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「府市一元化」目指す大阪の現実 医療崩壊に加え協力金も届かず… 効率化掲げた民営化のツケ 

 新型コロナ死者数が全国最多となり、5月初旬には直近7日間の人口100万人当りの死者数が一時はインド(16・5人)を大きくこえる22・6人となった大阪府--。第四波の新規感染者数はピークを脱して下落傾向にあるものの、現在も1日当りの死者数は20人前後と高止まりが続き、9日時点での100万人当りの死者数は全国最多の282人。この結果を招いた「大阪維新」の失政は、公立病院の独法化や保健所統合、衛生研究機関の統合・民営化などによる公共医療・保健体制の切り捨てだけにとどまらない。緊急事態宣言にともなう時短営業要請に応じた飲食店に支給されるはずの協力金の支給も極端な遅れが目立っている。背景にあるのは、「財政効率化」と称して進めた公務員削減による圧倒的なマンパワー不足、行政機能の弱体化だ。

 

 現在、国の緊急事態宣言地域に指定されている大阪府では、協力金として中小企業等は売上高に応じて1日当り4万~10万円(売上高減少額方式も選択可能)、大企業は売上高の減少額に応じて1日当り上限20万円が支給されることになっている。特措法の改定によって国が8割、自治体が残り2割を負担する建て付けだ。

 

 だが大阪府の支給状況(6月9日時点)は、今年初めに時短営業を要請した1月14日~2月7日までの第一期分の申請数5万7000件のうち、支給件数は85%の4万8000件。つづく第二期分(申請受付3月8日~5月14日)の支給率は58%(申請数約5万8000件)、大阪市内に限定した第三期分(申請受付4月8日~5月27日)の支給率は24%(申請数約3万3000件)に止まっている。

 

 さらに、4月1日~24日まで大阪市と市外を対象にした第四期分の協力金は申請数3万7000件のうち支給件数は4000件で、支給率はわずか9%程度だ。

 

 東京都では6月2日時点で、第一期の支給率は96%(申請数7万5000件)、第二期は93%(同)、第三期は65%(申請数7万2000件)であり、大阪府の支給状況とは大きな開きがある。

 

 協力金の支給状況をホームページで公開している他都市(6月3日時点)と比べても、栃木県では第二期(1月分)の支給率が95・5%、第三期(2月分)が98・6%、神奈川県は第六期(3月分)が93・4%、第七期(4月分)が78・7%となっている。2月に時短要請に応じ、3月初旬に申請した協力金の給付が、多くの都市で9割以上支給されているのに比べて、大阪市では5割程度にとどまっており、支給速度に極端な差が出ている。1月に時短営業に応じて協力金を申請した飲食店のうち、4カ月以上たっても協力金が一銭も下りていない店舗が7200件も存在していることになる。

 

 昨年12月に大阪市全域に発せられた時短要請協力金(1日6万円)でさえ、3月時点で支給が決まっていたのは30%であり、何カ月間も通常営業ができずに収入が途絶えている飲食店からは「待てど暮らせど支給されず、このままでは店を廃業せざるを得ない」との悲鳴が上がっていた。

 

 大阪市北新地の飲食店主は、「2月に申請した第一期の協力金がようやく6月8日に振り込まれた。申請してから4カ月だ。府は、申請者が多く、審査に時間がかかることが原因といっているが、“時短要請(罰則付き)と協力金がセット”というのは国と行政が決めたことだ。わかっていながら行政の体制をとっていなかったということだ。酒が提供できなければ、居酒屋などの収益はほとんどなくなる。たとえ協力金が入るとしても、4カ月間も無収入に等しい状態が続けば、店が潰れるか、首をくくらなければいけなくなる。店を守るために要請に反して酒の提供を始める店が出てきて客が殺到し、まじめにルールを守っている店が干上がって潰れていくという悪循環も生まれている。吉村知事は“より強力な私権制限が必要だ”というが、そのような状態をつくり出しているのは誰なのか? あまりにもピントがずれている」と語る。

 

 また、大阪市は昨年国が決定した10万円の特別定額給付金の支給も全国の政令指定都市のなかで最も遅かった。政令市として最も歴史が古い都市でありながら、「バーチャル都構想」(松井市長)としてコロナ対応の窓口を府に一元化したことによる行政機能の弱体化が指摘されてきた。

 

