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下関の水産業守る独自の施策を 急がれる新船建造への支援 前田市政の見解を質す 本池涼子市議の一般質問

(2026年9月28日付掲載)

一般質問をおこなう本池市議(9月25日、下関市議会)

 下関市議会の9月定例会の一般質問で、本池涼子市議(本紙記者)は、下関市の水産業振興について質問した。下関漁港では今春、唯一残っていた巻き網船団が操業を中止したほか、8月には沖合底引き網漁業を担っていた漁船1隻が沈没する事故が起き、6カ統のうち1カ統が操業できない状態になっている。これにより下関漁港に水揚げされる魚は激減し、市場の存亡がかかった問題として業界をこえた危機感が広がっている。「最後の砦」である沖合底引き網漁を守っていくためには、老朽化した漁船の更新が待ったなしだが、新船建造にかかる費用が急騰しており、市場や水産業に関わる人たちからは市や県による支援が切実な要望になっている。本池市議は老朽船の更新への支援を求めるとともに、基幹産業に対する市の姿勢について質問した。本池市議と執行部の質疑の要旨を紹介する。

 

巻き網、沖底の危機で揺らぐ基幹産業

 

1ヵ統2隻で操業する下関の沖合底引き網漁

 本池 下関市の水産業振興について質問する。今年8月16日、下関漁港の水揚げの主力である「沖合底引き網漁業船」1隻が沈没する事故が起きた。3カ月間の休漁期間を経た漁開始日初日での事故だった。乗組員の方々は海に投げ出されたが、幸い、間一髪のところで助かり、下関港に戻られたようだ。命が失われずに済んだことは不幸中の幸いではあるが、今期の操業は見込めなくなり、業界全体に影響が及んでいると同時に、今後が心配されている。沖底1カ統の年間水揚げ金額は「4億円」ともいわれているが、これが船もろとも失われたわけだ。業界への影響をどう認識しているかお願いする。

 

 原田農林水産振興部長 非常に残念だが、まずは大変な事故にもかかわらず、死者やけが人が出ることなく船員の方が無事であったことが何よりであったと考える。本市の沖合底引き網漁業は、4社が2隻を1組とした6カ統を操業しており、その水揚げ額は本市漁業の5割以上を占めていることから、本市の基幹漁業と位置づけられている。そのため今回の事故により1カ統が操業できなくなることは本市の水産業や関連産業に大きな影響があるものと懸念している。

 

 本池 市としてどのようにかかわっているか。

 

 原田部長 その影響を最小限にとどめることができるよう、まずは漁業会社や市場関係者等の意向を確認したうえで、山口県ともしっかり連携し今後どのような対策ができるか検討していきたい。

 

 本池 下関漁港では今年の春、下関に唯一残っていた巻き網船団が操業を中止している。これにより水揚量、取扱量ともに激減しているなかでの事故だった。地元の巻き網船団の操業中止の理由と、影響についての認識、市の対応について答えをお願いする。

 

 原田部長 船員の退職等が重なったことなどにより、操業を続けていくために必要な人員の確保や体制の維持ができなかったことから、やむを得ず操業をあきらめることになったと聞いている。影響についてだが、操業を中止した中型巻き網漁業は、令和6年の実績で下関漁港へ352㌧水揚げをしている。山口県下関水産振興局が発表した下関漁港の沿岸漁業の水揚げ量によると、今年5~7月の水揚げ量は対前年同月比で、いずれも前年の3割ないしそれを下回る水準の水揚げとなっていることから、大きな影響が出ているものと考えている。このため本市としては下関漁港を管理する山口県と連携し、関係者と意見交換をおこないながら、市場の集荷対策等について検討していきたい。

 

 本池 今からの対応はぜひお願いしたいが、市として操業中止の認識がいつだったのか、そこにかかわれたのか、もう一度お聞きする。

 

