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安岡沖洋上風力への見解質す 下関・本池市議の一般質問 態度表明避ける中尾市長

 下関市議会では9月定例会が開催されており、19日から一般質問がおこなわれている。本池妙子市議は24日に一般質問をおこない、反対運動が全市に広がり盛り上がる安岡沖洋上風力について、市長や環境部の態度を追及した。またこの間学校現場や父母から寄せられてきた学校のトイレや施設、遊具が壊れたまま放置されている問題を明らかにし、教育予算の充実を求めた。一般質問の要旨を紹介する。
 
 安岡洋上風力について

 本池 昨日、中心市街地において、安岡沖洋上風力発電建設に反対する会が主催するデモ行進がおこなわれた。6月におこなわれた前回のデモ行進を上回る1000人が集い、子どもや現役世代、高齢者が腹の底から「市長は市民の切実な声を聞いてくれ」と叫んでいた。反対署名は6万9000筆に達し、安岡29、綾羅木15の合計44自治会が反対を表明し、医療団体など各団体が市長や県知事への陳情を次次と提出している。まず、これほどの反対世論の高まりについて下関市としてはどのように受け止めているのか、見解をお願いしたい。
 砂原環境部長 一定の市民の方が反対の意志を持っているという現実は認識している。
 本池 先日の答弁で中尾市長は「環境調査を経て準備書が作成され、山口県から意見が求められた後に下関市環境審議会が審議する。そして審議会の答申に基づいて市の意向として県知事に意見を述べる。その際、議会の決議も含めて反対意見があることも書かせて頂く」ということだったと思う。この場合、反対意見もあるが賛成意見もあるという両論併記で意見が上げられるのが常だと思っている。いわゆる市長や議会の判断や地元同意が求められる手続きになっていないと思っているが、この点についてどう考えているのか見解をお願いする。また下関の行政を司る者として、市長にはどこかで賛否について明確に態度をあらわすつもりはあるのかどうか、たずねたい。
 中尾市長 市としては地区住民の意見、大変重いものだと認識している。(手続きについて延々と説明)
 本池 市長や議会判断、地元同意が求められる手続きになっていないと思うが、この点についての見解と市長の賛否についての明確な態度をあらわすつもりがあるのかを答えていただきたい。
 中尾市長 先ほどの答弁の通りだ。
 本池 答えになっていない。原発立地でもそうだが、まず第一に地元自治体の同意、さらに周辺自治体の同意、知事同意と段階を踏んで手続きがある。影響を被ると思われる地域には明確に同意が求められ、現在では福島事故を経たなかでその線引きが従来通りで許されるのかどうかが問われているところだと思う。一方で風力発電については法的拘束力という点から見て、かなりゆるい形で立地が可能になっていると思う。同意を得ることなく進められるような事業があるだろうか。
 本日、安岡の漁師のみなさんが市長に陳情を提出することになっている。市長に反対表明することを求めたものだ。48人の組合員のうち42人の方が署名捺印され、9割近くの組合員が提出者として名前を連ねている。この陳情に行ってはならないといったのが山口県漁協の幹部だった。しかし、その方は安岡の漁師ではない。「同意」というものについて厳密でなければならないと思って述べるわけだが、本来漁業権放棄に同意が求められる際、3分の2同意が絶対であると水協法では定められている。9割が反対の意志を表明しているものについて、いったいどこで地元漁師や操業海域で影響を被る人人の同意が得られたのであろうか? という疑問なわけだ。環境部長に聞くが、地元漁協の同意は得られているとの判断なのだろうか。
 砂原環境部長 (関係のないことをとうとうと答弁)。もちろん漁民の方のお考えは承知している。
