いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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首突っ込み標的に立候補するな ー北朝鮮情勢巡る記者座談会ー

 

 北朝鮮とアメリカによる一触即発の危機は、中国やロシア、さらにドイツなど各国が「武力衝突に向けて過熱するべきではない」「より強く賢い者が先に引くべきだ」「朝鮮半島で戦争が起きることに反対する」等等の発言を強め、さらに東アジアの各国で武力衝突を懸念する世論が高まるなかで、無謀な恫喝や煽りは多少収まったかに見える。しかし、引き続き21日からは米韓合同軍事演習が予定されるなど、両者の緊張関係は解消には到っていない。東アジアの火薬庫と見なされているこの地域で、アメリカが引き続き軍事力を裏付けにした一極支配をもくろみ、その恫喝に北朝鮮がICBM(大陸間弾道ミサイル)の技術を完成させて対抗している。そしてもともと同じ民族である隣国の韓国や、アメリカにとって無視できない大国として台頭している中国、長年の冷戦関係から現在に到るロシア、対米従属一辺倒の日本も含めて、周辺各国にとっても他人事では済まない緊張が走っている。こうした軍事衝突の危機とどう向き合うべきなのか、記者座談会をもって論議した。

 

  米朝が激しく火花を散らしているのは誰の目にも疑いのない事実だが、これを周辺各国との矛盾関係を抜きにして「北朝鮮アメリカ」のように切りとって評論したり、あるいは「日本人を拉致した北朝鮮は嫌いだからアメリカは善である」等等、一方的に「あっちが悪い」と煽るのでは、矛盾関係を正しく捉えることができない。いわんや割って入り戦争に加担するなど自殺行為に等しい。朝鮮半島がたどってきた道のりについて、天皇制軍国主義による植民地支配の事実や、それが打倒された後に今度はアメリカが乗り込んで分断統治してきた事実について、歴史的、社会的に掘り下げて考えなければならないし、そこからどのように解決することが正しいのか見出さなければならない問題だ。

 

  今回の危機の発端は、直接には北朝鮮がICBMを完成させたことへのアメリカの焦りがある。毎年恒例ではあるが、春から過去最大の米韓合同軍事演習をくり広げ、米韓は相当に挑発していた。今年は規模としても過去最大だが、米海兵隊のグリーンベレーやネイビーシールズが参加して、露骨に金正恩の斬首作戦を訓練していた。この恫喝に対抗する形で北朝鮮はICBMの開発を加速させ、ついに完成にこぎ着けた。まさかアメリカ本土までは届かないだろうとたかをくくっていたら、めきめきと射程距離を伸ばしたものだから、日本の軍事評論家なども泡を食ったように驚いて見せている。ロフテッド軌道(高い高度をとる軌道)なのだとか、軍事技術の専門家でないと耳にしないような言葉が飛び交っているが、要するにアメリカ本土まで届くようなミサイル技術を北朝鮮が手にした。

 

  北朝鮮とアメリカの軍事力を比較するなら、アメリカが圧倒していることは誰でも分かることだ。しかし、ICBMを手にしたということは、これまでの一方的な軍事恫喝の均衡が崩れたことを意味している。従って、武力衝突は殺しあいにしかならない。外交的努力によって着地点を探るしか道は残されていない。67年経って、朝鮮戦争を終結させることが迫られている。アメリカはこれまで「狙うぞ!」と恫喝ばかりしてきたが、狙われることも念頭に入れなければならない関係になった。カダフィを叩き潰したリビア、フセインを殺害したイラクのように、一方的にミサイル攻撃を加えても報復の恐れがなかったのとは訳が違う。睨むだけでなく睨まれる関係になったということだ。北朝鮮からすると、ICBMを手にしたことはあくまで防衛的な意味合いでしかない。北朝鮮側からICBMを発射して先制攻撃するような事態はまずあり得ない。仮に「グアムに4発」をやったなら、たちまち蜂の巣にされることはわかりきっており、自殺行為に等しいからだ。客観的に見て、
自らアメリカに武力行使の口実を与えるような行為をする訳がない。面子など抜きにして、その後の具体的な展開を考えれば誰でも分かる話だ。

 

  中距離弾道ミサイルのムスダンなどを開発している段階では、ミサイルが何度発射されようとアメリカは今回ほど飛び上がっていなかった。ところが、米本土まで届く大陸間弾道ミサイルの技術が確立された途端に、ムキになって恫喝を始めた。トランプは「北朝鮮は世界が目にしたことのないような炎と怒りに直面するだろう」と原爆投下までほのめかした。チキンレースだと表現する人もいるが、非常に危険極まりない言葉の応酬で軍事的な緊張を作り出している。実際にやりかねない危険性もある。

