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営利優先で電力不安定化招く本末転倒 再エネビジネスが引き金となるブラックアウト

 電気を安定的に供給することは、国民生活と生産活動を維持するために国と電力会社が負っている社会的な責任である。先日、北海道でブラックアウトが起き、全道295万戸が電気のない生活を強いられたが、電気なしの生活を送ることは今の文明社会では困難だ。ところが太陽光発電や風力発電といった、それ自身不安定きわまりない再生可能エネルギーを増やし続けた結果、この電気の安定供給が脅かされている。象徴的な事件が、九州電力が先月におこなった太陽光発電事業者とつながる送電線を切り離す「出力制御」だ。九電はその後も太陽光や風力を切り離す出力制御をくり返しており、それに続いて四国電力が出力制御の準備を進め、最近では中国電力、東北電力、沖縄電力も太陽光や風力の出力制御をする準備を進めると公表した。いったい何が起こっているのか見てみた。

 

 電力は、常に同時同量(発電量=使用量)、つまり需給バランスを一定に保っておかなければならない。それが崩れると周波数が乱れ、送電線につながる工場の機械や家庭の電化製品が壊れるため、発電所が自動停止して大規模停電(ブラックアウト)になる。そのため電力会社は年間計画、時間計画にもとづいて数分単位でそれを調整している。

 

 北海道では、地震によって道内の電力需要の半分近くをまかなっていた苫東厚真火力発電所がストップし、需要に対して供給が追いつかずにブラックアウトが起きた。全道295万戸・530万人もの人が2日間、暗闇のなか、家電製品も使えない生活を強いられた。

 

 それとは逆に供給が増えすぎたのが九電の例だ。政府が2012年にFIT(固定価格買取制度)を開始して以来、土地が安く日照条件のいい九州では太陽光発電に事業者が殺到し、導入量の合計が807万㌔㍗になったうえ、10月13、14日には九州の広い地域で晴天となり、太陽光の発電量が急激に増えた。たとえば14日は、発電量が最大となる午前11時~11時30分に供給力は合計1242万㌔㍗に達する一方、需要は758万㌔㍗にとどまる見通しになった。そのまま放置すれば需給バランスが崩れてブラックアウトになる危険性が出たため、九電は出力制御に踏み切った【図参照】。

 

 太陽光は日照時間によって発電量が変動する不安定な電源で、晴天で発電量が増えるが、夜間や雨の日はゼロに近くなり、供給を調整することなどできない。もっと不安定なのが風力で、風速12~14㍍という、傘がさしにくく歩きづらいほどの風が吹くとき、はじめて効率よく発電する。風速3㍍以下のそよ風程度では発電はできないし、風速25㍍以上の暴風になると故障を避けて自動停止する。

 

 一方、原子力は常に臨界を維持しなければならず、出力調整などやれば大事故につながりかねない。そこで電力会社は火力発電の出力を増やしたり絞ったりして発電量を調整してきた。しかし、もはや火力によって調整ができないほど太陽光の発電量が増えすぎてしまったのだ。電力会社間で電気を融通する連系線を増強することや、大規模蓄電池をつくることも課題に挙がっているが、いずれもコスト面で現段階では実現困難と見られている。

 

 再エネの先進地、ヨーロッパではどうか? デンマークは電力の約4割を風力でまかなう「風力大国」だと宣言している。しかし、ヨーロッパは国境をこえて送電線がつながっており、実際には自分のところの不安定な風力の電気は送電線に雲散霧消させて、ドイツやフランスの電気を使っている。

 

 また、原発を減らし風力や太陽光を爆発的に増やしたドイツでは、雲のかかり具合、風の吹き具合によって電気が頻繁に足りなくなるため、バックアップのための火力がドイツ国内だけでは足りず、オーストリアにも待機させており、そのため年間で莫大な補償金を隣国に支払っている。

 

安定供給より優先されるビジネス

 

 ところが、電気の安定供給には役に立たない太陽光発電や風力発電の建設に、全国で参入する企業が後を絶たない。これに対して各地で住民の反対運動が活発になっている。

 

 長野県では、Looop社(東京)が諏訪市霧ヶ峰下で進める全国最大規模のメガソーラー計画「諏訪市四賀ソーラー事業」に対して、住民が地域ぐるみで反対運動を起こしている。

 

 計画では霧ヶ峰近くの森林に、面積196・5㌶、つまり東京ドーム約40個分の土地にソーラーパネル31万枚を敷きつめるというもの。この地域の山林を大規模に伐採するとともに、10㌧トラック5万台分の土を運び出すという。通常、ソーラーパネルを設置する場合、敷地内の樹木はすべて根こそぎ切り倒し、豊かな腐葉土におおわれている場合はそれをすべてはがして運び出し、やせた土地に強力な除草剤を散布してパネルを設置する。障害物をなくして発電効率を高めるためだ。地元のアセスで事業者はそれを否定しているが、住民は信用していない。

 

7月の豪雨で60㍍四方にわたり地盤とともに崩落したソーラーパネル(姫路市)

 住民がもっとも危惧しているのは、森林を大規模に伐採することで保水力が失われ、災害時に土砂崩れや大洪水を引き起こす可能性があることだ。計画地の脇を流れる横河川はこれまで大雨でたびたび氾濫し、地域住民に被害を及ぼしてきた。もう一つは、計画地の下には諏訪市(上流域)や茅野市(下流域)をカバーする水道水の水源があること、また茅野市の生活水や田んぼの水になる大清水湧水が流れていることだ。

