いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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記者座談会 秘密保護法強行後の情勢

 安倍政府が全国の反対世論を無視して特定秘密保護法を強行成立させたことに対して、その廃止を求める行動がますます大きな広がりをみせて発展している。「戦争をくり返させてはならない」「安倍をやめさせろ」という世論は全国を席巻している。秘密保護法はアメリカと軍事情報を共有するとともに、国民弾圧を意図した戦時法制だが、それは同時に安倍政府が発足させた米国NSCの下請司令塔・日本版NSC(国家安全保障会議)とセットである。そして自民党は来年にも、米軍が攻撃されれば自衛隊が即座に自動参戦する集団的自衛権行使を認め、そのための総動員態勢を構築する「国家安全保障基本法」の国会提出を企んでいる。安倍政府が進める戦時国家づくりをいかに阻止するか、戦争を阻止する真に力のある運動をどうつくるか、記者座談会をもって論議した。
 
 安保基本法潰す意欲高まる

 司会 秘密保護法の強行採決をめぐる市民の受け止めはどうか。
  下関市内の商店主は、「法律の内容は詳しく知らないが、戦争の方向へ行っている」と話題にしている。アベノミクスというけど、物は売れないし異常な不景気で、今月での閉店も連続している。貧乏になって戦争に行くのはかつて経験したことだ。「もう安倍さんはやめさせないといけない。国会を見ていても野党は全部あてにならない。市民が下から意志表示しないといけない」と話していた。
  「これは絶対戦争になる」と自分の体験を話し出した戦争体験者がいた。「下関がB29の焼夷弾攻撃を受け、逃げ場がなくなって皆殺しにされたことを思い出す」「食べ物がなくてお母さんの乳が出なくなり、生後数カ月の妹が骨と皮になり真っ白になって眠るように死んでいった。そういう目にあう。戦争をやってはいけない」と強い口調で語っていた。
  北九州の商店街では「最初から国民の支持がないうえにあんなことをするのだからもう終わり」とか「安倍政治の終わりの始まり」と話題になった。ある商店主は「安倍政府になってメディアが“アベノミクスで景気が良くなった”と煽ってきたがそんな実感はない。どんどん悪くなり、年末の一番の稼ぎどきに客が来ない。国民の生活を考えれば、震災復旧や失業対策などやることは山ほどある。そんなことは一切しないどころか、秘密保護法までつくって国民にものをいわせなくしようとしている」と話す。安倍政治への怒りは、強行採決以後にもっと大きくなっている。
  教育関係者も「安倍は終わり」という。「国会の与野党のやりとりは茶番だし、秘密保護法の法律の中身はあいまい。それでも数の力で決めていく。これはおかしいとみんないっている。自民党関係者のなかでも反発が強い。自民党が悪いといって民主党が出てきて、民主党はもっと悪いとなって自民党が復活したが、またそれよりも悪くなってどこもいいところなどない」と語っていた。国民の生活をまったく考えず、国が滅びようが知ったことではない安倍をはじめとするすべての政治家をやめさせろという声は非常に強い。
 E 広島や長崎でも、被爆者が「秘密をつくること自体が戦時体制づくりであり、国民弾圧が中身だ」と問題にしている。かつての戦争でも秘密だらけにして国民の目も耳も口もふさぎ、数多くの国民が犠牲になった。しかし天皇を頭とする権力者はアメリカには情報を流し、アメリカに命乞いして生き延びた。原爆も日本政府が空襲警報まで解除して、わかっていて落とさせた。このときとまったく同じ構図でことが進行していることに怒りが強い。
 戦争でどんな目にあうかも身に染みて体験している。だから「秘密保護法反対」といっても、「知る権利が侵される」とメディアが煽るような、戦後投げ与えられたわずかな権利を守るというものとはまったく違う。第2次大戦の忘れることのできない体験から、「原爆を投げつけられアメリカが日本を占領し、その延長として事態がここまで来ている」と語られている。みな今度こそ戦争をどう止めるかが最大の問題意識だ。迫力が違ってきている。

