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4月から水質基準見直し 農薬類の規制大幅に緩和

 厚生労働省が今年4月から水質基準を見直す。農薬類(7種類)の目標値変更や、新たな水質管理目標を設定するなど複雑な内容だ。そこには浄水で検出する農薬類の目標値を大幅に規制緩和する「見直し」も含んでいる。

 

 厚生労働省は水質基準の見直し方針について「内閣府食品安全委員会による食品健康影響評価の結果を踏まえ、対象農薬リスト掲載農薬類(浄水で検出される可能性の高い農薬)3物質及び、その他農薬類(測定しても浄水から検出される恐れが小さく、検討の優先順位が低い農薬類)4物質について目標値を見直す」と明らかにしてきた。

 

 同省が2月19日に開いた第2回水質基準逐次改正検討会で示した農薬類の目標値改正案は次の通り。

 

【対象農薬リスト掲載農薬類】
▽カルタップ
 0・08㎎/L(現行0・3㎎/L規制強化)
▼ジクワット
 0・01㎎/L(現行0・005㎎/L規制緩和)
▼プロチオホス
 0・007㎎/L(現行0・004㎎/L規制緩和)

 

【その他農薬類】
▽セトキシジム 
 0・2㎎/L(現行0・4㎎/L規制強化)
▽チアクロプリド
 0・03㎎/L(新規設定)
▼チオシクラム
 0・05㎎/L(現行0・03㎎/L規制緩和)
▽ベンスルタップ
 0・06㎎/L(現行0・09㎎/L規制強化)

 

※▼が規制緩和、▽は規制強化、新規設定。

 

 そして厚労省は「このうち対象農薬リスト掲載農薬類については、パブリックコメント手続き(国民からの意見集約)、厚生科学審議会生活環境水道部会(3月23日に開催予定)を経て、見直しを行い令和2年4月1日から適用する」「その他農薬類については、厚生科学審議会生活環境水道部会における審議をもって、見直しを行い令和2年4月1日から適用する」と明記している。

 

 見直し理由については「令和元年12月末までに内閣府食品安全委員会による食品健康影響評価の結果が示され」「現行評価値と異なる評価値が得られたことから、見直しを実施すべき項目と考えられる」と説明している。

 

毒性強い除草剤や殺虫剤

 

 だが今回、規制緩和対象になったジクワットは収穫前のジャガイモの蔓枯らしに使われる除草剤の一つだ。細胞毒性が強く、体内にとり込まれるとフリーラジカル(活性酸素)を大量に生み出し、体の各臓器に組織障害を引き起こす。それは腹痛、下痢、口の中のただれ、中枢神経障害、肝機能障害などをもたらし、最悪の場合死に至ることもあるという。

 

 新たな水質基準はこのジクワットの目標値を現行の2倍(5000ng/L→1万ng/L)に緩和している。また有機リン系殺虫剤であるプロチオホスは現行の1・75倍(4000ng/L→7000ng/L)、稲やジャガイモの殺虫剤であるチオクラシムは現行の1・67倍(3万ng/L→5万ng/L)の基準緩和になっている。

 

 もう一つうち出しているのは有機フッ素化合物のペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)及びペルフルオロオクタン酸(PFOA)の暫定基準値の設定である。この二つは消化薬剤、コーティング剤などに使われる。

 

 毒性が強いため、世界的に製造・販売が制限されている物質だ。これまで「毒性評価が定まらない」ということで目標設定をせず、情報収集を進める「要検討項目」に位置づけていた。

 

 ところが今回はそれを「水質管理目標設定項目」に変え、暫定目標値として0・00005㎎/L(50ng/L)とした。それは事実上50ng/Lが浄水に混じることを容認する動きである。ちなみに国際的な基準は未設定で、目標値を定めている国が数カ国ある。その基準値(PFOS)を見ると

 

▽カナダ
   =600ng/L
▽オーストラリア
   =70ng/L
▽米国
   =70ng/L
▽デンマーク
   =70ng/L
▽イタリア
   =500ng/L
▽スウェーデン
   =90ng/L
▽オランダ
   =530ng/L
▽英国
   =300ng/L
▽ドイツ
   =300ng/L

 

となっており、日本の目標値よりも高い数値を設定している。だが各国の目標値より数値が低ければ安全なのかは、疑問が残る内容といえる。

 

 そして大きな問題は全国民の生活や健康にかかわる飲料水の基準が、ほとんど国民に情報を知らせず、活発な論議も経ぬまま変えられようとしていることだ。このような状態が放置されることは、いつのまにか飲料水の水質が悪化しかねない危険をはらんでいる。

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