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狙撃兵 新陳代謝が止まった自民党

 自民党総裁選は無投票で安倍晋三の再選が決まった。衆参合わせて400人以上もの国会議員を抱えながら、対抗馬の側はたかだか20人の推薦人が集められなかった。首相出身派閥の清和会にもの申す勢力がいないこと、異論はあったとしても抗えない力が作用していることをあらわした。これを「不自由非民主党」と揶揄したり、「かつての自民党は多様さがあったが…」と嘆く評論が各紙を彩った。
 前回総裁選では5人も立候補して全国行脚した。ところが今回の場合、支持率も低迷しているもとで消化試合すら許されず、「女性活躍のチャンスがある開かれた自民党」等等のパフォーマンスをする余裕すらなかった。安倍周辺勢力や財界挙げて徹底的に野田潰しをしたというから、いかに背後勢力が安倍一本に絞って統制を強めていたかがわかる。国会議員どもがみな萎縮する背景に何があるのか、誰の力が作用しているのかを見なければ、落ち目のはずの安倍晋三が一人勝ちしていく理由がわからないのである。というか、安倍晋三以上の玉がいないというのは、政党として臨終が近いのだろう。
 自民党こそ自由がなく、独裁政治のモデル政党かと思うような状態を世間に晒した。しかし安倍政治のこうした特徴は今に始まったものではない。選挙が選挙でなく、対抗馬を事前に叩きつぶしたり、批判票を分散させて勝ち抜けていく手法は、山口県なり首相お膝元の下関では何度も経験してきたことだ。
 90年代の安倍晋三の登場からしてそうだった。父・晋太郎が亡くなった後の跡目争いで反旗を翻した者は、市長選で安倍事務所秘書がヤクザに怪文書をばらまかせて叩きつぶしたし、その支持者たちも公共事業の入札から徹底的に排除され、恭順の意を示すまで日干しにされて「安倍派」となった。野党のはずの民主党も安倍派、労働組合の連合も三菱や神戸製鋼を筆頭に安倍派の一角をなし、選挙で二重面相をやるようなことはへっちゃらである。「日共」集団も安倍代理市政のもとで公営住宅や生活保護利権で養われ、批判勢力のような顔をしながら、選挙になると分裂候補を立てて安倍派を助けることを使命としている。市議選になると安倍派の頭数を揃えるために出馬制限を加えるようなことも当たり前のようにやられ、田舎から日の丸を振り回しているような兄ちゃんが登用されたりもする。いつも有権者を排除した裏通り選挙によって、投票率が下がるような白けたものにしてオール与党の「独裁体制」が出来上がるのである。
 目下、最大の政治課題は安保法制で、途中で放り出されては困るのがアメリカである。政財界以上に青い目をした連中こそ「最期まで安倍晋三に突っ走らせる」という判断の主であろう。怖じ気づいた石破やその他の派閥もみな右へ習えで安倍支持を打ち出し、「僕は次の総裁選に向けて派閥作りをします」などといっている。
 自民党の党員数は四半世紀前には約550万人いた。ところがいまや約90万人まで激減している。その数は全国民のうち0・72%に過ぎない。国会の3分の2以上の議席を独占しているからといって、好き放題できるような権力基盤ではない。新陳代謝の止まった細胞に待っているのは消滅である。

吉田充春

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