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住民の総意はミサイル基地撤回 イージス・アショア配備巡り阿武町福賀地区で説明会

購入費を被災地の復興に回せ

 

福賀地区の説明会で発言する男性住民(22日、阿武町)

 安倍政府がイージス・アショアの配備計画を進めている陸上自衛隊むつみ演習場に隣接する阿武町福賀地区で22日、2回目となる住民説明会がおこなわれ、会場の阿武町のうそんセンターには約160人が詰めかけた。福賀地区では、農事組合法人「うもれ木の郷」の女性グループや、全16自治会長と全4農事組合法人組合長が配備計画の撤回を求める申し入れを阿武町長におこなってきたが、この日の住民説明会は撤回を求める地域住民の総意を突きつけるものとなった。

 

 花田阿武町長の挨拶、防衛省の説明に続いて、最初に発言に立った住民の男性は次のようにのべた。

 

 むつみ演習場ができたとき、昭和36年4月1日に「陸上自衛隊むつみ演習場使用に関する覚書」がむつみ村長、阿武町長、山口駐屯地司令とのあいだで県知事立会のもとで交わされている。むつみ村と萩市の合併にともなって、平成18年2月1日に用語を一部改定して再度交わされている。

 

 覚書の第1項で、自衛隊側が民生を阻害しないようにすることが明記されている。民生とは文字通り住民の生活である。阿武町で暮らし、農業をする人、漁業をする人、お年寄り、子ども、すべての住民の日常生活こそが民生である。これを阻害しないことが覚書によって自衛隊に義務づけられている。したがって、ミサイル基地による風評被害等によって農業ができなくなったり、住民の生活が少しでも危険にさらされることになれば、それは民生の阻害であり、覚書に反するものである。

 

 2つ目は、覚書ではむつみ演習場は演習場として使用することしか認められていないことである。演習場とミサイル基地はまったく別の用途であり、覚書の当事者である萩市長と阿武町長の承認を得ないままに、勝手に演習場をミサイル基地にしてしまうことは、使用目的を演習場に限定している覚書に全く違反することである。

 

 3つ目は、事件があるときは当事者間で協議をし、協議が整わない場合にはさらに協議会を開くとされている。これは重要な問題について話し合い、協議による問題解決を当事者に義務づけたものである。現在おこなわれている説明会は、すでに決まっている国の方針を住民におしつけるためにおこなわれているものであり、覚書にある協議会ではない。

 

 以上、3点について回答願いたいとのべた。

 

 この発言に関連して、女性が「演習場のすぐ隣りにある宇生賀のうもれ木の郷の女性グループが申し入れをされたり、自治会長や4つの農事組合法人の方も申し入れされたのは、まさに民生の破壊、私たちの暮らしが破壊されるからではないか。民生の阻害ということは、まわりに人が住んでいるということだ。こんな重要な問題をそんなに軽くとらえているのか。この覚書には、実弾射撃をする場合は危険防止上必要な処置を講じ、かつ、10日前までに所用事項を関係各市町長あてに通報するとともに演習場の要点に掲示するほか、射撃中警戒旗を掲揚し、警戒員を配置するとある。イージス・アショアの迎撃ミサイルが発射されるというのは、実弾射撃どころの話ではない。なぜ関係自治体に協議や問いかけをしなかったのか。申し訳ないですむような話ではない」と発言した。

 

 別の男性も「この覚書を読んで思うことは、むつみ演習場の開設にあたって、当時の人たちが将来にわたってどういうことがあるかわからないことをとても心配していたことだ。だからこういう覚書を交わして、将来のために託している。そのような先人たちの深い思いやりをまったく無視するのであれば、この覚書にもとづいて、すでにおこなわれようとしている調査の差し止めを求めることもできると思う」と発言した。

 

 「阿武町というところは地域興しに熱心なところで、Uターン、Iターン、Jターンを強力にとりくんでいるが、イージス・アショアの配備はこれにまったく反するものだと思う。民生を阻害することではないか」という発言もあった。

 

 

まともに答えぬ防衛省

 

 演習場から500㍍のところにいるという男性は、「電磁波の影響は4㌔、5㌔のところではないというが、500㍍のところではどうなのか。“ないと思う”ということでは困る。迎撃ミサイル発射試験で46回成功したというが、50回目に失敗したらどうするのか。そういうときにどういう対応をするという答えがないといけない。非常に心配するのは、武装工作員が来るかもしれないから100人くらいの警備員がいるという。東京の赤坂にある某大使館前の道路のように防衛省は厳重な警戒をするのか。民間人に影響があるときは市町と連絡をとりあって対処するとあるが、どういう対処をするのか。福賀の住民はそういう心労とストレスがたまった状態で10年も20年も暮らしていくのか。その心のケアはどうするのか。だれがケアするのか」と問いただし、具体的なことは何も説明しない防衛省を批判した。