 戦争体験に根ざす迫力 戦後の欺瞞は崩壊

  戦後民主主義の欺瞞が吹き飛んでいる。ある退職教師は「以前の国会は与党と野党の対立だったが、今は野党がなくなって、国会と国民が対立している」といっていた。歴史的に見たとき、「日共」にしろ社民党にしろ、革新勢力は権力者の支配の支柱だった。彼らが国民を「選挙で世の中は変わる」とだまくらかして、実際に社会を変える大衆運動をつぶす役割を果たしてきた。その野党が解体しオール与党になったことで、政治は選挙で動いておらず、軍事力を根幹に国会、官僚、裁判所、マスメディアという国家機構がアメリカと日本の売国独占資本の道具になっている姿が浮き彫りになっている。
 沖縄では、普天間基地の辺野古移転に「反対」といっていた5人の国会議員が裏切ったことに、「もともとインチキだったのが、正体がはっきりしたのはいいことだ。これだけの県民がたたかっているのに、自民党本部の側に行けば、政治生命は終わりだ」と論議されている。大衆のなかで歴史的な意識の大転換が起こり、全国的につながって下からの大衆行動で世の中を変えようという機運が高まっている。
 G 国会の茶番に怒りが強い。あの強行採決間際の「なんだー!」と奇声をあげる姿も嘘臭さ満開だ。市民は「政治家になにを頼んでも無駄」といっている。もう国民をだませない。権力者と大衆が直接に対峙するほかない。もともと16%ぐらいの支持率で国民から宙に浮いた安倍が暴走している。中国や北朝鮮が独裁体制だといわれるが、日本にもちゃんと安倍がいる。すべての既存政党があてにならないなかで、根本変革への問題意識が強まっている。
  メディアの欺瞞もあばかれてきた。秘密保護法反対の大衆行動が広がるなかで、社説で「知る権利を守れ」といい出したが、みな嘘だと見抜いている。「われわれは萎縮しない」と決意を出した大新聞もあった。しかしTPPにしろ、消費税にしろ、福島原発事故の報道にしろずっと萎縮し続けて真実を伝えず支配者に都合のよい世論を巧妙につくりあげようとしたのは彼らだ。「おまえがいうな」との実感は強い。かつての戦争で『朝日』『読売』など大新聞は国民を戦争に駆り立てるための「大本営」報道をおこない、敗戦後は占領者アメリカの忠実な下僕となって、国民の真実の声をかき消そうとしてきた。その本性が見抜かれてきている。
  特定秘密保護法に反対する学者の間でも、戦前だけでなく戦後もずっと支配者によって情報が統制されてきたという発言が前面に出ている。歴史学者は、日中戦争に突入するきっかけとなった柳条湖事件が関東軍の謀略であったことを外務省が知っていてずっと隠し、国民に多大な損害を与えたと発言している。戦後も50年代、60年代、70年代の日米関係の資料を調べようとしても、日本の官庁は出さないと。アメリカの公文書館に行かねばならないと指摘している。沖縄核密約事件も、日本政府は文書の存在さえ認めようとしないが、アメリカは平気で公開し事後承認させるという関係がつくられてきた。また経済学者は、「貧困率を研究するうえでの資料を政府は出さない。調べようとすれば圧力がかかるし、学問研究の自由がない」という。
 つまり戦後一貫して支配者に都合の悪い情報は隠してきた。日本には、真の意味での自由や民主主義もなかったし、権力者の独裁する社会だということだ。これをもう一段階強めて戦争国家づくりを進めるのが秘密保護法だから、知識人の使命感に立ってたたかわないといけないという機運が盛り上がっている。

 日本版NSCとセット 秘密保護法の正体

  今回成立させた秘密保護法は、アメリカの軍事戦略を忠実に実行する下請司令塔・日本版NSC(国家安全保障会議)設置とセットになっている。日本版NSCは今月はじめに設置されたが、その中核は首相、官房長官、外相、防衛相で構成する四大臣会合。国民生活にかかわる福祉や教育を切り捨てて、外交や軍事を最優先して施策を具体化していく体制だ。当面は対中関係、在日米軍再編、北朝鮮の核・ミサイル、領土をめぐる問題、を扱う。事務局は総括、戦略、情報、同盟国・友好国(米国など)、中国・北朝鮮、その他(中東など)の6班で構成されている。
 4人の閣僚が、アメリカから直接司令を受けて即座に戦時対応をとる配置になっている。日本を鉄砲玉として戦時動員する下請司令塔として機能するのが、日本版NSCの役割だ。
  この日本版NSCが米NSCから受けた情報や命令などを「外にもれればアメリカに不利益をもたらす」と「特定秘密」に指定し、違反すれば厳罰を加えるのが特定秘密保護法だ。国民の利益を守るものではなく、アメリカの利益を守るものだ。自民党は国会審議の過程で「米国より統一的な情報保全法制定を求められている」と文書で回答し、安倍は「ある国の情報トップは法整備すれば日本との情報交換はもっと進むと話していた」とのべた。「日本の国家機密を守る」というが、国民には知らせないままアメリカに日本の情報をすべて筒抜けにするものだ。
  「特定秘密」の内容も「防衛、外交、特定有害活動の防止、テロ活動の防止の4分野だから一般市民には関係ない」と宣伝している。しかし秘密保護法の別表に「その他の安全保障に関する重要なもの」をもぐりこませており、特定秘密の範囲はいくらでも広げられる。各省庁の大臣が決めればなんでも特定秘密にできる仕組みだ。地域全体が軍事要塞として特定秘密に指定されれば、住民すべてが写真撮影やスケッチすらできなくなり、友人に近所の人のことを話したり道を聞くのも処罰対象になっておかしくない。
  「特定秘密」を扱う公務員には「適正評価」を実施し、負債や経済状況や犯罪歴、精神にかかわる通院歴の有無、家族や同居人の国籍、住所なども調べ、適任かを判断する。自治体との契約業者、つまり民間企業労働者も対象だ。「特定秘密」を漏らした公務員は、懲役10年以下か罰金1000万円以下の厳罰にするという。
  昨年8月、アーミテージ(元米国務副長官)とナイ(元米国務次官補)を中心とした「外交・安全保障研究グループ」が、日米同盟に関する報告書を公表した。そこでは原発再稼働、TPP交渉参加とともに、日本は国家機密の保全に関する法律を強化せよと要求している。アメリカが安倍の尻をたたいている。沖縄だけでなく岩国や全土にアメリカが核兵器を持ち込んでいるのは公然の秘密だが、戦後は「日米安保条約」が要求するさまざまな秘密保護に関する法律によって真実が闇に葬られてきた。
 F 秘密保護法は、アメリカが日本を矢面に立て、アジアで戦争をやるための戦時国家づくりの一環だ。今月の新防衛大綱では、自衛隊に敵基地攻撃能力を持たせ、米海兵隊をモデルとした「水陸両用団」を創設することを決め、自衛隊の海兵隊化を準備している。来年の通常国会には「国家安全保障基本法」を国会に提出し、米軍が攻撃されれば自衛隊が自動参戦する集団自衛権行使を可能にしようとしている。戦前のように、国民が気がついたときには戦争になっていたという状況にしたいのだ。

