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沖縄米兵女子中学生暴行 沖縄全県で抗議行動広がる

 沖縄で米兵が引き起こした女子中学生暴行事件をめぐり、米軍基地撤去を求める声が全国で激しく噴き上がっている。沖縄県内では県議会や16の市町村議会が抗議決議を上げ、連合婦人会やPTA連合会などを中心に沖縄市と北谷町が抗議の住民大会開催を決定。県民大会開催に向けた動きが活発化している。それは暴行事件だけにとどまらず、日本全土を米軍が自由に使い、ミサイル網を配備して米本土防衛の盾にし、政治・経済・文化・教育など全分野で日本がアメリカの植民地にされ、国民生活が蹂躙・破壊されていることへの憤りとして広がっている。

 県民大会めざす動き活発化
 米兵の中学生暴行事件を受け、沖縄市内の各種団体で組織する市地域安全推進協議会(大城信男会長)が14日、住民大会の開催を全会一致で決めた。週明けに実行委員会を設立し、開催日や会場などを調整する方針で、北谷町にも連携を呼びかけるとしている。会議では「今、市民みんなが立ち上がらなければならない。単なるあいさつだけの大会にはせず、住民の声を米軍や国に強く訴えたい」(大城市自治会長協議会会長)、「戦後60年以上たっても変わらない現実が、子や孫の世代まで続いてはならない」(比嘉市婦人連合会会長)などの声が相次いだ。
 県内の市町村議会も臨時議会で抗議決議を可決。読谷村議会は「そのつど米軍当局に抗議し、綱紀粛正を要求してきたが、なんら実効性が見えない」と米軍基地撤去を要求した。県民の怒りが噴き出すなかで県民大会の動きも活発化。19日には県子ども会育成連絡協議会(沖子連)と県婦人連合会(沖婦連)が呼びかける形で県老人クラブ連合会や県高校PTA連合会など各団体が参加し、県民大会開催をめざす会議がもたれる。
 他方、米軍側は全国で再燃する米軍再編計画への怒りを恐れ、慌てて火消しに回った。米軍基地問題は日本支配の根幹を揺るがす問題だからである。事件が起きた3日後にシーファー米駐日大使とライト在日米軍司令官が仲井真県知事を訪問し「再発防止や綱紀粛正に努める」と謝罪。福田政府は「防犯カメラの設置や日米合同パトロールの実施」を提案した。日米政府は「再発防止」でごまかそうとしているが、県民は「米軍基地がある限り起こる事件だ」と声を上げている。

 豪華な基地外住宅急増 北谷町や読谷村 
 事件現場近くの住民が憤りを表すのは「綱紀粛正」「夜間の外出規制」などというが、米軍側は夜間外出規制の対象にもならない基地外住宅を急増させてきた現実だ。女子中学生を暴行した米兵も基地外住宅に住んでいた。基地外住宅は海のある北谷町や読谷村などに集中して米兵街を形成し「まるで米兵の別荘地帯」といわれる。沖縄県は米兵の基地外住宅は5107世帯(5000~6000人・昨年9月現在)と発表している。
 米兵住宅の家賃は日本人の住宅の3~5倍で、1カ月30万~40万円の家族向け高級マンションや一戸建てが大半。住宅費は米軍から出る手当だが、そのもとは日本政府が出す「思いやり予算」である。おきぎん経済研究所の資料によれば米軍側が出す住宅手当は、少尉・中尉で月に約17万円、大佐クラスが約28万円、教員やエンジニアなどの軍属が約30万円。さらに住宅手当と別に光熱費の名目で約五万円程度支給される。米軍住宅の費用にはシステムキッチン、冷蔵庫、乾燥機、各部屋へのエアコン取り付けなど、各種電化製品や家具の購入費もふくまれる。米兵は住民登録もしておらず住民税などの税金類は一切納めていない。
 北谷町砂辺地区住民の一人は「北谷だけで米軍住宅は1000戸は超え、そのうち7割が砂辺にある。日本人なら4世帯が住む広さに1世帯が住み、光熱費はすべて日本の思いやり予算で出す。だから24時間クーラーはつけっ放し。日本人の税金で贅沢をして中学生を暴行するなど許せない」と話す。別の住民も「税金は払わないのにゴミを出すのはタダ。市民は有料ゴミ袋で出すが、米兵は黒い袋で出し放題。民間業者が集めて焼却場にもっていくがその費用は各市町村の負担だ」と指摘する。
 現在2500人の住民が生活する砂辺地区は爆音被害がひどく、ここ30年で200世帯が出ていった。生活苦のなかで米軍に1戸建てを30万円で貸し、自身は7万~8万円のアパートに住んでローン返済をする住民も多い。北谷町砂辺区の自治会も「もう基地外基地は要りません」と看板を立て、米兵用マンション建設に抗議している。
 北谷町は約10年まえ米軍基地返還によって、跡地のリゾート地開発がすすめられた。その振興策で出現したのは映画館を軸にした「美浜アメリカンビレッジ」や「ハンビータウン」など米兵相手の複合商業施設。最近はモーテル(車による連れ込みホテル)なども増えてきた。住民の一人は「最近も近所で基地外の米軍住宅に住む18、9歳の米兵が改造した空気銃を住民に向けて撃ったり、車のミラーを壊したことがあった。第二ゲート近くは週末に米兵が遊びに出る。ビール瓶を持ち歩き、大声を出すなどトラブルは多い」と話す。地域では「米兵は基地の外も中も自由に出入りするが日本人は基地に出入りできない。金網をはって夜間外出禁止などというが閉じこめられているのは日本人の方だ」と話されている。