 本池 不思議なのは、昨年漁業権関係者の3分の2同意がとれたというのに、組合員に聞くとあまりその自覚がないというか、何の話かわからないという方方が多い。そして安岡のように3分の2の権利者が同意しているどころか9割の組合員が反対を表明している。もっと不思議なのは、昨年段階の計画に対して、今年に入って前田建設工業は1・5㌔沖合に出して1基4000㌔㍗出力にすると計画変更している。漁業権がかかわるなら、場所も異なる以前の計画への同意は無効で、改めて同意をとり直すのが筋だが、そのような動きはない。また漁業権消滅の対象でもなく、それによる影響補償というような論議も俎上にはのぼっていない。しかし20年で8億円、年間にして4000万円を関係漁協に支払うという話だけは決まり、既に手付け金が振り込まれているそうだ。まだできてもいないのに、山口県漁協下関外海(7漁協)の共励会の口座にはお金が振り込まれていることを、副組合長みずからが安岡の漁師にはっきりと述べている。漁協の同意という点については得られていないことを本日提出される陳情書が証明している。
 安岡はじめとした住民のなかには、低周波音の人体への影響についての不信が根強くある。低周波音を感じる人もいれば感じない人もいる。千差万別であると学者もいっている。風車による低周波音は耳から伝わる「気伝導音」ではなく、頭蓋骨を貫通してその振動が感音系に達する「骨伝導音」が主であるともいわれている。環境部長に聞きたいが、下関の環境を心配する役職にあって、この点についてはどのように見ておられるのか。
 砂原環境部長 環境部長として下関市民の安全と体は大事にしていかなければならないと思っている。低周波の議論はネットや文献等でいろんな説がある。これについては私がいいとか悪いとかのべる立場にはない。
 本池 現段階で行政対応として被害の認定基準がなく、環境省が2004年に出した「参照値」は「耳に聞こえない音による生理的な影響は考えられない」という「感覚閾(しきい)値」を前提にしたものであると指摘されている。低周波音の人体への影響は現在国が研究者に依頼して若干調査している程度であって、何ら科学的な解明はなされていない。環境部が環境審議会に何度も賛成側の学者を呼んできていることが先日の一般質問でも取り上げられていたが、現段階で環境部長はじめ誰一人として「影響はない」と断言できる材料を持ち合わせていないのが実際かと思う。
 そうした状況にあって、全国どこを見ても前例がない1基4000㌔㍗もの洋上風力、高さにして150㍍から200㍍、海峡ゆめタワーの1・5倍もある巨大風車を15基も設置するとなると、なぜ安岡の住民なり下関市民はモルモットのように実験台にされなければならないのかという思いを持つのは当然だ。福島事故の際、「直ちに影響はない」といっていた政府高官がいたが、そのようないい加減なことで郷土をダメにされたのではたまらない。洋上風力建設と関わって地元企業に落ちるといわれている80億円、経済波及効果といわれる120億円と引き替えにはできないものだ。市民の生活と関わった抜き差しならない問題について責任を負うのが地方自治体のトップであると思うが、中尾市長はどのように考えているのか。もう一度ご自身の見解をお願いする。
 中尾市長 何度お尋ねになっても先ほどからお答えしている通りだ。
 本池 大変不誠実な答えだ。やはり自治体首長が明確に賛否を問われなかったり、口を濁したり、あるいは両論併記ですり抜けたり、市議会の議決が反映されないような現行制度は誤っていると思う。法律というのは不備がわかればその都度「改正」がなされ、変化していくことは国政を見てもいえる。環境影響評価や準備書について「法律に則って」といいながら、前田建設工業は以前の法律に基づいて調査を実行しようとしたりもしている。せめて市町村長の同意ならびに議会の議決、安岡で二九の自治会が反対表明しているように地元同意が反映される仕組みにするよう、全国市長会なり中核市の市長会でもかまわないので、みずから発信していくべきだと考える。安岡洋上風力発電をめぐっては全国的にも例がないほど市民の運動が盛り上がっている。首長としての責任ある対応を求める。

 学校の施設・設備問題

 本池 学校は子どもたちが知育、徳育、体育を学び成長していく場だ。その施設・設備、子どもたちをとりまく環境がどのようになっているのか質問したい。
