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「下関が戦場になる」と騒ぐ  下関市の国民保護法シンポ

 下関市が主催して「国民保護法シンポジウム」が23日、下関市民会館で開催された。このシンポジウムで、江島市長が関門地域での戦争を想定し、下関を廃墟にしかねない発言をくりかえしたことに、市民の驚きと憤激が広がっている。「国民保護」の名のもとに、市民の知らないところで進行している大規模な戦争動員計画の真相を暴露し、平和を求める世論と運動をさらに強めることが求められる。

 大規模な戦争計画暴露
 このシンポジウムは、「テロやミサイル攻撃から市民の安全を守る」といって、この4月から作成に入るという「下関市国民保護計画」にむけて、市民への宣伝と動員をはかる最初の行事として開かれた。
 はじめに、軍事アナリストの志方俊之氏(帝京大教授、東京都参与)が「日常に潜む危機と国民保護」と題して基調講演。さらに志方氏がコーディネーターとなって、江島潔(下関市長)、岡田実(山口県危機管理室長)、松田武男(下関市連合自治会副会長)、林登季子(下関市連合婦人会長)の各氏が発言した。
 志方氏は、防衛大学校卒業後、米陸軍戦略大学を卒業、陸上自衛隊北部方面総監をつとめたこともあり、アメリカの戦争に日本の国土と人員を差し出す「危機管理」を熱心にとなえてきたことで知られる。
 この日の基調講演では、「国民保護法」のいう「武力攻撃事態」について、いまの政治力学から見て「特殊部隊の侵攻や弾道ミサイルが飛んでくるということはほとんどありえない」と指摘。起こりうるのは「緊急対処事態」とされる「原子炉や公共交通機関を狙ったテロ、飛行機などの交通機関を利用した自爆テロだ」とのべ、その対象も「東京の中心部」で、地方都市が攻撃されることはまずないとの認識を示した。
 志方氏は同時に、「拉致された人人は不思議に原子炉の側にすんでいた人が多い。最近になって、原子炉を警備するようになった」と原発周辺の危機を強調した。また、「自然災害と異なり、細菌・化学兵器では人を助けるよりも、ただちにその場を離れ自宅でじっとして、情報を待つことだ。放射能などがあればすぐ死ぬ。風上の高台に逃げることだ」などと話した。

 「市民の協力」不可欠と強調
 シンポジウムは、下関でこれを具体化するうえで、各方面から意見をのべあう形ですすんだがとくに「計画作成は平成18年度の最重要課題」とする江島市長の突出した発言がめだった。
 江島市長は、「このたびの合併によって、日本で3番目に長い海岸線を持つ市になった。容易に敵が入りこむことができる。また、関門大橋、関門トンネルがテロの対象になる」と「テロの脅威」を強調。さらに「蓋井、六連などの離島の住民が人質にとられる」可能性や、定期航路や貨物船、吉見や小月の自衛隊基地も攻撃の対象になることなどをあげ、「有効な警備」へと高める必要性をのべた。そして「武力攻撃」と「緊急事態」に対処する2つの条例を策定し、「武力攻撃事態に対応した市の対策本部を設置する」意向を明らかにした。
 江島市長の発言はしだいに熱を帯び、「九州南西海域に沈んだ不審船は漠然とした不審船ではなく、北朝鮮の工作船であった。ここをはっきりさせて、ミサイルが飛んでくればどうするのかという訓練を徹底してやらねばならない」と発展。武力攻撃事態を知らせるサイレンの音をどのように周知徹底するのか、避難の指示の方法などを、警察、自衛隊、消防などの関係機関の連携はもとより、「自治会や自主防災組織など市民の協力」が不可欠だとのべた。
 江島市長はそのうえで、それにむけて「パブリックコメント」(公聴会)など、市民に周知させる場をもうけることを重視することなどを明らかにした。
 岡田氏は、山口県の有事対応策の進行について、政府の「国民保護にかんする基本指針」を受けて昨年、「山口県国民保護計画」を作成、今年1月20日に閣議決定を得たこと、今後、市町村とともに放送局や電気・ガス会社、トラックなどの運送業者などの企業での「計画の具体化」が義務づけられていることを明らかにした。
 岡田氏はとくに、「山口県としての地域的特殊性への配慮」として、米軍岩国基地や自衛隊基地、岩国・大竹、周南コンビナートがあることを強調。広島湾岸を原水爆戦争の基地にする米軍基地の再編と無関係ではないことを示唆した。
 松田、林の両氏は江島市長の要請にこたえて、自治会、婦人会、PTA、日赤奉仕団などが「横の連携」を強めるなど、積極的に協力していく立場から発言した。
 こうした論議を受けて志方氏は、「国民保護法」の地方での具体化が難航しているなかで、全国に先がけてすすめる江島市長を「先見の明がある」などとたたえた。さらに、平場からの「国民の自由はどうなるのか」という質問にたいして、「市民全体の安全のために規制される。メディアの自由も制限される」とこたえ、民主主義を破壊するものであることを公言した。
 シンポジウムは、志方氏の「安全が一番の福祉だ。どんなにいい生活をしても武力攻撃によって、破壊されればなにもなくなる」と、「国民保護」の欺まんで福祉を切り捨て、「安全」とはまったく相反する戦争へと突きすすむことを正当化する発言でしめくくられた。
 下関では、小泉政府が昨年3月に定めた「国民保護に関する基本指針」が、核弾道ミサイルが飛来したら、どのように避難をするのかなど原水爆戦争を想定したものであることから、被爆者を中心に、「原爆が落とされたらすべてはない。そんなばかげたことを想定すること自体、問題にならない。なによりもそんな戦争をしないように努力することではないか」という憤激の世論が発展している。
 市民生活を根底から破壊することをいとわない江島市政の本質をはらんだ「国民保護計画」策定の動きに反対し、平和を求める世論と運動を発展させることは、大多数の市民の共通した要求である。
 