 米国のための戦時国家 安保基本法の狙い

  自民党が提出を狙う国家安全保障基本法(概要)を見ると、国全体を戦時動員していく全体像が浮き彫りになっている。同法第3条では、国や地方公共団体が「安全保障にかんする施策を総合的に策定し実施する責務を負う」と明記した。そのなかに秘密保護法をつくることも盛り込まれている。秘密保護法は安保基本法の先行具体化となっている。
 ほかにも安保基本法は、教育、科学技術、建設、運輸、通信その他内政の各分野で、国民の生活よりも軍事政策が優先する体制をつくるとしている。また、地方公共団体に国の軍事政策を実行させる責務を負わせると規定したり、国や地方公共団体が広報活動によって「安全保障に関する国民の理解を深める」よう勤めると規定している。国や地方公共団体の「責務」として、国民を戦争に動員するためにフル稼働させていくものだ。
 第四条も露骨で、戦争協力を「国民の責務」とした。第八条では自衛隊の任務として、国民の大規模なデモなどを鎮圧する治安出動を盛り込んだ。
 そして第10条の「国際連合憲章に定められた自衛権の行使」で、米軍を守るために自衛隊が出動する集団自衛権の行使を認めると明記した。具体的には「集団自衛事態法」や「集団自衛出動的任務規定」、「武器使用権限に関する規定」で定める方向だ。さらに第11条では、国連安保理決議がなくても、アメリカに従って自衛隊を戦地に送り出すことができるようにしている。第12条には軍需産業の育成と武器輸出解禁も盛り込んでいる。この安保基本法が成立すれば、憲法などないに等しくなる。
  現在アメリカは、国内では新自由主義が大破産して国家財政の破綻が深刻となり、対外的にはアフガン・イラク戦争で敗北し、シリア攻撃を実行しようとして国内外の抵抗を受けるなど歴史的にその衰退が著しい。そのなかでオバマ政府はアジアを重視する「新軍事戦略」に転換し、TPPで中国を包囲したアメリカ中心の経済ブロック化を進めつつ、日本をアメリカの代理人として前面に立てて戦争をやろうとしている。
 具体的には米軍をハワイやグアム、オーストラリアなど後方に下げて、中国の核ミサイル攻撃が届く九州、沖縄をはじめ日本列島、台湾、フィリピンを結ぶ第一列島線を最前線の盾にする。そのために米軍再編で米軍基地を増強したり、自衛隊基地にオスプレイやF35、グローバルホークを配備する計画も進めている。米軍岩国基地の極東最大基地化や下関の軍港化もそのためのものだ。対中国戦争をしかけるが、戦争の前面には日本や韓国、フィリピンなどの近隣諸国の兵員を立たせ、米軍の損害は最小にしてアメリカの国益のために日本人を使う作戦となっている。
 F かつて天皇制政府は、天皇や軍部に対する批判を許さず、出版物は伏せ字だらけにするという馬鹿げた状態をつくり出した。それを保証したのが翼賛議会で決めた軍機保護法、国防保安法であり治安維持法だった。そして国民の知らないうちに戦争を始め、男は無理矢理戦場に駆り出して殺し、負けるとわかっていた戦争を「大本営報道」でウソばかり流して長引かせ、女、子どもや年寄りを空襲や原爆で無惨に焼き殺した。
 今、安倍政府は秘密保護法、日本版NSC、来年に予定される安保基本法によって事実上の改憲を進め、今度はアメリカの下請となって戦争に乗り出す道を進んでいる。いかにアメリカに従属した度はずれた売国奴かだ。日本列島を再び原水爆戦争の火の海に投げ込もうとするこのようなたくらみは、全国民の団結の力で葬り去らねばならない。