 米兵タウンと化す沖縄 基地関連事業で 
 ここ数年で沖縄市街地の変化も急速である。米兵が中学生を連れ去った現場の「コザ・ミュージックタウン」は昨年7月にオープンした。母親の一人は「この2年で街の様相は様変わり。ミュージックタウンは“街の活性化”でつくられたが夜中まで電気がついて危険な場所。ファストフードもあり、日本人も働く。子どもたちは物珍しさで親が注意しても行く。そんな若者がたむろしているところへ米兵が寄ってくる。ドラッグの危険もあるし男の子でも危い」と話す。
 ミュージック・タウンは米兵相手のロックコンサート用ホール(1100人収容)やスタジオを備えた地下一階・地上九階の施設で、中核をなす「音市場」は沖縄市が指定管理者制度で運営する。中には住宅(20戸)や居酒屋があり、沖縄米軍基地所在市町村活性化特別事業(島田懇談会事業)の「中の町ミュージックタウン整備事業」で整備。71億円の税金が投じられた。
 同開発事業は1999(平成11)年から具体化。目的は「戦後、米軍嘉手納基地建設に伴い、基地の門前町的に町並が形成された。アメリカ人相手のバーやレストラン、パウンショップ(質屋)が軒を並べるゲート通りやセンター通りに張りついた社会インフラは、時代とともに老朽化が進み、都市計画の見地からも区画整理や再開発事業が必要になった」「アメリカ文化との融合によるコザ文化のなかでも音楽文化に注目し、これを核として地域の活性化を図る」とし、最初から米軍との融合を眼目としていた。ていのよい米兵の日本人女性あさりの「タウン」になっている。
 あわせて嘉手納基地ゲートに通じるミュージックタウン横の国道は歩道橋を撤去しスクランブル交差点を整備。国道事務所の計画では「歩道上でオープンカフェができる環境整備を行う」「歩道部に星型タイルを設置し、アメリカ的なイメージを演出する」「交差点たまり部にミニライブが行える多目的オープンスペースを設置する」などとなっている。近くの商店主は「ミュージックタウンができて、これまではどこかに散らばっていた米兵が夜になると集まるようになった。それが看板を壊したり、物をとったり好き放題をする。何度も抗議するが、これは綱紀粛正で解決する問題ではない」といった。