 

 計画地は上桑原牧野農業協同組合、上桑原共有地組合、同山林組合が所有する土地だが、組合員の高齢化で山林の維持管理が困難になるなか、そこにつけ込んでLooop社が土地の買収に動いたという。当初は別の企業が、初期の太陽光1㌔㍗時当たり40円(現在は18円)のときに申請し20年間運転する認定を受けており、その権利をLooop社に売った。

 

 そこで地元の農家らが中心となって茅野市米沢地区Looopソーラー対策協議会を立ち上げ、役員らが8~10月にかけて100ある区や自治会の役員会に出向いて反対署名を訴えたところ、その7割近くが賛同し、全市的な署名運動になった。集まった4万8900の署名はその後、県知事に提出したという。

 

 その後、同協議会と諏訪市など六市町村の有志でつくる「太陽光発電問題連絡会」が10月8日に「メガソーラー問題シンポジウム」を呼びかけると、300人定員の会場に入りきれない500人が詰めかけ、うち200人は別会場でモニター画面で参加することになった。

 

 事務局は、「地元はもちろん、福島県や京都府、岡山県、九州からの参加もあった。メガソーラーが各地で大きな問題になっており、情報交換を求めて来ていた。台風や豪雨災害でソーラーパネルが崩れたという問題だけでなく、太陽光の建設には大規模な森林の伐採がともない、住宅地のそばの裏山が狙われている。災害や飲み水の危険性があり、住民として黙っておれない思いがある。1月には東京で集会をやり、経産省や環境省に申し入れをしようと話し合っている」とのべている。

 

 一方、風力発電をめぐっては、政府は全国4カ所に促進区域をつくり、一般海域の最大30年の占用を認め、洋上風力発電の建設を推進する法律を、今の国会で成立させようとしている。その促進区域の一つ、秋田県の由利本荘市では、事業者のレノバ(東京)が海岸から1・5~3㌔のところに、8000~9500㌔㍗の巨大風車を70~90基建てる計画を出してきたことに対して、住民が「由利本荘・にかほ市の風力発電を考える会」をつくり運動を広げている。

 

 すでに陸上には60基以上の風力発電が建っており、住民から頭痛やめまい、睡眠障害などの訴えが出ている。同会はとくに風車に近接している1000人を対象にアンケート調査をおこない、低周波による健康被害の実態を明らかにするとしている。

 

秋田県由利本荘市で稼働中の海岸風力発電

大企業の為の市場創出

 こうした住民生活を無視した、後は野となれ山となれ式の企業が横行するのも、安倍政府が2030年度の電源構成に占める再エネの比率を22~24%に上げるといって国策で再エネを推進し、風力や太陽光、バイオマスに参入する企業を増やすためにFITで20年間、高い価格でその電気を電力会社に買い取らせることを保証しているからだ。そのカネは、すべての国民から「再生可能エネルギー促進賦課金」を毎月の電気料金のなかに含めて徴収することで捻出している。

 

 それはアメリカのオバマ政府がうち出した、グリーン・ニューディールという名の景気刺激策の延長線上にある。アメリカでは「地球温暖化防止」「低炭素社会」を掲げて、原子力とともに再生可能エネルギーによる景気刺激策に舵を切った。「CO2による地球温暖化の危機」を訴えてきた国連IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の議長自身、ロックフェラー財団の再生可能・持続可能エネルギーアドバイザーとして、大企業にあぶく銭を稼がせるCO2排出権取引の指南をやっていたことが暴露されている。そして日本では福島原発の大事故後、原発推進の総本山である経済産業省が、一方で原発を再稼働させながら、他方で「エコでクリーン」と宣伝して再エネ・ビジネスを煽ってきた。

 

 2011年に当時の民主党・菅政府は、再生可能エネルギー促進のために、民有林や国有林、保安林、農地などにかかっている規制を緩和することを提言した。これと同じものを安倍内閣が2013年に「農山漁村再生可能エネルギー法」として閣議決定し、翌年5月から施行している。それは「これまで農地法で農業利用しか認めていなかった第一種農地でも、農地として再生することが難しい荒廃農地と、今後耕作が見込めない耕作放棄地は再エネ事業への転換を認める」「風力発電の風車は設置に必要な面積が比較的小さく、一度建ててしまえば農作業に支障は出ないので、それ以外の農地でも導入できる」「再エネを導入する事業を2018年までに全国100カ所に増やす」としている。その結果、日本中の山野も海もところかまわず風車を建てたりソーラーパネルを敷き詰めたりすることが可能になり、住民との大矛盾となっている。

 

 こうして「原発にかわるクリーンな再生可能エネルギー」といって風力や太陽光を増やせば増やすほど、再エネ・ビジネスで一握りの大企業がもうかるだけで、住民生活や地域の環境が脅かされるとともに、電気の供給はますます不安定になり、国民は常にブラックアウトの危険と隣り合わせの生活を強いられることになる。それは社会に甚大な損害を与えるもので、各電力会社が出力制御に踏み出さざるをえないまでになっている。社会などどうなってもかまわないという、新自由主義の本末転倒を象徴している。

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