いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

文字サイズ
文字を通常サイズにする文字を大きいサイズにする

政治家はもらった分だけ働け 使途不明な文通費や政党交付金 維新に突き刺さった巨大なブーメラン

 国会議員に支給される1人当り月額100万円の文書通信交通滞在費(文通費)――10月31日の衆院選挙で当選した新人議員は在職日数1日であるにもかかわらず、10月分の文通費100万円が満額支給されたことがにわかに注目を集め、日本維新の会につづき、自民党、公明党なども所属議員から集めて寄附する方針などを示している。ところが火付け役となった維新も、副代表の吉村洋文・大阪府知事が過去に在職日数1日で文通費を満額で受けとっていたことや、顧問役の橋下徹も自党から講演料として数千万円を懐にしていたり、その他、税金を元手にしながら領収書のない不明瞭な支出(マネーロンダリング)が次々に暴露され、自分で投げた巨大なブーメランが突き刺さる形となった。カネに支配される永田町の現実が浮き彫りになっている。

 

有権者に説明できない公費支出 維新のインチキも露呈

 

 ことの発端は、今回の衆院選で当選した維新の新人議員・小野泰輔(元熊本県副知事)がSNSで「歳費(いわゆる給料)は日割り計算(約3万円)となっている」のに文通費が満額支払われたことについて、「衆議院事務局に確認したところ、今の法律では1日でも任期がかかっていると満額が出る仕組みになっており、日割りにはなっていないとのこと。しかし、これは世間の常識からしたらおかしい」と発信。これに維新幹部の吉村洋文大阪府知事や橋下徹などが「永田町の常識は世間の非常識」「我が党は所属議員から集めて全額寄付する」などと援護射撃し、他党にも対応を迫った。

 

 文書通信交通滞在費(文通費)とは、議長や議員が「公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなす等のため」(国会法第38条)として郵送代や通信費、交通費などの名目で支給されるものだが、非課税であるうえに使途報告の義務がない。歳費とは異なり、日割り計算とはならないため、国会議員として月に1日でも在職すれば1カ月分100万円満額が支払われる。議員にとって「第2の給与」などと揶揄される由縁だ。

 

 「身を切る改革」を標榜する日本維新の会代表の松井一郎大阪市長は「永田町は世間の常識からかけ離れている」とし、党所属の新人議員から10月分の文通費100万円を「特別党費」として全額集め、被災地やコロナ関連の支援に寄附する方針を示した。だが公職の候補者が所属する政党としての寄附行為は公職選挙法で禁止されており、寄附先は明らかにしていない。

 

 同党副代表の吉村知事は、「文書通信交通滞在費とかまどろっこしい名前をつけてるけど、領収書は要らない。領収書不要の経費ってある?」「『経済的弱者の救済を!』と声高に叫ぶ政党も、結局、自分達の厚遇に関しては、みんなで仲良く下向いて知らんぷり。真っ先に税金から非常識な分配を受けている。どこの政党も知らんぷり」と他の野党に批判の矛先を向けた。

 

橋下徹

 維新顧問役の橋下徹も「立憲民主も国民民主もれいわも共産も起きてまっか? 山本太郎さんも4時間で100万円相当の収入を丸取りでっか?丸取りならあんたらの言うこと信用ならんで!」と畳みかけるなど、れいわ新選組などのライバル政党を意識したキャンペーンを展開した。

 

 これに自民党や公明党も同調して「全額返金すべき」「寄附する」との方針を示し、立憲民主党は「国庫返納が筋」として自民党と文通費の日割り支給を可能にする法改正を目指すことで一致したと報じられている。

 

 ところが「国会の非常識、古臭い慣習、非生産性。維新が突破を」「文通費の使途を公開してるのは日本維新の会だけ」といい放ってきた維新の吉村副代表自身も、大阪市長選に出馬した2015年、9月中に出馬を決めながら10月1日に国会議員を辞職し、在職1日で100万円の文通費を受けとっていたことを、れいわ新選組の大石晃子議員が衆議院事務局で確認したうえで暴露。

 

吉村洋文

 しかも吉村氏は国会議員だった9月までの文通費の大半を毎月自身の政党支部に寄附しており、10月分だけは使途を明らかにしていなかった。これを受けて吉村氏は「記憶が曖昧」としながら「ケジメがつきませんから、6年前のことですが、満額寄付を致します」とのべるなど釈明に追い込まれた。

 

 だが吉村氏にとどまらず「文通費の使途公開」を原則としている現職の維新議員21人全員(2019年)が文通費の領収書を自分で自分に切っていただけでなく、自分の政治団体に寄附していたことが明らかになっている。「公の書類」に限られているはずの文通費を選挙資金に流用した例もあり、2015年10月~2019年3月までに維新が受けとった文通費約7・6億円のうち7割強におよぶ約5・7億円が、所属議員が代表を務める政党支部や資金管理団体などに寄附されていた。