 原田部長 市としていつ相談を受けたか正確に把握していないが、事前に廃業の情報や相談はなかったと聞いている。

 

 本池 関係者のみなさんに聞くと、巻き網船団の水揚げが、5~8月の沖底の休漁期間、下関漁港を支えていたそうだ。それがなかったことで、今年の夏は「魚がない」「仕事がない」状態になり、「市場が死んだようになっていた」といわれている。そして待ちに待った沖底の漁解禁日を迎えた初日に事故が起きたということで、「水産都市下関」の存亡がかかった問題として漁業者から鮮魚店、飲食店まで危機感が広がっている。

 

 巻き網船団がなくなり、沖底は実質5カ統になっているが、下関全体で、漁業経営体数はどのように変化してきたか。合併直後の平成17(2005)年と直近の数字でお願いする。

 

 原田部長 平成17年は1191経営体であるのに対し、令和6年は617経営体となっている。

 

 本池 この20年間で急速に減っていることがわかる。漁業者がいなければ水揚げもないわけだが、このような減少になっていることについて、市はどんな考えを持ち、どのような施策を実施しているか。

 

 原田部長 本市の漁業経営体数の減少は、高齢化や後継者の不足、漁獲量の減少などによるものだと認識している。漁業をはじめとする水産業の持続的な発展のためには、その根幹である漁業者の確保が重要であることから、市としても山口県と連携し、新たに漁業を志す方への支援や、就業間もない技術が未熟な漁業者に対する支援など、安心して漁業を始め、継続して操業できる環境を整え、漁業への就業の促進に努めているところだ。また、漁業収入の安定化をはかるため、栽培漁業センターにおいて放流用の種苗を生産し、沿岸域の水産資源の増大にもとりくんでいる。

 

 本池 市としてもなんとかしなければならないということで、こうした施策をされているということだが、残念ながら「維持」ともいえる状況ではなく、遠洋、沿岸ともにどんどん厳しい状況になっている。市内総生産に占める水産業の割合はどのように変化しているか。

 

 原田部長 経済産業省が作成している統計資料の経済センサスによると、合併後直近の平成18年度が約0・4%であり、最新の令和3年度では約0・2%となっている。

 

 本池 この数字自体、あくまでも一つの参考ではあるが、割合としても半減しているということだ。現在のこの数値をどうとらえているか。

 

 原田部長 先ほど示した水産業の割合は漁業のみの生産額であり、その数字自体は小さいものの、本市では漁業は水産加工等の製造業や、卸売・小売業、宿泊・飲食といったサービス業など、他のさまざまな産業と密接に連携しており、市としては漁業は重要な産業であると考え、支援しているところだ。

 

 本池 まったくその通りだ。水産業を底上げしていくことで他の産業にも効果をもたらすし、なにもせずに縮小するに任せていては、かかわる産業全体が衰退の道に進む関係性だと私も思っている。だからこそ全力で保護、育成していかなくてはいけないものだ。

 

水揚あっての漁港市場 加工や飲食にも広く影響

 

 本池 これは下関漁港水揚量【グラフ①】だが、昭和41(1966)年には日本一の水揚げがあり、ちょうどこの年に「下関大丸」の売上は年商30億円を突破したそうだ。

 

 大丸の歴史を見ると、昭和47年に年商80億円、49年に100億円を突破し、52年の現在の大丸オープンにつながった。その大丸下関店の来年8月閉店にともなって今、産業振興部が大丸の建物の譲渡を受けるか受けないかみたいな話をしているが、大丸も水産業の隆盛とともにあったことがよくわかるし、商業や市民生活の豊かさや活気は、基盤となる水産業があってのことだったと思う。産業の衰退が大丸の売上げ低迷と撤退につながっているし、産業をどう盛り上げていくかとか、市民生活の実態を抜きにして、譲渡を受けた方がいいとか悪いとか論じていること自体がピントはずれであるように思う。

 

