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映画『インサイド・ガザ:封鎖の内側から』 エレーヌ・ラム・トロン監督

 2023年10月7日、それ以前から続いてきたイスラエルによるパレスチナへの生活基盤の破壊、土地強奪、民間人殺害が段階を画したものとなっている。3年にわたる常軌を逸した無差別攻撃によってパレスチナ自治区ガザ(人口220万人)は破壊され、子どもや女性を含む7万3000人をこえる人命が失われた。

 

偽情報で真実が覆われる中

 

 2023年10月7日以降、ガザ地区は国際メディアの立ち入りが制限され、独立した取材アクセスは事実上不可能となった。この戦争を内側から記録したのがAFP通信ガザ支局の記者たちだった。周囲に爆弾が降り注ぐなか、彼らは記事を書き、写真や映像を記録し続けた。彼らが命懸けで捉えた膨大な映像と写真で構成されたこのドキュメンタリーは、4人のベテラン記者たち自身が語る唯一無二の証言記録である。

 

 記者たちは、AFP通信の一員としてかずかずの紛争を取材してきた。しかし今回の戦争は想像を絶するものだった。イスラエルは、ジャーナリストを標的にして、流血と破壊の真実を世界に隠そうとする。10月7日に何千人ものガザ市民が殺されたその惨状は世界には伝えられなかった。

 

 記者は、爆撃で亡くなり白い布に包まれた男の子の写真を撮影して世界に発信した。だがこの写真にイスラエルがケチをつける。「あれは人形だ。人間ではない。ハマスは人形を使い国際世論を欺いた」と。その男の子はあまりにも出血が多かったため、その死に顔は青白く肌が透き通っていた。その亡骸を「人形だ」といったのだ。

 

 それを契機に、AFP本部にはワシントンポスト、ニューヨークタイムズ、ウォールストリートジャーナルなどの国際紙の記者から「あの子が人形ではないという証拠はあるのか」という問い合わせがあいつぐ。西側メディアは、パレスチナ人が撮影した写真を疑った。戦場の真実が偽情報で覆い隠される。記者は悔しさをにじませて、「だから海外ジャーナリストが現場にいるべきだと思う。彼らが真実を記録すればいい」と語り、真実を伝えるジャーナリストを標的にすることが、世界の紛争の現場でも起こり得る、けっしてガザだけの問題ではないのだと強い危惧を示す。

 

ガザから退避  再び戻る

 

 10月13日、ガザ市民は中心都市から一斉にガザ南部のハンユニスに移動を余儀なくされる。AFPのビルも狙われ、本部からの指示で記者たちは一時的にガザを離れることになった。だが彼らは葛藤し、一度離れたガザ中心部にすぐに戻った。「真実を伝えるために立ち去るわけにはいかなかった」(記者)からだ。

 

 イスラエル軍の無差別爆撃は容赦なく、ガザ全域に安全な場所などなくなった。白い布に覆われた無数の遺体、泣き叫ぶガザの人たち、血塗られた人々。標的にされるかもしれないという恐怖のなかで、記者たちが命懸けで撮影したガザ現地の写真のかずかずが、このドキュメンタリーの威力だ。「あの日々のなかで無数の写真をとった。残酷すぎて使われないと知っていても撮り続けていた。とくに子どもの写真を。身体や頭ががれきの下敷きになり変形したバラバラの遺体を」と使命感を語る記者。

 

 エレーヌ・ラム・トロン監督は、「この映画は現場ジャーナリズムそのもの、とりわけフォトジャーナリズムへの賛辞でもある。戦争の映像がエンドレススクロールの中で消費され、次の見出しの下に消え去るまでのほんの一瞬しか見られないこの時代においても、写真は依然として“証言”の行為であり続けている」「この映画は、紛争を“説明しよう”とするのではなく、その紛争を生き抜く人々、そしてそれを記録するために命を懸ける人々を再び人間として描き出している。彼らの証言は、ガザの物語であるだけでなく、真実を記憶、そして最前線で報道が果たす不可欠な役割を力強く擁護するものだ」と語っている。

 

 2026年6月時点でガザでは220人以上のジャーナリストが殺されている。

 

 映画配給会社のユナイテッドピープルによると11月28日(土)から、東京都ポレポレ東中野ほか全国で順次公開を予定している。

 

【リンク】劇場情報(ユナイテッド・ピープル公式HP)

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