いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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防衛費を被災地にまわせ

 10年の時を経て再び熊本で震度7の大きな地震が起こり、いまのところ死者35名、重傷6名となっていることが国のまとめで明らかになっている。地震に起因したイオンモール熊本のガス爆発や日本製紙八代工場の崩れた煙突などの目立った被害の他にも、押しつぶされた家屋や1階がぺしゃんこになったビル、崩れた橋の歩道橋、つなぎ目がずれた高速道路インターの高架橋等々、まだまだ把握しきれていない被害の一端が次々と伝えられている。およそ3万戸が停電し、8万4000戸で断水が発生。夏真っ盛りの酷暑のなかでの地震だけに熱中症などの二次被害が広がることも懸念されている。避難先の学校体育館といっても空調の整備率は12%そこらで追いついておらず蒸し風呂状態。そのためにエコノミークラス症候群に気をつけながら車中泊で熱帯夜を過ごしている避難者の様子が伝えられる。地震という避けがたい災害によって、それまで当たり前だった当該地域の人々の暮らしがひっくり返っているのである。事態としてはまさに有事で、国が全面的に身を乗り出して対応すべき局面である。

 

 2011年の東日本大震災から2016年の熊本地震、2024年の能登半島地震とこの十数年で震度7クラスの巨大地震が立て続けに起こり、日本列島は地震の周期に入っているとされる。震度7クラスではないまでも、全国各地で割と大きめな地震は頻発しており、北海道や東北地方にはじまって九州地方にいたるまで、それぞれの箇所で要注意と目されてきた活断層は活発に動いているのが実態だ。地球の表面を覆っているプレート(岩の板)が日々運動して数百年という時間軸でひずみが蓄積し、あるタイミングで境界部分がずれて元に戻ろうと跳ね上がったりすることで地震は起こる。地球を覆う十数枚のプレートのうち四枚が重なっている日本列島はまさに地震の巣窟ともいえる“地震列島”である。九州地方は阿蘇山や桜島といった活火山、巨大なマグマ溜まりが発見されている鹿児島県南部沖の海底火山「鬼界カルデラ」などの動きとも連動した巨大地震の脅威にさらされている地域でもある。そして西日本一帯は東海・東南海・南海地震が連動したM9クラスの超巨大地震が発生したとしても不思議ではない状態とされ、すでに当該自治体では後方支援も含めて四国に渡っていく救援体制や自衛隊が兵站を築く拠点、死体安置所となる体育館なども指定され、具体的な想定がやられているほどである。

 

 日本列島で暮らす以上、地震は避けがたい天災である。伝わっている歴史的書物を見てもわかるように、地震・津波によっておびただしい被害を被りながら、そのたびに先人たちは復興して暮らしを取り戻してきた。問題は、現代のようなはるかに豊かで発展しているはずの日本社会において、為政者をしてその対応があまりにも鈍感で、いつも被災者や被災地にたいして棄民政策という冷淡な仕打ちがくり返されていることである。救援物資も赤十字の募金も個人の善意に依存したところでたかがしれているわけで、国をして「心配するな! 国がついているぞ!」と全面的に生活再建への支援を惜しみなく実施することがどんなに被災者や被災地を勇気づけるかである。しかし東日本大震災、熊本地震、能登半島地震で見てきた現実は、いつも個人の自助努力に丸投げして棄民する政府の姿なのである。

 

 国民の生命と安全が脅かされている――。天災もまた有事である。防衛費が年間10兆円超えして「ミサイルを配備して国を守る!」などとうそぶく前に、目の前で国民が直面している有事にたいして惜しみない支援を実施して、その生命と安全を守ること、安心して生活再建に取り組めるよう潤沢な支援を実施することが優先される。地震や津波で暮らしがままならなくなり、いつも「震災関連死」の方が直接死の10倍近くに膨らむというのは、震災対応の非情さをあらわしている。米軍需産業にくれてやる10兆円があるのなら、そっくりそのまま被災地の再建に振り向け、まず絶望の淵に立たされている被災者すなわち国民を守るべきである。

吉田充春                      

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