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洋上風力反対で熱気溢れる  下関安岡住民集会開催 私企業のためなぜ住民犠牲に

 下関市安岡沖で計画が進められている洋上風力発電の建設に反対する住民集会が9日、安岡公民館で開催された。反対署名が3万5000人を突破し、運動が盛り上がるなかで、安岡地区や綾羅木地区を中心に住民約250人が参加した。一企業のもうけのために地域が犠牲になっていくことへの怒りが語られ、10万人署名を目標に、今後はさらに下関中に運動を強めていくことが確認され、意気込み溢れる集会となった。
 
 10万人目指し署名全市へ

 はじめに、主催者である安岡沖洋上風力発電建設に反対する会が今回の集会の目的として「風力発電計画が国や県の公共事業だと勘違いしている人や、前田建設工業が住民に被害を及ぼす物を建てるはずがないとか、例えあっても行政がそれを許すはずがないと思っている人がいるかもしれないが、その可能性はゼロだ」とし、「風車が発生させる低周波の健康被害が最近研究されるようになり、どこまで離れれば低周波が届かないのかいまだ明確でなく規制もない。今回の風車建設の総事業費およそ250億円には市内外の工事業者をはじめ利権にぶら下がっている人はたくさんいる。住民が根気強く、強力に反対運動をしなければ必ず風車は建設されてしまう。反対の活動を今以上に盛り上げていくためにどうすればよいかということを皆さんと一緒に話し合っていきたい」とあいさつした。
 次に平生町の風力発電から約600㍍離れた場所に自宅があるという男性住民が、被害の実体験を語った。平生町には出力1500㌔㍗、高さ100㍍の風車が七基建設されている。「最初はその大きさに驚いた。安岡の場合は3000㌔㍗というからもっと大きい。この綺麗な海に20基も建てるということが考えられない。風力発電はまず騒音がたまらない。私は騒音で寝られなくなり、精神科で睡眠薬と安定剤をもらって寝られるようになった」と話した。役場に苦情にいくと担当者から「風力は観光です」といわれたこと、追及を深めると「人権侵害だ」といわれたことを紹介し、「風車で病気になるのと一体どっちが人権侵害なのか」と怒りを込めた。
 男性は55歳のときに仕事をやめて平生町に戻ってきたが、地域には高齢者が多く、同年代の人たちは風力発電ができてみんな逃げてしまった。他の住民のなかでも頭痛やまっすぐ歩けなくなる症状が出たり、子どものいる家庭は家を引っ越したという。「“建ってしまったものはどうしようもない”といわれるが家を捨てて逃げなければいけないのか」と訴えた。
 「風力発電は1日見ただけではわからない。被害者の家に1カ月住んでみないとわからない代物だ。ちょっとだけ見て“大したことはない”と思ったらとんでもない。もし安岡に風力ができればゴーストタウンになる。とにかく皆さんで建てさせないように頑張って欲しい」と実感を込めて語った。
 その後、風力発電の被害で鶏が黄身のない卵を産むようになったり、住民が次次に町を去ってゴーストタウンになったオーストラリアの事例が動画上映され、主催者から風力発電に関する講演がおこなわれた。
 弁士となった安岡の医師は「風力発電の健康被害は騒音と低周波音がある。低周波はどこでも通り抜ける。壁でも地面でもコンクリートでも通り抜ける。耳のなかに入った低周波は内耳のリンパ液を攪乱する。リンパ液というのは人間がまっすぐに歩くときにバランスをとってくれるもので、これによってメニエル病を引き起こす。被害の出る距離は出力2000㌔㍗で3㌔㍍。ここの安岡にできるのは3000㌔㍗だから単純計算でも4・5㌔㍍になる。そうすると新下関まで入る。イギリスの学者によると8・2㌔㍍まで被害を受けるという」と説明し、低周波音による被害を紹介した。
 「治療法は音を消すか逃げるしかない。よく眠れない、いらいらする、耳の圧迫感や痛み、全身の圧迫感、頭痛、それからDNAに異常をきたすともいわれているが、今の医学では直せない。それから子どもが勉強しなくなる。そうなれば母親はみんな子どもを連れて出ていく。安岡小学校にいく子どもがいなくなる。それがゴーストタウンだ。風力発電ができてからでは遅い」とのべた。
 不動産関係者の男性は「安岡地区には現在多くの開発地区が作られているが、実際に多くの人が降って湧いたような風力問題に悩んでいる。現在建設中の人はとても後悔しているし、去年建築した人は落胆して現在すでに売りに出している。建築中で契約解除になった人もいる。子どもになにかあったら親として責任がとれないので、買いたくても買えない。風力発電ができれば一生懸命働きローンを払った家を二束三文で手放さなければならなくなる。われわれの綺麗な夕日の沈む海岸や、子どもたちの体を犠牲にしてまでしなければならないような事業ではない。一企業の事業だ。断固として反対していきましょう」と力強く語った。

