いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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「人道」掲げ軍事介入図る米国 シリアでも政府転覆を画策  中東支配破綻する中

 人類史上もっとも残虐な兵器である原爆を広島、長崎に投げつけたアメリカが、イギリス、フランスを従え、「化学兵器使用の懲罰」と主張し、中東のシリアへの軍事攻撃に踏み出そうとしている。日本のメディアも呼応して連日、負傷して苦しむ子どもや若者の映像を流して「人道」のための正義の戦争と印象づけ、アメリカのいいなりにならない政府の転覆を画策している。それはアフガン・イラク戦争でも、リビアでもアメリカが用いた侵略戦争の常套手段である。これに対して「イラク戦争の二の舞いをさせるな」という世論が全世界で噴き上がっている。
 
 阻止求める行動 世界で拡大

 米四軍の司令官である統合参謀本部議長ヘーゲルは、「すでに必要な軍事配置を終えた。あとは大統領の命令を待つばかりだ」とのべた。米海軍は、巡航ミサイル・トマホーク搭載の米駆逐艦四隻と潜水艦をシリア沖に待機させた。米空母機動部隊がスエズ運河を南下してペルシャ湾に向かっている。また、先に隣国ヨルダンでの多国間演習に参加した米兵700人のほか地対空ミサイル・パトリオットやF16戦斗機なども、ヨルダンに配備。地中海のキプロスにあるイギリス軍基地には戦斗機や輸送機を続続と集結させている。
 今回のシリア軍事作戦についてオバマ政府は、「化学兵器使用を禁止する国際ルールに違反したアサド政府への懲罰的攻撃」だとし、シリア沖に配備した米英の艦船から巡航ミサイルを発射して、シリア国内の数百の標的に向けて3日間攻撃を加えるとしている。それは「化学兵器使用禁止に違反した」として、それをはるかに上回る規模の爆撃をやってもっと大量の犠牲者を生み出す野蛮な軍事行動となる。
 しかも、2003年、安保理決議もないままイラク戦争を発動したとき、アメリカが理由にした「イラクが大量破壊兵器を保有している」がでっち上げであったのと同じように、今回の「化学兵器使用」についてもさまざまな情報が飛び交い、なにが真実か確証はない。シリア政府は化学兵器使用について「反政府派の傭兵部隊が使用したもの」とのべているが、国連調査団は受け入れる対応を見せている。
 28日には米国務省が定例記者会見で、「オバマ政府がアサド政権による化学兵器使用を断定、多数の市民を無差別に殺害したことは国際法違反であり、安保理決議なしに軍事介入する」とのべた。しかしこの席で参加していた記者から「米国が原爆を使って広島、長崎で大量の市民を無差別に殺したことは国際法違反ではないか?」と問われ、しどろもどろとなる一幕もあった。
 人類の歴史上もっとも凶悪な兵器である原爆を、広島、長崎の幾十万の非戦斗の老若男女にまともに投げつけたのはアメリカであり、戦争につぐ戦争で世界一極支配をめざしてきた「ならずもの国家」アメリカを糾弾する世論が国際的に圧倒していることを示す動きとなった。
 米英仏など世界各国では軍事行動に反対する世論が噴出し、イギリスのロンドンでは、「イラク戦争の二の舞いをさせるな」と要求するデモが首相官邸をとり囲んでいる。

