(2026年4月8日付掲載)

ニューヨーク・タイムズスクエアにある軍の徴兵事務所前でおこなわれた抗議集会(3月19日)
「石器時代に戻してやる」――トランプ米大統領は2日、「重要演説」と称してかつて日本全土空襲やベトナム戦争の北爆を指揮したカーチス・ルメイ元米空軍将の言葉を使ってイランを恫喝した。その数時間前、イランのペゼシュキアン大統領はSNSを通じて米国民向けの書簡を発表した。「アメリカ合衆国の国民、そして、歪曲や捏造された物語の氾濫の中でも、真実を求め続け、より良い生活を希求するすべての人々へ」に始まる書簡では、イランと米国民の関係は決して敵対的なものではないことを歴史的事実に基づいて説き、イランの重要インフラを攻撃することは戦争犯罪であり、それは「米国民の利益にはならない」と強調。偽情報に流されず、対話と平和的解決を選択するよう呼びかけた。書簡の全文和訳は以下の通り。
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ペゼシュキアン大統領
イランは、その名、性格、そしてアイデンティティにおいて、人類史上最も古くから続く文明の一つである。さまざまな時代における歴史的・地理的優位性にもかかわらず、イランは近代史において、侵略、拡張、植民地主義、あるいは支配の道を歩んだことは一度もない。世界的大国による占領、侵略、そして持続的な圧力に耐え抜いた後も――そして多くの近隣諸国に対して軍事的な優位性を有しているにもかかわらず――イランは決して戦争を開始したことはない。しかし、自国を攻撃してきた者たちに対しては、断固として勇敢に撃退してきた。
イラン国民は、米国や欧州、あるいは近隣諸国の国民を含め、他国に対して敵意を抱いていない。誇り高き歴史を通じてくり返される外国の介入や圧力に直面してもなお、イラン人は一貫して、政府と、その政府に統治される国民とを明確に区別してきた。これはイランの文化と集団意識に深く根ざした原則であり、一時的な政治的スタンスではない。
このため、イランを脅威として描くことは、歴史的現実にも、現在目にできる事実にも合致しない。そのような認識は、権力者たちによる政治的・経済的な気まぐれ、すなわち圧力を正当化し、軍事的優位を維持し、軍需産業を支え、重要な市場を支配するために敵を作り出す必要性から生じている。そのような環境下では、脅威が存在しなければ、それがでっち上げられるのである。
この状況下で、米国は自国の最大規模の軍隊、基地、軍事能力をイラン周辺に集中させてきた。イランは、少なくとも米国の建国以来、一度も戦争を仕掛けたことがない国である。近年、まさにこれらの基地から発動された米国の侵略行為は、そのような軍事的展開がいかに脅威であるかを如実に示している。
当然のことながら、このような状況に直面した国がみずからの防衛能力強化を断念することはあり得ない。イランがおこなってきたこと、現在も続けていることは、正当な自衛に基づく慎重な対応であり、決して戦争や侵略の開始ではない。
イランと米国の関係は、もともと敵対的なものではなく、イラン国民と米国民との初期の交流は敵意や緊張に満ちたものではなかった。転機になったのは1953年のクーデターだ。それはイランの資源の国有化を阻止することを目的とした米国の違法な介入だった。このクーデターはイランの民主化プロセスを阻害し、独裁体制を復活させ、イラン国民の間に米国の政策に対する深い不信感を植え付けた。
この不信感は、シャー政権への米国の支援、1980年代の「押し付けられた戦争」におけるサダム・フセイン(イラク大統領)への支援、さらに近代史上最も長期かつ包括的な制裁を科し、そして最終的には、交渉の最中に2度もイランに対しておこなわれた、いわれなき軍事侵略によって、さらに深まった。
しかし、これらすべての圧力もイランを弱体化することはできなかった。むしろ多くの分野でイランはより強固になった。識字率は、イスラム革命前の約30%から現在では90%以上と3倍に増加し、高等教育は劇的に拡大し、現代技術は著しい進歩を遂げ、医療サービスは向上し、インフラはかつてないペースと規模で発展した。これらは、捏造された物語とは無関係に存在する、測定可能で目に見える現実である。
同時に、制裁、戦争、侵略が、不屈のイラン国民の生活に及ぼす破壊的で非人道的な影響を軽視することはできない。軍事侵略の継続と最近の爆撃は、人々の生活、意識、そして価値観に深刻な影響を与えている。これは、戦争が人々の生命、住居、都市、そして未来に修復不可能な損害をもたらすとき、人々はその責任者に対して無関心ではいられないという、人間としての根本的な真実を反映している。
ここで根本的な疑問が生じる。この戦争は一体、米国民のどのような利益に貢献しているというのか? そのような行動を正当化するようなイランの客観的な脅威が存在したのだろうか? 罪のない子どもたちの虐殺、がん治療用の医薬品製造施設の破壊、あるいはある国を「石器時代に戻す」と豪語することは、米国の国際的地位をさらに損なうこと以外に、何の意味があるというのか?
イランは交渉を続け、合意に達し、すべての約束を果たした。その合意から離脱し、対立を激化させ、交渉の最中に二度も侵略行為を仕掛けるという決断は、米国政府による破壊的な選択であり、それは他国の侵略者の妄想に奉仕するものであった。
エネルギー施設や産業施設を含むイランの重要インフラへの攻撃は、イラン国民を直接標的とするものだ。これは戦争犯罪に当たるだけでなく、その影響はイランの国境をはるかにこえておよぶ。それらは不安定さを生み出し、人的・経済的コストを増大させ、緊張の連鎖を永続させ、長年にわたって続く憎悪の種をまき散らすことになる。これは力の誇示ではなく、戦略的迷走と、持続可能な解決策を見出せない無能さのあらわれにほかならない。
米国がイスラエル政権の影響と操作により、その代理としてこの侵略に加担しているというのが厳然たる事実ではないか? イスラエルがイランの脅威をでっち上げることで、パレスチナ人に対するみずからの犯罪から世界の注目をそらそうとしているというのが事実ではないか?
イスラエルが今や、最後の米兵と最後の米国民の税金を使い果たすまでイランと戦おうとしていることは明らかではないか? みずからの妄想の代償をイランや中東地域、さらには米国自身に転嫁し、不当な利益を追求していることにほかならないではないか。
「アメリカ・ファースト」は、果たして今日の米国政府の優先事項なのだろうか?
この侵略の一環である情報操作のメカニズムを乗り越え、その代わりにイランを訪れた人々と話をしてみることをお勧めしたい。イランで教育を受け、今や世界有数の名門大学で教鞭を執り研究をおこなう、あるいは西側の最先端テクノロジー企業に貢献している多くの優秀なイラン系移民たちを見てほしい。これらの現実は、イランとその国民についてあなたが聞かされる歪曲された情報と一致するだろうか?
今日、世界は岐路に立っている。対立の道を歩み続けることは、かつてないほど代償が大きく、無益なことだ。衝突か、対話かの選択は現実的かつ重大なものであり、その結果はこれからの世代の未来を形作るだろう。
誇り高き数千年の歴史のなかでイランは多くの侵略者を乗り越えてきた。侵略者たちに残されたのは歴史に刻まれた汚名だけだが、イランは今なお、不屈の精神と尊厳、そして誇りを持ち続けている。





