 全国に先駆け戦時体制作り
 「下関にミサイル攻撃がある」と想定して対応策をとるという。大多数の市民が考えていないことを実際にやろうとしているのである。関門橋や関門トンネルが狙われるというのである。これは小泉政府の国民保護法を具体化するというもので、江島市長は元防衛庁幹部の基調講演者以上に熱心な姿勢で、全国に先がけてこの態勢をつくると熱弁をふるった。
 下関が攻撃されるというのは、かつての日米戦争のような大戦争が起きることを想定しているわけである。先の太平洋戦争における空襲攻撃のようなものがあるというわけである。日米戦争といえば、日本の敗北は決定的となっているのに、アメリカ側は広島、長崎に原爆を投げつけ、沖縄戦をやり、全国の都市空襲をやって、無辜(こ)の非戦斗員数十万人を無惨に殺した。それは日本をたんに降伏させるだけでなく、単独占領しようという特別の意図を持った戦争だったからである。
 現在、下関をふくむ日本全国を攻撃するような大戦争をやり、しかも日本を占領支配するような意図を実行に移すような国はどこにあるだろうか。朝鮮はもちろん、中国、ロシアなどもそんなことはできない。そんなことをやるのはアメリカ以外にはない。アメリカが日本を使って、それらの国に戦争を仕かけようとしているのが、世界の方から見た現実の姿である。
 下関の港にはすでに金網をはり、アメリカの艦船がいつでも入れるようにし、そのたびに江島市長はいそいそと花束を持っていく。下関が狙われるというなら、ぼう大な予算を使って使い道のない沖合人工島に米軍を誘致するなら狙われてもおかしくない。要するに世界中で戦争をしているアメリカに加担するなら狙われてもおかしくない。
 下関は日本でも代表的な、朝鮮人が多く住む町である。朝鮮人と日本人の関係は戦争しなければならないような関係はない。朝鮮、中国、アジアの国国とのあいだで友好関係を強め、平和貿易を発展させることが下関が発展する道である。
 江島市政はさんざんに下関を食い物にし、市民が食えないようにして利権にうつつをぬかしてきた。自他ともに認めるアメリカ崇拝者である。ところが下関ですっかり嫌われた江島氏のような新型政治は、小泉政府の構造改革とぴったりであった。そして貧富の格差を広げ、政治不信を広げ、対米従属の売国政治への怒りは全国で噴き出すところとなっている。
 「他国からの侵攻」といって、警察、消防、自治体から民間企業から自治会など、あらゆる機関を総動員するのが、実は日本の国民を縛りつけ、不満と反抗を押さえつけるのが主眼というのは、戦前の教訓である。

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