いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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根源の安保に向け大斗争を 安保法制巡る記者座談会 日本滅ぼす対米隷属政治

 戦後70年目を迎えた日本社会は、いまや誰が見ても独立国とはいい難いものになってしまった。TPP、原発再稼働、米軍基地問題など、どれを見ても日本政府というのがアメリカの要求を丸呑みにする対米隷属の駒になり下がり、主権者である国民よりもアメリカの機嫌ばかり伺って、身売りのような政治を実行するのである。目下、安保法制を巡って60年安保斗争を彷彿(ほうふつ)とさせる全国的な斗争が盛り上がりを見せている。強行突破をはかる安倍政府を退陣に追い込む力はどこにあるのか、元凶である対米従属構造に向けてどう斗争を挑んでいくのか、日本社会の未来を切り開く展望はどこにあるのか記者座談会を持って論議した。
 
 TPPや原発再稼働、沖縄辺野古基地建設、終いには米軍身代わりで肉弾

  衆議院で強行採決して国会審議は参議院に移った。この間、新国立競技場建設を白紙撤回したり、支持率が急落して安倍政府も青ざめている。国会の頭数だけですべてが決まっているわけではない。国民との力関係が決定的で、支持がない統治など成り立たないからだ。国会前は6万~7万人が包囲するなど抗議行動も熱を帯びている。東京だけでなく全国各地でデモや集会が開催され、大学人や若者たちが積極的に行動し始めている。安倍晋三が「国民の理解を得られていない」といっているが、むしろ理解が深まっているから反対世論が高まっている。この力が国会を揺さぶっている。
  安保法制について違憲であるか否かなどさまざまに議論されてきたが、要するに自衛隊なり日本の若者が、米軍の身代わりになって地球の裏側まで戦争に動員されるという問題だ。「集団的」といっても対象国はアメリカ以外に見当たらない。米国防総省が運営している『星条旗新聞』が正直に暴露しているが、既にアメリカの2016年予算は日本の安保法制成立を前提に組んでいる。米軍の海外活動を縮小して軍事力は海軍と空軍に集中し、その減った分を自衛隊で補填するという内容だ。陸軍の4万人削減だけでなく海兵隊も2万1000人削減する計画で、その補填で自衛隊内に日本版海兵隊の組織化が進んでいる。
  米国防総省は今後10年間で、約1兆㌦(123兆円)の歳出削減をよぎなくされている。アメリカの財政事情が逼迫していることが背景にある。朝鮮戦争、ベトナム戦争、イラン・イラク戦争、湾岸戦争、アフガン侵攻など、戦争に次ぐ戦争でネオコンや軍需産業が国家財政を食い物にしてきた。おかげで巨額の軍事費に耐えきれなくなった。将兵150万人、文官80万人を養いきれず、近年では給料遅配や自宅待機などの措置もとってきた。こうしたなかで、アメリカの国防予算削減分を補うようにして日本の防衛省予算が過去最大にまで膨れあがり、米国の軍需独占企業からオスプレイや戦闘機などを次次と買い取っている。中東研究者が指摘していたが紛争の裏にはいつも米軍需産業やネオコンが火付け役として暗躍し、色めき立っている。炎上すればするほど稼ぎになる関係だ。中東は世界最大の武器市場で、死の商人たちがそれで食っている。アジアで軍事的緊張が高まるのも、彼らはビジネスチャンスくらいにしか思っていない。
