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長崎「原爆と戦争展」 若い世代が積極的な参観

 第6回長崎「原爆と戦争展」(主催/原爆展を成功させる長崎の会、下関原爆被害者の会、原爆展を成功させる広島の会)が開催されている長崎西洋館には、多くの参観者が訪れている。会場には毎日交代で、原爆展を成功させる長崎の会の被爆者や戦争体験者が足を運び、参観した市民に自身の体験と交えてパネルの説明をしたり、受付などを積極的に担っている。また熱心にパネルを見て「何か協力したい」と大学生や現役労働者、教師など若い世代が積極的に賛同者に名を連ねている。
 先日、会場を訪れた20代の高校教師は、ふたたび会場を訪れ「8月9日に被爆者を学校に招いて話を聞かせたい。平和教育といってもビデオを見たり、資料を配って終わりになり、学力向上ばかりに比重がいっている。今の子どもたちはちょっとしたことで挫折するが、平和の問題や生き方を教えなければいけない。ぜひパネルや被爆者の話を聞かせたい」と意気込みを語り、被爆者たちと思いを通わせた。
 長崎出身で芸術系大学に通う女子学生は、「卒業制作で被爆者の生活をテーマにしている」と明かし、「原爆展というと原爆の被害だけが形式化されているが、これは沖縄戦や第二次大戦全体とつなげて描かれていて原爆投下の全体像がわかった。出発点が違うと同じ原爆についての印象も全く変わる。この内容に学んで自分の勉強にも生かしていきたい。これから積極的に被爆者の話を聞いていきたい」と語り、賛同者になった。
 70代の男性は、戦地でのアメリカによる攻撃の写真と体験者の証言を見て「父親はタカオで戦死したが顔も知らない。日本が悪かったという印象を戦後ずっと持っていたが、アメリカが世界各地でこれほど爆撃していたことははじめて知った」と衝撃を語った。
 さらに、五島列島で長く底引き漁師をやってきた経験から、「五島には200隻を超える漁船があったが、いまは寂れてきた。第二山田丸の沈没をはじめ長崎で海難事故が増えているのは、漁業会社が日本人に給料が払えなくなり、月5万円ほどの給料で働く中国人を大量に雇っているから少しのトラブルでも対応できなくなっている。水産立国の日本が輸入魚に押されて、まともに漁業も成り立たないのが問題だ。国がもっと漁業振興しなければ日本の漁業の伝統は廃れてしまう。不景気になれば本当に戦争で金儲けという方向に行きかねない。食料も教育の面からも日本を立て直さなければだめだ」と憤りを語った。
 被爆二世で建設業の男性(40代)は、松山町の市民プール建設に携わったときの経験を語り「ある程度の地層まで掘り進めると、途中から石垣に使っているような三角石と天然石がびっしりと敷き詰められていた。疑問に思いながら重機で石を取り除いていくと、途中からバリバリッと音がして無数の骨が出てきた。はじめは豚の骨かと話していたが、頭のてっぺんが陥没した頭蓋骨や足の骨が転がってきて人骨だとわかった。深さ2~4㍍くらいまで広範囲にわたって大量に出てきた」と明かした。
 そして、「行政が調査することになり、工事は1週間止まったが、明らかに骨を隠すように石が敷き詰められていた。長崎では隠されていることが多すぎる。だから、子どもたちにも“市民プールは仏様の上を泳ぐことになるからいくな”といっている。業界ではそんな話がゴロゴロしている」と語り、「だからこの原爆展には行こうと決めていた。働いている年寄りたちは“このままいけば戦争になる”と話している。みんなが束になってかからないといけない」といって賛同協力を申し出た。
 「毎年必ず来ている」という75歳の婦人被爆者は、父親が昭和19年7月に召集され、翌年ビルマに送られて34歳で戦死し、戦後、戦友が父の身体の一部を持って母を尋ねてきたことを語り、「母が働かないと生活できないので、私が学校を休んで買い出しなどをやってきた。思い出すたびに涙が出るが、語らなくてはいけないと思い、孫の小学校に語りに行っている」と語り、『原爆展物語』のチケットを買い求めた。
 名古屋から仕事で長崎に来た男性は、「戦争については、ほとんど親からも祖父母からも聞いたことがない。“原爆は戦争を早く終わらせるためだった”とアメリカはいうが意図的に殺した。過去の戦争を教訓にして、なぜ戦争が起きたのか、二度と繰り返さない為にはどのような努力をすべきかもっと多くの人が考えていくべきだ。米軍基地の問題でも民主党や自民党をはじめ日本の政党は全部アメリカ様様だ。メディアやマスコミももっと後世に語り継ぐべき歴史を伝えていってほしい。このような活動はもっと全国に広げてほしい」と語り、カンパを寄せた。
 被爆二世の男性は、「戦争が起こったのは経済の行き詰まりが大きな要因だ。私たちの世代も近現代史は習っていないが、今でも学校では近現代史をほとんど教わらない。この展示にあるような戦争の真実はもっと子どもたちに伝えていくべきだ」と語り、「最近、教育が本当に大事だと思う。社会に出ると学力ばかりが優先されるが、勉強ができるだけでは社会で通用しない。今の若者は、怒られ慣れていないから何かあるとすぐに沈んで立ち上がれない。社会人になっても悪いことをしたり間違ったことに対しては、叱られるのは当然で、自分の未熟さを自覚するから人間は成長する。だが、現在では学校でそのような教育がされていないがそこの教育が一番大事だと思う」と語った。
 最終日の4日(日)午後1時からは、会場内で、下関、広島、長崎の被爆者を中心にした交流会がおこなわれる。

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