 

  一連の顛末を見ていて、ムスダンとICBMへの態度の違いから日米「安保」のインチキも暴露された。アメリカは日本が射程圏内のムスダンなどには今回ほど反応していなかったくせに、ICBMになると途端に本気モードにスイッチが入った。日米同盟とか日米「安保」などといってきたが、何が「アメリカが日本を守ってくれる」のかだ。この辺りは、アメリカの正直な心境を映し出している。米本土防衛の盾である日本を射程圏内に捉えるのは構わないが、米本土を射程圏内にするとは何事か! という態度だ。

 

 岩国基地では8、9日に米軍やその家族が本土帰還の訓練をしていた。連中は在日米軍基地が狙われるとなると、一目散に米本土に逃げ帰ることを想定している。9・11後も帰還訓練ばかりしていた。日本を守る気などサラサラないわけだ。ところが、日本社会では為政者が「アメリカが日本を守ってくれる」を信仰のように唱えて、外国軍隊の駐留を正当化してきた。アメリカにとって日本列島は戦後からこの方、アジア侵略のための不沈空母であって、最前線の出撃拠点なだけだ。そして、いざ米朝戦争などが始まればミサイルの標的にされるのは日本列島だ。在日米軍は蜘蛛の子散らして本土へ帰還し、日本列島だけが焼け野原にされる。これほどバカげたことはない。

 

国外退避訓練をする米軍(岩国基地)

  まともな独立国であるなら、「物騒な真似はやめろ!」といって緊張緩和のために動かなければならない。日本列島の上空を舞台にしてミサイルを飛ばしあうなど言語道断で、日本人の生命を守るためにも、「ウチを挟んで戦争するな!」というのが政府のとるべき対応なはずだ。原爆投下者が再び投げつけるぞと恫喝しているのについても、唯一の被爆国として「2度と人間の上に落としてはならない」と声を大にして警鐘を鳴らさなければならない。ところが、我らがアメリカ様にミサイルを発射するとはけしからん! といって植民地従属国がアメリカになりかわって腕まくりしている。狙われているのはオマエたちではないと世界が思っているのに、勝手にウォーミングアップしている。「武力参戦だ」「普通の国になったぞ」といって非戦の国是を覆し、世界から見て普通でない国の振る舞いをしている。

 

  米朝の緊張が激化しているのに対して、中国やロシアは北朝鮮への恫喝の矛先が自分たちにも向いているという自覚もあるし、「これ以上、激化させるな」という明確なメッセージを送っている。中国は北朝鮮に対しては「もし北朝鮮がアメリカ領を先制攻撃し、アメリカが報復として北朝鮮を武力攻撃した場合、中国は中立を保つ」と警告し、アメリカに対しては「もしアメリカが米韓同盟の下、北朝鮮を先制攻撃すれば、中国は絶対にそれを阻止する。中国は決してその結果描かれる政治的版図を座視しない」と警告している。そして、「中国は朝鮮半島の核化には絶対に反対するが、しかし朝鮮半島で戦争が起きることにも同時に反対する。どちら側の武力的挑戦にも反対する。この立場において、中国はロシアとの協力を強化する」として、暗にロシアと手を組むぞ! とアメリカを牽制している。ドイツのメルケルもロシアのラブロフ外相も、「武力衝突に向けてヒートアップすべきでない」「より強くより賢い者が先に引くべきだ」等等とのべている。韓国もアメリカの北朝鮮政策について事前承認を得るよう約束させている。韓国内の反米世論も相当なもので、北朝鮮攻撃に容易に動員することなどできない力関係だ。

 

PAC3では届かない  竹槍訓練の二の舞い

 

  そうした各国の対応と比較して、もっぱら「アメリカ万歳」をくり広げているのが日本政府だ。情けないほどアメリカを忖度しまくって、米本土に向かうICBMを日本が迎撃するのだと張り切っている。それはまるで、米朝の矛盾に首を突っ込んで、後ろから石を投げつけているつもりが、前面に引きずり出されて、終いには盾にされる愚か者のような光景だ。科学的に見て、北朝鮮から米本土に発射したミサイルは日本の上空すら飛ばないし、打ち落としようがない。「グアムに4発」の場合は日本列島の上空を通過するが、その場合も現状のミサイル迎撃システムは何ら効果がないことがわかっている。ミサイルのはるか下界で小刀を振り回して「迎撃するぞ!」と凄んでいるようなものだ。歴史を72年前に巻き戻すと、竹槍を天空に突き上げてエイッ! ヤー! と叫んでいるのと変わらない。まともに考えたらバカげているのに、「日本列島を守るのだ」みたいな調子の報道ばかりがなされている。