 話を水産業に戻す。漁業の動きとしては、日本一の水揚げを記録した6年後の昭和47年には以西底引きの減船が始まり、昭和52年には200カイリ規制が始まり…というように、国際的な動きの影響も受けながら変化してきたことがわかる。グラフ最後の令和6(2024)年の水揚げは1万9591㌧で、ピーク時の約7%まで落ち込んでいる。93%の減だ。令和8年は巻き網船団の操業中止、やまぐち丸の沈没事故があったので、ますます厳しい状況になると思う。これに加えて中東情勢による燃油や資材の高騰で漁業経営自体も厳しくなっている。

 

 くり返すが、水揚げは水産業とそれに連なる経済活動にとっての生命線だ。漁業者、漁船が源泉だ。これ以上「魚がない」「仕事がない」状況を作り出さないよう、なんとか食い止めなければならないが、下関漁港に揚がる魚、水揚げする船を減らさないための施策は展開しているか。

 

 原田部長 高度衛生化に対応した荷さばき所の整備や、漁獲物のブランド化の推進による魚価単価の向上、下関漁港を水揚げの根拠地とする沖合底引き網漁業への支援などにとりくんでいるところだ。

 

 本池 聞きとりのさいに市場が主体になった集荷対策協議会ができたと聞いたが、間違いないか。

 

 原田部長 集荷対策検討協議会において漁港市場への集荷についての対策を卸売関係者、仲買関係者、行政関係者で検討をおこなっているところだ。

 

 本池 新しい動きとして、市場主体の集荷対策協議会も発足したとのことだ。このたび、巻き網船団の操業中止によって地元船の「あおもの」の水揚げがなくなってしまったのだが、他県の巻き網船団やトラック便が基準としてきた、地元・下関の安定して水揚げされる魚の品質や価格がなくなったことが致命的であるという話を聞いた。

 

 市場としては、他の市場の相場を基準にするほかなくなるという影響も出ているほか、市場に水揚げされる魚がないことで他県の漁業者などに送っていた市場の「相場表」がなくなってしまって、呼びにくいと。「集荷」というとき、地元を根拠地とする漁船を守ることが、非常に重要であるということを私も認識したところだ。

 

 だからこそ、船を減らさないことは基本中の基本であって、市や県がここに本気になることが大事だとみなさんいっておられる。ブランド化もいいが、この間、船はどんどん減って、下関漁港を根拠地とする船は沖底船6カ統のみになってしまっている。その沖底船が「最後の砦だ」といわれているのだが、下関市は「沖底」の存在をどのように認識しているか。

 

 原田部長 本市の漁業の水揚げ額の5割以上を占める基幹漁業であり、水産加工をはじめ流通から販売、宿泊・飲食まで地域の産業を支える重要な存在であると認識している。

 

「最後の砦」沖合底引き網 代船建造待ったなし

 

 本池 【グラフ②】は沖合底引き網漁業の水揚量と延べ水揚隻数の推移をあらわしたものだ。黒丸の数字は、県の水産統計より、その年に操業していた沖底の隻数を拾ったものだ。比較可能な昭和49年からグラフにしたが、水揚量、延べ水揚隻数ともに激減だ。「最後の砦」といわれる沖底がこのようになっているのだが、ここまで減ってきた原因と、沖底をめぐる課題をどう捉えているか。

 

 原田部長 資源の減少や燃油・資材価格の高騰、船舶の老朽化による漁業効率の低下に加え、人員確保など多くの課題を抱えているものと認識している。

 

 本池 その一つ一つにどのように対応をしているか。とくに船舶の老朽化による漁業効率の低下について、そのほかあればお願いする。

 