 米欧介入で混乱に拍車 シ リ ア 

 シリアをめぐっては、2011年1月、北アフリカ・アラブ諸国で民衆の大衆的蜂起があいついで起こり、チュニジアやエジプトでは数十年にわたる親米独裁政府が打倒されたことなど中東全体の情勢と無関係ではない。窮地に立つアメリカは、新しくできた政府への介入を強めると同時にリビアとシリアで「独裁反対」「自由、民主」を掲げる反政府デモをひき起こし、アメリカのいいなりにならない政府の転覆を狙ってきた。
 そしてリビアでは同年9月、米欧軍の空爆で反政府派を支援し、カダフィ政府を転覆した。シリアでも米中央情報局(CIA)が指揮し、雑多な反政府勢力を糾合して「自由シリア軍」をつくり、アサド政府転覆策動をやらせようとした。だが、テロリストや傭兵からなる反政府勢力が殺りくや暴力、破壊をくり返すなかで国民からは忌み嫌われ、彼ら自身が同士討ちを始めるなかで収拾がつかなくなり、国内の混乱はますます深刻化した。
 こうした事態を裏で煽ってきたアメリカは、今年の春ごろから「シリア軍が化学兵器を使っている」などと騒ぎ、オバマは「もし化学兵器を使うならば武力懲罰もある」と公言。反政府グループに対して、これまでのサウジアラビアやカタールにかわって米欧が直接軍事援助を始めた。そして国連調査団がシリア入りした日に合わせて、米欧政府と傭兵部隊が「シリア政府が化学兵器を使用して千数百人の死者が出た」と騒ぎたて、むごたらしい映像を世界中に発信。そして「人権」や「民主主義」を守るような顔をして、直接の軍事行動に踏み出そうとしている。
 アメリカのイラク戦争から10年たち、その中東支配は大破綻をきたしている。
 アメリカのイラク・アフガン侵略戦争は、親米かいらい政府をでっち上げて占領支配し、石油などの資源を一手に握るとともに、中東と中央アジアの戦略的要衝を抑え、世界支配の基地とすることが目的であった。そのため米軍をイラクに15万人、アフガンに10万人派遣し、NATO(北大西洋条約機構)諸国や日本などによる多国籍軍を派遣して、民間人100万人を殺傷する戦争犯罪を重ねた。そして、戦争で破壊した油田や各種施設の復興をアメリカ企業に請け負わせる「ショック・ドクトリン」を実行した。
 しかし、両国の人民の頑強な反米武装斗争が巻き起こり、欧米をはじめとしてアメリカの侵略戦争に反対する運動が世界的に広がった。そして、イラクに続いてアフガニスタンからも米軍は撤退せざるをえなくなっている。
 また、チュニジアやエジプト、イエメンで親米政府が打倒された。オバマ政府は8月4日から、「テロ攻撃の恐れがある」として中東・北アフリカ地域の少なくとも21カ所の大使館、領事館を1時閉鎖した。それは、この地域で人民の反米斗争が勢いよく発展し、アメリカの支配が瓦解していることを示している。
 アメリカの支配者は、アメリカ大陸の先住民インディアンの虐殺に始まり、ハワイやフィリピンを征服し、そして日本に原爆を投下して赤ん坊から年寄りまで無差別に焼き殺し、日本を単独占領して従属国として支配してきた。そのときのスローガンが「ファシズムから民主主義を守る」であった。そして80年代後半には、中国の天安門事件やソ連・東欧で社会主義転覆の新手の戦争をしかけ、90年代に入ってからはユーゴスラビア、2000年代にはイラク、アフガニスタンに戦争をしかけてきたが、いずれも「自由・民主・人権」を掲げたものであった。
 しかし現在では、その残虐な本質は広く暴露されている。アメリカは政治・経済・社会の全面にわたって国家破綻に追い込まれ、没落の坂を転がり始めている。アメリカが今回、もし軍事行動に踏み込んだとしても、中東全域の反米斗争の火に油を注ぐことになり、全世界で「ならず者国家」をうち倒す斗争が発展することは必至である。

 米国の下働きで動く姿 安倍政府の中東訪問 

 そのアメリカの下働きとして、安倍首相が中東・湾岸地域をめぐっている。安倍は首相就任後2回にわたって中東・湾岸諸国を訪問しているが、前回はサウジアラビアやアラブ首長国連邦の首脳と、今回はクウェート、バーレーン、カタールの首脳と会談し、日本の首相としては初めてジブチにある自衛隊基地を訪問した。それぞれインフラや原発の売り込みなど経済・軍事関係の強化を確認する一方、シリアを含む中東・北アフリカ情勢について意見を交換している。
 サウジとカタールは、アメリカの指示を受けてシリアの反政府勢力に資金と武器援助をおこなってきた国である。そして、米欧がシリアに軍事攻撃をおこなおうとするなかで、カタールのタミム首長との会談で「化学兵器の使用は許されない。責任は暴力に訴え、無辜の人命を奪い、人道状況の悪化を顧みないアサド政権にある」とし「アサド政権は道を譲るべきだ」と退陣を要求、アメリカの本音を代弁した。
 この安倍の行為は、中東の人民にとっては、日本がアメリカの手下として憎しみの的になることを意味する。安倍は憲法を改悪し集団的自衛権の行使容認に踏み出そうとしているなかで、日本における「日米安保条約」破棄、米軍基地撤去、原水爆戦争反対の世論と行動をいっそう力強いものとして発展させることで、中東や世界の人民と連帯することが切望されている。

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