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国民世論に火付けた強行採決 安保法案可決に4万人国会包囲 「賛成議員はみな叩き落とせ」

 安保法案の参院本会議での採択がおこなわれた18日、国会前で連日おこなわれてきた抗議行動には4万人をこえる人人が集まり、国民世論に耳を貸すことなく成立に向けた手続きを進める国会議事堂を包囲した。参議院特別委員会での強行採決後、成立が秒読み段階になるなかでも抗議集会の参加者に悲壮感はみられず、最後まで世論無視で暴走した安倍政府への満身の怒りとともに「これからが本当のたたかい」「国民の敗北ではなく、自民党が死んだ日」「今度は国民が反撃する番だ。賛成議員を全員叩き落とそう!」と腰を据えたたたかいを見据えて迫力みなぎるものとなった。
 
 欺瞞剥がれ対米従属の姿暴露

 安倍政府が「強行採決しても国民は大型連休中に忘れる」と豪語し、18日の参院採決にこだわるなか、国会前の抗議行動には18日の夜になるにつれて続続と市民が押し寄せた。
 戦争を体験した年配者、子どもを連れた母親、背広姿の会社員、労働者、学者、学生、弁護士、宗教者など幅広い世代の各界各層が肩を並べ、「戦争反対」「戦争立法反対」「強行採決絶対反対」「安倍はここに出てこい」「中谷出てこい」などコールに合わせて国会議事堂に向けて声を上げた。「自民党には天罰を」「公明党には仏滅を」などの声や、「国民の声を聞け!」「安倍を前線に!」「賛成議員は落選させよう!」などの手製のプラカードが掲げられ、終盤には「さよなら晋三」と書かれた巨大な横断幕が闇夜の国会議事堂前に翻った。行動現場に国会内の様子が随時報告されるたびに「安倍はやめろ」のボルテージは上がり、日付が変わってもその勢いは衰えず、時折雨が激しく降るなかでも抗議への参加者は膨らんだ。
 強行可決への怒りを胸に刻みながら「たたかいはこれからだ」と強い決意と確信を込めてスピーチにも熱がこもった。
 中央大の植野妙実子教授は、「日本国憲法の第二章第二項に明記されているのは、戦力の不保持と交戦権の否認だ。戦争をしない、戦争に荷担しないわれわれの決意だ。私たちがいつこの領土においてアメリカ軍が存在することを認めたか? 自衛隊がますます増強することを認めたか? 最小限の自衛権という名の下に戦争荷担しないという決意が覆され、ついには法的安定性がなくてもいいといい、国民生活の基本である憲法がときの政府の解釈によってさまざま変わり、憲法に反する法律を現憲法下で認めることが許されていいのか。はじめにアメリカと約束し、閣議決定で決めただけで国民はだれも認めてはいない。子どもを絶対に戦争に行かせない! 戦争を放棄し、平和を世界に認めさせる強い気持ちでみなさんとともに頑張りたい」と力を込めて語った。
 慶應大の金子勝教授(経済学)は、「1931年9月18日は関東軍が柳条湖において橋を爆破して満州事変を勃発させた日だ。つまりクーデターの日だ。そして今日、2015年9月18日もまたクーデターの日だ! 私たちが記憶の中にとどめて絶対に忘れることのできない日だ。われわれが相対している自民党はもはや保守政党ではなく、極右でありファシストである。あの忌まわしい2014年12月の総選挙で、多くの人が棄権し絶対得票率わずか20%の自民党をして国政の基本原理を覆す法案を通すことが許されていいのか!」と訴えた。