 

  「科学的にどうなのか?」だが、問題になっているICBM「火星12号」で見てみると、その射程距離は5000㌔とされている。北朝鮮からグアムまでは3300~3400㌔程度なので、十分に届く距離だ。補助エンジンを使えば射程距離は1万3000㌔まで伸びるとされている。このミサイルは高度50㌔以上では最大速度マッハ16というスピードですっ飛んでいくのだという。アメリカが韓国に配備したTHAADの倍ほどのスピードを持っている。既にこれまでの実験ではロフテッド軌道で高度2000㌔を超えており、迎撃は実質的に不可能と見られている。

 

 これを「迎撃する」といって、通過点である島根県、広島県、高知県、愛媛県の4県の自衛隊駐屯地にPAC3を配備している。PAC3は低高度に落下してきたミサイルを迎撃するシステムとされているが、その最大射程は20㌔、最大射高は15㌔。米軍需企業のロッキード・マーチンが製造している兵器で、迎撃ミサイルは1発5億円、ミサイルシステムの本体が8億円とされている。これが国内に36発射機、500~600発程度配備されている。この36発射機をすべて4県の自衛隊駐屯地に配備したとして、その周囲の半径20㌔圏内を「守る」ことにしかならない。これでいったい何を守れるのか? だ。しかも、命中率は100%なわけではない。

 

  低高度すなわち上空15㌔圏内をPAC3が迎撃するとして、火星12号は高度2000㌔をすっ飛んでいくようなミサイルなわけだ。まったく手の届かない宇宙空間を飛んでいく。従って、何台発射機を配備したところで、目的地でない日本列島は標的ではないし効果はない。最大射高15㌔では2000㌔には到底届かない。そんなことをわかっていながら、「迎撃」すると主張する意味は何なのかだ。あえて、アメリカに与することで、北朝鮮から日本列島を標的にしてもらおうと願望しているかのようだ。標的にされないために、日米関係も含めて外交をやらなければならないのに、いったい何を考えているのかだ。狙われないためにどうするのか? が抜け落ちて、もっぱら「迎撃」とか「非難訓練」みたいなことをして戦争熱を煽っている。

 

  PAC3が低高度対応で、高高度は海上自衛隊のイージス艦に配備しているSM3が担うのだという。SM3は発射されたミサイルを高高度の宇宙空間で迎撃するシステムというが、落下しはじめたミサイルを撃ち落とす仕組みで、上昇してすっ飛んでいくミサイルに対応したものではない。日本海に配備されているイージス艦4隻が、当たるかもわからない迎撃でモグラ叩きをするのかと思うと、これもバカげているように思えてならない。危機に便乗して防衛省は「弾道ミサイル防衛の態勢強化のため」といってSM3と同様の能力がある新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」を導入する方針を固めた。ここぞとばかりにロッキード・マーチン社のような米軍需産業を大喜びさせている。自衛隊幹部などはわかっているはずなのに、真顔で「PAC3を配備」などとやっている。これも国費の浪費で悪質だ。森友や加計に流れた補助金以上に米軍需産業に貢いでいく構造を問題にしないといけない。

 

  まともな政府の対応ではないし、アメリカのために日本列島を標的にさらすようなことを平然とやっている。世界的に見て、これほどみっともない振る舞いはない。日本が狙われているわけでもないのに、自分から首を突っ込んで国土を標的にさらすわけだから、ロシアや中国だけでなく、世界各国は日本政府の対応を嘲笑しているはずだ。北朝鮮とも独自外交を切り結ぶなり国交回復を実現して友好関係を結べば、拉致問題の解決の糸口も出てくるはずなのに、アメリカを忖度して喧嘩腰外交を続けている。その間に、各国が狙っている北朝鮮の鉱山資源は中国やロシアが持っていって、韓国や米国、日本は指をくわえてながめているのだから皮肉だ。

 

迫られる朝鮮戦争終結    苦難の根源の解決を

 

米軍の爆撃で亡くなった子どもたち(朝鮮戦争)