 米兵が学校で英語教育 変化する学校現場 
 市民のなかでは数年前から「国際交流」「英語教育」などといって全県で進められた米軍基地との融和政策への憤りが語られる。北谷町の母親の一人は「学校でも国際交流といって米軍関係者が英語を教えている。先日も“英語を学ぶ、文化を知る”“基地内の小学生と交流する”と企業関係の団体が企画して米軍基地に一泊する行事があった。参加した子は“アメリカ人は寝なくても平気”で夜中までボーリングをして遊んでいたといっていた。日本の合宿は夜寝るのがあたりまえだが、スケジュールも名目だけ」と非教育的であることを指摘する。別の住民は「ハーフの子どもを持つとか米兵の彼氏を持つことがかっこいいかのような風潮が煽られて、基地内にホームステイした子が米兵と結婚するといい出し頭を抱えている母親も多い。米兵へのあこがれを植え付ける教育が意図的に浸透させられている」と話す。沖縄市の教育関係者も「“米軍の良き隣人”政策で、米兵がボランティアの英語教師になってほとんどの小学校に出入りしている。それを英語力を伸ばすといって県教委が推進する。米兵への警戒心が意図的に薄くさせられている」と話した。
 米軍基地に周辺自治体の小中学生が通って英語を学ぶ「特区」新設は、2006年5月に小泉・ブッシュ両政府が政府間合意した在日米軍再編最終報告にもとづく。最終報告は「教育交流を始め、米軍と地元とのパートナーシップの強化にむけ努力する」と規定。このもとで米兵が日本の子どもに英語教育をするため米軍家族と日本人が通う「インターナショナルスクール」設立の動きが進行した。在沖縄米軍トップの元沖縄地域調整官・ウォレス・グレグソンが「沖縄の子どもに基地を資源として活用してほしい」と主張し、日米両政府、沖縄の教育界、財界を動員して特定非営利活動法人(NPO法人)を設置。今年中に最初の学校を県内に設立する予定。米兵を教師に登用し卒業時には海外の大学入学資格に相当する国際バカロレア資格を付与することを検討している。

 基地外で暴れ回る米兵 イラク戦泥沼化の中 

 こうしたなかで強調されているのは9・11テロ事件以後、さらに最近ではイラク戦争やアフガン戦争の敗戦色が強まるなか、米軍の訓練が激しさを増しており、そのなかで米兵の暴行や万引きなどの犯罪が急増していることである。
 北谷町住民の一人は「米軍の訓練がひどい。音楽やサイレン、放送、エンジン調整など昼も夜も関係ない。夜中の2時3時までやっている。全然寝られない。本当に日本人をバカにしている。“基地の縮小”などといっているが重要なところを強化して必要ないところを切っているだけだ」といった。
 普天間基地移設に伴う海上ヘリ基地建設が問題となっている北部地域では米兵がパラシュート降下訓練をくり返したり、国道にむけて機関銃を構えて問題になるなど、米兵との矛盾が激化している。東村でも沖合に停泊する強襲揚陸艦「エセックス」(4万532㌧)から飛び立ったヘリコプターが住宅地域の窓が揺れるほどの低空飛行をしたり、ジープや装甲車に乗った米兵が機関銃を構えてキャンプシュワブ内を巡回。早朝から夜八時ごろまで銃声が響くことも問題になっている。実際に一月下旬からの二週間だけで、在沖海兵隊の兵士4人がイラクで戦斗中に死亡している。「ベトナム戦争時は米兵が戦場で死ぬより沖縄で犯罪を犯して捕まった方がいいと、大暴れをして問題になったがいまも空気が似ている」と指摘する自治会関係者もいる。
 さらにイラクに派遣された米兵は、直接本土には帰らず、まず岩国や沖縄など日本にきて一週間程度米軍基地のなかで過ごし、その後、基地外へ遊びに出る。基地労働者は「日本は米兵の保養地にされている」と指摘している。
 このような米兵にたいし防衛省は今年度から「思いやり予算」やSACO経費に加え「米軍再編関係費」まで計上した。07年度は72億円としたが、米軍再編費用は総額3兆円をこすとしている。
 沖縄の米兵8000人とその家族9000人をグアムに移転させる計画(2014年完了予定)は、日本側が7000億円(61億㌦)を支出。「沖縄が攻撃を受けることを想定し米軍司令部や家族をグアムへ避難させる」もので、日本は「本土防衛の盾」という扱いである。日本が負担する米兵住宅(約3500戸)は1戸あたり61万㌦(約6700万円)と発表している。
 これに辺野古への普天間基地代替施設建設で1兆円以上が加わる。ほかにも米空母艦載機部隊を岩国基地へ移転、普天間基地の空中給油機を鹿屋に移転、嘉手納基地のF15戦斗機訓練を全国の自衛隊基地に移転、横須賀への原子力空母配備、米陸軍第一軍団司令部のキャンプ座間移転、米軍横田基地への空自航空総隊司令部移転など1兆数千億円の費用が加わる。
 福田政府はこの米軍基地増強のために「財源がない」といって医療、福祉、教育などを切り捨て、税収奪を強め日本国民を生かさぬ政治を実行している。
 この米軍優先、対米従属の売国政治が女子中学生暴行事件をひき起こした根源であり、全国民の生活苦をひき起こしている。沖縄の米軍基地を撤去する課題は、独立・民主と平和な日本をめざす全国共通の課題であることを浮き彫りにしている。

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