 大阪市の行政経験者からは「本来は、府と政令市で二馬力あるはずの行政機能が“二重行政の解消”といって一馬力(大阪府)に縮小され、大阪市に至っては“動きが遅い”というよりも“何もやっていない”に等しい。このような非常時には、首長が号令を出して行政の最優先課題を職員に徹底させるものだ。コロナで困窮している業種を洗い出し、他都市に遅れをとらないように一刻も早く給付金を届けるということが至上命題になっていれば、あらゆる組織から人員を動員してそれを遂行することは可能だった。大阪市は本来そのようなことが得意な自治体だったはず」と話す。

 

 ところが医療崩壊が深刻化し、死者数が全国最多になった第四波の最中に大阪市と大阪府が最優先課題として遂行したのが、大阪市の広域行政(大規模再開発や鉄道・高速道路整備など7分野)を府に移管する「広域一元化条例」の制定であり、6月9日の府議会では府市の共同部局「大阪都市計画局」を新設する議案を賛成多数(大阪維新や公明党が賛成)で可決した。政令市として大阪市が握ってきた機能を大阪府に移管させる、つまり市役所機能の解体をコロナ禍に乗じて進行させてきたことになる。その労力を確保するために市民サービスに割ける人員が減り、医療体制拡充から協力金支給に至るまで他都市と比べて極端に対応が遅れている要因となっている。

 

 

公共機能の役割否定 危機対応できぬ脆弱さ

 

 大阪市によると、大阪市では2005年から2019年までの14年間で1万2879人(全体の約27%)の職員が削減された。「無駄の削減」と称しておこなわれた行政改革によるものだが、市民を相手にした業務量が減るわけではない。

 

 そこで始めたのが行政業務の外部委託であり、正規職員を補充しないかわりに人材派遣業者に業務そのものを発注。そのため大阪市24区すべての役所の窓口業務を担うのは派遣社員となり、委託料は10億6931万4673円(2017年度)にのぼっている。その大半を受注しているのが大阪市特別顧問だった竹中平蔵率いるパソナグループで、同社は16年には4億2840万4848円だった委託料を、翌17年には5億6340万1837円(前年比131・5%)へと伸ばし、いまでは市窓口業務の8割を同社が占める状態になった。

 

 コロナ禍における給付金等の審査では、センシティブな個人情報をとり扱う責任がともなううえに、職員の経験値やきめ細かいコミュニケーション能力が求められる。入れ替わりが激しく、低賃金で不安定雇用の非正規職員による対応は難しく、迅速な支給業務が滞る要因になっている。

 

 それは「維新」や自民党が進めた公立病院の独法化でも同じことがいえる。感染症や救急医療など採算性の低い医療は、財政効率を重視する民間や独立法人では担保できないため、公立病院がその役割を担ってきた。現にコロナ患者対応を受け入れている病院の8割が公的医療機関だ。

 

 「大阪維新」を率いてきた橋下徹・元大阪市長は、医療崩壊を招いた大阪維新の公的医療破壊について、「公立病院だけでなく大阪全体の医療を見て下さい。人員総数は増えています。公立病院の独立行政法人化を勉強して下さい。公務員の身分がはずれるだけで人数自体が減るわけではありません」「パンデミックに備えて日本の医療がやらなければならないのは、多すぎる中小病院の集約化、機能強化」とSNS上で毒づいたが、独法化された公立病院は独立採算制となって財政効率を求められ、大阪府立病院機構の病院運営費負担金(大阪府が交付)は2005年に143億9000万円あったものが、19年には83億4000万円(マイナス42%)にまで減額されている。公的病院の多くがその財政逼迫の煽りを受けてベッド数や人員削減を強いられ、パンデミック下で医療麻痺を起こしているのは周知の事実だ。

 

 全国最悪の事態となった大阪の危機的状況は、行政機能を切り売りした民営化や独法化がもたらした人災であり、公助を削減して自助に丸投げし、その間に入った新たな既得権者がマージンを吸い上げていく新自由主義政治の末路といえる。

 

 現在、全国的にも公的業務の民間委託は、保育やゴミ収集、水道、給食業務などにも広がり、コロナ禍をはじめとする災害に対応できない行政機能の弱体化が各地で顕在化している。その「効率化」の掛け声とは裏腹な残酷なまでの非効率を大阪の厳しい現実が教えている。

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