いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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下関に働く場所をつくれ  若者流出し年寄り孤独死も 

 下関市民の失業と貧困が深刻に進行している。自殺が年間70人を超えており、自殺と発表されない自殺者がその上にいる。働く場がないことが若者を市外・県外に流出させ、残された高齢者の孤独死も全市的な問題になっている。多くの高齢者が月に5万円前後の年金で呻吟している。タクシーの運転手も市内の商店も「とにかく人が町を動いておらず仕事にならない」と語る。市内にお金が回らない。現金収入をもたらす産業が、農林漁業だけではなく製造業まで空洞化が進行しているのだ。中尾市政は急速度に疲弊する市民の実感がわからない。「下関に働く場所をつくれ」「失業対策を第一番にやれ」との声は、労働者や失業者だけでなく、商業者や高齢者をはじめ全市民の生活にかかった死活の要求となっている。世界が大変調したリーマンショックのずっと前の計画である市庁舎建て替えなどのハコモノ利権をやっている場合ではない。
 
 1食おにぎり1個がざら タクシー運転手

 あるタクシー会社の夕方の休憩室では、運転手がカップラーメンをかき込んでいた。安売りの69円のカップラーメン一つが夕方から出勤する運転手の晩ご飯だ。昼ご飯、晩ご飯がおにぎり1つということもざら。この会社では今年に入ってほぼ全員が足切り額に届かなくなったという。市民の貧困化が真っ先に反映したのがタクシー業界で、それがまた労働者の生活の困難につながっている。
 総合病院の前に待機するタクシー運転手の1人は、「最近病院に来る患者がタクシーに乗らなくなった。下関駅まで行くと2600円もかかるから、今は足の悪い高齢者もバス。一生懸命ステップを上がっている。タクシーに乗るのは救急車で運ばれた人が帰りに乗るか、タクシーの値段を知らない人。それでも一度乗ると高いのにびっくりして二度と乗らない。以前は常連の患者がタクシーに乗っていたが、それが本当になくなった」と話す。
 どこのタクシー会社でも足切りは35万円前後。1カ月で35万円を揚げれば45%の16万円が給料になるが、そこから保険料などが引かれて手取りは12、3万円ほどだ。足切りに行かなければ手取りは10万円を切り、悪いときには7、8万円になる。
 駅構内では、一度待機エリアに入ると順番が来るまで待たなければならない。2、3時間待機して、お客が乗ると2、3分の初乗りで終わることも多く、足切りに行かない運転手が多い。ある運転手は「職安に行っても、資格など持っていない40代、50代がすぐに入れるのはタクシーしかなかったので運転手になったが、これでは生活できない。最近、元自営業者など、国民年金やほとんど年金のない人たちが入ってきているが、年金がなければタクシー運転手では食べていけない」と話していた。
 商業関係者のなかでも、震災以後、目に見えて消費が落ち込んできたこと、それが今年に入ってさらに深刻化して、「とにかく客が一人も来ない」と語りあわれている。とくに商店街は、高齢者が多いため、以前なら年金が出る月に少し売上が伸びていたが、最近は年金が出ても買い物に来なくなったといわれる。先行きが見えないなかで、商店主のなかから自殺者が出ていることも話題にされており、「死因は心筋梗塞とか脳梗塞と知らされるが、みんな自殺だったと知っているし、だれもが他人事ではないと感じている」と語られている。
 電器店を営んでいる婦人は、「客がとにかく一人も来ない。ボランティアで店を開いている状態だ」と話す。以前は電池や蛍光灯など消耗品は売れていたが、最近はそれもなくなった。電器製品の修理もなくなり、ぎりぎりまで使って、安いもので買い替えるようになっているという。「自分の薬代の2000円も稼げない」といった。
 別の商店主は、「つけで買ったお客さんが“来月払うよ”というけれど、払ってくれない人が少し前から増えている。売上がないから、つけでも買ってもらおうと思う自分が悪いのかもしれないが、そうでもしなければお客が来ない」と話した。震災後から売れなくなってストレスがたまり始め、今年に入ってさらに客がいなくなったという。「売上があるときにはメーカーも優しい言葉をかけてくれるが、売れなくなったら相手にもされない。消費税を上げたらますます客が来なくなるし、きれいごとでは済まされない。いつも年末になると“今年の12月までかな”と毎回思う」と語っていた。
 商店だけでなく、スーパーでも、シーモールやゆめシティなど大型ショッピングセンターでも、人は来ても物が売れない。当初地元商店200軒でスタートしたシーモールでは、残っているのは20~30軒で、後は大手店舗が入れ替わり立ち替わり入っている。ゆめシティでも同じで、テナントの入れ替わりが激しい。「下関の市場が年年縮小している」(ショッピングセンター・テナント店主)と語られている。