 D アメリカが打ち出したリバランス政策は米国一極支配の終わりをあらわしている。それで肩代わりを日本に迫っている。財政的な事情もあるが、米兵もイラクから帰還した兵士たちが精神病になったり自殺したり、厭戦機運が高まって戦争動員できなくなっている。だからこそ「自衛隊を放り込め」「ジャップがいるじゃないか」となっている。日本の若者に血を流せというのが本当の意図だ。こんなことは知識人だけでなくメディアから官僚、政治家にいたるまでみんなわかっていることだ。安倍晋三がバカげた例え話ばかりくり返しているが、あからさまな現実を語ることができない。「日本国民の生命を守る」とか、「抑止力が高まる」とか適当なことばかりいっている。そして説明すればするほど支持を失っている。自分自身でも辻褄があわなくなっている。
  集団的自衛権を行使することで逆に日本が世界から恨みを買い、日本列島を存立危機事態に追い込んでいく。本末転倒も甚だしい。何が「日本人の生命を守る」かだ。中東で米軍の肩代わりをして手を出したら、今度は国内がテロ攻撃の標的にされてもおかしくない。イスラエルに肩入れすること一つとってもアラブ世界では恨まれ、泥沼に引きずり込まれていく。国益を損なう振る舞いだ。もともと親日的な国国が多いのに、戦後70年築き上げてきた信頼を投げ捨てることになる。国際的に見ても、アメリカと心中する国として笑いものにされる。
  今の日本列島を見渡してみて、とても戦争などできる国ではない。原発を54基も抱えて、しかも爆発した福島はそのままで汚染水垂れ流し状態だ。各地に化学コンビナート群があり、近年はミサイル攻撃を受けるまでもなく爆発事故をくり返している。後になって、「実は劣化ウランを貯蔵していました」(岩国・三井化学爆発事故)などシレッとした顔で発表するが、周囲の住民はたまらない。これが自爆テロなどの標的になったら一発で暮らしは吹っ飛ぶ。福島事故でも最悪の場合は首都圏を含めた5000万人の暮らしが吹っ飛ぶところだった。自然災害すらまともに対応できないのに、何が戦争だろうか。
 C 新幹線の焼身自殺もあったが、鉄道・高速道路など動脈が断たれるだけで食料事情から都市部の生活に至るまですべてが麻痺する。インフラが失われたらどうなるか、3・11後の計画停電等で味わった苦労どころではない。食料自給も四割を切っている国が、どうやって戦争するというのだろうか。エネルギーも世界に依存している。日本列島は戦争に対して脆弱だ。というか、戦争できる国土の状態ではない。攻めることばかり考えて、攻撃されることはまったく念頭にないのが安倍政府だ。これは「バカだから」で片付けられる問題ではない。地球の裏側まで武力参戦しようというのに平和ボケも甚だしい。アジア諸国との関係についても、戦争しか訴える手段がないというのでは外交など必要なくなる。現実的な未来を想像してみて、今踏み込もうとしている安保法制は日本人の生命や安全を守るものではない。むしろ世界的な信用を失い、国民生活を危機に陥らせる。
 B アメリカのために日本社会を売り飛ばす。これが本質だ。米軍の肩代わりというのも今に始まったことではなくて、「アーミテージ・ナイレポート」などで要求されてきたものをそのまま安倍政府が実行しているに過ぎない。自衛隊の装備や配置に至るまで米軍傘下に置く政策は長期間かけて進めてきた。海上自衛隊を見ても米空母を守る編成で、イージス艦とか護衛艦などを含めて空母を守る付属艦隊だ。陸上自衛隊、航空自衛隊まで含めた司令部の統一もそうでみなアメリカの要求に沿って先行して進めてきた。そして最後に法制化しようとしている。これが今の局面だ。