 原田部長 漁船の老朽化等に対しては、これまでも山口県と連携し、船舶の長寿命化をはかる大規模改修や、省力化機器等の最新の技術を登載したモデル漁船による漁労作業の省力化および資源管理に配慮した操業方法の確立等に向けた実証を支援してきた。また、人材の確保に向けては乗組員の研修にかかる経費に対する支援もおこなっている。加えて、昨年にひき続き今年7月にも漁業関係者と連携し、国に対して代船建造に関する国庫補助事業の拡充を求める要望もおこなっている。

 

 本池 とくに今、支援が急がれるのが老朽船の更新だ。【グラフ③】は下関漁港を根拠地としている沖底船の建造年、建造費を示したものだ。建造から36年、35年、31年の船があることがわかる。古くなれば故障も多くなり、10時間かかる漁場から帰ってきて修理しなければならないが、その頻度も上がっているようだ。また、古くなれば交換部品が手に入らない問題が発生し、新しい部品を一からつくるとなれば半年ほど漁を休むことになるそうで、関係者のなかには「時限爆弾を抱えて走っているようなものだ」といわれる方もおられた。沖底船が漁に出られないということは、市場にそれだけの水揚げが失われるということだ。

 

 例えば、沖底船1カ統が使う箱代は年間2000万円、油代は年間で1億5000万円ほどだといわれる。その売上が吹き飛ぶことになる。すでにギリギリの状態で維持しており、もう1カ統でもなくなったら…という危機感をお持ちだ。だからこそ、新船建造をみなさんが切望しているのだが、90年代には1カ統が4億円で建造できていたのが2000年代に入ってからはどんどん上がり、令和6(2024)年に建造されたものは13・5億円かかったそうだ。中東情勢の影響などでさまざまな資材が高騰し、下がる見込みがないのは水産業に限ったことではないが、今後、建造する場合は15億円以上にはなるといわれている。

 

 かつて、年間水揚げが3億5000万円あれば利益が出ていた時代には、その利益を新船建造のために回し、自力で建造ができていたそうだ。そして、12年に1回くらいはつくり替えて、それが中古船として出回って、新規参入もあったようだ。しかし、今は物価高騰により採算ラインは5億円をこえる水準まで上がっている一方で、年間水揚げは1カ統でだいたい4億円。だから、老朽船の課題をみんな認識しながらも、実現できずに限界状態まで来ているというのが現状だ。自力で建造したのは、平成7(1995)年が最後だということだ。

 

 新船建造の場合、国の補助事業『漁船リース事業』や『もうかる漁業創設支援事業』を使った建造になるようだが、それでも建造費の急騰により、国の補助も到底足りない。国の補助率を上げる要望も必要だとは思うが、国の補助に上乗せする形で、思い切って市独自の支援をする考えはないか。

 

 原田部長 代船建造等の今後必要な支援については県と連携して検討したいと考えている。

 

 本池 検討するうえで支援内容についてどのような考えを持っているか。

 

 原田部長 現時点で内容について決まったものはない。漁業会社等の事業計画、国の補助事業等の状況も踏まえて今後検討するものと考えている。

 

浜田市は新船建造支援 沖底船の更新進む

 

 本池 現場にかかわる職員のみなさんは今の業界の危機感を十分に分かっておられると思うが、悠長にしている時間はない。関鯨丸も市の独自事業で支援をされたと思うので、できないことではないと考えている。クジラよりもはるかに裾野が広い分野の話だ。

 

 下関と同様に特定第三種漁港であり、沖合底引き網漁業の拠点である浜田市(島根県)では、国の補助事業に市と県が上乗せして補助を出し、新船建造を支援する事業をおこなっている。これにより浜田漁港を根拠地とする3カ統の沖底船の更新が進んでおり、来年8月には現在建造中の最後の1カ統が操業を開始する予定だ。

 