 1カ月約5万円の生活 食費切詰める高齢者 

 市民の貧困化を集中的にあらわしているのが高齢者の生活実態。下関市では高齢化率が30%に迫ろうとしているが、働く場がなく子どもたちが遠く県外に出て行くなかで、残された高齢者が少ない年金を切りつめて生活しており、孤独死も後を絶たない。「国民年金をかけていても満額にあと数年足りず、4万~5万円という高齢者が多い」といわれ、市民の多くが高齢者の生活実態に心を痛めている。
 旧市内のある地域では、200軒あるうちの40軒以上が高齢者世帯。そのうち2人暮らしは数軒で、ほとんどが1人暮らしだ。毎日、夕方の電気がつく時間帯に民生委員が見回りをして安否を確認しているが、それでも孤独死が頻発する。
 地域で商店を営んでいた婦人は「70代の男性は、子どもも入院していて1人暮らしだったが、“動けなくなったから配達してほしい”と連絡があり、配達するようになった。ある日配達に行くとぽろっと“お米がない”というようなことをいったので、すぐにインスタントのうどんとおにぎりをつくって持っていった。そしたら気むずかしい人なのに、おにぎりを持って“温かい”といって涙を流していた。心配になって気に掛けていたが、それからしばらくして一人で亡くなっていたのが見つかった」と話す。周辺地域で、知っているだけでも10件近く孤独死が起こっているという。
 「子どもたち世代は、下関に仕事がないということで、横浜や東京など関東や岡山、熊本など遠方に行っている人が多く、残された高齢者は5万円ほどの年金で切りつめた生活をしている。若い人が下関に残れないということが、今の高齢者の状態を生み出している」と切実な思いを語っていた。
 市営住宅に住む80代の婦人は、年金と生活保護あわせて月7万円で生活している。少しでも切りつめるために朝はパン1枚、昼ご飯はぬいて、夜はガスや水道を使わないように弁当をとっている。風呂も3日に1回という生活。「世話になって申し訳ない」という気持ちで、できるだけ生活費を削っているが、最近になって保護費が減額になった。「遠方にいる子どもたちも自分の生活で精一杯だから頼るわけにはいかない。早く死なないといけないかね」と笑顔で切実な思いを語っていた。
 旧市内の市営住宅に住む60代の男性は、建設関係の仕事についていた。基礎年金の5万円では生活できないため、ハローワークに通って仕事を探しているが、年齢が引っかかって仕事が見つからない。13社面接を受けたがすべて落とされたという。「ときどき以前からのつながりで、忙しいときに声をかけてくれるときがあるが、今月はまだ2日しか仕事に行っていない。日当が1万円あっても、2日では2万円にしかならない。“貯金をしておかなかったのだから自己責任”という人もいるが、私たちみたいな零細企業で働いてきた人間は給料がそんなにあるわけではない。そのなかから子どもを育てればたいそうな貯金ができるはずがない。市県民税も値上がりする一方だし、消費税増税だと騒いでいるが、国政にしても市政にしても、今の政治家にこの生活感覚がわからないのが腹立たしい」と憤りを語っていた。

 子供抱え再就職厳しく MCS労働者の家庭 

 3人の子どもを抱える母親は、主人がMCSの派遣社員を解雇されてから、2カ月間仕事が見つからなかったと話す。「給料は安くてもとにかく仕事を」ということで、7回面接を受けてやっと決まった。今はまだ研修期間中なので給料は安く、以前の半分ほど。「自分も働きに出ようと思って、アルバイトを紹介してもらった矢先に祖母が倒れて入院することになり、また働けなくなった。今内職をしながら、なんとか生活している状態だ」と話した。同じ派遣社員だった人たちも市内に職がないため、関東などに家族ごと引っ越して行ったりと、多くが下関から出て行ったという。「この状態で下関はこの先どうなっていくのだろうか」と話していた。
 別の母親は、「職があっても、給料が下がったりボーナスがないという状態。それなのに、扶養控除がなくなって、所得税は上がるし先日届いた市県民税も大幅に上がっていた。保育園にお迎えに行くと、お母さんたちのあいだで保育料が上がったことが話題になる。入るものは減っていくのに、支払いだけは増えていく。なぜこんなことをするのかと思う」と話していた。
 下関の経済情勢の厳しさが増し、市民生活は緊急事態となっているのに、リーマンショック以前に決まっていた200億円の市庁舎建設、海沿いへの消防庁舎建設、駅前にぎわいプロジェクトなどの大型箱物事業に、市民が必死で働いて納めた税金をつぎ込んでいる中尾市政の感覚に、市民の怒りは高まっている。
「合併特例債を使えば、安く市庁舎が建てられる」というが、市が借金することに変わりはない。市内の産業が疲弊し、市民生活が緊急事態になっているのに、税金取り立て、さまざまな料金値上げをやって市民生活をますます疲弊させ、市税収入そのものもどんどん減るようなことをやり、大型ハコモノ事業だけは強行して市財政の破たんを推進する。中尾市長への批判は、ホームグランドである南風泊の水産団地でも様変わりの強まりとなっている。
 とくに市庁舎建て替えなどの大型箱物事業は中止して、市民の働く場をつくること、とくに町の清掃や草取り、さらに農林漁業への労働力投入など、仕事をつくって失業対策事業を復活させる要求が強まっている。中尾利権政治への市民の怒りは半端なものではなくなっている。

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