 

 演習場から数百㍍のところに住んでいる宇生賀集落の女性は、「説明会を聞くのは今日で4回目だが、今回が一番不安を感じた。今日来られた防衛省の人たちは現地を、一番近隣の私たちの地域を見たのか。私の家は演習場が裏山というより、背戸という位置にある。そういうところで生活している私たちの暮らしぶりを見たのか」と批判した。

 

 金融機関で働いてきた男性は、「イージス・アショア自体が国費の無駄づかいではないか。防衛省は日本が今、どれだけ借金まみれであることを知っているのか。イージス購入費は2000億円から5000億円と聞くが、維持費・管理費はさらに数兆円かかると思う。北朝鮮がミサイルを撃ち込んでくるというが、どの学識経験者が書いたものを読んでも、北朝鮮が日本に撃ち込んでくる可能性は〇%に近いといっている。もし撃ち込んできたら、半日で北朝鮮は火の海になるからだ。そんな無駄なことにカネを使うより、南海、東南海トラフ、関東直下型地震が70%から80%の確率で起こると政府自身が発表している。時間帯によれば太平洋戦争の犠牲者数に匹敵する数百万人に被害が及ぶ。それらに対応することが優先課題ではないか。東日本大震災、熊本地震、九州北部水害、そして今度の西日本大水害と激甚災害が多発し、被災者の復興はいっこうに進展していないと聞く。そちらに回すのが優先課題ではないか」と発言すると、盛んな拍手が送られた。

 

 最後に発言に立った女性は、「私は説明会に2回しか出席していないが、出席するたびに不安と懸念が高まるばかりだ。会場に来られている方の大半がそうでないかと推測する。ていねいに説明するといわれるが、私たちが聞いていることに対してねじれているというか、聞きたいことに答えない。前回、私はミサイルが何基配置されるかと聞いたが、防衛上の機密であるから答えられないといわれた。クローズアップ現代を見たらルーマニアでは8基ということがサラッとでてきた。レーダーのことについての疑問をみなさんが持っていると思うが、一つ一つのことに対してきちんと答えない。例えばイージス・アショアの迎撃実験に成功していると書いてあるが、今年はじめにハワイで失敗したことが書いてないのはどうしてか。そういうことが一つ一つ積み重なって、みなさんの不安になっていると思う。電波のことについても今日もたくさん質問された。電波防護指針がとても重要視されているようだが、前回私が質問したペースメーカーやICD着用者は電波防護指針の適用外だ。そういう方方がこの地域にいるということをちゃんと考えて調査されるのか。前回の説明会の直後に入札公告をしたが、そのことで私たちの不安と懸念、不信感は十分に高まっている。説明会のたびに安全性の証明からどんどん遠ざかっていると私は感じている。入札公告をして、開札も8月はじめと聞いているが、配備ありきの説明会ではないといっているのだから、これだけ住民の不安と不信感が高まっているもとで、開札の延期など、もう少し住民の感情に添った考え方ができないのか。私たち住民は、配備ありきとしか考えられないような説明会を何度もくり返されるよりも、配備計画そのものの撤回を求めます」と発言すると、会場全体からいちだんと大きな拍手がわき起こった。

 

萩市でもおこなわれた説明会

 

住民説明会で発言する男性住民(21日、サンライフ萩)

 21日午後に萩市のサンライフ萩会場での説明会では、初めに、藤道健二萩市長が「6月18、19日に開催した前回の説明会では、多くの方の意見では概略的な説明にとどまり具体的な説明がなかった、回答についても一般論が多くて具体的な回答がなかったという意見が多かった。そのため、住民のみなさんに十分な理解が得られたのではないと感じている。このたびのイージス・アショアの配備計画は急に出てきたことであって、住民のみなさんにとっても不安が多くあると思う。本日は防衛省本省からイージス・アショア担当の方、それぞれに詳しい方を招いているので、具体的な詳細、市民に寄り添った説明を願いたい」と挨拶した。

 

 続いて防衛省防衛局の五味戦略企画課長が、①イージス・アショアの必要性、②配備候補地の検討過程、③周辺への影響、④今後のとりくみについて、約一時間にわたって説明した。

 

 イージス・アショアの必要性については、前回同様、北朝鮮は「我が国を射程に収める弾道ミサイルを数百発保有」「移動式発射台(TEL)や潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)を用いて我が国を奇襲的に攻撃する能力や、同時に多数の弾道ミサイルを発射することができる能力を保有」しており、いかなる事態にも対応しうるよう、万全の備えをするためには、平素から必要な装備品を整備しておくことが必要とし、「イージス・アショアの導入により、我が国のミサイル防衛能力は抜本的に向上し、24時間365日防護が可能になる」とした。

 