 ある学校のPTAの方から、「子どもの通う学校のトイレの臭いがすごい。どうにかならないのだろうか。子どもや先生方が一生懸命に掃除をしてもとれない。プロの業者による専門的な作業がいるのではないか。市役所はどう考えているのだろう」との相談を受け、他の父母の方方にも意見を聞いて歩いた。臭いだけでなく暗さを指摘する声もあれば和式から洋式にしてほしいとの要望もあった。子どもたちが学校生活を安心して過ごすためにも、トイレは綺麗であることにこしたことはない。この何年かは教育長が呼びかけられ、素手で便器を洗うトイレ掃除の会の活動が学校現場でも奨励されてきたが、肝心なトイレが壊れたまま放置されていたり、とにかく「臭い」状況が普遍的にあるようだ。
 また各学校や父母たちに実情を聞くなかでわかったことだが、トイレに限らず施設が老朽化したまま手が加えられない状況が放置されていたり、運動場に設置されているブランコなどの遊具が劣化して使用禁止になっていたり、床板がはがれている校舎があったり、雨漏りや窓からの吹き込みに悩んでいる学校があったり、改めて驚かされる状況だった。各学校からはそうした状況を改善するために1年に1回、教育委員会に工事要望が上げられている。しかしながら調査用紙に数十項目記入しても、緊急の修繕以外はほとんどが実現されないままきている。
 学校から提出される工事要望と修繕要望の件数は市内全体では何件ほどあるのか。また、そのなかでトイレの修繕要望はどれくらいあるのか、昨年度と今年度の要望件数と、教育委員会として把握している実情を教えてほしい。
 西岡教育部長 修繕要望の件数は、平成25年度1065件、平成26年は9月16日までで586件である。おおよそ月に100件の修理の依頼を受けている。
 本池 今年度は工事要望件数が減っているようだ。何か事情があるのか。
 西岡教育部長 工事要望件数だが、平成25年度は588件、平成26年度は9月16日までで16校から79件の工事要望がある。修繕の要望件数は変わっていないと思うが、工事の実施件数は、学校の耐震化を優先している関係で通常の工事は緊急を要するもの以外は先延ばししている。
 本池 これまで数十件要望を記入してきたが、今年度から六件に限定されたという話を聞いたが、間違いないか。
 西岡教育部長 6件かは覚えていないが優先順位の高いものをあげてほしいとお願いしている。
 本池 これまでよりはるかに限定される要望件数の扱い自体が、学校からの要望がまるで少なく、現状に問題がないという印象を周辺に与える。現場では数件にしぼるのに頭を悩ませたという話も聞いた。学校によって築年数や老朽化の実情は千差万別ななかで、一律に数件となるとあまりに杓子定規で物事を捉えすぎではないか。
 修繕・工事要望のなかには、雨漏りや床板の張り替え、窓枠の劣化など、子どもたちの安全にかかわる問題が多く含まれている。大雨が続いた一学期、ある学校では窓から雨が吹き込み、雨水を雑巾で拭き取ったり、雨漏りで廊下が濡れて拭き取ったりという状況があった。現場では何年間要望しても実現しないため、あきらめにも似た心境が語られていた。教育委員会が出向いて緊急の故障は直してくれても、まとまった修理になると、いつも「お金がないのでできない…」というのが結論で、先生方は教育予算の充実を切望されていた。冬場の灯油代が少なく、いつも目盛りを弱にし、午後は早めに切っても足りず、子どもたちが寒い思いをしているとも聞いた。旧郡部は気温が低く切実だ。
 現在、市内では耐震化工事が大規模におこなわれている。山口県は全国と比較しても進捗率が底辺で、下関もここにきて急ピッチでやり始めた印象だ。山口県のなかでも下関市は対応が遅れている。来年度末までかかるようだし、それも100%完了するのではなく、統廃合を見込んでか90%台で終わるようだ。耐震化工事はいつからいつまで、どれだけの予算を投じておこなわれているのか。あと教育委員会の担当窓口で「耐震工事をしているのでほかの工事は難しい」と聞いたが、その予算は学校の施設・設備の修繕費用との関係ではどうなっているのか。修繕費・工事予算はどれぐらい確保されているのだろうか。五年前からと直近のものをお願いする。減っているとしたらどういう理由か。
 西岡教育部長 耐震改修工事などの補助対象事業を含めた工事費は5年前の平成22年度は8億929万円、25年度は15億6781万円、26年度は26億7292万円となっている。耐震改修工事などを除いた管理工事費は、平成22年度は1億5220万円、25年度は1億669万円、26年度は9696万円となっている。平成22年度に比べると三六%の減少となっている。