 日本人の命守らぬ政府 被災地も棄民状態 

  「日本人の生命を守る」などかけらもない。もっぱらアメリカを守るため、海外進出した日本の独占資本の利潤を守るために国土を危険にさらし、日本の若者の生命まで差し出す。これほど重要な問題なのに嘘や詭弁で煙に巻いて、自民党は正々堂々と説明すらできない。世論を恐れて街頭演説も自粛している。それで安倍晋三がいい加減な例え話ばかりしている。TPPにしても何を交渉しているのかすべて秘密にしている。米議会では公表しているのに、日本では国会議員すら見ることができない。いわんや国民には何もわからないようにして進めている。何を置いてもアメリカのために国益を投げ捨てていく。この売国性がすべてに貫かれている。対米従属構造が根幹にある。
 D TPPもアメリカの大企業や金融資本が日本市場を席巻しようと狙っているだけだ。リーマン・ショック後に強欲資本主義が問題にされてきたが、近年は株主至上主義で株主や投資家の利益を保護するというのが経済の中心になってしまって、技術継承とか労働者を養うという企業の社会的責任を切り捨ててしまった。それで大企業がどうなったかというと、軒並み外資に株式を握られて、役員にはトヨタの麻薬密輸で問題になったようなのが送り込まれて汲汲としている。シャープ、東芝、富士通、ソニーなど見るまでもない。日本の大企業は多国籍化すると同時にガタガタになった。自動車大手でもリコール攻めにあって泣いている。その分を東南アジアに行ったりしてはけ口を求めている。グローバル化、新自由主義政策の下で日本企業の強みも破壊された。それで金融支配で大暴れしてきたアメリカは、今になって製造業重視に転換するといっている。
  金融支配というか、社会がどうなろうが一握りの金融資本なり投資家が儲かりさえすればよいというのが強欲資本主義で、公共性とか社会的責任を否定する。これはリーマン・ショックまできて破綻した。ところが改めるのではなく、もっと新自由主義政策を強烈にしようと暴れている。それがTPPだ。アベノミクスもアメリカの要求に基づいている。FRB(米連邦準備理事会)の金融緩和が限界にきたので、日銀が肩代わりして市場にマネーを吐き出してきた。このカネを金融博打の原資にして外資が荒稼ぎしている。ツケだけが日本社会に残される。郵政民営化でも350兆円の金融資産が狙いで、ウォール街が日本人の預金を自分たちの所有物くらいに見なしてきた。身ぐるみ剥がされた結果、日本社会で貧困化がいっきに進んだ。TPPは日本市場、日本社会を完璧に売り飛ばし、経済的に見ても崩壊させてしまうものだ。
 A 原発も、あれだけの大惨事を福島で引き起こしておきながら性懲りもなく再稼働しようとしている。火山噴火や地震が活発化しているなかで同じことが起きても構わないという無謀さだ。この原発もアメリカの核戦略に組み込まれて、日米原子力協定に基づいて54基も建設してきた。福島事故を受けて民主党が脱原発などを叫ぶ時期もあったが、アメリカから叱り飛ばされて今日の再稼働路線になっている。地震や津波、火山噴火などが起きて壊滅的な事故を引き起こせば、まさに「存立危機事態」を招く。これほど日本人の生命と安全を脅かすものはないのに平然と再稼働しようとする。東シナ海の無人島よりもよっぽど国民の生命や安全と直結した問題だ。「存立危機事態」を引き寄せているのはいつも安倍晋三で、「イスラム国」人質事件でもイスラエルに行って軽率な振る舞いをするから2人が殺害された。「テロに屈しない」以前の問題だ。関係ない者が中東の矛盾に首を突っ込むからあんなことになる。集団的自衛権の行使で米軍の肩代わりをするなら犠牲者は2人では済まない。
  集団的自衛権の行使を巡って、「米軍が抑止力になっている」というのがいる。そうだろうか。沖縄では辺野古基地建設に反対する県民の斗争が盛り上がりを見せているが、岩国や沖縄など基地の街でみなが話題にしているのは「米軍は日本を守らない」ということだ。沖縄戦でも県民の四人に一人を無惨に虐殺して、ブルドーザーと銃剣で基地を奪っていった。日本人を守るためではなく、アジアで覇権を打ち立てるアメリカの都合であれだけの殺戮をした。原爆投下や全国空襲もやりまくった。「日本人を守る」ために沖縄で19万人を殺したのか?広島で20万人、長崎で14万人もの市民を殺したのか? 「デタラメも大概にしろ!」と被爆市民はいっている。沖縄や広島、長崎ではとりわけ戦後民主主義とか対日占領の欺瞞は通用しない。それで戦後70年、一度でも日本を守ったことがあったのか。朝鮮戦争に出撃し、ベトナム戦争に出撃し、侵略の拠点にしてきただけだった。日本を単独占領するために、原爆を投げつけ、サンフランシスコ講和以後も軍事力によって支配してきた関係だ。それを保証してきたのが日米安保だ。
  佐賀でもオスプレイ配備に反対して住民が運動を強めているが、沖縄県民の斗争も安保法制反対とつながっている。民意にはいっさい耳を貸さず、もっぱらアメリカのために基地建設を強行しようとしているのが政府で、これとの大激突になっている。戦後70年も居座って、さらに今から新基地を建設するというのだから、いったい何十年居座るつもりなのかという思いが強まっている。岩国でも大増強が進行している。地下施設に力を入れており、今年だけでも1000億円をこえる工事を中国四国防衛局が発注している。日本の国家財政でアメリカの最新鋭基地が建設されていく。安倍晋三とか高村が出世するのと引き替えに郷土が米軍基地や原発に差し出されることが、山口県民との鋭い矛盾になっている。
  国民をないがしろにして、とことんアメリカのために奉仕する。全分野でこの矛盾が噴出している。東北の被災地でも放置されている。国民の生命や安全を守るために政府が機能していない結果があの棄民状態だ。社会にとってどうか、国民にとってどうかではなく、日本の為政者はアメリカばかり見ている。それで得意になって「夏までに成立させます!」と勝手に約束してくる。

