いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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秘密保護法の撤廃めざし知識人が行動

 安倍政府の「特定秘密の保護に関する法律案」(特定秘密保護法案)の臨時国会への提出を前後して、法学者・法曹関係者をはじめ、歴史学者、図書館関係者、文筆家、学術・文化、報道などの各分野の団体からあいつぎ反対声明が出され、アピールの行動が裾野を広げて発展している。知識人の特定秘密保護法案の廃案をめざす運動の大きなうねりは、かつて学問・研究の自由、取材・報道の自由が圧殺され、戦争で筆舌に尽くしがたい惨禍を強いられた痛苦の反省のうえに、知識人の使命感に立って安倍政府の憲法改悪と民主主義破壊に反対する思いを共有するものとなっている。それはまた、アメリカに付き従った戦争動員に反対するたたかいの重要な一環であることを鮮明にさせて発展している。
 
 改憲先取りの安保基本法暴露

 憲法・メディア法と刑事法を研究する全国の法学者が10月28日、約400人の連名で、それぞれ独自に「特定秘密保護法の制定に反対する声明」を発表した。「憲法・メディア法研究者の声明」は、右崎正博(獨協大学教授)、田島泰彦(上智大学教授)ら24氏が呼びかけ人となり118人の研究者が賛同している。「特定秘密保護法の制定に反対する刑事法研究者の声明」は村井敏邦(一橋大学名誉教授)、斉藤豊治(甲南大学名誉教授)の両氏が23人の呼びかけ人代表となり、123人が賛同者となっている。
 法律研究者の声明はどちらも、同法案が「安全保障」(軍事)上で「秘匿が必要なものを行政機関の長が“特定秘密”として指定し、その漏えいに対して懲役10年以下の厳罰でもって禁止する」だけでなく、「特定秘密保有者の管理」を無視して取得した場合も処罰の対象とすること、さらに「共謀・教唆・扇動」にも罰則を科し「過失や未遂」も処罰の対象としていることを批判している。
 とくに、同法案が「基本的人権の保障、国民主権、平和主義という憲法の基本原理をことごとく踏みにじり、傷つける危険性」を指摘し、強い反対を表明している。同時に、そこから浮かび上がってくる政治的背景として、アメリカの要請を受けた対米従属下の軍国主義の強化があること、秘密保護法案がアメリカの戦争に国益を差し出すための体制づくりの重要な一環として位置づけられていることを明確にしている。
 また、安倍政府が特定秘密保護法案を、日本版NSC(国家安全保障会議)の設置法案や、集団的自衛権や武力の行使を認める「国家安全保障基本法案」とともに制定させようとしていることを批判している。GSOMIA(軍事情報包括保護協定)締結に示されるように、法案の背後には「日米の情報共有の進展を踏まえた秘密保護強化の要請がある」と指摘。アメリカの戦争の必要に応えた憲法の実質的な改定であることを暴露している。

 刑事法学者

 刑事法研究者の声明は、多くの知識人・文化人の思いを代表するものとなっている。
 声明は、戦前の刑法には重罰が定められた「間諜罪」があり、「軍機保護法」や「国防保安法」を中心にした機密保護法制が「言論統制と軍国主義思想の蔓延の重要な柱」とされたことを確認。その反省のうえに立って戦後、刑事法研究者のあいだで共有されてきた「機密探知罪(間諜罪の復活)への批判を継承する」ことを強調している。
 声明はそのうえで、「戦争に備える軍事立法」としての「秘密保護法制に対する先達の刑事法研究者たちの努力を想起し、刑事法研究者の立場から、今回の特定秘密保護法案に沈黙しこれを黙過することはできないと考え、この声明を出すことを決意した」と訴えている。
 また、第2次世界大戦の経験からも、平時は何でもない情報が「公表されると人心を惑わす」として秘密保護の対象とされることを強調するとともに、「戦争には嘘が多いが、この嘘を知ろうとすることも、知らせることも処罰の対象」となることに注意を喚起。イラク戦争での自衛隊の違法な行動を覆い隠してきたことと関連して、「国民に対して嘘をついてきたことが明らかになるような情報は、“特定秘密”とされる」「違法な秘密も“秘密”とされて、保護の対象となる可能性が大きい」ことも明確にしている。
 さらに、「核防護」に直結する原子力発電所についての「安全性、脆弱性に関わる情報は、秘密事項とされる可能性が大きい」ことや、「領土問題を含む国際紛争が激化し、武力行使を含む対応をする場合には、安全保障を根拠とした秘密指定は、大幅に拡大、強化される」ことを強調している。「政府が核兵器の開発を行おうとする場合、このような事実は、最も重要な秘密として扱われることになり、国民が知らないうちに日本は核兵器の保有国となる」と訴えている。
 また、「在日米軍に関する秘密やアメリカから提供された軍事物資等・技術の秘密の保護と同等の保護を自衛隊の秘密に与えようとしている」ことを批判している。
 さらに、国や軍事産業の委託を受けた研究をおこなう大学では、研究者は「適性評価」の対象とされ、秘密保全義務が課され、「漏えい」すれば厳罰が科されることになる。また、「研究の内容は秘匿され、研究者相互間の研究内容の吟味が否定され、学会や雑誌等での発表も規制の対象となる。大学における自由闊達(かったつ)な研究と研究者間の交流と相互批判が大きく阻害される」ことなどを暴露、批判している。