 今回、浜田市で話を伺った。【下図①】は、浜田市の事業で新船建造をした2カ統目の事例で、昨年8月から新船で操業を開始した沖底船への支援内容だ。国の「漁船リース事業」を活用しており、税抜きの建造価格約13億円に対し、国の補助は3億円だ。ここに浜田市と島根県で5億8700万円の補助を出し、漁業者負担が4億円の範囲になるように抑えている。消費税負担を入れると5億4000万円ほどだ。漁業者負担が4億円になっているのは、当時の市長の「だいたい年商くらいが適正な自己負担だろう」という考えのもとで支援制度がつくられたからだそうだ。

 

 よく見ていただきたいが、市の負担が県よりも多い。もともと六割を国・県・市で補助する考え方だったのだが、船価が上がり、事業者の負担が大きすぎることから、漁業者負担を固定したうえでの逆算により、市がさらに1億円上乗せしたとのことだ。この資料は「漁船リース事業」への上乗せだが、浜田市ではこの前に「もうかる漁業創設支援事業」を活用しての新船建造にも、県・市で3億円の補助を出し、同じように漁業者負担を4億円程度に抑えるための支援をしておられた。

 

 浜田市の職員の方は当たり前のように「水揚げが源泉ですから」といわれていたが、浜田市では、浜田漁港に揚がる沖底や巻き網の水産物を原料とした水産加工が盛んであり、原料がなければ加工業者まで影響が及ぶという認識を持っておられる。ちなみに、ふるさと納税の特産品の半分以上を占めるのが「のどぐろ関連」と「水産物・水産加工品」であり、そうした重要な位置にあるということで、市負担分の財源にはふるさと応援基金を活用している。「水揚げを支えなければ、これらの寄付金も入ってこないという考えのもとでやっている」と話して下さった。

 

 沖底の拠点として浜田と下関は関係が非常に深い。お互い特定第三種漁港であり、浜田と下関両方に船を持っている漁業会社もおられる。一方の浜田がこれほどしっかりした補助事業を何年も前からつくって現場を支えていることを関係者のみなさんはご存じだ。漁船にとって魅力のある港はどちらだろうか。

 

 下関も早急に支援策をつくるべきだと思う。実例はすでにあるので、おおいに参考にしていただければと思う。内容も未定ということだが、時間はない。急がなければならない理由のもう一つとして造船所の事情もある。沖底船を今すぐ発注したとして、造船所はすぐにとりかかれる状況だろうか。

 

 原田部長 前提として沖合底引き網漁業の漁船を建造できる造船所は限られていると聞いている。そのうえで建造ドックに空きがあれば3年程度前から予約が可能とのことだが、現在は空きがない状況と関係団体から聞いている。また、建造にあたっては国の補助制度を活用するため、国と調整して時期を決定することも必要だと考えている。

 

 本池 多くの関係者が「あと1カ統でもやめればおしまいだ」といっているなか、造船所もこの状態だから、なおさら判断を急がなければならないと思う。先ほど内容が未定といわれたが、改めて聞く。県と連携するというのは十分わかるが、県と一緒にいつからとりかかるか、目安だけでも答えてほしい。

 

 原田部長 代船建造はまずは事業者が判断されるものと考えている。それを受けて検討する形になる。

 

 本池 検討はいつからか。

 

 原田部長 現時点で具体的に申し上げることはできないが、必要なタイミングにおいて県と連携して検討していきたい。

 

 本池 ぜひお願いする。ぐずぐずしている間に1カ統でも故障して動けないとなれば、かなり深刻な状況になることが予想される。地元である下関市が危機感を持って動かなければ、とり返しのつかない状況になってからでは、下関市に及ぼす影響は「甚大」では済まない。山口県にとってはいくつも港はあるが、下関には中心は下関漁港しかない。だから、県任せではなく市が本気になって進めてほしいと思う。逆に、老朽船を新船にしたときの効果をどう認識しておられるか。

 

 原田部長 最新鋭の機器の導入などによる省エネ化や操業の効率化、漁船の安全性、居住性、作業性の向上、乗組員の労働環境の改善、安全対策などがはかられ、収益性の向上や経営の安定化につながる。