 大学独法化や教育改革 日本社会潰す政策 

  このままでは日本社会が崩壊するという危機感は強い。国を滅ぼす政治が真顔で実行されているからだ。この間、知識人が安保法制反対で行動している。独立行政法人化や市場原理改革で大学が大学でなくなってきたことへの怒りが根底にある。ついには人文系廃止が叫ばれるところまできた。権力による学問の支配とたたかうことが急務になっている。学問の自由を奪って権力が支配する。これは戦前がそうだった。既に科学者や研究者に対しては、軍事研究への動員も具体的に始まろうとしている。大学改革と関わって研究費を削減して、カネ欲しさで軍事研究に追い込んでいく手法がとられている。それに対して、科学者とか知識人の社会的責任として、国民の幸福のため、平和のために身体を張って動き始めている。「日本を滅ぼす反知性主義」に負けるわけにはいかないという思いが語られている。
  安倍政府は教育改革にも力を入れてきた。軍事は教育と切り離しては成り立たない。みんながその気になって戦争に行かなければ戦争にはならないからだ。戦前でいえば天皇制軍国主義で「お国のために」「天皇陛下万歳」だったが、現代では自由主義教育がその凶暴性を引き継いでいる。この20数年来の自由主義教育の産物として、人殺しが平然とできる人間が出てきている。身勝手な人殺し事件が後を絶たない。これが戦争動員の中心的なイデオロギーだ。かつての大戦でも教育を支配して戦争動員していった。現在、道徳教育とかに力を入れ、教科書検定とか、教育現場の統制や政治介入の動きが強まっている。教師の指導性を奪って政治に従わせる。そして子どもを動員していくというのは70年前にやったことだ。「教え子を再び戦場に送らない!」のスローガンを掲げて、今こそ教師たちが教育者の使命に立って行動しないといけない。
  アメリカに隷属した為政者のもとで、戦後70年たってみて日本社会はデタラメになってしまったという意識が社会全般に強まっている。貧困化の問題でもあれだけ非正規雇用にしたら若者は結婚もできないし、子どももできない。生命の再生産すら閉ざす社会に発展性はない。独占資本としても自爆行為で、みずから市場を破壊している。ブルーカラーの優秀さが日本社会を支えてきたが、いまや技術継承すらできない状況だ。少子化は社会運営の結果であって、歴代政府というのが如何に無責任・対米従属の丸投げできたかを映し出している。これは亡国政治だ。
 A 日本社会をぶっ潰す政策をアメリカが要求し、これを自民党が忠実に実行している。この構造と全面対決しないと勝負にならない。安保法制反対だけでなく、TPP、原発再稼働、基地建設などそれぞれの分野では斗争が発展している。これらの斗争を根源の安保に向けた斗争に大合流することが重要だ。戦争をしかける敵は誰か、友は誰かをはっきりさせて、団結できるすべての人間が団結して敵とたたかう。そうすれば、強力な力になる。全矛盾、全斗争を社会的、歴史的な視点でつなげて安保法制反対、戦争反対、つまり日米同盟反対の斗争に大結集することだ。
 「米軍の身代わりで死んでこい」というところまできたが、死なないためのたたかいを命をかけてやらなければ殺される。力を持っているのは権力者ではなく、主権者たる国民であることを知らしめないといけない。

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