 歴史学者

 学問・研究活動の抑圧については10月30日、歴史学の六団体を代表する学者が発表した「特定秘密保護法案に反対する緊急声明」でも明らかにされている。
 この声明には久保亨・歴史学研究会委員長、藤井譲治・日本史研究会代表委員、糟谷憲一・歴史科学協議会代表理事、塚田孝・歴史科学協議会代表理事、山田朗・歴史教育者協議会代表理事、吉田裕・同時代史学会代表、中嶋久人・東京歴史科学研究会代表、荒井信一・日本の戦争責任資料センター共同代表、宮地正人・国立歴史民俗博物館前館長の九氏が名を連ねている。
 声明は、「歴史学の研究と教育に携わる」立場から、
 ①「特定秘密」に指定された文書が、保管期限満了後に国立公文書館などに移管されて公開されることが保障されず、「歴史の真実を探求する歴史学研究が妨げられる」。
 ②「特定秘密」の指定が行政機関の長のみの判断で可能であることから、一度特定秘密指定をされれば、その妥当性は誰も監視できない。
 ③歴史学研究者の史料調査において、「特定秘密文書」を史料として入手した際に、「特定秘密を保有する者の管理を害する行為」とされ、刑事処罰の対象にされる。
 ④「学問の自由」を含むすべての人人の基本的人権の不当な侵害への配慮がされているわけではない。
の四項目をあげ、秘密保護法案に反対している。

 図書館研究会

 全国の図書館員、研究者などが集う図書館問題研究会は10月22日、「特定秘密の保護に関する法律案」に反対する声明を発表した。声明は、「図書館が収集、提供する資料が“特定秘密”に指定され提供した図書館職員が処罰の対象となることも考えられる」との懸念を表明。具体的な事例として、08年に国会図書館で発生した、在日米軍の裁判権に関する資料閲覧を「米国との信頼関係」に「支障を及ぼすおそれがある」ことを理由に制限した事件をあげている。

 弁護士会

 日本弁護士連合会(山岸憲司会長)は10月25日、「特定秘密保護法案の閣議決定に対する会長声明」を発表した。釧路、宮城、仙台、埼玉、横浜、三重、滋賀、大阪、広島、福岡など、全国各地の弁護士会も独自に、「特定秘密保護法の制定に反対する」会長声明や意見書をあいつぎ発表。大阪、埼玉、札幌、仙台の弁護士会がシンポジウムや街頭宣伝、デモ行進を計画するなど、市民各界との連帯を強めて運動を発展させている。
 大阪弁護士会は12日、大阪市北区の大阪弁護士会館で集会を開き、特定秘密保護法の廃案を訴えるデモ行進をおこなった。平日の昼間であり、当初は200~300人程度と想定されていたデモ行進は、急きょ駆けつけた弁護士と各界市民で約600人となった。デモ行進の先頭には、福原哲晃会長が立った。参加者は「秘密保護法は戦争への道」などのプラカードを掲げて大阪市役所前まで中心街を行進し、シュプレヒコールで行き交う市民に訴えた。
 大阪弁護士会は21日にも独自の集会を計画している。自民・公明両党が法案の衆院採決を狙うなかで、同日には東京、仙台、静岡、名古屋、富山、広島で集会が計画されている。
 また12月1日には、元龍谷大教授・村井敏邦氏(刑事法)、京都弁護士会・小笠原伸児、日本新聞労連・日比野敏陽の3氏が呼びかけ人になって「特定秘密保護法案反対京都集会」が京都大学で開催される。

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