  トランプが北朝鮮に対して発した「世界が見たこともない炎に直面するだろう」の言葉は、広島への原爆投下を命じた米国大統領トルーマンの言葉を意識したものだ。トルーマンは当時、「降伏しなければ地球上で一度も見られなかった形で空中から破壊の雨が降るのを目にすることになる」といった。原爆投下への反省どころか、臆面もなく「また同じ目にあわすぞ!」と恫喝している。戦後から一貫した核大国の横暴極まりない恫喝だ。第2次大戦後のパクスアメリカーナ(アメリカ一極支配)は、この核武装した圧倒的な軍事力を裏付けにしてきたし、それで世界支配の野望を実現しようとしてきたのがアメリカだった。

 

  事実、アメリカが3発目の原爆を使おうとしたのは朝鮮だった。第2次大戦で広島・長崎への原爆投下を強行して日本を単独占領したアメリカは、すぐに朝鮮半島に介入し、1950年に朝鮮戦争を引き起こした。第二次大戦で「反ファッショ統一戦線」といって新興の資本主義国だった日独伊を叩き潰して、日本帝国主義からこの権益をとりあげ、今度はアメリカが成り代わって朝鮮半島の分断統治、アジア支配に身を乗り出しただけだった。隷属国家に成り下がった日本を従えて。米朝の矛盾や、中国、ロシアも含めた東アジアの複雑な緊張は、このアメリカの脅威が最大の元凶だ。かつての社会主義VS資本主義の矛盾からは変質もしているが、大国同士の矛盾関係や依存関係もありながら、今に到っている。

 

  目の前でくり広げられているのは米朝の対立だ。しかし、その背景や歴史的経緯を無視して局面だけを切りとってはならない。米朝の関係でいえば、朝鮮戦争が終わっていないことが最大の問題で、これを終結させなければ一触即発の事態はいつまでも続く。

 

米軍が投下したナパーム弾を浴びて負傷した老人

 

  もともと日本の植民地下にあった朝鮮半島では、日本帝国主義の敗北によって民族解放と独立の機運が高まり、半島の各地方の人民委員によって構成する統一政府による「朝鮮人民共和国」を1945年9月6日に樹立している。だが、これを忌避したアメリカは北緯38度に国境を引くことをソ連に認めさせ、朝鮮半島を南北に分断した。こうした日本帝国主義を叩き出した後の顛末が、今日の軍事的緊張にそのままつながっている。その後、首都ソウルを含む南朝鮮では、朝鮮政府を解体し、米軍が戦後3年間、完全な軍政を敷いていた。

 

 そして、アメリカに亡命していた李承晩を連れてきて初代大統領に据え、傀儡(かいらい)政府をつくり、植民地時代以上の軍事独裁国家をつくった。この外圧による干渉への反発から、南朝鮮の各地でも抗議行動や数千ものゲリラによる抵抗が頻発したが、それを米軍が「共産主義者の反乱」として武力で鎮圧した。米軍は朝鮮民族にとって「解放軍」などではなく、日本軍にかわって乗り込んできた新たな侵略者にほかならなかった。それは対日参戦も含めて、アメリカの戦争目的が「軍国主義からの解放」などではなく、はじめからアジアの植民地争奪にあったことを暴露している。

 

ナパーム弾を受けた北朝鮮の母と子

  この矛盾が全面的な形をとって始まったのが1950年6月に勃発した朝鮮戦争だった。その戦禍は3年間で300万人以上の朝鮮人が犠牲になるほど凄惨なものだった。一般に内戦に第3国が干渉することは国際法で認められていない。だが、アメリカは李承晩に軍隊指揮権を移譲させ、国連の決定すら受けずに軍事介入した。米軍による空爆は、原爆投下を含む日本への無差別爆撃の立案者として知られる米空軍中将のカーチス・ルメイが指揮をとり、細菌・毒ガス兵器、ナパーム弾や焼夷弾などあらゆる火砲を投じて78もの都市と数千におよぶ村を爆撃した。朝鮮戦争に参加した米海兵隊は日本人と同じように朝鮮人を「グック(土人の蔑称)」と呼び、日本での原爆投下、東京大空襲、沖縄戦で数十万人の日本人を殺した同じ手法の焦土作戦を朝鮮半島でくり返した。のちにルメイ自身が「われわれは朝鮮の北でも南でもすべての都市を炎上させた。われわれは100万以上の民間人を殺し、数百万人以上を家から追い払った」「3年間で朝鮮の人口の20%にあたる人間を殺したのだ」と自慢げに語っている。