 「安保」破棄の大斗争を 新たな運動の始まり

  もう国民は黙っていない。なぜアメリカのための戦争で日本の若者が死なないといけないのか。そんなに戦争に行きたければ安倍が自分で行け、国民を巻き込むなという世論が爆発寸前になっている。アイソン彗星ではないが、安倍政府もいつ飛び散って粉粉になるかは時間の問題だ。
  被爆者や戦争体験者が「今こそ戦争体験を語り、戦争を止めなければならない」「いよいよ自分たちの出番が来た」と使命感を高めている。また現役世代や大学生、小中高生がそれを真剣に受けとめて生き方を変え、行動を起こしている。
 広島の大学で体験を語った被爆者は、学生から「秘密保護法や改憲についてどう思われますか」と質問されると、「被爆者として絶対許せない。大声を出すとテロといわれるそうだが、ますます大声で戦争反対を叫んでいきたい」といっていた。すごい迫力だ。これまで「原爆と戦争展」で第2次大戦の真実を明らかにしてきたが、今がその通りになっており、ますます「原爆と戦争展」をやり体験を伝えて、真実を明らかにしていきたいという確信と意欲が広島でも長崎でも非常に強い。
  被爆者は戦後のはじめから、原爆についてはいってはいけないと米占領軍のプレスコードで言論統制されてきた。当時、広島の風呂屋の中では原爆でどのようにやられたかで沸き立っていたが、町へ一歩出ると口を閉ざすという抑圧の下におかれていた。
  それを共産党中国地方委員会が「原爆で何十万の人人を一瞬のうちに殺すようなことは許しがたいんだ」という主張を始め、街頭で被爆写真を展示し、そして1950年の8月6日に初めての原爆に反対する集会をもった。それは戒厳令下の弾圧を受けて非合法下でおこなわれたが、広島市民に深い印象を残し、全国にも大きく響いて、翌年の第2回大会は合法的に開くことができた。そしてその五年後には原水爆禁止の世界大会を持つまでに急速に発展し、アメリカに原爆を二度と使わせない力になった。
 その質の運動が「原爆と戦争展」運動に受け継がれ、平和運動の強大な力になってきたし、この運動なら戦争を阻止できると確信になっている。
  下関市民の会も軍港化反対署名をとりくんでいるが、秘密保護法成立でもっと戦争体験を伝え、運動を広げようと話になった。国会や野党に期待してもなにも変わらない。下からの運動を大きく広げて行けば跳ね返せると話されている。
  沖縄ではぐるま座の『動けば雷電の如く―高杉晋作と明治維新革命』公演が大反響を呼んでいる。「今とぴったりのテーマ」「日本の独立・平和をめざして行動するときだ」と語られている。復帰斗争世代が立ち上がって全県的なネットワークができたことに続き、青少年や親世代も結びつき、本土と団結して沖縄を変える大きな運動となって広がっている。
 戦後最大の政治斗争となった60年の「安保」斗争は、全国的な統一戦線の力で安倍の爺さんである岸信介を退陣させ、米大統領アイゼンハワーの来日を阻止した。だが、当時はまだ「革新政党」の斗争をねじまげる欺瞞が一定通用した。今はその構図がすっかり暴露されて、戦争勢力と人民の和解できない対立関係がかつてなく鮮明になっている。
 全国でたたかわれている秘密保護法反対、原発再稼働・新規立地阻止、TPP参加交渉からの即時脱退、消費増税反対などのさまざまな斗争を、その根幹である「日米安保条約」破棄のたたかいに合流・発展させ、職場・生産点・学校を基礎にした全国的な統一戦線を発展させることが、真に戦争を押しとどめ、独立した平和な日本をつくる力になる。
 D こうした統一戦線が発展すれば、安倍が独裁者として振る舞おうとしても、手出しできるようなものではない。そうした権力者は社会の発展にとってじゃまだから、そこをどいてくれということになる。秘密保護法強行採決をめぐる世論の大転換は、力ある戦争反対斗争の始まりといえるだろう。

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