 そのうえで弾道ミサイル防衛の概要とイージス・アショア配備候補地の検討過程を説明し、米軍が2016年から運用しているルーマニアと2014年から実験施設を運用しているハワイでは、周辺住民の「日常生活や経済活動に与えるネガティブな影響は報告されていないとのこと」などとした。しかしながら、警備態勢の検討として、武装工作員等からの防護とともに、ミサイル等からの防護も検討し、事態に応じて、イージス・アショア自体を防護するために、海上自衛隊のイージス艦、航空自衛隊のPAC―3部隊、陸自の高射砲部隊等と連携をおこない、重層的に防護する態勢をいつでもとれるよう検討していくとした。

 

 質疑では、配備計画の撤回を求める、あるいは性急な進め方を戒める内容がほとんどであり、賛成する立場からの発言は1人のみであった。

 

 「母が萩で暮らし、私も暮らす予定にしている」という男性は、「イージス・アショアができたら子や孫も含めてずっとつきあっていかなければならない。しかもそれは私たちの税金で買う。そういうことはぜひ考え直してもらいたい」と前置きし、「今日の資料のなかに、まず北朝鮮がということがいろいろ書いてあるが、防衛省は北朝鮮を仮想敵国にしたいのか。軍事的に攻めてきてほしいのか。今の説明を聞く限りでは、ミサイルを撃ってほしい、撃たれるから防衛しないといけないというのが前提として聞こえる。防衛省のなかには北朝鮮と話をしてミサイルを撃たせないようにする人はいないのか」と訴えた。

 

 「実家が萩にあり母が住んでいる」という男性も、「秋田市新屋と萩市むつみをあくまでも候補地として説明しているが、2カ所しかないのにどうしてそれが候補地なのか。この2カ所で日本中をカバーするといっている。最初から決めてきているということだ。すべてはタイムテーブルにのって、それにもとづいて説明に来ているだけだ。これは本当の意味での民主的な手続きではない。とくに今回は制服組を含めて前回に倍する人たちが来てすごく威圧を感じる。今ちゃんとしないと昔のようになる」「私は国粋主義者ではないが、本当に国のことを愛しているし、心配している。萩市の将来のことを一番心配しているのは萩市民だ。藤道市長が一年前に当選したのも、街の再生とみんなの暮らしを守るということを掲げてたたかったからだ。こういうふうに外から持って来て、むりやり受け入れさせるようなやり方はおかしい。絶対にやめてほしい。私たちはずっとここで生きていかなければならないのだ」と語ると大きな拍手が起きた。

 

 「防衛省の説明資料は森友・加計学園問題、南スーダン問題と同じで信用できない。信頼することが怖くてならない」と切り出した男性も、「今農家の人たちは減反政策、補償金のうち切り、年金も減るなかで、現金収入を得るために夜遅くまで野菜をつくっている。青い海と空、そして新鮮な野菜や魚、畜産物など阿武町では頑張って道の駅の売上を増やしている。イージス・アショア建設で4、5年は建設関係などが潤うかもしれないが、その先はどうなるのか。風評被害で若者は帰って来ない。子どもを連れて来ない。観光客も来なくなる。じり貧でないか。どうして生きていくのかよく考えてもらいたい。良心のない安倍さんは信頼できない」と訴えた。

 

 また、西日本一帯が豪雨災害に見舞われ、未曾有の被害と酷暑のなかで多くの人人の命と暮らしが守られていないなかで、「どうして今説明会をするのか。イージス・アショアはやはり必要といわれるが、何を守ろうとしているのか」「国防というのは何を守るのか。私たちが安心して暮らせるようにすることではないのか。今の日本の状況のなかで何を優先するのか」「イージス・アショアに係る費用はすべて被災地に持って行くべきだ」という批判があいついだ。

 

 そもそも演習場にミサイル基地をつくること自体が、『陸上自衛隊むつみ演習場使用に関する覚書』(平成18年2月1日、陸上自衛隊山口駐屯地司令、萩市長、阿武町長とのあいだで交換)の「自衛隊側は、民生を阻害しないように」というとり決めに違反し、不当であることが追及された。

 

 そして、レーダーの出力や電磁波の強度、必要とする電力や水資源の使用量、地下構築物の構造やその規模等、住民が具体的に知りたいことには何一つ答えないため、「こんな説明会ならやらない方がいい」という声が噴出した。

 

 なお、午後7時から開催された萩市むつみコミュニティセンターでの住民説明会で、冒頭の挨拶に立った藤道萩市長は、「イージス・アショアの適地調査に係る入札の開札が8月2日に迫っているが、萩地域での説明会の状況をみると、このまま開札の日を迎えてよいのかと忸怩たる思いがする。私としては開札日の延期を防衛省に申し入れようと思っている」と明らかにした。

萩市長に適地調査の中止を求めて申し入れする住民(19日、萩市役所)

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