 群がる政治家250億円の巨額利権

 次に活動の説明や今後の計画が紹介された。「今回の工事は総事業費がおよそ250億円。下関の事業所にも100億くらいの金額が落ちる。市長や市議というのは基本的に推進の立場だ。私たち住民が反対の声をあげなければならない」とし、今後の活動としては今月中にも海面の占有許可を出さないように県知事に要望書を出すために、引き続き署名も集めることが提案された。さらに「自治会から反対の陳情書や前田建設の環境調査を拒否するという通知を出してほしい。これは自治会にしかできない。5月ごろには反対のデモ行進を計画している。筵旗をたててデモ行進をしましょう」と呼びかけられた。
 主催者の男性は「請願書では、住民の同意が得られていないこと、健康被害、地域の衰退などを訴えたが、そのなかに“以上の不安や課題が解消されない限り反対する”という一文がある。この文章は初めはなかったが、議会でこの文章をつけない限り協力しないといわれて付けた。しかし、これはとても問題のある言葉だ。それは不安や課題が解消されれば賛成ということになる。しかしこれは簡単に解消される。今までは一番近いところで600㍍くらいしか離れておらず、その点を追求していたため、前田建設工業が1基の風車の出力を3700㌔㍗くらいまで上げて台数を20基から16基に減らし、陸から離せば2㌔以上離れる。2㌔㍍ではまったく話にならないが、去年の9月に経済産業省環境審査顧問会風力部会が前田建設に2㌔離れれば大丈夫といっている。それからごまかしの騒音規制が適用される。これにより市や県が賛成に変わる可能性がある。これは住民によってしっかり監視しなければならない」とのべた。
 そして「引き続き多くの市民に協力を訴えて反対署名を集めていきたい。現在3万5000人をこえたが10万署名という目標に向けて頑張っていきたい。建設地から2㌔圏内に2万人強、3㌔圏内には5万人弱が生活している。安岡だけでなく綾羅木、川中、垢田、武久などの地域にも活動を展開し、街頭でのPRをおこなう。前田建設工業と一部の利権を求める人のために、下関や子どもたち、豊かな自然環境が犠牲になるのは許されない」と訴えた。その後、集会後のシーモール前でのチラシ配りの参加者を募ると、参加者から何人もの挙手があった。
 質議応答では住民からの活発な質問・意見があいついだ。
 安岡地区の男性は「綾羅木の説明会のときに、前田建設の役員に“あなた方はここに風車ができて住みますか”と聞くと、彼らはみんな“住みません”と答えた。彼らが住まないところにどうしてわれわれが住まなければならないのか。これからは組織で動かなければならない。一人一人ではだめだ。私は某議員が前田建設にこの話を持ち出したと聞いた」と怒りをのべた。
 安岡の自治会関係者は、すでに自治会として反対署名を集めていることをのべ、「安岡連合会としては遅れをとっているが、今後は各自治会で動くことを予定している」と語った。
 今回の集会には主婦層も多く参加した。ある女性は「まわりには知らない人がたくさんいるし、“原子力に比べるといいことだ”という人もいる。綾羅木では切実な問題だが、川中辺りになると被害がないと思っている人も多い。もっと資料をまわして講演もして多くの人に知らせてほしい。一個人では動けないが協力したいという人はたくさんいるし、ぜひ寄付をしたい。知っている議員に協力してほしいと声をかけると、“国で決まったものはもう動かない。地元のみなさんに利益を還元してもらう方向で考えたらどうか”という。私たちを代表して市議会、県議会に出ているわけで、私たちが推している議員にもっと意見を伝えなければならない」とのべた。
 別の女性は「これだけ多くの人が住んでいる地区に風力発電が建っているところは日本全国で他にあるのか。下手をすれば新下関地区まで被害がいく。何万人も住んでいるところに一社の利益、議員の利益で風力発電を作って、みんなが被害を被らなければならないのはおかしい。住民が出ていけば下関市にも固定資産税が入らなくなって困る」と語り、会場から大きな拍手が沸いた。

 10万署名の実績ゴミ袋値下げで実証済

 他にも、「下関ではゴミ袋の値段を下げさせる10万人の署名を集めて、実際に値段は下がった。あきらめてはいけない。絶対に風力を建てさせてはならないという気持ちが必要だ」「10万人が大きなベースとなる。ここに集まった人たちがそれぞれ2、30人ずつ署名を集めよう」など積極的な意見があいついだ。さらに、住民から政府が洋上風力の電力買いとり価格のみ5割アップの1㌔㍗時36円に引き上げたことも指摘がされた。
 ゴミ袋値下げの署名などにかかわった女性は「ゴミ袋のこともいわれたが、子どもたちの学校給食の食器がアルマイトのときも毎日のようにスーパーなどで母親、先生たちなどから署名をもらい、変えることができた。一人の署名ではだめだが、みんなで頑張れば大丈夫。一人一人頑張りましょう」と語った。
 医師である男性は「市にしても県にしても、地元の反対意見が強ければ許可は出せない。その圧力を作る。われわれの力を合わせて何万人分もの名前を持っていけば政治は動く。来年1月は市議選もある。われわれは厳しい目で誰が市民の味方か、だれが前田の味方か見極めて、次の選挙で鉄槌を下さなければならない。われわれはそのパワーを持っている。市会議員なんて2、3000票でとおる。逆に落とすのも簡単だ。横着なことをすれば落とすぞという気持ちがいる。これは市長選も一緒だ」と語り、共感をよんだ。
 低周波音についての研究をおこなっている男性は「風力発電は場合によれば下関駅や唐戸、あるいは長府方面まで影響を及ぼすこともある。しかし、これが科学的に解明されていない。この問題は下関全市の問題にしなければいけない」とのべた。
 最後に平生町の男性が「上関原発のように船で作業をとめるくらい考えた方がいい。原発、風力、太陽光というのは全部同じ国策だ」と語り、主催者が「5月のデモ行進では筵旗を押し立てていこう」と力強く呼びかけて散会となった。

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