 

 維新は「文通費の使途公開」を党是としてきたが、このように一度政党支部などに寄附してしまうと別の寄附などと混同されるため、文通費が実際に何に使用されたのかはわからなくなる。「公のため」とされている文通費を人件費や選挙活動、さらには個人的支出に流用するためのマネーロンダリング(資金洗浄)ともとれるものであり、「セルフ領収書」「自分あて領収書を切る改革」とも揶揄されている。

 

歳費に見合わぬ政治家の体たらく 削るだけでは解決せず

 

 確かに毎月100万円もの公金が支給されながら領収証も使途公開も不要という文通費のあり方は、納税者として納得できるものではない。さらに在職1日で議員としての活動実態がないにもかかわらず満額支給というのも改善されなければならない問題である。

 

 改めて国会議員の歳費や手当て【表参照】を見ると、基本給として歳費1500万~2600万円、期末手当(ボーナス)が635万円、文通費1200万円、立法調査研究活動をおこなうための必要経費の一部として支給される立法事務費780万円などで、1人当り年間4000万円~5000万円が支給される。ちなみに18歳以下への10万円の給付について、自民党政府は「年収960万円以上はかなりの高所得者」として給付対象から外している。

 そのほかにも秘書給与3人分(秘書1人当り600万~800万円程度)として1800万~2400万円、議長や特別委員長などの役員には国会会期中の日当として日額6000円があてがわれたり、JRの無料パスや航空券引換証も支給されるなど、さまざまな議員特権がある。

 

 昔は政治家になれば国事に奔走して家財を失い、井戸と塀だけが残る「井戸塀政治家」などといわれる時代もあったが、現在の政治を見ると、仕事といえば法案可決の挙手要員になるだけの陣笠議員ばかりで、これらの議員特権ですっかり飼い慣らされ、コロナ禍の緊急事態宣言下でも繁華街で夜な夜な豪遊……などという破廉恥な生態が常態化している。

 

 365日政治家としての主体性を持って有権者の間で起きている問題と切り結び、刻苦奮闘している政治家を見ることなど稀であり、このような世間一般とかけ離れた厚遇や議員の資質について「貴族化している」「けしからん」という世論が高まるのは必然といえる。どんなに高潔な志を持った政治家もこのような議員特権のなかで骨抜きにされて腐敗堕落してしまうケースを、多くの人々が目の当たりにしてきたからでもある。

 

 と同時に、「だから政治家は必要ない」「既得権の打破」「議員も公務員も削減すべき」といって「身を切る改革」を提唱してきたのが維新だが、単に議員の数や手当を削りとれば解決するという問題でもない。そして彼ら自身が「改革」と称しながら公金を功名にマネーロンダリングし、小さな特権をつつきながら、巨大な既得権にしがみつく実態も浮き彫りになっている。

 

 国民が必要としているのは「身を切る」政治家ではなく、国民のために「身を粉にして働く」政治家であるにもかかわらず、選挙に立候補するだけで供託金300万円(比例も合わせて600万円)が必要など政治参加への経済的ハードルが高い問題をそのままにして、議員定数を減らしたり、諸経費の手当をなくすことだけ進めれば、財政的バックや組織、しがらみを持たない政治家を国政に送ることは困難になる。有権者の声は国政に届かなくなり、政治がますます有権者から遠ざかっていくことになる。

 

 文通費100万円についても、まじめに有権者への国政報告などをやろうと思えば、報告書1通(100円)を1万人に配布するだけで消えてなくなる額であり、要は誰のためにどんな政治活動をやっているのかが厳密に検証されなければならない問題だ。

 

個人支出で使途不明 巨額な政党交付金の流用

 

 国政においては、議員個人だけでなく、大規模政党に対してさらなる大規模特権が用意されている。国政政党要件を満たした政党には、議員数割と過去2回の衆参両議院選挙での得票率割で配分される政党交付金が毎年支給されている【表参照】。自民党が170億円、立憲民主党が69億円、公明党が30億円、国民民主党が24億円、維新が18億円……など、総額317億円をこえる巨額なものだ(共産党は受け取り辞退)。

 

 これは企業献金などを制限するかわりに政治活動を助成する目的で交付されるもので、国民一人250円の計算で総額が決まっている。交付を受けた政党は収支報告によって使途を明確にすることが義務づけられる。

 

 だが先の参議院選・広島選挙区における大規模買収事件で、有罪となった河井夫妻の政党支部に対して自民党本部から振り込まれた1億5000万円も政党交付金から支出されたものであったように、厳密に使途が検証できる建て付けにはなっていない。