 

 本池 浜田では、新船建造した沖底船の水揚げが年間五億円をこえたそうだ。もちろん自然が相手なので浮き沈みはあると思うが、水揚げが増えるということは、それが多くの人に波及していくものであり、新船をつくった一者がよくなるという効果にとどまらないものだ。

 

漁業者支援の制度化を 中長期的施策について

 

沖合底引き船の出漁を見送る家族や関係者

 本池 ここまで、新船建造の必要性について質問してきたが、浜田市では国の漁船リース事業に上乗せする事業を独自にしていて、事業費の25%を支援している。先ほど紹介した沖底船は事業規模が大きいために補助率を45%に引き上げているが、この事業で沖底船だけでなく、巻き網も一本釣りも支援できる制度設計になっている。

 

 この制度で、令和6年度には浜田を根拠地とする巻き網船団の本船を更新しておられ、今後は残りの「灯船」「運搬船」の4隻を随時更新していく計画を持っておられた。沖底だけでなく、浜田を根拠地とする巻き網もこの制度を使って更新するということで、こうした制度で漁業者を支え、浜田の産業を守るために水揚げの維持・増大に力を入れているということだ。

 

 以前、沿岸漁業や南風泊の質問をしたさいにも伝えたが、下関では、船の寿命とともに廃業していく漁業者が多いことを関係者のみなさんは懸念しておられる。今を担っている漁業者を支える制度が乏しいことは、全国トップクラスの漁業者の高齢化・減少と無関係ではないのではないかと思う。

 

 目の前の沖底船への支援の決断はかなり急がれるため、それはそれで決めていただきたいのだが、それと同時進行で考えていただきたいのが、中長期的な視点に立った新船建造支援の制度化だ。それが必要だと思うがどうだろうか。

 

 原田部長 沖合底引き網漁業の漁船に対する支援では、これまでも山口県と連携し、平成28年度から令和元年度にかけて漁船の長寿命化などをはかるため、下関漁港生産力強化緊急対策事業により1カ統当り1億円を上限に、4カ統8隻に対して大規模改修の支援をした。また、令和6年度から今年度までの3カ年において、持続可能な漁業経営モデル創出事業により、スマート技術や省力化機器等の最新技術を登載するモデル漁船を用いた実証事業に対して年1億円を支援しているところだ。これまでもこうした支援を継続して実施してきたところであり、今後についても資源の状況や漁業会社の事業計画、国の補助制度の状況などを踏まえて必要な支援について県と連携して検討していきたい。

 

 沿岸漁業者の代船建造については国の制度の紹介になるが、費用負担を平準化するためにリース方式で代船を導入する場合や、先進技術等を導入した改革型漁船での実証をおこなう場合に国の補助制度が整備されている。こうしたものを活用していただきたい。また、新規に漁業を開始される方の漁船導入にあたっては山口県と下関市で連携して国のリース事業と同様の事業を実施している。

 

 本池 沖底に関しては平成28年度から4年間でリシップ事業で1億円ずつ出してきたということだが、浜田でも実施しており、金額で比べるわけではないが、あちらは1億2000万円出している。それで順番に5カ統を大規模改修(うち1カ統は国事業)し、10年後の今の時期に新船建造するための費用を確保しておいてほしいという計画を市と漁業者が一緒になって話をしていて、計画性を持ってリシップをし、新船建造も見据えた動きをしてこられたそうだ。

 

 今いっている制度化の話は、下関に残っている沖底の建造年などの情報を(市が)持っていると思うので、何年後に大規模改修が来る、何年後に新船建造が来るというのを見据えながら、(建造支援の)制度化を考えないかという提案だ。そのときの情勢もあると思うが、制度化をすることで安心して漁業に従事できるし、かかわる業者さんたちも安心して腰を据えて仕事ができるという関係だと思う。

 

