いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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教育を戦争動員する地ならし 北朝鮮騒動めぐり子どもや学校を弄ぶ意図

弾道ミサイル避難訓練で体育館に整列した児童や保護者ら(6月、山口県内の小学校)

 この間のミサイル騒動を巡る日本政府の対応は、「はしゃぎすぎ」の一言に尽きる。逃げる場などないのに、また日本列島には落下するはずなどないとわかっているのに、まるで北朝鮮と戦争を始めたかのように朝っぱらからJアラートを鳴らして国民を脅かしたり、為政者の側が有事体制を強めるために悪用している。この騒ぎの下で、全国の学校現場や自治体では、防災ずきんをかぶり、頭を抱えてしゃがみこむといった「ミサイル避難訓練」がおこなわれたり、避難マニュアルを作成するなど対応に追われた。そのような子ども欺しでミサイル攻撃から防御できるはずがないにもかかわらず、大人たちが真面目な顔をして、非科学的で現実的対応ともほど遠い「訓練」に明け暮れている。この空襲警報の地ならしと「避難訓練」は、主として行政機関や教育機関を動員していることに特徴がある。いったい何を意図しているのか、記者座談会で論議した。

 

非科学的な嘘を平然と  「しゃがんでミサイルから逃げましょう」


  ミサイルへの対応をめぐって、もっとも振り回されていたのは学校現場だった。どんな動きになっていたか状況をすり合わせてみたい。


  下関市教委の場合、文科省の通達よりも先んじて、5月2日に市内の小・中学校の教員に対して「弾道ミサイル落下時の行動について」という文書を通達していた。Jアラートが鳴った場合は「近くのできるだけ頑丈な建物や地下に避難する」「近くに適当な建物がない場合は、物陰に身を隠すか地面に伏せて頭部を守る」「屋内にいる場合、できるだけ窓から離れ、できれば窓のない部屋へ移動する」という対応マニュアル(内閣府が定めている)を教職員のなかで共有するよう指示していた。下関には朝鮮学校もあり、在日朝鮮人の市民も多くいるため子どもや親に伝えることはしていないようだ。市教委に取材に行くと「おい、ロケット担当!」と呼ばれて担当職員が出てきた。「ロケット担当って何だよ!」と思うが、そのような担当がいるようだ。


 8月29日の北朝鮮のミサイル実験、続く9月3日の水爆実験をうけて、今度は「9月9日の建国記念日にミサイル実験をおこなう可能性がある」とマスコミが騒ぐなかで、文科省が9月8日、北朝鮮のミサイルに関する学校対応についてはじめて通達を出した。今回のミサイル避難訓練の火付け役は直接には文科省だ。全国の学校に対し、危機管理マニュアルの見直しや、自治体と連携した避難訓練の推進、緊急情報が発信された場合の安全確保の方法についても、教職員で共通理解を持つよう求めている。またJアラートの情報が出た場合に、学校を臨時休校にするのかどうか、校長と教委などがあらかじめ協議して決めること、ミサイルが落下する恐れがある場合の行動として、内閣府が定めたマニュアルを通知した。それを受けて山口県教育委員会も県下の小・中・高校に同様の通達を下ろしている。上から下へとつぎつぎに号令・隷属・号令・隷属で全国津津浦浦の小中学校が動員されていく構造だ。


  下関市教委も9月8日、10日に中学校で運動会が予定されていることをふまえ、Jアラートが鳴ったときに地域や保護者を含めて安全に避難できるよう求めるメールを小・中学校に配信した。その具体的な対応は校長裁量だったようで、各学校で大きな違いが出ている。


  ある中学校では運動会の開会式の校長挨拶で、「緊急に退避、避難しなければならない場合は、学校で放送をするのでその指示にしたがってください」と呼びかけたという。あえてミサイルと限定することは避けたが、白けた空気が流れたという。他にもJアラートへの対応マニュアルをプリントして運動会前に全保護者に配布した学校もある。