 「あのときの自民党の選挙スローガンは“アベノミクス、景気回復はこの道以外ない”だけであった。私たちは集団的自衛権を認めるなどということを選挙で問われただろうか? 国民を詐欺にかけているのだ。そして憲法を踏みにじり、どこでもいつでも戦争ができる法案を通すとき、彼らは同じ文句をくり返すだけでまともに国民に説明しなかった。NHK会長にも日銀総裁にも“お友だち”を送り込み、日銀の国債保有額は309兆円、ETF(株式投信)の額は6兆円。もはや戦時中と同じである。発展途上国でのクーデターでは、まず国営放送を握り、次に中央銀行の通貨発行権を握る。私たちが目の当たりにしているのは、まさにクーデターに他ならない。一度たりともまともな答弁をせず、100時間にわたって牛歩戦術をくり返したのは自民党自身だ! このような政権を絶対に許すことなく、私たちの胸に問いかけよう! 民主主義社会を望むのか、独裁者国家を望むのか二つに一つだ。今いる自民・公明議員をすべて叩き落とすまで、ともに連帯して頑張りたい」と満身の怒りを込めて訴えた。
 参院特別委員会の公聴会に公述人として呼ばれた学者、弁護士からは、「地方公聴会の結果は全委員に報告されなければならないが、委員会は鴻池委員長の不信任動議を否決した流れで一気に法案採決をした。地方公聴会は議事録すら残されていない。その日のテレビでは(田母神)元幕僚長が出てきて“安全保障問題は国民の意見を聞くようなものではない。専門家が決めることだ”といった。専門家とは軍人のことだ。戦前とまったく同じ事をいっている。このたたかいはそういう社会をつくらないたたかいだ」(廣渡東大名誉教授)、「公聴会とは、議決にあたって公述人が語った内容を参酌する目的で開かれるものであるにもかかわらず、議事録は委員に配布すらされなかった。なんのために開いたのか! こんな採決は無効だ」(水上弁護士)と議場内で展開されるデタラメぶりを指摘する声もあいついだ。
 また、「そもそもこの議事堂内にいる人たちは、違憲状態の歪んだ選挙で当選した議員にすぎない。“われこそは最高責任者”など思い上がりも甚だしい。違憲の議員が違憲の立法を強行採決している。国会内の大掃除をやって連中から権力を奪い返そう」(中野晃一・上智大教授)、「集団的自衛権とはアメリカと軍事同盟を結ぶということだ。戦前にナチスと三国軍事同盟を結んだ瞬間から日本の進む道が決まった。抑止力が上がるなどというのは詭弁だ。国会では無責任な議員がむこう3年間の自身の地位を守るためだけに賛成しているだけであり、ここにいる人人こそ10年先も見据えて声を上げている。このような40年ぶりともいえる国民の政治的なうねりを作り出したことだけは安倍政府を褒めてやろう。民主主義の健全な機能は一人一人の自由な言動によって体現できる。これから腰を据えて政府の息の根を止めよう。落選運動をやろう。賛成する人人ともじっくり話し合おう。そうして5万人が10万人になり、50万人が100万人になる」(島田雅彦・作家)、「同盟国アメリカがやってきた過ちについて首相はどう考えているのか。仮想敵国の市民の命、銃口を突きつけられる人の命、突きつける側の人間の心についてどう考えているのか。言葉を尽くして答えてほしい。アメリカに追随すれば必ずどこかで血が流れる。それが政府のいう平和なのか。私たちの望む平和は、戦争も貧困も、格差も暴力もない社会だ。国際支援の活動で人一人の命を救うことの難しさを肌を通じて学んだ。議事堂の柔らかな椅子に座り、立派な空間で決められたことがこれほどの人に汗を流させ、日常を変え、時には傷つけるということを知ってほしい。この法案はなにを守るためのものなのか答えてほしい。私はこの夏の出来事を忘れず、主権者として行動し発言し続ける」(女子学生)と、怒りの中にも政府を追い詰める国民世論の盛り上がりを確信する発言が続いた。
 約4万人の抗議の声が霞ヶ関、永田町にこだますなか、この日も警視庁は警官総動員で「議事堂警備」にあたり、約60台の警察車両を国会前の車道を取り囲むように隙間なく敷き詰めて抗議する市民を両端の歩道に押し込めた。
 異常なまでに神経を尖らせる光景は、国民世論の拡大を恐れる安倍政府のうろたえぶりと孤立感をいっそう際立たせていた。

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