉強会を重ねてきたところだ。これまで免税業者であった場合に、登録を事実上強制され、納税が強制されてしまう。そして登録をしないということで取引から排除される恐れがある。報道もされるようになったが、個人タクシーなどで登録していなければ、駅前での待機ができなくなるのではないか、われわれの業界でも冗談半分だが、登録しなければ弁護士会などが実施している法律相談の担当がこれまでと同じようにできるのかといった話も持ち上がっている。

 


 インボイスが導入されることでさまざまな不利益が、とくにこれまで課税されていなかった人たちに生じていく。インボイス制度に疑問を持って登録しない選択をすると、これまでの取引から排除される可能性がある。このような問題のある制度を、空疎な架空の「益税」の存在をあげて導入するということだ。やはり制度導入の本当の狙いは、これからいろんな形で消費税の課税強化、増税ではないかとも思うようになった。弁護士も一人の個人事業主なので、これまでの消費税導入以来の経過を踏まえて、この制度が本当に必要な制度なのかというところから反対の声を上げていきたいと考えている。(自由法曹団前本部事務局長)

 

■STOP! インボイス署名は20万筆へ


        フリーランスの会 小泉なつみ

 

 この法案は2016年に通っているそうだが、この7年間、メディアや政府広報などでこの制度について目にすることはほとんどなかったのではないか。CMを打てるはずなのに打って来なかったし、周知のタイミングはあったはずなのに、なぜ知らずに来たのかがすごく不思議だ。この活動を2021年12月に始めたが、署名サイトをつくるときにどうしても知識をつける必要があり、税理士の先生方にお願いしてインボイス制度とはなにか、消費税とはなにかを教えていただいた。そのおかげで署名サイトは立ち上がり、まもなく20万筆に届こうとしている。税理士のみなさんの知恵がなければ、私はここに立っていない。

 

 フリーランスの私の言葉と、国家資格を持っている税理士の言葉には、それぞれ違う重みがある。それを合わせていけば、絶対に止められると信じている。インボイス制度はあまりにもおかしすぎて、保守やリベラル、下請や発注する大企業など関係なく、みんなそろって不幸になる。インボイス反対の一点でみんなで手をつないでいきたいと思っている。

 

■アーティストやエンタメ志す人も大打撃


          VOICTION、声優 岡本麻弥

 

 最初は私たちの業界がこのままインボイス制度を導入されてしまったら大打撃を受けるという危機感から政治に対して声を上げた。声優は政治に対して声を上げることは好まれない。キャラクターのイメージや声のイメージ、企業のナレーションなどもするので、ファン、企業、事務所からも声を上げるのは嫌われる。それでも声を上げているのは、本当にまずいと思ったからだ。昨年11月にも漫画、アニメ、演劇、声優のエンタメ4団体として共同で記者会見もした。そのなかで私たちの問題だけでなく、日本中すべての人にかかわる問題だということに気づいた。

 

 私たちのとったアンケート結果はすでに出回っていると思うが、声優では96%が1000万円以下の免税事業者だ。300万円以下が76%、100万円以下というのも漫画、アニメ、演劇含めたくさんいる。もちろん業界の問題もあるが、それだけではない。長年の不景気、コロナ禍のなかで踏ん張ってきたところでインボイス制度が導入されると、とどめの一撃になる。何より怖いのは、「廃業を考える」が2割から3割弱いることだ。声優にいたっては27%が廃業をよぎなくされる、あるいは視野に入れるということになっている。私もその一人だ。数字には一人一人の顔や生活がかかっている。今日はアンケートで寄せられた声を紹介したい。

 

 ・個人事業主、とりわけ免税事業者を冷遇する政策が大手メディアでも一切報道されずに数年間準備され、施行されようとしていることに驚きと不安を感じた。10月までに撤回していただきたい (30代、声優・俳優)

 

 ・とにかく困る。コロナ禍でフリーランスに転向したのに、会社員の方がよかった。国が副業を推しているのはウソだったのか。(30代、ビジネス系フリーランス)

 

 ・現在の日本の経済状況や穴だらけの制度でインボイスを導入するのは無理がある。個人の負担もどんどん増え、生活も苦しくなる。(30代、漫画家・イラストレーター・アニメーター)

 

 ・確実に格差が広がり、社会や文化が貧しくなる完全な悪法。(40代、漫画家・アニメーター)

 

 ・一言でいうと中小事業者、個人事業主潰しの増税政策。絶対反対。制度が実施されれば廃業増加。エンタメ商品の価格上昇、エンタメ文化の衰退が起こるということを強調して伝えて欲しい。(40代、労働保険事務組合)

 

 ・経済的事情から業界を諦めざるを得ない人が出てくる。多くの才能が集まらなくなればクオリティは落ちる。将来にとっていいことはまったくない。そもそも消費税そのものが景気悪化の要因となる悪税なので、消費税自体の見直しが急務だと思う。(40代、声優・俳優)

 

 ・ただでさえいっぱいいっぱいなのに、さらに税金を引かれることになるともう生きていけない。インボイス制度は廃止してほしい。(20代、翻訳者)

 

 ・インボイス制度に対してなにもいわなかったら、その先にある増税に対してもなにもいえなくなってしまう。未来の子どもたちのために。(50代、声優・俳優)

 

 ・クリエイターにとっても、それを応援する人にとっても最悪の制度。私はアーティストとして活動したく、現在勉強中だ。インボイスが導入されれば、今学んでいることが無駄になりかねないので反対運動に参加している。未来あるほかの若者たちのためにもこの活動を支援していきたい。(20代、大学生)

 

 ・インボイスに限らずだが、この国はとことん弱者に追い打ちをかけないと気が済まない国なんですね。人生100年時代と最近よく聞くが、生きていくコストを考えると長生きだけはしたくないとしみじみ思ってしまいます。(50代、声優・俳優)

 

 ・私のようにストーカーに怯え活動している方は多いのではないかと思う。世間では、やましいことがないなら本名を公開されても大丈夫なはずだという方もいる。でも私はストーカーに追いかけられて四年間恐ろしい思いをした。警察では秘匿という制度を使って個人情報を相手に伝わらないよう処理してもらった。これからもし制度が廃止にならず従わなければならないとすれば、私の声優としての活動の継続が困難になることは目に見えている。ここに至るまでの苦労と努力をこんなことで失いたくないと心から思っている。(40代、声優・俳優)

 

 ・インボイス制度によって声優に限らず個人事業主は混乱、負担がのしかかる。廃業する方も出てくるだろう。確定事項だからと耳をふさぐことなく、もっと意見に耳を傾けてほしい。(30代、声優・俳優)

 

 ・この制度は個人事業主にとってはお金にならない時間を費やす作業が膨大すぎて廃止してほしい。(50代、建設業)

 

 ・本制度の導入に反対する。エンターテインメント業界で活躍されている多くの方々、そしてこれからイノベーションを起こそうとしている方々の未来をつぶしてしまう制度にほかならない。(30代、会社員)

 

 まだ気づいていない方は、声を上げることもできない。10月を過ぎて、知らずにインボイス登録を求められ、登録すると消費税を納めなければならないことに気づかずにしている人もいる。今回、税理士さんが、こうして立ち上がってくれたことは大変心強く頼もしい。いろんな業界が声を上げ、手をとりあって、国民一人一人がもう少し目を覚まして政治に関心を寄せ、みんなで明るい未来をつくっていきたい。

 

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