  中学校は先週はほぼ毎日グラウンドで運動会の練習だったため、ある学校では「突然Jアラートが鳴った場合、焦らずゆっくり屋内に避難するように」というマニュアルを教員のなかで認識一致したという。校長は「私も職員に対応の仕方を伝えなければならない立場だが、実際にミサイルが飛んで来たら助かるわけがない。それは子どもが一番わかっていることだ。だが生徒を守る立場である以上、何らかの対応をとっておかなければという思いもある」と胸中を明かしていた。マスコミや行政を挙げたミサイル騒動への疑問と、それに振り回される学校現場の実態を重ねて話していた。記者と顔見知りということもあって本音を話してくれたわけだが、「どうかしている…」と思いながらも、下手なことを口にしたら袋叩きにされかねない緊張も走っている。


  校長によってはミサイル訓練などについて「実際の危険性はないのに、空気だけ煽っている」と批判的にとらえ、意識的に対応をとらない学校もある。「北朝鮮を攻撃するのは当然だというような空気を煽っている。まだ判断がつかない年齢の子どもたちをこのように動員するのは危険な動きだ。基地や原発がある危険が予想される地域では訓練をしていない。明らかに学校を動員する意図がある」と語っていた。実際に国、県、市と縦の組織が動いてミサイル訓練等の通達を下ろしているのは文科省管轄の教育現場だけだ。


  ある中学校では、運動会前日の登校日に運動場に全員を集めて、Jアラートが鳴ったときのために伏せる訓練をおこなったようだ。ある母親は運動会当日、起きてきた息子が「今日ミサイルが来るかも知れないといわれた」といい、前日に学校で訓練がおこなわれたことを聞いて疑問に思ったという。「ミサイルが飛んで来るかもしれないという情報だけを子どもに伝えて、不安を煽るのはおかしいのではないか。ミサイルが来るなら運動会などできないだろうに…」と。本当にその通りだと思う。ミサイルが飛んで来るかもしれない危機が迫っているなら運動会などしなければよいのに、「もし飛んで来たら、伏せてね」ではあんまりだ。学校によって対応は異なるし、現場の校長なりを責めるような問題ではないが、「対応しましたよ」の踏み絵になっているようにも感じる。それで子どもたちの生命が本当に守られるのか否かは含まれていない。


 本当に子どもの生命が危ないと感じるなら、「頑丈な防空壕を作れよ!」と政府や行政に怒鳴り込んで行くくらいでないと、教育者とは認めたくない。岩国では福田市長の子息が通う学校だけが避難訓練を実施したそうだ。

 

子供の方が笑っている  なぜ日本だけ大騒ぎ

 

  宇部市の小学校では12日に「運動会当日の全国瞬時警報システム(Jアラート)発令時の対応について」というプリントを全保護者に配布した。宇部市教育委員会から学校への指示として「“北朝鮮が9月9日にミサイル実践を行う可能性がある”との報道がされていますが、万が一、運動会の最中にJアラートが流れた場合、以下のような対応をとってほしい」とあり、(1)たとえ競技の途中であっても、速やかに運動会を中断し、児童・生徒を校舎等、頑丈な建物の中に避難するよう誘導する。(2)放送等を使って、地域、保護者の方も校舎や体育館等、建物の中に避難するよう誘導する。(3)ミサイルの通過経路、着弾地点等の情報を収集し、PTAや学校運営協議会とも協議の上、校長判断で運動会を再開する、と具体的に記している。そしてJアラートが流れた際の、『ミサイルが発射された模様です。運動場や建物の外にいる人は、すぐに建物の中に避難してください。教室や体育館にいる人は、カーテンを閉めて、窓から離れてください』という校内放送をすること、そしてミサイル落下の危険性がないと判断したら『ミサイル落下の危険がなくなりました。通常の授業に戻ってください。運動場や屋外に出てもいいです』という放送を流すシナリオを添付している。

 

小中学校の全保護者に配られたプリント(宇部市)

 プリントが配布されたとき教師のなかで「Jアラートは空襲警報と一緒だ」と話題になっていたという。またプリントを配布したとたん、子どもたちが「北朝鮮がミサイル撃つのはおかしいよ」「韓国ではあまり大慌てしていないのに、日本だけが大騒ぎしていると親がいっていた」「どこに隠れてもミサイルが来たら助からないだろ」と口口に語っていたという。子どもの方が笑っている。