 

  国際機関の調査では、朝鮮や中国などで、窒息性ガスなどの毒ガス弾、さらに細菌兵器としてコレラ菌、ペスト菌、チフス菌、パラチフス菌、赤痢などの伝染病菌を、昆虫を媒体に使って上空から投下していたことが確認されている。また、日本の731部隊やナチスの専門家を雇って、ジュネーブ条約が禁じている化学兵器のサリン神経ガスの開発を急いでいたことも公になっている。今韓国でアメリカの主権無視に対する抗議行動などの反撃機運が高まっている根底には、朝鮮戦争での大殺戮への歴史的な怒りがある。日本帝国主義を叩き出した後も引き続いた朝鮮半島の苦難の根源は、まぎれもなくアメリカにある。傀儡政府をして民族を引き裂いて分断統治させてきた構造についても既に暴露されてきたことだ。韓国で反米世論が強いのは、そうした仕組みがすっかり見抜かれていることを反映している。民衆レベルでは民族統一の願いは強いものがある。だから「北の脅威」を煽っても簡単には乗っていかない。むしろ日本の方がミサイル騒動を大騒ぎしていて、韓国人が驚いている。

 

  1953年に結ばれた朝鮮戦争の休戦協定は、「発効後3カ月以内に、双方のレベルのより高い政治会議を招集し、朝鮮からすべての外国軍隊の撤退、および朝鮮問題の平和的解決等の問題を協議する」という条件があった。独立と統一という朝鮮内部の政治課題は、第3国が介入すべき問題ではないし、同一民族同士の話し合いによって決めるべきことだ。だが、アメリカは米韓相互防衛条約によって米軍の永久駐留を認めさせ、休戦協定の条文を一方的に破棄して駐留を続けた。そして、北朝鮮だけでなく中国やロシアにも睨みをきかせてきた。それが今日まで続いている。韓国にTHAADを配備したが、北朝鮮対応というより中国への圧力だ。韓国や日本はアメリカにとってアジア支配の戦略的要衝なわけだ。そして、北朝鮮が「脅威」になることによって、日本にミサイル等等の武器を購入させる口実にもなっている。

 

  在日、在韓米軍の駐留意図は「ソ連の脅威から防衛する」「共産圏との防波堤」だったが、冷戦が終結した今も駐留している。ソ連が崩壊し、中国が資本主義化しているもとでも、同じように駐留している。社会帝国主義と化した中国、さらに軍事力では米軍にひけをとらないロシアとも火花を散らしながら、腐朽衰退しているアメリカ帝国主義がアジア地域におけるプレゼンスを死守するために恫喝外交をくり広げ、トランプが顔を真っ赤にしながら大きい声を出している。中国、ロシアに接近してアメリカに反旗を翻し始めたフィリピンで、ISが米軍の支援で反乱を引き起こしているのも無関係ではない。アジア地域で、例えば朝鮮半島で南北の軍事対立がなくなり和平へ向かえば、韓国に米軍が駐留するたてまえはなくなる。「中国が尖閣諸島に攻めてくる」等等、時代とともに口実はコロコロ変化するが、「脅威」なり仮想敵をつくり出すことによって外国軍隊の駐留を正当化し、植民地従属国そのものを抑え、その周辺国にも軍事的脅威を与えて果実を得るというのがアメリカの戦略だ。このパワーゲームが米朝対立として先鋭化しているのであって、決してアメリカと北朝鮮だけの問題に切り縮めることなどできない。

 

  東アジアの安定は、最大の脅威となってきたアメリカを排除しなければもたらされない。ならば中国やロシアが良い国であるというような単細胞的論理で切り貼りすべきものでもない。社会体制の違いや文化の違いを認めて、アジア近隣諸国が平等互恵の関係を切り結ぶことが重要で、第一にミサイルで狙い狙われるというような物騒な状況を排除しなければならない。大日本帝国の亡霊のように「チャンコロ」とか「チョン」などといって、なおアジア諸国を侮蔑しているようでは話にならない。しかも、かつての大戦でアジア諸国に多大な犠牲を与えたことをなかったことにして、アメリカの軍事力の威を借りて粋がっているなど、みっともないことだ。互いの民族を尊重しなければはじまらない。各国の為政者や支配層がバカな言動をして戦争をするというのであれば、全力でそれを阻止しなければならない。その鍵になるのは「戦争はやめろ!」という民衆の世論と行動だ。

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