 工事要望のうち8%がトイレの工事要望で、おもなものはトイレの全面改修、増設、便器の洋便器化、手すりをつけたり段差解消などのバリアフリー化となる。要望件数は平成27年が47件で、平成25年度が42件である。要望に6件という制限をかけたのかということだが、平成26年度より6件というお願いをしているところだ。
 本池 耐震工事の予算は年ごとに増えて、本年度は26億円ということだが、一方で修繕工事費はこの5年間に36%減と大きく減っている。この実情に対して、多くの父母のみなさんや学校の先生方は、成長期の子どもたちの体にあった机やイスがほしいという要望も強く持たれていた。古くなってささくれだったり、いたんでいるものも多く、先生方が一生懸命に修理したり、よそからもらい受けたり苦労しておられるようだ。学校から出される、机やイスを購入してほしいという要望総数を教えてほしい。また、要望に対して教育委員会としてはいくつ購入しているのか、その机とイスは一台当りどれくらい費用がかかるのか、昨年の実績をお願いする。
 西岡教育部長 まず修繕費の実績は、平成22年度5896万円、25年度6354万円、26年度6850万円で16%増加している。
 机、イスについてだが、昨年、本庁管内の小中学校を対象にした要望調査では、小学校は29校から机1028台、イス1233脚、中学校は11校から机444台、イス425脚の購入希望があった。教育支所管内は学校数も少ないためこのような形での要望調査はおこなっていない。
 昨年度の学校支援課購入実績だが小学校では机93台、イス190脚、中学校では机33台、イス54脚を購入している。各学校が購入しているのを含めて小学校では机157台、イス250脚。中学校では机62台、イス78脚を購入している。
 本池 修繕費は22年度からすると1000万円増えているようだが管理工事費は36%減と、全体としては大きく減っている。耐震工事の費用が今年だけで26億円、工事費・修繕費は合わせて1億5000万円くらいと、桁外れの大きな隔たりがある。
 机とイスだが、要望数の一割にも満たないのが実情だと思う。「足りない分は各学校へ支給されている備品代で購入してほしい」と指示していることは教育委員会からも聞いた。しかし備品代は学校運営のなかで必要に迫られる様様な備品を購入するためのものだ。イスや机の更新に費やすと、ほかに必要とする物が買えなくなってしまう。本来、イスや机が先か、他の備品が先かと天秤にかけるべき性質のものではないと思う。イスが2000円あまり、机が7000円で合わせても1万円ということだった。1000台の要望に対してこれらを購入するとしても1000万円あまりだ。学校備品を大切に扱うことを教育するのはもちろんだが、逆に大人の側は壊れているのをわかっていながら放置したり、子どもたちを粗末に扱って良いだろうか。ささくれだったイスにガムテープを貼って授業を受けなければならない子どもがいることについて、新庁舎の真新しい環境の中で議論している私たち大人はもっと親身に心配してあげるべきではないだろうかと思う。
 イスと机を必要数揃えるのに1000万円余り。壊れた遊具の整備も行政が本腰を入れればどうにでもなるものだ。子どもたちの成長にとって必要とされる教育環境を整えてやることは、私たち大人の愛情の問題でもあると思う。「いや、お金の問題だ」というのであれば、そのお金をいかに工面し、優先順位を入れ替えるかは行政側の判断によると思う。
 市役所が建て替わり、新館の3階分を議会が使用している。旧議会棟の総面積の2倍以上の面積に生まれ変わった。すべて冷暖房付きだ。大人たちは満たされて、子どもたちは辛抱しなければならないという状況は改めねばならない。教育予算の充実と、以上あげたような個別の要望について具体的な解決を求める。
 西岡教育部長 子どもたちに物を大事に使ってもらう、古くなっても愛着をもって使っていただくことも教育の一環ではないかと思っている。他に急ぐ備品があったりするので、兼ね合いを見ながら予算の許す範囲内となるが、暫時更新に努めていきたい。
 本池 ぜひ具体的な解決を急いでいただきたい。

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