  一方で、ある小学校の5年生のクラスでは8日の「帰りの会」で、30代の担任教師が「明日は北朝鮮が建国記念日なのでミサイルが飛んでくるかもしれない。あまり家から出ないでください。家の中心にいて、窓に近づかない方がいい」と話したという。子どもたちは驚いて家に帰ってきて「明日ミサイルが落ちるかもしれない」と親に話していた。真に受けて脅える子が出てくるのも無理はない。


  下関の小学校では17日と24日に運動会が予定されており、いまだにミサイル対応に悩んでいる校長たちがいる。指示を出す校長自身がミサイルが来ないとわかっていても、「(来ないから)大丈夫などとはとてもいえない」「Jアラートが鳴ったときの対応について保護者に通知した方がいいのだろうか」「他の学校と足並みをそろえた方がいいと思うのだが…」と目前の対応をどうするのかで汲汲としている。


 E 全国的に見ても8月29日のミサイル実験のときには、北海道で学校が休校や登校時間を変更する動きが出たり、グアムへの修学旅行を中止する動きがあった。東京・千代田区の小学校では、北朝鮮の記念日前日の8日、全校児童240人余りが参加し、授業中に弾道ミサイルが発射され都内が避難の対象地域になったという想定で訓練がおこなわれた。校内のスピーカーから「Jアラート=全国瞬時警報システム」の音声が流れると、子どもたちは防災ずきんをかぶり、教室から出て周りに窓のない校舎の廊下に集まり、教師が「だんご虫のポーズ」をとるよう呼びかけ、子どもたちはその場にしゃがんで身体を丸くかがめる姿勢をとっていた。
 異様な光景だ。このミサイル訓練をマスコミは大大的に報じて奨励した。

 

教育者の使命に立って真実を教えよう

 

  このようなミサイル訓練が「子どもの安全を守る」ためには仕方がないという雰囲気のなかで進められ、「おかしい」と異論を唱えることがはばかられる。「バカではあるまいか」といったら叱られそうな雰囲気すら漂っている。まともに考えてみて、しゃがんだところでミサイルが飛んできたら吹き飛ばされて死ぬ以外にない。広島・長崎の惨状や都市空襲の写真、アメリカがトマホークを撃ち込んだイラクやアフガンの写真などを今一度よく見たらいい。カーテンを閉めた教室、物陰等等、何の防御にもならない。従って、大真面目に通達を降ろしている側も、そんなものでは生命を守れるわけなどないと自覚している人人が大半だ。そうやって、みんなが心のなかで「バカげている」と思っているのに、大真面目にやらなければならない。これこそが問題だ。


  校長などは立場もあるから、いざJアラートが鳴り始めたら「子どもの生命」に責任がある以上、無視などできない。当たり前だ。そして、「バカげている」とわかっていても「お上が通達するから仕方がない…」と対応せざるを得ない。空襲警報の訓練でもあるが、上意下達の実地訓練でもある。お上の大号令に従わせる訓練だ。物言えぬ圧力というか、空気で包囲して教育現場を駆り立てていく。何度もいうように、まったく非科学的でバカげているのだが、まず教師を思考停止に追い込んで、同時に飛んでくるわけなどない「北朝鮮のミサイル」で子どもたちを脅えさせ、その精神世界に「北朝鮮はミサイルを撃ってくる悪い国」という意識を植え付ける効果になるわけだ。排外主義を煽るし、幼い多感な心に他民族への敵対心を植え付けるという意味で犯罪的なプロパガンダといえる。教師や学校がミサイル訓練を真顔でやればやるほど子どもたちは心配になって「僕たち、私たちはなんにも悪いことをしていないのにミサイルを撃ってくる悪い国」「そんな国はやっつけてしまえ」という教育効果をもたらす。単純に学校現場で戦時体制を強めているというだけでなく、子どもたちをそうやって洗脳していく。「天皇万歳!」「鬼畜米英!」をやっていた軍国主義と何ら変わらない。教育勅語の復活とか銃剣道の導入などがやられてきたが、リアルに戦争動員を教育から手がけている。