 原田部長 やはり漁業者、漁業会社の事業計画の内容等を確認する必要があるし、国の補助事業に関しては令和6年度に、本市が国に要望したことによって補助の限度額が3億円から翌年度に4億円に引き上げられている。そういった国の補助事業の状況もあるし、これまでも県と市が協調して2分の1ずつ補助しているので、県とも相談しながら検討していきたい。

 

水産都市の戦略が必要 「市場よりまず漁船を」

 

下関中央魚市場での競り

 本池 下関市の課題として、産業に対する戦略を持つことが必要ではないかと思う。今、漁船の支援は沿岸漁業ではニューフィッシャーのみが対象だ。それも大事だが、今を担っている人たちが辞めないよう、これ以上水揚げを減らさないよう、できれば次の後継者を育てていけるよう、かかわりながら、必要な支援を考えていくことが大事ではないだろうか。「漁師が減っているからニューフィッシャー」ではなく、もっと根本の問題に目を向け、水産都市としての戦略を持たなければならないはずだ。

 

 市場についても同じだ。高度衛生管理対応型の市場を建設したし、南風泊も建設中だ。この総事業費はいくらか。

 

 原田部長 岸壁の耐震化整備や周辺道路の整備も含めた総事業費は、現在の計画ベースで164億円となっている。

 

 本池 下関漁港では立派な市場が建ったわけだが、整備にあたり、どれほど関係者の意見を反映し、どんな戦略を持って建てたのかと思う。いかに船を獲得して水揚げしてもらうかが漁港にとっては生命線だが、例えば「巻き網」に水揚げしてもらおうと思えば、大きな選別機が必要だし、そのためには選別機を置くための場所が必要になる。しかし、新しい市場は大型巻き網に対応できるつくりになっていないとのことだった。あまりたくさん水揚げがあると冷凍庫が不足するという問題もあるようだ。もちろん仲買いのキャパもあるので、ただ呼べばいいということではないが、いかに水揚げを維持し、増加させていくかという視点がないままここまで来ているように感じる。

 

 お話を伺っていると、当時、現場からは、加工スペースや冷蔵設備をつくろうとか、いろんな提案があったそうだが、結局、それらは実現していない。下関漁港を高度衛生化するというのも、「特定第三種だからしなければならない」「下関が取り残される」みたいな議論があったが、特定第三種とは、漁業振興上とくに重要な漁港だ。建物が立派になったところで、魚が揚がらなければ意味がない。だから、下関漁港を根拠地とする船を守らなければならないし、より多くの水揚げにつながる施策を考えなければならない。ちなみに浜田市は、市が漁船の誘致にまで動いておられるそうだ。

 

 下関漁港の水揚げを見たとき、6割が搬入物だ【グラフ④】。それがもしも来なくなったとき、というのも考えなければならない。関係者が「漁船を支援してくれ」という背景には、水揚げを守らなければ水産業が終わってしまうという危機感があるからだと理解している。南風泊も含めて、「箱が出来上がったときには船も漁師もいなくなって魚がなくなるんじゃないか」とみなさんが懸念してきたのは大げさでもなんでもないのだ。トラフグのTAC管理導入の話もある。高度衛生化は国の政策でもあるが、164億円あればどれほどの新船建造を支援できただろうか。高度衛生もいいが、それは漁船あってのことだという意味で、みなさん「市場よりもまず漁船だ」といっておられる。

 

 前田市長に聞く。漁港市場の存亡がかかった問題であると現場が相当の危機感を抱いておられることは市長もご存じだと思う。下関市の重要な産業のこの局面にどう向き合い、一番の焦点になっている新船建造をどう進めていくか、市長の口から答えをお願いする。

 

中長期政策非常に大事 前田市長も明言

 