 

 今回の文通費問題をめぐる騒動では、元維新の会所属国会議員だった丸山穂高が、「税金なんだから使い道を公開すべきと主張するなら、(維新の会)本部の政党交付金から国会議員団へ税金が流れて、掴み金で馬場議員や遠藤議員が毎月何百万もじゃぶじゃぶ使っている組織活動費の件も、使い道全て公開すべきでは?」とSNSで発信。

 

 総務省が公開した日本維新の会国会議員団の収支報告書をみると、2019(令和元)年分だけでも、政党交付金から馬場伸幸幹事長、浅田均政調会長、遠藤敬国対委員長などの議員4人に「政策活動費」として毎月100万~500万円、計5865万8000円が支出されている。

 

日本維新の会国会議員団の収支報告書より(2019年分)

 政党が支部に寄附をしたり、個人・団体が政治家の資金管理団体に寄附した場合は、その金の使途について報告義務があるが、政党が議員個人に「政策活動費」や「組織活動費」として寄附した場合には使途の報告義務がないため「抜け穴」となる。同年、自民党も同じ名目で二階俊博幹事長や甘利明選挙対策委員長ら計18人に13億410万円を支出していた。

 

 維新に支給された立法事務費の半額を含む毎月1・4億円近くが維新国会議員団に流れ、そのうち3分の1強が「組織活動費」(3年間で1億3500万円)という名目で使途不明になっている実態についても指摘した丸山は、「この組織(政策)活動費は議員個人に流れた後はどう使ったかもオープンにならない。使い切ったことにすれば一切所得税もかからぬ税金原資の魔法の掴み金。もし幹部からさらに他者に渡したならその人はどう経費計上しているか?も問題。政治活動に使ったならオープンにできるよね?」「現に収支報告書制度はそういう趣旨なのだから」とSNSで内幕を暴露している。

 

 議員数が多い政党ほど交付金も巨額になるので、それを選挙資金(供託金等)に回せば大規模政党ほど大きなアドバンテージになるし、飲食や接待、または買収に使われていたとしても、総務省には不正チェック権限がないため不正は摘発されにくいのが実態だ。

 

 政党交付金は原則1年で使い切らなければ残金は国庫返納命令を受けることになるため、「文通費の回収」「身を切る」といってきた維新も3年間の政党交付金の3割にのぼる残金15億円を「基金」として蓄えている。

 

 文通費問題でメディアを通じて他党を猛批判してきた橋下徹も、それよりはるかに巨額な政党交付金の使途不明問題について話が及ぶと、「大阪では吉村さん筆頭に大阪維新のメンバーがこれだけの大改革をやっているのに、吉村さんや大阪維新のメンバーは年間数千万円の活動費なんて受け取っていませんよ! しかも活動費で飲み食いなんてやってませんよ! 維新国会議員団は何をやってるんですか!」と維新の国会議員団批判に立場を移した。

 

松井一郎

 だがこれに松井代表は「組織活動費は国会議員幹部のみで消費している訳ではなく、大阪維新の会含めてすべての地方議員の活動費として使用しています。維新の会の地方議員が全国で活動する時の旅費、滞在費に支給しており、国会議員執行部の飲食経費がすべてではない」「組織を動かすには領収書の必要のない経費も必要」と歯切れの悪い弁明で領収書の公開を拒み、他党に矛先を向けてきた「身を切る」キャンペーンの勢いは一気にトーンダウンした。

 

 また、橋下徹自身も政界引退後、2016~18年までの3年間に日本維新の会や同党議員の後援会などから「大会費」「講演料」「講師料」として総額3456万円(講演1回当り216万円)を受けとっていることが明らかになっている。この3年間で日本維新の会からは432万円、大阪維新の会から648万円、日本維新の会衆院東京第23区支部から648万円、その他の議員後援会や政治資金パーティーでの出演料として216万~432万円を受けとっている。「上納金」ともいえる法外な金額設定であるが、文通費や政党交付金が政党支部や後援会などに寄附として入金されている以上、橋下自身がしっかりその恩恵にあずかっていたことになる。

 

 有権者のために身を粉にして働くごくわずかな政治家にとっては決して十分といえない議員手当であっても、巨大政党になるとどんぶり勘定で巨額の公費支出があてがわれ、それが個人の私的利害や有権者買収にさえ使われるという弊害が顕在化している。

 

 政治家の質の劣化が問題になるなかで、公金で私腹を肥やすための政治、あるいは「改革」と称して重箱の隅をつつきながら巨大な既得権を懐にするインチキ勢力について有権者からの厳しい視線が注がれている。

関連する記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。なお、コメントは承認制です。