  一種のショック・ドクトリンがやられている。こうした場合に思考停止するのではなく、現実的に物事を思考しなければならない。今回の場合、日本列島を狙ったミサイルではないことは既に暴露されている。高度500㌔の上空は制空権も設定されていない宇宙空間で、そこを飛び越えて排他的経済水域外に落下したミサイルについて、「わが国を狙った」といっても世界的には通用しない。

 そして、ロシアのプーチンやドイツのメルケル、中国など各国が軍事的解決はやめろとメッセージを発信しているなかで、安倍晋三だけが「異次元の圧力」を叫んだり、戦争に前のめりで煽っていた。衝突しているのは米国と北朝鮮なのに、仲裁役になるべき周辺国のなかで唯一、自分が戦争相手であるかのようにはしゃぎ回っていたわけだ。それこそ「バカではあるまいか」と思うものだ。それで北朝鮮から恨みを買って武力衝突に発展した場合、存立危機事態を招いたのは誰がどう見ても安倍晋三だ。煽っておいて「ミサイルが(どこかに)飛んでくる!」「(どこかに)逃げろ!」というのも無責任極まりない。結局、朝鮮危機を理由にアメリカからミサイル迎撃システムを売りつけられている。カモにされている。


 A 危機を煽る者が一方では原発を再稼働し、逃げろというくせに防空壕もなにもない。そのくせ「平和的に対話で解決せよ」ではなく、アメリカの尻馬に乗って「異次元の圧力を」とか大きいことをいっている。いい加減にせい! と声を大にしていわなければならない。安倍晋三は北朝鮮がミサイルを発射することがわかっていたから公邸に泊まっていたのに違いない。それで「毅然と対応する安倍晋三」をプロモーションしたかったのだろう。恐怖とセットで売り込む安心感、「恋の吊り橋理論」みたいなものだ。


 日本政府がやらなければならないのは、ミサイルの標的にさせないための外交だ。いかなる国であろうと武力衝突ではなく、平和的に互いの主権を尊重するという外交をくり広げているなら、理由もなく殴りかかってくるような国などない。北朝鮮を巡る矛盾についても、朝鮮戦争からこの方の歴史的経緯を見なければ理解できないし、誰と誰が対立しているのか、日本の立ち位置はどうなっているのか、現実を見なければ誤る。日本が北朝鮮と武力衝突する理由などないことははっきりしている。


 地震や津波は防げるものではないが、ミサイル攻撃など外交如何によってどうにでも回避できるものだ。その努力は何もせずに、Jアラートをかき鳴らして喜んでいるというのは政府失格だ。低俗極まりない。学校現場がどれだけ悩んでもミサイルには対応できないし回避しようがない。それは政府のすべき仕事だからだ。その政府が「撃ってこいよ!」「やるか!北朝鮮」みたいな真似をしていることについて、教育者はもっと怒っていい。本当に子どもの生命を守ろうと思って真に受けているのなら「防空壕をつくれ!」といわなければならないし、「防空壕をつくらなければならないような国にするな!」と叫ばなければならない。「私は通達しましたよ」の自己保身では話にならない。行き着く先が上意下達の戦争動員だ。


  近年の学校教育を見ると、教育の外側からの不当な支配が顕著になっている。最近ではマスコミが「ピラミッドは危険だ」と騒げば運動会での組み体操を自主規制する学校が増える。そして教師が物事の善悪を徹底して教育すると、すぐ「体罰」騒ぎに発展したり、学校を袋叩きにして解決能力をマヒさせる風潮が強まっている。そのなかで奪ってきたのは教師の指導性と権威、そして自ら手放してきたのは教育者としての信念であり、それらの合わせ技で国家統制がじわじわと進行してきた。多忙なのもあるが、物がいえない空気が支配的だ。


 C そしてお上に従って行き着いたのは、「ミサイルが飛んでくるのでしゃがんでください」なわけだ。大の大人なら「バカげている」とわかっている。ならば、保身で子どもに嘘を平気で教えるようなことをしてはならない。真実を教えないといけない。しゃがんでも防げないし、「ミサイルで狙い狙われるような国にしてはならないのだ」と。

 

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