いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

文字サイズ
文字を通常サイズにする文字を大きいサイズにする

火事場泥棒のような国会運営 種苗法や年金改革、スーパーシティや検察官の定年引き上げ

 新型コロナウイルス感染拡大により日本全体が対応に追われるさなかに、安倍政府は開会中の今国会で予定していた法改正案などをまともな審議も経ぬままに成立させようとしている。法案のなかには、日本の農業のあり方や食の安全を大きく変える種苗法改定、年金支給開始年齢を75歳まで引き上げる年金改革関連法案、検察官の定年を延長する内容を含んだ国家公務員法等の一部を改正する法律案などがあり、火事場泥棒のようなかたちで成立させようとしている。コロナの影に隠れて審議が進んでいるもの、されようとしているものを見てみた。

 

農業と食明け渡す種苗法改定案

 

 16日から農水委員会での審議入りした種苗法改定は、農家の自家増殖を原則的に禁止するもの。農業競争力強化支援法や公的な種苗事業を民間に移すという2017年11月の農水省事務次官の通知などとあわせると、多国籍企業にこれまでつくりあげ守ってきた権利を明け渡す内容となっている。国内農業はもとより、国民の食と命に大きな影響を及ぼすことが明らかであることからこれに反対し、種苗事業にかかわる農業者を論議に加えて慎重な議論をおこなうことを求める声が各方面から上がってきた。しかし安倍政府は、コロナ騒動渦中の農家が議論に参加することが不可能な状態のまま審議入りしており、今国会での成立を目指している。審議入りの時期については新型コロナの影響で連休明けになる可能性も強まっているが、関係者を議論に加えないまま国が勝手に決めていく動きは国際条例にも違反するとの指摘が広がっている。

 

死ぬまで働かせ年金支給絞る

 

 14日には年金改革関連法案が安倍首相出席のもとで審議入りした。「死ぬまで働かせ法案」ともいわれるこの法案では、支給額を絞るとともに元気な高齢者を「支える側」として働かせる内容となっている。年金支給開始年齢を現在60~70歳までとなっているものを22年4月からは60~75歳までに拡大し、支給開始を75歳まで可能にする。受取時期を遅らせることで月ごとの年金額が増えるようにし、高齢者の就労につなげることを狙っている。さらに、一定以上の収入がある高齢者の厚生年金を減らす「在職老齢年金制度」では、60~64歳の減額基準となる賃金と年金の合計額について、現在の月28万円超から22年4月に月47万円超へ引き上げる。さらに、高齢者の就業を踏まえて企業年金や個人年金の年齢要件も見直すことを盛り込んでいる。

 

 この関連法案では、パートなど短時間労働者への厚生年金適用拡大も柱にしており、厚生年金の加入義務がある企業の規模を「従業員数501人以上」から24年10月には「従業員数51人以上」まで引き下げることも含む。

 

検察官の定年を65歳に引き上げ

 

 さらに、国家公務員の定年を60歳から65歳に段階的に引き上げる「国家公務員法等の一部を改正する法律案」も閣議決定を経て3月13日に提出され、16日に審議入りした。65歳定年の導入は、少子高齢化が進むなかで「働く意欲と能力のある高齢者の就業機会を確保」することを目的とした年金改革と歩調を合わせる動きとなっている。

 

 問題は、この関連法案のなかに検察官の定年を引き上げる検察庁法改正案も含まれていることで、これは検察官の定年を現行の63歳から65歳に引き上げる内容だ。現行法では、63歳になった者は検事総長を補佐する最高検次長検事や高検検事長、検事正などには就けなくなる。ただ、人事を任命する権限を持つ政府や法務大臣が「職務遂行上、特別の事情がある」と判断すれば、63歳以降もポストを続けられるようになる。1月の閣議決定により定年延長が適用された黒川弘務東京高検検事長は、きわめて恣意的な「特別な事情」で法解釈の変更までして延長したが、検察庁法が改定されれば法の規定にもとづいて定年の延長が可能となる。検察官の定年制は、「身分保障」とあわせて政治による介入の防波堤の役割を果たしその独立を守ってきたものだ。先に黒川人事をおこなっておきながらそのつじつまあわせのような法改正をおこなうことに、その内容の重大さに検察関係者からも強い批判が広がっている。

 

スーパーシティ法案も成立か

 

 さらに今国会では、「スーパーシティ法案」なる国家戦略特区法改正案も提出されている。昨年の通常国会では廃案となり、秋の臨時国会でも成立はかなわなかった同法案だが、まずスーパーシティ構想とは、人工知能(AI)やビッグデータなどの先端技術を活用した都市を実現する構想で、すでに法案は今月2日から審議入りしている。9日の衆院地方創生特別委員会理事懇談会では、この改正案について15日に採決することを決め、衆院を通過し今国会中に成立する見通しとなっている。自動運転や顔認証によるキャッシュレス決済、ドローン配送、遠隔教育・医療など「包括的最先端サービス」を住民に提供するというものだ。新たに国家戦略特区の事業を開始したい自治体は事業計画書をつくり政府に申請し、了承を得られれば実施できる。モデル地域ではさまざまな規制がとり払われ、そのもとで特定の企業が自由な活動ができるようになる一方で、住民は「利便性」と引き換えに個人のあらゆる情報を利用されることになる。便利な未来型都市をつくるという裏には、個人の権利、社会、環境、平等性、地方自治などさまざまな課題が山積しており、これらの検証や論議なしにスーパーシティ構想を実現させてはならないと知識人も発信している。あちこちで自治体が名乗りをあげ認定されていけば、現在住民を守る側からある法律や条令がとり払われ、それが日本社会全体に深刻に影響することも危惧されている。

関連する記事

この記事へのコメント

  1. 佐藤 泰正 says:

    許されない。一番の問題はただ賛同するだけの選挙民の代表たる自民議員。国民の生命と安全にまったく関心のない野党。
    まともなコロナ対策もできず。国民の命を放り、自己の利益のみ追及する安部と政権、支える自民、、公明の暴挙と容認する無関心の野党。現在の政治システムはもはや国民にとって害悪。
    この必要な情報を伝えないマスゴミは、報道機関としての役割を果たしていない。無用、害悪の存在。真の日本国民であれば覚醒すべき。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。なお、コメントは承認制です。