 前田市長 8月15日の出港式で宮本組合長がかつてない厳しい鬼気迫るご挨拶をされた。新しく1カ統増えて新たな気持ちで勝負に出ると、今からいろんな新しいとりくみを進めていく、機材をそろえたりなど投資の部分でも勝負に出るといわれていた。それは挨拶のときだけではなく、私はつきあいも長く、近い距離でやっているのでずっと聞いている。私もそれに対して、今日はすごい意味深い厳しい覚悟のあるご挨拶だったと来賓挨拶をした。

 

 その翌日のことだったので、朝8時過ぎに組合長から電話があり、「詳しくはまた話すけど今沈んでる」と。そのときの衝撃というか私もショックだったし、その後いろいろ情報を聞いているが、なんとかしないと、本池さんもかなり厳しめにいわれているし、実際そういうところもあるが、対応していかないといけないと思っている。

 

 そもそも5カ統を6カ統にするときにもみんなで頑張った。もう1カ統行こうとしていたが、あまりにも値幅が上がり過ぎた。数億円から今15億円なので、とても届かないので採算が合わないということで、数字も全部われわれも学んできている。国の支援が四億に拡大したのはわれわれがよく頑張って声を届けた結果だと思う。水産庁に行っても、うちの船だけじゃなく、巻き網など、あちこちの船が老朽化していて、それに対してお金を出していかないといけないから、全体の枠が財務省に認めてもらえないと嘆いておられた。でも財務省にもしっかりわれわれは伝えてきて、4億に増えたときは喜んだ。だけど、それに追いつかないくらい値段が上がってきていて、船のドックも空かないという状況も理解している。

 

 市とすれば、基本的には国・県・市・事業者などで負担割合が決まっているので、市が出すということは県も同じ額を出さないといけなくなるので、そこの足並みを飛び越えてやるのは難しいところがある。だけど、やっぱり下関のことなので、政治的判断がいずれは必要なときが来るかなという覚悟はしている。それまで私は、事務方のみなさんと、生産者のみなさんがここで「よし腹くくってもう1隻やるぞ」といってもらえるくらいまで、どうわれわれが支援のメニューを整えてやる気にさせていくかということがすごく大事。キャッチボールが。

 

 それに対して県の理解、国の理解などバランスをとりながら進めていかないといけない。下関だけ「よしなんぼでも出すからみんなついてこい」といってもついてきてくれないから。そのへんのバランス感覚を持ちながら上手にやっていくのが非常に大事。

 

 それから産業を育てるための中長期の政策は非常に大事だと思う。これはすべての事業に対していえることだが、ニューフィッシャーにとりわけ力を入れてきたことは自負しているが、それだけではいけないと私も思っている。今日はいろいろご意見をいただいたので、より一層頑張っていきたい。

 

 本池 市長がおっしゃるように、事業者が踏み出すためにも市がその姿勢を見せることが今すごく大事になっていると思う。市長は一番ご存じだと思うので、水産課のみなさんとぜひ早急に具体化をしていただきたいと思う。

 

 かつての下関市の水産業の発展は、地理的優位性も大きかったのだと思う。全国でもっとも早く競りが始まる下関から鉄道輸送で消費地に送るのが一番速かったため、水揚げした魚はそのまま鉄道輸送されていたと。しかし、時代は変わって道路網も発達し、下関の優位性もそういう意味では薄れてきたということだと思う。沖底の出航式のさいに前田市長が「下関が水産のまちであり続けるために」という話をされたことをお聞きした。そのためにはやっぱり戦略が必要だと思う。一生懸命対応はされているのだが、いつも問題が差し迫ったときにドタバタ対応するのではなく、長い目で見た計画的な戦略と振興政策が必要だ。

 

 「県の管轄だからといって、県の姿勢を待っているだけではこの先どうなるかわからない」という現場のご意見も聞いた。地元自治体として乗り出すときではないだろうか。下関市の水産振興課には熱い職員たちによって引き継がれ、蓄積されてきた貴重な資料もたくさんある。そうした財産もしっかり生かしていただきたい。

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